(非)日常編
ふわりと浮かぶシャボン玉。
目の前でぱちん、と弾けていく。
作っているのは視で、「それ、どこで見つけたの?」という冴香の質問に「購買よ」と答えた。
「おい陰明寺、やるなら外でやれ」
低い声で注意をするのは優成。目の前で弾けたシャボン玉が、相当気に障ったらしい。…まぁ、シャボン玉は外でやるものだろうから、注意もわからなくはない。
「嫌よ、だって外雨だし」
「なら貴様の部屋ででもやればいいだろう」
視はそう言うとチラリと窓の外を見て、顰めっ面をする。そんな視に対して、更に顔を顰める優成。
「まぁまぁ…ええと、外の天気って確か変えられるんじゃなかったっけぇ」
仲裁に入るように緒丑が言う。
「その筈だよ。モノクターを呼ぼうか?」
「嫌よ。ワタシ、アノ人好きじゃないし」
囚の提案に視は首を振った。
「あら、ワタクシを呼びましたか?」
「……げ。モノクター……」
待ちかねたようにすっと現れたモノクターに、身じろぎをする一同。
一体どこから現れているのだろう。足音がする時はわざとなのだろうが………モノクターについては不思議だらけだ。
「神出鬼没だね、きみは」
「その言葉いい響きですね、緒環クン。まぁそうですねぇ、ワタクシ退屈なんですよ」
「…そんなこと言われてもぉ……」
困ったように緒丑は頬を掻く。
退屈だからといって、そこら辺に現れ続けられるのも正直困る。
「陰明寺少女からシャボン玉でも借りたらどうだ?」
「貴女本気で仰ってます?」
息つく間もなく、ツッコミを入れるモノクター。恐らく千年はふざけてなどいない。全くの本気だったのだろう。
「…まぁいいです。弔宮サンと安心院クンの苦しみを解っていないようなので…とっておきのサプライズをご用意致しましたから」
何か、不吉な予感がした。
2人の名前を出すということは、ただの娯楽のために来たのではない。モノクターの今までの行動を思い返すと、自然とそう感じた。
「its a show time!流れ星のプレゼントでございます」
流れ星と称して、天井から落ちていくのは、
それはそれは鋭利な刃物。
刃物は談話室の中心に座っていた実花をめがけて落ちていく。
「逃げろ、実花………」
あまりの急な出来事に、声が出ない。
「……!」
薫はなんとかして守ろうと手を伸ばすも、距離は遠く、
届かない。
「………ぇ…っ」
届くとしたら、
隣にいる彼女しかいない。
「………………ッ!間に合っ……た…………」
実花を突き飛ばし庇ったのは春子で、飛んで行ったのは、シャボン玉なんかじゃない。
「は、春子ちゃん……腕…が……」
春子の腕は無惨にも飛び散り、バランスを崩した小さな体は耐え切れずに床へと臥していく。
「キャァァァァァァア!!!」
「……………っ」
「…ゔ…………………」
その様子を見ていたらいあは叫び震え、幸応は思わず目を瞑り、ディランは声を漏らした。
「よかったぁ、実花ちゃんに怪我が……なくって….…」
「やだ………早く…止血しないと……っ!」
実花を守れた安心からかへらりと口だけは笑うものの、得体の知れない痛みを感じ始め、春子の頬には涙が流れ落ちていく。
実花は慌てた様子で、自身に血がつくのも構わず近づいた。
「ム、ムンちゃん………元に戻して……!おねがいっ…………おねがい…春子ちゃんの腕を………返して……」
らいあは目の前の惨状についに泣き崩れた。
「…どこが紳士なのふざけないで…っ!」
倒れた春子と助けを乞うらいあの姿を目にした実花は、ついに声を荒げる。膝こそ春子のそばにいようとついているが、今にも掴みかかりそうな雰囲気だった。
「おやおや、ワタクシに危害を加えたらデコピンのひとつでは済まされないですよ?」
「……っ!」
「退屈なんですよ…。退屈を埋めるには何かに傷をつける。………ニンゲンだってそうでしょう?ワタクシのやってることは愚かなニンゲン共となんだって変わりはないのです」
「これ以上のサプライズ、期待していますからね?」