ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS 作:大ちゃんネオ
お話回です。
福女との試合から一週間。
この一週間はネオ・ペーネロペートルネードの操作にも慣れてきて、部内リーグ戦も順調に勝ち上がってと順風満帆で気分がいい一週間だった。
そして休日。
快晴でおでかけ日和なので部屋の中にいるのがもったいない気がして駅前までやって来た。
肩に提げてるエナメルバッグにはネオ・ペーネロペーと前に部活で作ったストライクフリーダムが収納されている。
普段はネオ・ペーネロペーだけなのだが、数日前からネオ・ペーネロペー以外のバトル用ガンプラも準備しようと考え始め、アイデアに煮詰まっていた。
「なんとなくいいことありそうだから外に出たけどどうしようかな。どこ行こうかな……。ん? あの人は……」
「あら、あなたはペーネロペーの」
私服でオフを過ごすシロガネ・ユキノさんと出会った。
ゆったりとしたグリーンのロングスカートに白いトップスが春らしい爽やかな出で立ちでよく似合っている。お嬢様らしく上品。
思わずぼけぇっと眺めてしまった。
「もう、なんですのその気の抜けた顔は。もっとシャキっとしてくださいまし」
「え……その、すいません」
「まだ気が抜けていますわよ。えいっ」
白く、細い指が頬に触れ……。
「ひゃっこ!?」(冷たいの意)
びくんと全身が跳ねた。
真冬に手袋せず外にいたのかというほど冷たい手。そんなものに頬を包まれたら誰だってこうなる。
「目は覚めましたか?」
「も、元から覚めてます!」
「私にはそうは見えませんでしたが、そういうことにしてさしあげましょう。今日はお休みですか?」
「そうですけど……」
「そちらのカバンの中にはガンプラが入っていまして?」
「はい……」
「でしたらガンプラバトルですわぁ!!!」
目を輝かせるシロガネさんはボクの手を掴んで歩き出した。
「ま、待ってください! どこに連れて行くんですかぁ!!!」
「とっても楽しいところですから安心してくださいまし」
そうは言われても。
先週一戦バトルしただけの人に強制連行されたら不安しかない。
果たしてボクはどうなってしまうのか。
ボクの休日はなくなってしまうのか……。
全国展開もしている人気のカフェ。テラス席は春の陽気のおかげで満席となっていた。
その中の一席にユナとレイカが向かい合っていた。
レイカはいつも通りクールにコーヒーを嗜み、ユナはそんなレイカを訝しげに見つめていた。
「急に呼び出してなんの用? 伝達事項なら昨日送ったでしょ」
そう、ユナは唐突にレイカから呼び出されたのだ。
特に用事もなかったので来ることには来たがまだ何の用件で呼び出されたのか聞かされていなかった。
「別に特別なことではないよ。休日に友達を誘って遊ぼうと思っただけだよ」
「本当にそれだけ?」
「本当だよ。そんなに怪しまないでほしいな」
ふーんと更にレイカを怪しみながらユナは紅茶に口をつけた。
口を潤し、再度尋ねる。
「それで、私を呼んだ理由は? 正直に話しなさい」
「……その、久しぶりに
「あそこって……ああ、
むう……と目頭を押さえるレイカ。
そんなになるなら無理していかなくてもよくない?と言うユナに理由を説明するとユナも興味を持ったようで二人は
「ねえ、レイカ」
「なんだい?」
「せっかくあそこ行くならさ、待ち合わせカフェじゃなくてよくない?」
「……一理ある」
レイカはたまに抜けているのだ。
完璧そうに見えても。
甘い、というよりも甘ったるい匂いが鼻につく。
福女よりもそれが強いのはここがお店ということで福女ほどの敷地面積がないからだろう。
「集中しないと被弾しますわよッ!!!」
「ッ!」
シロガネさんの声が現実へとボクの意識を引き戻してくれた。
機体の高度を上げて地上からの砲撃を回避する。
対空機銃から放たれた弾丸達も避けつつ拡散ビームで反撃。
直撃は狙わなくていい。
射撃を一瞬止めることさえ出来ればいい。
「そこですわッ!」
射撃が止んだその一瞬に出来た道筋をシロガネさんのGNフラッグブリザードはあっという間に通り抜け地上のタンク部隊を一刀両断していく。
「ボクだって……」
敵機をマルチロックしていき機体各部に搭載されたミサイルコンテナのハッチを開放し一斉射。
地上のあちこちに爆炎を巻き起こし、GNフラッグブリザードがその中を駆け抜け中破した司令官機のシグーを撃破。
敵基地防衛部隊はこれで壊滅しバトルエンド。
ホログラムが消え、筐体の上に立つネオ・ペーネロペーを回収。特に傷も異常もなしと……。
内心ホッとしていると、黄色い歓声が鼓膜を貫いた。
「キャー!!! ユキノ様ありがとうございました! 今日も素晴らしいバトルを見ることが出来て感激です!」
「GNフラッグブリザードに接近された時、思わずその高い完成度に目を奪われてしまいました……」
す、すごい……。
あれは、シロガネさんのファン?
まるで芸能人のようだけどファンの人達もすごい。
熱量がすごい。
シロガネさんという光に集まる夏の虫……じゃなくて、こう……。上手い喩えが見つからないので考えるのはやめるけどとにかくすごい。
なんだろう、カリスマ?ってやつなのかな。
「私が素晴らしいのは当然のこととして今日は彼がいてくれましたから、よりいいバトルが出来ましたわ」
その言葉を聞いた時、謙遜なのかどうか疑ってしまった。
自分が素晴らしいのは当然って頭についたし。
あとボクは別になにも……。
「え、彼……? 女の子じゃないんですか?」
「ボクは男だッ!!!」
ボクが連れてこられたのはカフェ朱楽。
カフェなのだが抹茶とか和菓子が売りの和風カフェ的な店で可愛い内装と商品で女性に人気……なのだが。オーナーがガンプラバトルにドはまりしたため店内にバトルシステムが設置され、これがゲーセンや模型店などでガンプラバトルをするのはちょっと苦手という女性ガンプラファイター達にウケて今ではこんなありさまらしい。
最初は従業員達も戸惑い店が潰れると思ったらしいが店は賑わっているし、お客さんはどんどん入ってきている。
ちょうど今、シロガネさん側の隣の席にも女性客が二名案内されてきた。
……サングラスとマスクに帽子の二人組は怪しすぎないか?
そう思っているとシロガネさんから話を聞いているのかと怒られた。
ごめんなさい。
なんでもここのオーナーがシロガネさんの叔母さんだという。親族の話が出たためか、シロガネさんはボクの家族構成について尋ねてきた。
「父さんはボクが小学一年生の時に病気で亡くなりました。なので母さんと四人の姉さんの女ばっかりのところで育ちました」
「そうだったんですの……どおりでそんな可愛らし……んんっ! お母様一人で五人の子供を育てるなんて……大変でしたでしょう?」
「いえ、そんなに。おじいちゃんとおばあちゃんも近くに住んでましたし、母さん病院の院長だしでお金とかは特に。姉さん達もボクとは歳離れてるので手はかからなかったと思います」
一番上の姉さんとは干支一周分より離れてる。
歳が一番近い姉さんも現在大学生だしでボクだけ離れ小島のような感じなのだ。
少し口を動かし過ぎたのでオレンジジュースで口の中を潤す。
「そうでしたか。ガンプラはいつから?」
「小五の時に、友達の誘いで行った大会で……そこで、レイカさんのバトルを見て憧れて……」
「へぇ……。だそうですわよ、レイカ」
唐突に、シロガネさんは何処へとも向けずそう言い放つとシロガネさんの後ろの席のサングラス女二人組がこちらへ顔を向けて帽子とサングラスを取った。
「あまり大きな声で名前を言わないでくれたまえ。バレると面倒なんだ」
なんと、サングラス女の片割れはレイカさんだった。
本当にどうしてサングラスを?
というかサングラスを外す動作、絶対OPのクワトロ・バジーナの真似してたぞ……。
「あと私もいるよん」
「先輩」
「げえっ、ユナ」
「やほやほ。奇遇だね。それとユキノ、お嬢様がげえっとか言わない」
シロガネさんは心底、先輩が苦手らしい。
それでも相手してあげるあたり仲良いんだろうけど。
「それで、なんですの? 私達の話を盗み聞きしに来たのですか?」
「違う……とは言い切れないが、二人と出会したのは本当に奇遇だよ。久しぶりに朱楽でバトルしたくなったから来たんだ」
「そしたら二人がいて、面白そうな話してたから諜報活動してたってわけ」
「諜報活動だなんて格好つけないでくださいまし。ただの盗み聞きですわ」
「うちの期待の新人を福女にスカウトする気じゃないかと心配でね」
レイカさん……。
そんな、ボクが期待の新人だなんて……。
……ん?
「レイカさんボクは男です!」
「ふふ、すまない。ついからかいたくなってしまった」
クスクスと笑うレイカさんに抗議の意志を目で伝える。
福女は女子校。女子校に転校なんてしてやるもんか。
それにしてもレイカさんにまでからかわれるなんて……。
「まあ、ヒバリさんが女子でしたらスカウトしていたかもしれませんが男女関係なく将来有望な後輩にはつい色々と指導したくなるもの。
確かにシロガネさんの戦闘スタイルとボクの戦闘スタイルは似ている。
高い機動力を活かして相手を撹乱しバトルを自分のペースに持っていく。
高機動戦闘において間違いなく日本トップクラスのシロガネさんに色々と教えてもらえたらボクの実力も上がることは間違いない……!
「……んんっ! ユキノ、君は福女のキャプテンなのだから福女の部員の指導が優先ではないかな? それにヒバリは高機動戦闘もそうだが今の戦闘スタイルはどちらかというと高火力による制圧の方が近い。それなら私が指導した方が適任だろう。それに、
……何故だろう。
空気が重くなった気がする。
「確かに今のネオ・ペーネロペーならそうかもしれませんがペーネロペーという機体を考えれば私の方が指導役に適任ですわ! 大体、あの装備された火器は撃ち尽くしたらデッドウェイトを避けるために分離しますし最終的には高機動戦闘になるのです!」
「ふむ……ヒバリ。私とユキノ、どちらが君の指導者に相応しいと思う?」
「え……?」
「早くお決めなさい。男でしょう」
いや、ちょっと、その、待って。
二人の会話に一切ついていけてないんですけど。
「ヒバリが決められないというなら」
「ガンプラバトルで決めましょうか」
二人は席を立ちバトルスペースへ向かってしまった……。
本当に、なに……?
「半分本気、半分冗談って感じかな。二人とも世話焼きたがりだし後進の育成に力注いでるし。あとは二人が出会ったらバトルは必然なのよ。五分五分だから決着つけたがってるんだよね」
二人の背を見ながら困惑するボクにそう説明する先輩。
紅茶を口に含んでクッキーに手をつけ始めた。
「レイカもさ、ヒバリくんが入るって知った時はすごい喜んでたんだよ。あの時の子が来てくれたって」
「そう、なんですか……?」
「ヒバリくんとレイカの間に何があったかはざっくり聞いてるけどさ、実際どうなの? わざわざ地元離れてこっちの学校まで来るぐらいなんだから、よっぽどなんでしょ」
それは、確かにそうだ。
よっぽどというのはその通りなんだろう。
ボクとしては、当然のことをしたつもりなんだけれど。
オレンジジュースを一口飲んで、まだこっちの人には誰にも話していなかったあの日のことを少しずつ語り出した。
三年前。
当時は地元のサッカークラブに所属していて、サッカー一筋な毎日だった。
練習は楽しかったし、試合でも活躍した。
監督からも今後が楽しみだって言われて、もっと練習を頑張るようになって、チームの誰よりも練習してたと思う。
だけど……。
その日、ちょっとだけ左足に違和感があったことを覚えている。
大したことはないと思って誰にも言わず試合に出て、そして……。
いつも通りのドリブル。
ブロックしてきた選手を躱して、ゴールに向かって加速しようと力強く地面を蹴った時のことだった。
とにかく痛かったことだけ覚えている。
気が付いたら病院のベッドの上で、左足は包帯でぐるぐるにされていて。
母さんが泣きそうな顔で、「もうサッカーも、走ることも出来ないの」とボクに告げた。
否定した。
否定したかった。
母さんはすごいお医者さんだから治せると信じ込もうとした。
他の患者さんみたいにリハビリすれば前みたいに走れるって。
────走れなかった。
いつも自主トレしていた野原でまたいつものように自主トレした。
────走ってみた。
なんだ、母さんは嘘を言っていたんじゃないか。
ボクはまた走れたんだ。
これならまた試合に出れる。
またサッカーが出来る。
「……痛いよ……」
────走れなかった。
立っていられなかった。
事実が左足首を痛めつける。
立ち上がることもままならなくて、その場でずっと痛む足を眺めて座り込んでいることしか出来なかった。
暗くなっても帰ってこないボクを探しに来た姉さんに見つけてもらうまで、そこにいるしかなかった。
独りの時間はひたすら現実を思い知らせてきた。
もう、走れない。
サッカーは出来ない。
その時、ボクの心は完全に折れたのだ。
ようやく解放された車イスに逆戻り。
なんにも、楽しくなかった。
同級生達は当然のことのように走り回っていた。
それが、今のボクには出来ない。
そんな人は遊ぶのにお荷物だ。
最初こそ優しくしてくれた同級生達も時間と共に去っていく。
そんな中で数少ない、ボクと友人で居続けてくれた奴がいた。
そいつはカズユキ。
カズユキはボクと同じくサッカークラブに所属していて、波長があったのか一番連携が取れていたしクラブ以外の時間もカズユキと一緒にいることが多かった。
「ヒバリもさ、ガンプラバトルやろうぜ!」
ガンプラバトル。
聞いたことはあったけど興味はなかったし、当時はなによりこんな状態だったから何かに興味を持つということが出来なかった。
とりあえず、誘われるままカズユキが作ったガンプラを借りてガンプラバトルというものをやってみた。
……この時点では、魅了されることはなかったと正直に告白しておこう。
ただ、カズユキがボクにガンプラバトルというものを教えてからすぐだった。
地元でちょっと大きなガンプラバトルの大会があるから見に行こうとカズユキに誘われて、強引に連れていかれ……。
その人は、真剣だった。
15cmほどの巨人を操り、強敵達を打ち倒していき決勝まで駆け上がっていった。
カッコいいと思えた。
心が、久しぶりに熱くなった。
消えていたはずの炎が燃え上がったのだ。
何故だろう。
あんなにも惹かれたのは。
それはきっと誰もが真剣だったからだろう。
本気と本気のぶつかり合いはなんであれ心惹かれるもので、カッコいいと思えたから。
そして、この大会で優勝したのは少ない女性ファイターでかつ最年少だった当時中学二年のレイカさんであった。
歳上だろうと、屈強そうな男性であろうと、関係なしに堂々と戦い勝利を手にするその姿に魅了された。
ガンプラバトルには性別も年齢も体格も何も関係ない。
だからきっとこんな足だって、関係ない。
大会終了後、ボクはレイカさんに会いに行った。
人混みをなんとか避けて、その背を見つけて声をかけた。
「あの……!」
「君は……。何か用かい?」
「バトル、見ていてとっても楽しかったです! いつか、ボクと戦ってください!」
レイカさんはしばらくボクを見つめていた。
子供の戯言と思われてしまっただろうか。
「……ああ、約束だ。待っているよ」
静かな微笑みと共に返ってきたのはそんな言葉。
こうしてボクのガンプラバトルは始まった……。
「みたいな、感じです」
「……そっか」
たった一言、それだけ。
先輩なりに気を遣ってくれたのだろう。
それにしても……。
今にして思うとなんて無茶をしたんだろう。
けどこの時の無茶のおかげで今がある。
いつかボクとバトルしてくださいという字面通りの願いは叶ったけれど真意としてはレイカさんとバトルして勝つというものがある。
いずれリベンジを。
そのために力をつけなければいけない……。
「レイカにリベンジするためにも頑張らないとね。負けたままじゃ嫌なんでしょ?」
「……はい。越えたい人ですから」
「じゃあ力を付けないとだ。バトルも製作技術も」
「はい」
少し、頬がほころんでいた。
恥ずかしいので両頬を急いで叩いた。
あとついでに話題も切り替えることにする。
「あの、先輩。相談なんですけど」
「なんだいヒバヒバ。なんでも言ってごらん」
「ネオ・ペーネロペー以外のバトル用のガンプラを作ろうと思って。ネオ・ペーネロペーで戦っていきたいですけど、今後いろんな大会に出ることを考えると……。あと、最終的にはネオ・ペーネロペーに活かせるような機体にしたくて」
「ネオ・ペーネロペーに活かせる……。なるほど、ネオ・ペーネロペーの強化に繋がるってことね。あと操作の方でも」
先輩は話が早い。
いずれはネオ・ペーネロペーを最強のガンプラにしたい。
そのために何か他の機体からヒントを得たい。
いま、バッグの中にストライクフリーダムが入ってはいる。
ネオ・ペーネロペートルネードの参考になってくれた機体のひとつだ。
「ネオ・ペーネロペーの参考にしたいとなると可変機の方がいいよね」
「そうですね、出来ればその方がいいです」
「うーむ、そうなると……あ、可変機ではないんだけどさ」
そう言って先輩はバッグからガンプラを取り出した。
とても作り込まれたフリーダムである。
一目見ても分かる完成度の高さに見惚れてしまう。
「それ私が昔作ったやつ。貸してあげる」
「貸してあげるって……けど先輩、フリーダムは可変機じゃ……」
「そうなんだけど、フリーダムってハイマットモードとフルバーストモードがあるでしょ。二つのモードを状況に応じて切り換えるのは可変機と同じでしょ?」
それは、確かに。
「あとこれSEED放送当時に出たほうのフリーダムだからハイマットフルバーストはないから」
SEED放送当時に出た方って一体何年前だと……。
そんな昔のキットだったとは気付かなかった。
それでも作り込めばガンプラバトルでの性能は高いものとなる。
「あとはそうだな……白兵戦を覚えるための機体とかどう? 例えばエピオンとか。可変機で機動性も高くていいと思う。アヤネに聞いてみるといいよ」
白兵戦。
あまりボクは白兵戦をしないけど白兵戦も強化して出来ることを増やしていければ強みとなる。
「ヒバリくんが強くなればチームの為にもなるしね」
「チームの、ため……」
「ケンユウくんが近距離、メイちゃんが遠距離。ヒバリくんは中距離が主だけどどの距離も対応出来るでしょ? 二人をサポートしてあげられるんだよヒバリくんは」
二人をサポート……。
……ボクが強くなれば、チームのためにか……。
「レイカを越えるって目標も大事だけど、チームのことも忘れないように」
「……はい」
「仲間がいた方が、一人でいるよりも強くなれるんだよ。だから、ヒバリくんはもうちょっと二人と仲良くするように」
「……はい」
話の流れで注意を受けてしまった。
……仲良くしているつもりなんだけど、足りないらしい。
「そうだ、今度ピスケスで合宿しよっか。大会前に。ガンプラバトルに思い出作り! 色々やっちゃおう!」
「は、はあ……」
合宿か、サッカークラブの時以来だ。
あの時と違うのは人数がだいぶ減るということと面白おかしい変な先輩がついてくるということ。
……ちょっとだけ楽しみかも。
「なぁに面白そうな話してますの?」
「ユナ、そういった話はまず部長である私を通すべきではないかな?」
「げっ、戻ってきた……。それよりお二人勝敗は?」
「決着つかず。バトルスペース独占するなと店長に怒られてしまった」
「私がいたから良かったですが普通出禁ですわよ」
「ユキノの諦めが悪いから」
「レイカが往生際悪いからですわ」
……この二人、大人っぽいと思ってたけど案外子供っぽいな。
お互い負けたくない相手。
ライバル。
いつか、ボクもこの二人と肩を並べてやる……!
「あらあらヒバリさん。そんな目を向けられてしまいますとバトルしたくなってきてしまいますわ」
「えっ……いや、ボクそんな目なんて……」
「ふふ、折角だから特別指導と行こうか。私とユキノから指導を受けられる機会なんて滅多にないぞ」
「いやでもさっき店長さんに怒られて……」
「場所を変えよう」
「近くに穴場がありますわ。夜はバーになるところですの」
両腕をそれぞれレイカさんとシロガネさんに掴まれ強制連行されていく。
「まっ……先輩助けて!」
「あー、バトルのことなら二人から教わった方が断然いいからさ。頑張ってね~」
先輩は手を振りボクを見捨てた。
待って、流石にいきなり二人からの特別指導だなんてボクの準備が……!
このあと、二人からの恐ろしいレッスンでボクはボコボコにされた。
二人と肩を並べるなんて出来るのか、不安しか残らなかった。
「いやーヒバヒバは分かりやすいからなぁ。すぐ顔に出るんだから」
やれやれと紅茶を飲み終えて私も店を出ることにした。
そして、気付く。
伝票の存在に。
「あいつら会計しないで出ていったな!? 私に奢らせる気か!」
ヒバヒバの分は後輩だからいいとしてもレイカとユキノ。ユキノあんた金持ちが庶民に奢らせるってどういうことよ!?
あとで絶対請求してやる!
心に固く誓い、レシートはしっかりと受け取り財布の中に入れて店を出た。
日はまだ高い。
ヒバヒバの一日は長くなりそうだ。
恐ろしい先輩二人に気に入られてしまった後輩よ、どうか幸あれ。