ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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白銀の翼

「ここが、福音女学院……」

 

 綺麗な校舎……。

 純白の壁にたくさんの花で彩られた庭。

 学校の設備も全て新品なのではないかと思わされるほど。

 

「すごいなぁ……」

 

 実は、少しだけ福音女学院への進学を考えたことがある。お嬢様なんて柄じゃないからやめたけれど、それでもやっぱり憧れはある。

 

「それにしてもヒバリちゃんとケンユウ君まだかなぁ」

 

 時刻は午前九時前。

 九時集合なので来ていてもおかしくないはずなのに。

 ちなみにユナ先輩はもう既に到着していて福女の友達と話してるとかなんとか。

 一人で違う学校にいるのは気まずくて仕方ない。

 

「ごきげんよう」

「ひぇっ!? あ、えと、おはようございますぅ!」

 

 こうなってしまうから。

 だから早く二人に来てほしい。

 もう一体どこで何をしているんだろう。

 一回校門の方に行ってみようかな……。

 

 

 

「い、嫌だぁ!」

「いいから早く行くよ!」

 

 校門の前で、ヒバリちゃんがケンユウ君を引っ張って福女に入ろうとしていた。

 

「えーっと、二人はなにしてるの……?」

「あ、マトバさんちょうどよかった。オオノのやつが福女の敷地に入りたがらなくて困ってたんだ」

「えぇ……。その、どうして?」

「嫌なんだよ匂いが! 甘ったるい匂いがして!」

 

 甘ったるい匂い……?

 そんなの別にしないけどなぁ。

 

「確かに分かるけど我慢しろ! 別に死ぬわけじゃないんだから!」

「嫌だぁ! 死にはしないけど死にそうだぁ!」

 

 このあと、なんとか二人で嫌がるケンユウ君を引っ張って連れて行きました。

 途中から匂い(?)でダウンして抵抗することもなくなったからです。

 

「……やっぱり、女は苦手だ」

「え! ケンユウくん男の子が好きなの!!!」

「それとこれとは話が別でしょマトバさん」

 

 

 

 

 

 

 福女の模型部が保有している敷地と言えばいいのだろうか。うちも模型部としてはそれなりのものなのだけれどここは格が違った。

 体育館、武道場、そしてガンプラバトルのアリーナ。

 

「いやいや広すぎでしょ……」

  

 公式大会が普通に出来るような施設が学校敷地内にあるとかなんなんだ。客席も完備してバトルシステムは中央にドデカイのがひとつとその周りに四台。更にバトル映像を映し出す大型スクリーンが天井に。

 これがお嬢様学校の力なのか。

 

「福音女学院模型部を創立させたのはシロガネグループのご令嬢だからね。この学院にもなかなかに出資しているそうだからその賜物かな」

「レイカさん……」

「おはよう。顔を合わせるのは一週間ぶりだね。どうかな、調子は」

 

 調子、か……。

 

「先週よりはいいですよ」

「それはなによりだ。ユナとアヤネから聞いたよペーネロペーのこと。今回のバトルでぜひとも私に見せてくれ、君達の力を。……それはそれとして、そこでダウンしてるオオノ君は一体……?」

「気にしないでください。女の匂いに耐えれなくなってるだけなんでガンプラの匂い嗅がせれば治りますよ」

「そ、そうか……」

 

 おい、あのレイカさんが若干困惑してるぞ。

 オオノ頼むからバトルの時には回復してくれよ。

 

「見て見てヒバリちゃんあれ!」

 

 マトバさんが興奮気味に呼ぶのでなにかと見ると同時に黄色い歓声が上がった。あれは……。あの人が、シロガネ・ユキノ……。

 腰までさらりと伸びた銀髪、一点の曇りもない雪のような肌。白いブレザーの制服がよく似合っている。

 切れ長の瞳には上品さというのか、そんなものが感じられる。十人中十人が美人と評するだろう。

 なにより個人的に気になったのは……。

 

「身長、高い」

 

 多分、170cmはあるぞ……。

 少しぐらいボクに身長を分けてはくれないだろうか。

 

「そしてあれが72よ。72のバストよ」

「……先輩。なに言ってるんですか」

「おはよ。さて、あれがシロガネ・ユキノ嬢だよ。今日の相手。この一週間散々頭に叩き込んできたから分かるだろうけど」

 

 この一週間、福女の試合は何回も見て研究してきた。

 正直、たった一週間しかやってきてないので研究しきれたかと言えばそれはNOだ。

 レイカさんに並ぶ実力の相手にたった一週間しか準備期間がないなかで挑む。

 勝率なんてものはないだろう。

 敗北は必至。

 冷めた頭がそう弾き出す。

 しかし脳ではないどこかが絶対に勝つ!と意気込んでいる。

 

「さて、みんなは栄光の一戦目だからね。あっちの筐体でアップしよ」

 

 アップというとスポーツ選手のようだがバトル前のガンプラの点検という意味合いの方が大きいのでさっと動かすぐらいである。

 

「向こうもアップ始めたみたいだね」

 

 シロガネ・ユキノ率いるグローリーフラッグスのアップが始まる。

 フラッグ三機のチーム。

 一矢乱れぬ編隊飛行をしている。

 機体同士の距離感そのまま。

 本当に上手い人達のチームだ……。

 

「ほら、気圧されてないで行くよ」

「あ……はい」

「って、あれ? ケンユウ君は?」

「オオノならそこでダウンしてます」

「ケンユウ君!!!」

 

 オオノが先輩から叩き起こされる。

 それでもやはりこの女女した匂いにダウンしてしまっている。

 これは荒療治が必要と先輩は何処から取り出したのかガンプラの塗装に使う塗料を取り出してその匂いを嗅がせてオオノを回復させた。

 そんな回復手段があったのか……。

 というかなんかその大丈夫なのか……?

 

 

 

 

 

「よっしゃアップ終わりぃ!!!」

「よかったねケンユウ君。すっかり元気になって」

「ああ! この調子でいこ……ウッ!? すぅすぅ……」

 

 いやこれすっかり元気と言えるのだろうか。

 話してる途中で塗料の匂い嗅いでるし。もうヤバい中毒者にしか見えない。

 

「まったく匂いぐらいでだらしない」

「先輩は女だから分からないだろうけどすげぇ鼻につくんだよ甘ったるい匂いが! ダイモンには分かるだろ!」

「まあ、分からなくはないけど体調崩すレベルではないし」

 

 家にボク以外男がいないから多分慣れてしまっているんだと思う。

 よく女子向けのお店とか連れていかされた時は香水の匂いでボクもちょっと気持ち悪くなったし。

 

「男の子も大変ねぇ……っと、お嬢様がいらしたわよ」

 

 あちらもアップを終えたようで対戦前の挨拶に来たらしい。わざわざご足労いただきありがとうございますお嬢様。

 

「ごきげんよう皆さん。(わたくし)、福音女学院模型部の部長をしておりますシロガネ・ユキノですわ。本日はよろしくお願いいたします」

 

 うわー。

 本当に、お嬢様だ。

 こんな口調の人、本当にいるんだ……。

 

「レイカから入学したばかりの中学生のチームと戦ってくれと頼まれた時は驚きましたが、レイカが期待を寄せるチームともなれば私も話は別。バトル、楽しみにしていますわ」

 

 そう言ってシロガネ・ユキノは自陣へと戻った。

 

「……すごい、お嬢様って感じの人だったね」

「……なんか、癪にさわるようなそうでもないような変な感じだぜ」

 

 ……レイカさんが期待を寄せるチームか。

 頑張ろう!

 

「よし、それじゃあみんな頑張ってね!」

「「はい!」」

「おう!」

 

 先輩に見送られ、中央の巨大バトルシステムの前へ。

 実際に目の前に立つとその大きさ、広さがよく分かる。

 これならネオ・ペーネロペーものびのびと動かせる。

 

「そういえばダイモン。ペーネロペーの名前、決めたか?」

「……まだ」

「え、まだ決めてなかったの?」

「別にいいでしょ。……名前考えるの、苦手なんだから……」

 

 GPベースの上に置いたネオ・ペーネロペーを見つめる。

 新しくなったというのにまだ名前が決まらなくてごめん。けど、絶対に相応しい名前をつけるからね。

 

「……よし、行こう」

 

 システムが出撃をアナウンスする。

 フィールドは高層ビルの建ち並ぶ都市のようだ。

 戦場は別に選ばない。

 というよりボクの場合はたったひとつ。

 都市の直上。

 大空がボクの戦場なのだから。

 

「作戦は……」

「わたしが狙撃して」

「ボクが撹乱して」

「オレが叩き斬る!」

 

 よし。

 この数日で練習した連携。

 正直焼け石に水だろうけれど、それでもやらないよりはいい。

 

「ダイモン・ヒバリ。ネオ・ペーネロペー」

「マトバ・メイ。アサルトデュナメス」

「オオノ・ケンユウ! ガンダムエクスカリバー!」

 

「出る」

「いきます!」

「いくぜッ!」

 

 カタパルトから射出されるネオ・ペーネロペー達。

 ……勝つ!

 

 

 

 

 

「キョウ、シュウ。いつも通りいきますわよ」

 

 左右両隣にいる私のチームメイトにそう声をかける。

 この瞬間が何気に好きなのです。

 というのもキョウとシュウ。名字はキョウがカゲヤマ、シュウがミヤムラなのですが二人は一卵性の双子。

 左右を見ると同じ顔に挟まれているというのが私の中ではなんだかリバーシブルのようで面白く、私の顔も二人と同じ顔になってしまうのではないかと想像してしまうのです。

 二人には内緒ですが。

 

「なんで新人中学生の相手をユキノお姉様が……」

「そうです! 私達だけで充分です!」

「キョウ、シュウ。いかなる相手にも敬意を払い戦う。それがファイターのあるべき姿ですわ。心得なさい」

「「はい……」」 

 

 聞き分けがいいのが二人のいいところ。

 もう少し、私離れ出来ればもっといいのですが……。

 

「……さて、行きますわよ。シロガネ・ユキノ。GNフラッグブリザード。行きますわ!」

「カゲヤマ・キョウ。オーバーフラッグサイバー」

「ミヤムラ・シュウ。オーバーフラッグガンナー」

「「行きます!!」」

 

 三機のフラッグが蒼天を翔る。

 視界良好。

 眼下にはビル群。遠方には山岳地帯が望める。

 キョウのオーバーフラッグサイバーに搭載された高性能センサーは既に敵機を捕捉している。

 

「敵機発見! 山の中腹、鉄塔の真下にデュナメスの改造機。スナイパーです!」

「シュウ」

「分かりました」

 

 オーバーフラッグガンナーがMS形態へと変形しライフルを構え、スコープを覗く。

 

「先に叩かせてもらう……。ッ!?」

 

 瞬間、桃色の粒子ビームがスコープを破壊した。

 

「なっ!? 嘘でしょ!?」

「更に敵機来ます! 正面から……なに、このスピード……!?」

 

 キョウが驚きを隠せぬほどの機動性の機体?

 一体、どんな相手だというの……。

 やがて、その機体を視認することとなる。

 平均的なガンプラのサイズを越すサイズ。背に装備された二門の砲、元の機体から追加されたであろう装甲が巨体をさらに巨体足らしめている。

 あれは……ペーネロペー。

 

「このまま突っ込んできます!」

「迎撃しますわよ!」

 

 即座に照準を合わせトリガーを引く。

 機首に使われているGNカリバーから放たれたビームはシュウのリニアライフルから撃ち出された弾丸と共に真っ直ぐペーネロペーへと向かう、が。

 あのペーネロペーは更に加速していく────!

 迎撃のために放たれたビーム達は虚しく高層ビルを穿つに終わる。

 そして、このままではペーネロペーと正面衝突してしまう。

 

「全機散開ッ!」 

 

 散開すると同時にペーネロペーが通過していく。

 その衝撃に機体が揺らされる。  

 私達を通りすぎていったペーネロペーは高度を上げ、MS・フォームへと変形。振り向き様に突き出た胸部の先から雨のようなビームを放つ。

 拡散ビーム砲だなんて……!

 

「狙撃もきます!」

「展開が早すぎる……。各機回避行動を! 立て直しますわよ!」

 

 編隊は散り散りとなる。

 まだ仲間が撃墜されたわけではない。三対三という数の有利不利はまだ生まれていないということが救い。

 相手が優勢に見えるがまだどうとでもなる段階なのだから。

 待ちなさい私。

 ()()()……!

 

「まだ敵機はデュナメスとペーネロペーだけ……。キョウ、あと一機は捕捉出来ていませんの!」

「あと一機は……きゃあ!?」

「キョウ!」

 

 キョウのオーバーフラッグサイバーに襲いかかったのは赤いインパルスガンダム。フォースシルエットを装備しているが両手にエクスカリバーを構え、斬りかかる。

 

「しゃあッ!!! 叩き斬る!」 

「なんて野蛮な!」

 

 キョウはプラズマソードで応戦するが近接戦闘は相手が有利。

 援護を試みるがペーネロペーがそれを許さない。

 腕に装備された複合兵装がビームを連射する。恐らく、これも追加された武装であろう。

 

「なかなかやらせていただけないものですね!」

「当然でしょ。……勝つのはボク達だ!」

 

 GNフラッグブリザードとネオ・ペーネロペーが睨み合う。

 視線は外さない。

 先に動くのは彼か、私か。

 デュナメスの狙撃が私に迫る。シュウがペーネロペーに迫る。

 結果、動き始めたのは同時であった。

 即座に飛行形態へと変形、飛翔。

 蒼天に影を差す。

 大量の砲を携える機械の鳥が奇怪な音と光を発し、背後から襲いくる。

 ビルの狭間を飛び交い、遊ぶ。

 これは……久方ぶりに面白い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユナ、アヤネ、レイカは観客席でバトルを観戦していた。

 あのシロガネ・ユキノ達に中1のチームが挑むとあって最初は「すぐに負ける」などの声が聞こえていたがバトルが始まってからは一切そのような言葉は聞こえなくなった。

 

「幸先いいじゃん。このまま押し切れるんじゃない?」

 

 アヤネが呟く。

 バトルはピスケスが優勢であるのでそう思うのは当然のことである。

 だが、ユナの表情は険しかった。

 

「……それならいいけどね」

「なにか不安要素が?」

「ユナ。君の懸念事項は未だにヒバリ達が一機も撃墜出来ていないこと、だろう?」

「ええ。正直、かなり厳しい状況ね……」

「……ああ、そういう……」

 

 アヤネもユナの懸念を察した。

 そうして考えてみるといま、ヒバリ達にとって良くない方に流れていっている。

 時間の流れが、ヒバリ達を危機に追いやっているのであった。




設定
カゲヤマ・キョウとミヤムラ・シュウは山間部の村の生まれ。双子を忌み嫌う文化のある村のしきたりによって二人は離れ離れになってしまうが進学した福音女学院で運命の再会を果たした……わけではない。
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