ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS 作:大ちゃんネオ
どうぞお付き合いください
忘れもしない。
あの熱気。
あの歓声。
あの興奮。
あの────夢。
そうだ、ボクは夢を見た。
いや、夢を魅せられたのだ。
15センチほどの巨人達の戦いに。
巨人を動かす人々のただひた向きに、本気で挑む姿に。
ボクも……また、あのように夢を追いたいと、そう思わされたのだ。
晴れ渡る青空に思わず笑顔が浮かんだ。
下宿先のアパートを出て、 これからボクが通うことになる『私立
星涼中は中高一貫高で、すぐ隣には高等部がある。
その高等部には憧れの人がいて、その人を追いかけるために星涼を選んだのだ。
そして、その人を追いかけるためにボクが始めたことは……。
『ガンプラバトル』
十年前に発見されたプラフスキー粒子と呼ばれる粒子によって生まれた新時代の娯楽。
プラフスキー粒子とはガンプラにも使われているプラスチックにのみ反応する粒子で、外部から粒子を流体的に操作することで普段は動かないガンプラに命を吹き込む。というのが謳い文句。
アニメ『ガンダムビルドファイターズ』では異世界からもたらされた物だったがそれはアニメ内の話。
ホビーアニメというものは得てして大袈裟になるものだ。
『Please set your GP BASE』
音声に従いGPベースをガンプラバトルの筐体、バトルシステムに接続する。
このGPベースにガンプラの状態やこれまでの戦績が記録されている。
青い粒子がガンプラバトルのフィールドを形成していく。
フィールドは宇宙。
その名の通り小惑星が密集し帯を形成している。小惑星が道を阻み、気を抜けば近くの小惑星に衝突する可能性は高い。
身を隠す場所が多いことを喜ぶのもいいが、それは相手にとっても一緒である。
互いにどこから現れるか、攻められるか、全方位を警戒しなければならず集中力はジリジリと削られていく。
数あるフィールドの中でも難易度の高いとされるフィールドである。
なるほど、これは
「それじゃあガンプラをセットしてね」
「はい」
赤毛の短いポニーテールの女子生徒に指示され(本当は指示されるまでもないけど)、専用のボックスの中からガンプラを取り出しGPベースの上にセットする。その時、女子先輩の目が大きく見開いたのをボクは見逃さなかった。
「すご……大きい……。あなた背は小さいのにそんな……」
「ボクの背とガンプラの大きさは関係ないでしょ」
まったく。
ボクの身長が同年代の平均より少し小さいからってバカにして……。
まあいい。
身長とガンプラには相関性がないことと実力はこの試験で示す。
だがまあ大きいというのは分かる。
これでもちゃんと1/144なのだから。
他の1/144スケールのガンプラと較べたらその大きさは見るまでもなく。
なんたってこいつは巨大な怪鳥。
「ダイモン・ヒバリ。ネオ・ペーネロペーで出る」
カタパルトから発進した白き巨鳥は独特な飛翔音を戦場で奏でる。
ネオ・ペーネロペーはペーネロペーをベースに改造したボクのガンプラ。
改造と言ってもそんなに極端には変えていないしベースから少し足したり引いたりしてカラーリングを変えた程度。
さて、放り出されたアステロイドベルトだがこの中に試験官達のジムが紛れていて奇襲を仕掛けてくるという仕組み。
数は全部で5機。
未だに全機を撃墜した新入生はいないけど、ボクがその最初の一人になってやる……!
ネオ・ペーネロペーをフライト・フォームへと変形させ、光球状の操縦桿を押し込み、小惑星の群れに向けて加速していく。
「こんなスピードで……!? 無茶よ……」
セコンドに立つ先輩がそう口漏らしたがボクには関係ない。
ボクとネオ・ペーネロペーならやれる。
目に入る小惑星と死角にある小惑星、先にある小惑星全てを脳内に情報として送り込み、どんなルートを進むか、どのように進むかを瞬時に叩き出していき、それを行動に映していく。
休む暇などない。
それにこれは単に小惑星帯を突っ切るレースではないのだ。
突如、視界に現れるバズーカを構えたジム。
「的が大きいぜぇ!」
確かにネオ・ペーネロペーは大きい。
しかし、この的は動く的である。
放たれた弾頭をバレルロールで回避しMSフォームへと移行させ両腕のコンポジッド・ウェポン・ユニットから発生させたビームサーベルでジムをバツ字に切り裂いた。
「まず1機……!」
残りは4機。
再びフライト・フォームに移行し宇宙を駆ける。
超音速飛行を可能とした機体という設定だけあって作り込めば作り込むほどにその性能は発揮され最初は戸惑ったが今では自分の身体を動かすのと同じようにネオ・ペーネロペーを操縦することが出来る。
さて、次の敵はどこから現れる……?
「あ、レイカさん!」
その名前を聞いた瞬間、胸が高鳴った。
あの人が今、ここに……!
すらりとした立ち姿、流れるような黒髪。
間違いない、あの人は……。
「ちょ! 前見て前!!」
「えっ? あっ……」
気を取られたほんの一瞬、意識をガンプラバトルに戻すと目の前には大きな小惑星があって……。
「えーそれでは本試験の結果に伴い仮入部期間終了後チーム分けを実施する。以降はそのチームでトレーニングを行うことになる。以上をもって新入部員選別テストは終了!」
軍人みたいな喋り方をする坊主頭の男子生徒が試験の終了を告げた。
それにしても……。
「流石に1機しか撃墜してないのは不味いよな……」
部室から出ながらそう呟く。
あの小惑星と衝突したあと、4機のジムから蜂の巣にされてボクは敗北。そこで試験終了となった。
1機しか撃墜出来なかったのはボクを含めても本の数人だったはず。
チーム分けされるが、もう最下位チーム配属は決まりだよな……。
「やあ、久しぶりだねヒバリ」
唐突に声を掛けられたがこの学校にはボクの知り合いなんていないけれど……。
「レ、レイカさん……」
「どうした? そんな鳩が豆鉄砲食ったような顔をして」
シンヤ・レイカ。
星涼学園高等部2年で模型部部長。
3年前の全国大会優勝やその他大会でも優勝や好成績を修める現役ファイターの中でも強豪中の強豪。
星涼がガンプラバトル強豪校たる由縁でもある。
「……まさか、覚えていていただけたなんて思ってもみなくて……」
そう、レイカさんとの出会いは3年前の一回きり。
当時の地方大会を友達に連れられて観戦しに行って、ガンプラバトルの虜にされた。
そして思わずボクは試合後のレイカさんにアポもなしに会いに行ったのだ。
「あの時のことは印象的だったからね。私としても嬉しい出来事だったし……。何はともあれ入学おめでとう。それで、試験の方はどうだった?」
また、なんとも言いにくい話を振ってくる。
しかし試験があったばかりなので部活の先輩としてはそのことについて話を聞きたいのだろう。
「その子なら1機撃墜したあと、レイカが来たから余所見して小惑星に激突。それで蜂の巣にされて撃墜されたわよ」
ボクの代わりに先程の試験のことを教えたのは試験中、隣のオペレーターパネルに立っていた赤毛の先輩だった。
やけにレイカさんと親しげだけど友達なのかな。
「ふむ。余所見してか。原因は私?」
「え、あ、いや……」
「その通り。飼い主を見つけたワンコみたいにね」
誰がワンコだ。
試験の時から思ってたけどこの人はボクのことを小馬鹿にしてないだろうか。
「そうか……。バトルに集中しないのは相手に無礼を働くことだから注意するように」
「はい、すいません……」
「それはそれとしてバトルの映像はあるかいユナ?」
「あるわよ。はいこれ」
赤毛の先輩はユナさん?らしい。
スマホを取り出して先程のバトルの様子をいつの間に記録していたのか動画をレイカさんに見せている。
「……へぇ」
動画を見たレイカさんの表情が変わったのが分かった。
もしも、ボクがこれからレイカさんと対戦する相手だったら恐怖で萎縮してしまうだろう。そんな、顔。
ファイターとしての一面が現れていた。
「いい動きだ。新入生の中でもトップクラスだろう。しかし1機しか撃墜していないという記録から下位チームへの配属になってしまうが各大会での成績や部内リーグでの勝率によって下克上も可能となっている。君ならば這い上がってくることも出来るだろう」
這い上がる、か……。
ボクらしいといえばボクらしい。
あの時、ガンプラバトルに魅せられた時もボクはドン底にいた。
ガンプラバトルとの出会いによって這い上がれたボクが今度もまたドン底から這い上がる。
例え、どんな環境でもボクは……。
一週間後。
「嘘だろ……」
ボクが配属されたチームは最下位チームのチームピスケス。ピスケスとは魚座のこと……というのはさておき。
「んだよここー! 部室ボロっちいぞ!」
「あの……静かにした方が……」
「あぁん!? オレのエクスカリバーでたたっ斬るぞ!」
「ひぃ! すいません! すいません!」
不良の男子生徒と地味目な女子生徒が二人。
あとはボクを入れて三人。
名簿を見てもそれだけ。
一年生が三人だけ。
そして……。
「今年も貧弱一年坊主共をぎったぎたにしてやるぜ」
「ひっ……」
「言ってな二年坊主! テメーのそのニキビ全部潰してやんよ」
チームの活動開始初日。
何が何やら分からないうちにチーム戦が始まろうとしていた。