やはり俺の青春ラブコメに女神がいるのはまちがっている。   作:秋銀杏

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[第3話]渋々と比企谷八幡は動き出す。

 失礼しますという言葉共にドアを開けて入ってきたのは三人の女子生徒。

 全員が整った顔立ちをしていて、この学院の顔面偏差値高いなぁなんてしみじみと感じていたら、明るめの茶髪をサイドテールにした女子生徒が絢瀬さんに一枚の紙を提出した。

 

「これは……?」

「アイドル部、新設の申請書です!」

「それは見ればわかります」

 

 先程までのやり取りのせいで不機嫌さMAXの絢瀬さんは、冷たい声色で応対する。

 あの女子生徒には絢瀬さんの不機嫌な理由が俺にあるということで多少の申し訳なさを感じなくはないが、設立する部活名が引っ掛かっていた。

 アイドル部? あぁん? なにあのスクールアイドルとかいう部活ですか? 学校は勉強する場だぞ。舐めんな。却下だ却下! 

 

「では、認めていただけますね!」

「いいえ、部活は同好会でも最低5人は必要なの」

 

 またしても絢瀬さんと同じ意見となってしまった。

 しかし、部活申請に必要な人数も知らんとは大丈夫か、こいつら。

 

「ですが、校内には部員が5人以下のところもたくさんあるって聞いてます!」

「設立した時には5人以上居たはずよ」

 

 絢瀬さんの言葉に長い黒髪の子がすかさず反論するが、それもあえなく撃沈してしまう。

 

「あと、2人やね」

 

 彼女達が来てから黙っていた東條さんがそんなことを呟いた。

 

「あと2人……わかりました。行こう」

 

 女子生徒達は納得したようで生徒会室から出ようとすると、絢瀬さんがそれを呼び止めた。

 

「待ちなさい。どうしてこの時期にアイドル部を始めようと思ったの? あなた達二年生よね?」

 

 その問いに、茶髪をサイドテールにした女子生徒が真剣な表情で答える。

 

「廃校をなんとか阻止したくて」

 

 廃校? 廃校ってあの廃校? え、この学校って廃校になるの? 

 

「今ってスクールアイドルは凄い人気があるんですよ! だから」

「だったら、例え部員を5人集めても認めるわけにはいかないわね」

「どうして……」

「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思い付きでやってみたところで状況は好転しないわ。変なことを考えないで残り二年、自分のためになにをすべきか考えるべきよ」

 

 そう言って絢瀬さんは提出された申請書を突き返した。返却したというよりは、もう持ってくるなという意思表示だろう。

 

「……戻ろう」

 

 なにも言い返せなかったらしい女子生徒は突き返された申請書を受け取ると、残りの2人を連れて生徒会室から出て行こうとする。

 その際にその視線が一瞬こちらを見て、動きを止める。

 

「あれ、君は……」

 

 変なものでも見たかのようにこちらを見つめる女子生徒の顔立ちには俺も見覚えがあった。

 

「穂乃果ちゃん? 知り合い?」

「ううん。そうじゃないんだけど昨日……」

 

 昨日、俺に道を教えようとしてくれた女子生徒だ。

 そのことに気づいて、一応昨日の感謝の念も込めてペコリと小さく会釈すると、穂乃果と呼ばれたその女子生徒も合わせて会釈した。

 

「えっと、どうして……」

「穂乃果、理事長から集会で説明があったでしょう。私たちの学園生活をサポートする生徒が他校から来てくれて、生徒会の手伝いをしてくれるって」

「言ってたっけ?」

「さては、寝てましたね……」

 

 長い黒髪の子が呆れたようにため息を吐く。

 

「でも、じゃあ、もしかして部活のサポートとかも……!」

「いや、悪い。そういうのはやるつもりはない」

 

 俺に与えられた仕事は生徒会業務だけのはずだ。それ以上のことはするつもりはない。

 

「そうなんだ……。そっかぁ。だよねぇ……」

 

 落胆しつつ、期待の眼差しをチラチラ向けてくるのはやめてくれませんかね。やらないからね。

 

「ほら、行きますよ。穂乃果」

「……うん」

 

 肩を落として彼女達が出て行って、扉が閉まったところで絢瀬さんから声をかけられた。

 

「あなた、彼女と知り合いだったの?」

「いえ、別に……」

 

 知り合いでもなんでもない。ただ道を教えてもらっただけだ。道覚えてなかったけど。

 だから、その変なことしてないでしょうね? と言わんばかりの視線を向けるのはやめて貰えますかね。

 そういえばと、先程の彼女達の会話で気になったとことを聞いてみる。

 

「そういえば、廃校になるんですか?」

「ならないわ。私がさせない」

 

 そういうこと聞いたんじゃねぇよ。お前の崇高な志は聞いてねぇから。

 とか言ったものなら睨まれることは確実なので、そうですかと太々しく頷いておいた。

 流石にわざとらしかったのか、絢瀬さんの視線が厳しくなる。

 そんな俺たちを他所に東條さんは何やら唸りながらカードを引いていた。

 なにあの人、シャイニングドローバースでもし始めたの? 

 

「うーん。やっぱり……」

「どうかしたの?」

「うん。タロットがね告げるんよ」

 

 タロット? タロットカードのことであることはわかるのだが、なにこの人、そういうタイプの人なの? つまり占い師型というか、オカルトタイプってやつ? 

 

「絵里ち、本当に良かったん?」

「……なにが」

「さっきの子達」

「本当に良かったもなにも人数も揃ってなかったじゃない」

「そうなんやけど……」

 

 東條さんの話し方はなんというか繋がりが見えにくい。

 幼女戦記の1話見た後に2話目見始めた時の感覚に似てる。話繋がってなさ過ぎて別アニメ始まったかと思ったからなあれ。

 うーんと唸る東條さんがチラリと俺を見た。嫌な予感しかしないので、速攻で首を逸らして気づいてませんよというポーズを取っておいた。

 

「さぁ、下らない話はこれぐらいにして、早く作業を終わらせましょう」

 

 パンッと空気を変えるように手を叩いた絢瀬さんは再び書類にペンを走らせ始めた。

 その姿に不承不承といった感じではあるが、東條さんも作業を開始する。

 そして、俺はといえば未だになんの仕事も与えられてないのでなんか仕事してる感を出して誤魔化しておいた。具体的には、机に向かって腕組んで唸ってるだけである。絶対に誤魔化し切れてない。

 これはあれかな。自分から聞きに来いとかいうパターンかな。嫌だなー。怖いなー。怖いなー。

 

「……何かしら?」

 

 タイミングを伺うように、チラチラと見ていたら、絢瀬さんと目が合って、凄い嫌そうな顔された。

 おいおい、目が合っただけで敵意向けてくるとかどこの世界のトレーナーだよ。

 

「えっと、俺は何をすれば……」

「えっ? ……あ」

 

 渋々とぼそっと呟いた俺に絢瀬さんは一瞬ぽけっとすると、忘れてたと言わんばかりの声を出した。

 え? 普通に忘れられてただけ? もしかして、余計な行動せずに、黙っていれば仕事しなくても済んでた? 

 その後、普通にやるべき仕事を教えてもらえたので、やっぱり忘れられていただけだったらしい。

 なにそれ、悲しい。

 

 * * *

 

「それで、どうだね。音ノ木坂学院での活動は?」

「はぁ、まぁ普通というか、特になにも……」

 

 翌日の放課後。今日も今日とて音ノ木坂学院に行かなければならないと思っていたら、平塚先生が校門前で車を停めて待っていた。

 聞くと、東京の方に用事があるから乗せていってやるとのことだった。

 なんか毎日平塚先生に連行されてる気がする。

 

「普通、か……」

「普通、ですね」

 

 特段変わったことは起きていない思う。強いていうなら、俺が音ノ木坂学院に行ってること自体が変わってるというか、異常事態なのである。

 

「そうか。それならばよかった」

「よかったんですかね……」

「普通ということはいつも通り上手くやれているということだよ。まぁ、君の場合がいつもが上手くやれていないんだが」

 

 嫌な現実を突きつけられて、これからあの嫌な生徒会長に会う前だというのにげんなりしてしまう。あの生徒会長、美少女じゃなかったらぶん殴ってる自信あるからな。

 

「そういえば、音ノ木坂学院にスクールアイドル部ができるそうだな」

「……なんでそれを? 忍びのものですか?」

「残念ながら守秘義務だ」

「はぁ、そうなんすか」

 

 まぁ、十中八九東條さんだな。

 だって、俺の動向を報告できるの絢瀬さんか東條さんしかいないし、あの生徒会長が俺の観察報告とかしたらメタメタに書いてくる未来しか見えない。

 よって消去法的に東條さんで間違いない。

 そうか。つまり、俺がちゃんと生徒会に行かなければ東條さんによって平塚先生に報告がいくのか。後でゴマすっておこう。

 

「折角だ。手伝いなさい」

「はい?」

 

 なにを言われたのか理解できずにアホそうな声で聞き返してしまった。

 

「折角だからな。スクールアイドル部新設を手伝いなさい」

「…………はい?」

 

 聞き間違えかしら。今、とんでもないことを言われた気がしたけど。

 

「ちなみにこれは決定事項だ。異論反論抗議その他もろもろは受け付けない」

「いやいやいや、ちょっと待ってください! え? なんで?」

「なんでって、忘れたのか? 君が音ノ木坂学院に行く理由を」

「生徒会の手伝いをするためでは?」

「ボランティア、引いては奉仕活動を行なうためだ。生徒の活動を支援するのも君の業務の一環だよ」

「そんな! 話が違う! 俺は帰らせてもらいます!」

「別に構わないが、走っている車から飛び降りるのは危ないぞ」

 

 ぐっ……、確かに飛び降りれない。

 話は終わりと言わんばかりに歌を口ずさみ出した平塚先生を見ながら恨みがましい目を向けておいた。

 歌が無駄に上手いのが腹立つ。でも流行り物の曲じゃなくて、演歌なんですね。

 ずっと恨みの視線を向けていたが、先生はそれを一切意に返さず、結局音ノ木坂学院まで連行されてしまった。

 

 くっ、俺にもっと力がさえあれば……! え、今からぼっちになって、秘密のコードを唱えれば200連ガチャ無料? レジェンド武器に、守護成獣獲得、魔剣士に昇格して戦力6000万!? 今すぐ始めよう、ぼっち伝説! 

 

 嫌すぎて、頭の中に盛大な中二病の風が吹き荒れてしまった。それで、逆に冷静なる。

 そうだ。平塚先生はああ言っていたが、あの女子生徒たちに断られれば問題自体ない。そもそもあの女子生徒たちも本気で俺を勧誘したわけでもないだろうし、適当に断られれば問題ない筈だ。

 てか、あの女子生徒たちも絢瀬先輩に断られて諦めてる可能性高いよな。

 

 そう思ってたら廊下であの3人組が集まって何かしていた。

 見ると、デカデカとスクールアイドルの名前募集と初ライブのお知らせのポスターを貼り付け、その下には投稿箱があった。

 ……これ生徒会業務として撤去したらダメだろうか。

 一瞬本気で考えてしまった。

 しかし、絢瀬さんにあれだけ反対されたというのに活動を続けるつもりでいるようだ。しかも、初ライブのお知らせまである。

 あんな適当な感じで部活申請の紙を出した割には意外にも結構本気だったらしい。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。ここで会ったが100年目。とっとと平塚先生からの仕事は断られたという形で終わらせよう。そう。「え、いや、いいです……」って引かれながら言われて、俺が少しだけ傷ついてこの仕事は終わるのだ。

 さて、それじゃあ……、えっと……、これなんて声かければいいの? 

 出来ればあちらから声をかけてもらいたいくらいなのだが、なんか全然気づかれてない。

 

「よおーし! 次は歌と踊りの練習だぁー!」

「…………あー、おほん」

「うわっ!? びっくりしたぁ!」

「い、いつの間に……!?」

 

 気づかれずに女子生徒たちがどこか行ってしまいそうだったので、仕方なしに咳払いをしてこちらに意識を向けさせると予想以上に驚かれた。

 あ、あれー!? 結構わざとらしく音立てて歩いて近づいたつもりなんだけどなぁ? 

 

「……君は生徒会の、えっと、……なんだっけ?」

「ちょ、穂乃果失礼ですよ!」

「確か、ひき、ヒキタニくん?」

「…………比企谷八幡だ」

 

 既にものすごく帰りたくなった。

 名前を間違えてしまったサイドテールで女の子は気まずそうな顔になるので、俺は気にしていないと顔を振る。

 

「比企谷八幡くん。うん! 覚えた! 私は高坂穂乃果! よろしくね」

 

 にっこりと太陽のような笑顔を向けてくる高坂に、俺は眉間に皺が寄りそうになった。

 やばい。俺が苦手な、男子キラータイプの女子だ。

 こういう女子は往々にして男子との距離感が無駄に近い。そのせいで、俺のこと好きなんじゃね? なんて余計な勘違いをしてしまうのだ。

 しかし、俺は歴戦の覇者。戦力6000万の小町姫を持つ俺にその程度の罠は効かない。

 ただ、ちょっと近いから少し離れてもらっていいですか。ほら、いい香りとかすると緊張するから。

 

「私は園田海未と言います。よろしくお願いします」

「私は南ことりです。よろしくね。さっきは名前間違えてごめんね」

 

 残りの2人、長い黒髪の子の方が園田海未というらしい。言葉の端々から育ちの良さが伺えるので、多分お淑やかな大和撫子タイプ。日本男子なら大体好きなやつ。

 そして、俺の名前を間違えたサイドテールの女子は南ことり。耳に残るような甘ったるい声だ。可愛いと体現したような笑顔を向けてくる。こっちもオタクなら大体好きなやつだな。オタサーの姫タイプ。

 こいつら男子特攻入りすぎだな。女子校でよかった。共学だったら死体の山量産されてた。

 

「えっと、それで何かな……?」

 

 俺の用件を促すように聞いて、高坂は何かを思いついた顔を硬らせて、後ろのポスターと投票箱を隠した。

 

「まさか、これを撤去しに……!」

「なっ!? まさか、そこまで……!」

 

 いきなり悪者扱いされた。

 そんなこれは渡さないぞと言わんばかりのファイトポーズをとられても。

 

「いや、違うけど」

 

 一瞬本気で考えたことは言わないでおいた。俺の言葉にほっとしたような顔になる3人。

 

「なーんだ。それで、どうしたの?」

「昨日、部活のサポートをしないかって言ってただろ? それもやることになったからどうかと思ってな」

 

 完璧な流れだった。よし。これで後は俺が断られて終わりだ。

 と思っていたのに、高坂は瞳を輝かせた。

 

「本当っ!?」

「えっ……、あ、まぁ」

 

 え、どうしたのこいつ。

 餌を与えられた仔犬のようにテンションが上がるのが見て取れる。

 

「海未ちゃん、ことりちゃん、比企谷くんが、スクールアイドル部設立のサポートをしてくれるって!」

「ええ! 生徒会側からのサポートはとてもありがたいです」

「うん! そうだね!」

 

 ……あれぇ? 結構乗り気? 

 

「あ、いやいや、ちょっと待て。落ち着いて考えるんだ。本当にいいのか?」

「え? うん。手伝ってくれるんでしょ?」

「いや、そうだけど……。えぇ……」

 

 想定外だった。まさか喜ばれるとは思っていなかった。

 そう簡単に男子を仲間に引き入れるんじゃねぇよ。こいつらなんて危機感の低さなんだ。ちょっと心配になってくる。

 

「やったー! これで、練習場所の問題も解決だね!」

 

 無邪気に喜ぶ高坂。そういえば部活じゃないから申請とかを出さないと練習場所とかも限られてくるのか。

 俺が手伝ってくれるから場所の確保ぐらいしてくれるだろうという心づもりなのかもしれない。まぁ、無理だけどね。

 

「悪いが、生徒会の権限全く使えないからな」

「なんでっ!?」

「いや、俺、他校の生徒だし、そんな奴になんも権力は持たせないだろ」

「確かにそうですよね……」

「ああ。だから、俺は何も出来ない、手伝えない、言われないとやらないというよくばりセットだ」

「なんでそこで少し威張ってるんですか……」

 

 ちょっと引いたようにこちらを見る園田。

 手応えは抜群だ。手伝いを許容された以上は、俺の使えなさをアピールしていき、クビになる待ちに移行しよう。

 

「そっかぁ……。じゃあ、やっぱり練習場所は私たちで探すしかないね」

「そうだね。比企谷くんはこれから生徒会?」

「ああ。だから、悪いが練習場所を探すのにも付き合えない」

「うん。わかった。生徒会頑張ってね! 私たちも練習場所探し頑張るぞー! おー!」

 

 高坂は無駄に元気がいいな。しかもアホの子っぽい。

 高坂たちも活動を開始するみたいだし、俺も生徒会の方に向かおうとしよう。

 彼女達と別れて歩いている途中で気づいた。

 そういえば、彼女達の連絡先とか一切知らんし、またエンカウントしない限り手伝えないじゃん。……よし、もうエンカウントしないように願っておこう。




内容変えすぎて書くのに手間取ってしまった……。

ちょこっと紹介コーナー
絢瀬絵里
音ノ木坂学院3年。生徒会長。
前作におけるメインヒロイン枠。
リメイク版は八幡に対する敵対心アップ、ポンコツ具合調整、氷の生徒会長属性の獲得と八幡並みにキャラ調整された。
また、八幡からの呼び方が絢瀬先輩から絢瀬さんへと変更。他校の年上に先輩って使わないよね。
設定自体はアニメ準拠ではあるが、スクフェス やらSidネタなども混在する。

比企谷八幡による絢瀬絵里の印象
『怖い。てか、怖い』


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