「氷河!!もう早く起きなさい!!」
「……」
「あ〜今日からでしょ?下宿させてもらうのだからバスに遅れるわよ。」
「……う〜ん。後5分。」
「いいから起きなさ〜い!!」
俺は母さんに起こされる。渋々起こされていることもあり未だにあくびがでてしまう。だが母さんと食事なんて当分の間はできないだろうから俺は寝ぼけ眼をこすりながら食卓へと向かう
「母さんもう少し寝かせてくれよ。」
「もう。いいから起きる。もう中学生でしょ?」
「いやだってさ。夜中の徘徊行っていたら流石に眠いんだよ。兄貴も今日まで遠野だろ?流石に本家で学校行っているんだし。」
俺は首を掻きながらあくびをする。すると呆れたような母さんに俺は気にせず歩く。
「つーか。父さんは?」
「リクオ様?リクオ様なら今は四国の方に入られますよ。」
「……はぁ。昨日、挨拶だけしてたからどうしようと思っていたけど。まぁしゃーない。俺は後継ではないし、ぬらりひょんとしての血は多いことはないしな。母さんの血の方が多いことは確かだしな。」
ぬらりひょんの孫と雪女の子供である俺は妖怪奴良若頭候補であったが兄に全ての権利を捨て、俺は名前を変えることで全てを手放したのだ。
「…本当にいいの?その選択で。」
「いい。…まぁ籍も及川だもんなぁ。つーか母さんいい加減父さんのことリクオ様って言うのやめたら?」
「えっ?でもリクオ様はリクオ様ですし〜。」
「まぁいいけど。兄貴には助けが必要なら呼んでって伝えておいて。戦闘面であれば力になれると思うし特攻隊隊長の名がなくから。」
と言いつつも俺は2度と呼ばれないことが分かっている。
俺は小さく、そして一つだけ父さんからもらった祢々切丸を持ち懐に入れる。
この刀は家宝の一つであるが実際のところ、これは縁切りみたいなものだ。
だから母さんの涙腺が緩んでいるのは仕方ないだろう。だってこれは俺が独断で決め、組みのためを思ってのことだったのだから。
「はぁ。そういう自由気ままな性格は誰に似たんですか。」
「元々ぬらりひょんってそういう妖怪だろ?」
「まぁ、そうなんですけど……」
「それに、俺がいたら邪魔だろ?兄弟でも後取りは一人だけ。俺が修行しているうちに遠野の奴らと協力して安倍晴明の残党たちとやったリクを誰もが四代目って認めるって。」
事実俺はそっちの方があっている。妖怪の強さ的には俺の方が強いのだ。
だからこそ俺を後取りに勧める妖怪もいる。特に外部との繋がりが多い俺にとって都合のいいのだろう。
そして雪女にも継ぎ先は存在している。結果的に俺は後継というところから奪回してくるようになる。
「まぁ、姉さんもしっかりしているし、俺はゆっくり隠居するよ。……兄弟で争うのは、絶対に嫌だから。」
「……」
「まぁ、今生の別れってことでもないし、妖怪は寿命が長いんだろ?嫁さん見つけたら見せにくるよ。」
とけらけら笑う。いや笑うことしかできなかった。
当然のことだろう。恐らく最低数十年は俺たちは会えないのだから。
「えぇ。その時はおいしい……料理を……作って。」
ついに涙腺が解けたのか俺に抱きつき顔を埋める。
全く、母さん俺たちを産んでから涙脆くなったって聞いていたけど、本当に泣き虫になったなぁ。
「はぁ。泣くなよ母さん。つーかいつかは分かっていたじゃねーか。リクか俺。どちらかは離れて暮らすことになるって」
「でも。」
「でもも無いから。まぁ下宿先もひいじいちゃんの知り合いのところだろ?それなら大丈夫じゃねーの?俺が半妖ってことも知っているんだろ?」
どうやら戦国時代から忍の一家と言われてきた人間の一族らしい。
八重樫って名は正直聞いたことがないのだが裏の人間ってことらしい。
「……まぁ。父さんにも。母さんにも時々顔を見せにくるって。だって俺はぬらりひょんなんだから。ぬらりくらりとやってくるさ。」
「全くそういうところは、お爺様とお代わりないですね。」
「あぁ。……まぁ全く、食べようぜ。もう冷えていると思うがな。」
「あっ。温めてきます。」
「いいから。母さん。そんな暇あるんなら話そうぜ。……冷たい方が俺は好きだしな。」
と俺はそのまま歩きはじめる。
リクも父さんも分かっているのだ。
いつかは絶対に戻ってくると
百年、いや二百年になるかもしれない。
その時は兄弟仲良く隣同士で戦場に出られたらいいと思って。