ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS 作:大ちゃんネオ
総合病院の病室に案内されるままについてきたヒバリとケンユウ。メイは売店におつかいに行っているため不在。
そのため、二人はあのメイの姉とメイ無しで対面していた。
「それで、ヒバリくんとケンユウくんはどっちがタチでどっちがネコ?」
((タチ……? ネコ……?))
まず、このような状況になったことを説明するため時間を少し遡る。
日曜日。
「ねえメイ」
ペンタブでイラストを描いていたお姉ちゃんが話しかけてきた。
絵を描き始めるとすごい集中していろんなことを忘れるお姉ちゃんが珍しい。
「なにお姉ちゃん?」
「んー、あの、メイのチームメイトの男の子二人。お姉ちゃん会いたいな~」
「え」
「なに? まずいことでもあるの?」
「そういうわけじゃないけど……」
恐らく、というかほぼ確実にではあるがお姉ちゃんはヒバリちゃんとケンユウくんの二人をネタにする気だ……。
同じチームの仲間をそんなことに使われるのは……。
「ブドウのカード(課金するやつ)5000円分あげるから」
「うん! 明日誘ってみるね!」
そんなこんなでピスケスの三人はエリの入院している病院へ行くことになった。
そして星涼では……。
「ごっめーん。イチニの話で盛り上がってたら遅くなっちゃった~。……って、あれ、みんなは? え、部活は? サボり? いやもう全員いないとかそれはボイコットなんよ……」
ユナは一人取り残されていた。
「なあ、ネコとかタチとかってなんだ?」
エリの質問に戸惑う二人。
小声で質問の意図について話し合う。
「さあ……? タチは……太刀? 刀の」
「刀! じゃあ俺だ!」
「じゃあネコはボク……?」
「いいんじゃね? ネコっぽいし」
「どこが」
「なんとなく!!!」
はあ、と深いため息をついたヒバリはとりあえずそれでいいとタチはケンユウでネコは自分だとエリに返答した。
「ヒュフッ……あ、いやなんでもないのよ。そうなのねなるほどねそうなのね~」
エリは相槌を打ちながら液タブに何かを描き込んでいく。
ヒバリとケンユウからは見えないが、それは漫画のネームというもので簡単に言えば漫画の下書きの下書き。
エリは二人をネタに……二人を参考にして漫画を描き始めていたのだ。
BLものの。
「メイから聞いたんだけどヒバリくんは下宿なんだって? すごいね中学生から親元離れて」
「い、いえ。下宿って言っても管理人は姉なので」
「へ~お姉さんいるんだ。一人?」
「四人います」
「多いね~。ヒバリくんは末っ子かな?」
次々と質問されていくヒバリ。その次はケンユウといった調子で二人の情報がエリにドンドン吸い込まれていく。
情報が増えれば増えるほど、エリの漫画に生命が吹き込まれるのだ。
「二人は仲良し?」
「ライバ……」
「いえ、別に」
「ライバルッ!だろ!!!」
「なるほどそういう感じか。だけどベッドの上では……」
ベッド?と訝しむヒバリ。
それはともかく聞かれてばかりいるのはとも思い、ヒバリはエリに問い掛けた。
「あの、エリさんもガンダム好きなんですよね?」
「そうよー。OOが一番好きかなぁ。ニールがね、ニールが好きなの」
「なるほど、だからデュナメスを……。他にも好きなキャラはいますか?」
「んーとねー。ニコルとか可愛くて好きだなー。DESTINYだとハイネがいい兄貴分だったよねぇ。AGEだとゼハートとかも好きだし鉄血ならマクギリス。マクギリスはやっぱり声がいいよ、良すぎる」
ヒバリもうんうんと頷いていたが、あることに気付いた。
今、挙げられたキャラクター達の共通点。
そう、それは……。
「どうして……どうしてみんな死んでしまうん……?」
エリは、推しが死ぬタイプのオタクであった。
「おい! ヤバイぞ泣き出したぞなんとかしろ!」
「なんとかってどうすればいいのさ!」
「なんか、あれだ! 話題を変えよう! あーえっと、エリさんメイのアサルトデュナメス作ったんですよね! めちゃくちゃカッコいいっす!」
「どうじてじんじゃっだのぉぉぉ!!!! ああああ!!!!」
エリの涙は止まらない。
ダムが決壊してしまったかのように。
「泣き止まないじゃん!!!」
「うっ……弟あやすのは得意だったけど大人の女の人をあやすなんてやったことねぇんだから仕方ないだろ!」
大の大人がこんなに泣いているところを初めて目の当たりにしたケンユウにはもう考えられる手段はなかった。
「くそっ! どうすれば!」
「……」
(……やるしか、ないのか。あれを……)
ヒバリはあることを思い出していた。
あまり思い出したくないことではあるが。
あれは、一年ほど前のこと……。
「うわぁぁぁぁ!!!!!! あの変態男ぉぉぉぉ!!!! うわぁぁぁぁ!!!!!」
台所で一人、酒をあおりながら泣き叫ぶ姉がいた。
ダイモン家長女のタカネである。
「ちょっとタカ姉飲み過ぎだって。私だってこんな飲まないわよ」
「飲まなきゃやってらんないのよ!!! ツバメはいいわよね! 男が向こうから来てくれるんだから!」
「はいはい。いいからお酒は没収」
「るっさい! お前も飲め!」
「ごはっ!?」
この時、タカネはバツがついたばかり。
見た目はいい方なのだけれど、お堅い雰囲気のせいか男に縁がなく、生まれて初めて出来た恋人と結婚に至ったが理由あって別れたのだった。
そして次女のツバメ姉さんがタカネ姉さんを止めに入ったがあえなく酒飲み仲間となってしまった。
ツバメ姉さんは酒に弱い酒好きなのでタチが悪い。
「あーもう、うっさい年増達! 未成年のことも考えろっつの!」
ボクと一番歳の近い四女のコルリ姉さんも行った。
コルリ姉さんは年増'sに対抗出来るほどに気が強く、ボクもよく虐められたがそれ以上にボクが虐められていると助けてくれたので姉の中では好きな方だ。
「んだとー? コルリ若いからって調子乗るなよお前彼氏いる~出来すぎて困るわ~とか言ってっけど本当は一回も出来たことないの知ってんだからな姉さん」
「んなっ!? でもタカ姉よりは絶対結婚早いから! 離婚もしないし!」
「はっ! コルリも姉さんと同じタイプだよ! 結婚遅いタイプなんだよ! お前もこっち側だコルリ! 仲間に入れてやるってんだよ!」
長女対四女勃発。
次女は対立煽りを始め、姉妹喧嘩は更にヒートアップ。
この時ボクはスズメ姉さんと一緒に廊下から様子を伺っていた。
「大丈夫だからね~。怖くないからね~」
「別に怖くないし」
本当は滅茶苦茶怖かった。
「けど流石にそろそろ止めないとお母さんから怒られちゃうな~」
それは嫌だった。
母さんは喧嘩が起こると姉弟全員を叱るのだ。
喧嘩をしたことと、喧嘩してるのに何もしなかったことで叱る。
正直意味が分からない。
けど怒られるのはとにかく嫌だった。
「怒られたくない?」
「うん」
「喧嘩止めたい?」
「うん」
「ヒバリなら喧嘩を止められるの」
「ボクなら……?」
「そう、ヒバリなら。……………するのよ、分かった?」
「で、出来るかな……」
「大丈夫出来るわ。だから、いってらっしゃい」
「え……」
背中を押され、台所へと入れられたボク。
さながらバーニィとクリスの戦いを止めようとしたアルのようだったけれど違うのは行動が自発的なものではなかったということ。
そして、ボクは……。
「その、大丈夫……ですからね……」
「うぅ……ありがとうヒバリちゃん……ぐすっ」
喧嘩を止めるためにボクはタカネ姉さんに抱きついたのだ。
そのあと数時間は離してくれずボクは更にタカネ姉さんのことが苦手になり、この事がきっかけで別の喧嘩が勃発したが今話すことではない。
そういうわけでエリさんを抱き締めて慰めていた。
これしかなかった……。
「いやそれ泣き止ませるっつうか喧嘩止めた話じゃね?」
「喧嘩も止めたし姉さんも泣き止ませたんだよ。服びちょびちょになって気持ち悪かった」
「ぐへへ……DC(男子中学生)から抱きつかれたって呟こ……。お、早速リプが。前世でどんな徳積んだ? そりゃもう前世の私はお坊さんで小坊主達をぐへへ」
「いや効果覿面過ぎんだろ」
ケンユウの冷静なツッコミなど気にせずエリは次々と来る「嘘乙」、「証拠画像貼れ」などといったリプライに返信していた。
ヒバリもこれでいいだろうと離れようとした瞬間、売店に行っていたメイが戻ってきた。
「ただいま~。おじいちゃんおばあちゃんに話しかけられて遅くなっちゃっ……た……」
「あ、おかえりメイ」
「お、お姉ちゃん……ヒバリちゃんになにさせてるの!?」
「いやこれはヒバリちゃんの方から抱きついて……」
「ヒバリちゃんがそんなことするわけないでしょ! ヒバリちゃんは……優しく抱き締められる側なんだから!」
「えぇ……」
「ヒバリちゃんはッ! 普段はツンツンして周囲の人達に壁を作って弱さを見せないようにするけどある時どうしても我慢出来なくなって弱さをさらけ出して抱き締めてもらうのッ!!!(オタク特有の早口)」
「それはメイの性癖でしょ。私としてはヒバリちゃんはツンツンしつつも少しずつ周囲と打ち解けていってケンユウ君への思いを募らせある時爆発するのよ。これが至高」
マトバ姉妹の間に火花が散った。
ニュータイプでなくとも分かる殺気を察知してヒバリとケンユウは病室の隅に移動した。
「そうやってお姉ちゃんは私をお姉ちゃんの性癖で染めようとするんだ! 私にだって私の性癖があるッ!」
「自分の性癖を他者にも広めようとすることの何が悪いの? 私はメイの知らない
「お姉ちゃんはいつもそうだ! いつも上からッ!」
「なあ、今こそさっきのあれで喧嘩止められないのか」
「……あれをやるとね、ボクの中の何かが崩れていく気がするんだ……」
「……そっか……。帰るか……」
「うん……」
二人はマトバ姉妹の喧嘩を横目に病室を出た。
ケンユウは女性がより苦手となり、ヒバリは数日ほど虚無になることがあったという……。
ある日の部室。
ケンユウ操るガンダムエクスカリバーとヒバリが新たに作った近接格闘戦特訓用機体ガンダムエピオン・ネオが砂塵吹雪く砂漠を舞台にバトルしていた。
ガンダムエピオン・ネオ。
機体カラーは元の紅と黒からネオ・ペーネロペーと同じく白をメインに差し色で紫とグレーに変更。
機体のシルエットはペーネロペーに似せて、背中に装備されたドラゴンハングが竜の頭を為していた。
見た目はまさしく西洋のドラゴン。
メインとなる武装は両腕に装備されたシールド。ビームソードとヒートロッドが備えられた複合兵装で、シールドが回転することでビームソードとヒートロッドを切り換える。
「砂漠は足を取られるよッ!」
「チッ!」
地上に立つガンダムエクスカリバーを空中から攻めるガンダムエピオン・ネオ。
ヒバリが言ったとおり、砂漠は足を取られて思うようにガンプラを動かせなくなってしまう。
ゆえにヒバリは砂上に立つことはせず、空中からのヒット&アウェイ戦法でケンユウを攻めていた。
ドラゴンハングに搭載したビームキャノンを撃ち、ケンユウにガンダムエクスカリバーを回避させる。
回避先は既に予測済みでヒバリの予想通りのポイントに着地しようとしたところにヒートロッドを振るう。
「うおッ!?」
ケンユウは咄嗟にシールドを投擲し向かってくるヒートロッドに命中させて攻撃を妨害しガンダムエクスカリバーは更なる移動、もとい狙いをつけさせないための不規則な機動を始める。
「咄嗟に回避するなんて……。でも!」
ガンダムエピオン・ネオをワイバーン形態へと変形させる。
追加されたドラゴンハングの分、三つ首のドラゴンと貸す。
ヒートロッドも二振りになったため、尻尾も二本に増えていた。
砂嵐をものともしない三本首のドラゴンが聖剣携えるガンダムに迫る。
「はっや!?」
相変わらずの機動力に驚くケンユウ。
その隙に、二本の尻尾は赤熱していた。
ガンダムエクスカリバーを追い抜くガンダムエピオン・ネオ。
その一秒後、ガンダムエクスカリバーは上半身と下半身を断たれ爆発。
「またボクの勝ち」
「いーや! 今のはお前に有利過ぎる条件だった!」
「自分が有利なら最大限に活かすし、不利な状況でもなんとかするのがバトル」
「くっそー! もっかい!」
「いいよ、何回でも勝ってやる!」
やる気満々の二人。
そんな二人の前にメイがやってきた。
「ね、ねぇ最近なんだか私……避けられてない……?」
「い、いや別に!」
「そんなことは……」
「うぅん。大丈夫だよ。私が避けられてもね、二人が仲良くしてくれるならそれでいいの。仲が良い二人を見れればそれでいいの。話しかけてごめんねもう邪魔しないから。私のことは壁だと思っていっぱい仲良くしてね」
その発言に一気に汗を流すヒバリとケンユウ。
二人は自分達が観察されていること、そして妄想に使われていることを悟ったのだ。
「ままま、待てよ! オレ達三人でチームなんだから!」
「そ、そうだよほらフォーメーション練習するよ!」
「そんな……二人の間に入るなんて私……」
「「いいから!!!」」
こうしてチームピスケスの練習。とりわけ連携の練習が特に重点置かれて行われるようになったのだった。
更に一週間後。
模型部部長室。
ユナとレイカによるチームピスケスの活動進捗などが話し合われていた。
「……メイちゃん、色々と悪化したわ……」
「……なにはともあれ、練習に熱心になることは良いことだ。もう県予選も近いからね」
県予選。
全国学生ガンプラバトル大会のものである。
「中学生の部は福女、今年は厳しいってさ。ユキノがぼやいてた。となるともう
全国学生ガンプラバトル大会では各校2チームまでエントリー可能となっている。
そのため星涼と福女で1位、2位を争うか星涼で1位、2位となるかをここ数年繰り返していた。
「いや、そうとも言えない」
「どういうこと?」
ユナが聞き返すとレイカがスマホの画面を見せ、動画を再生する。
ガンプラバトルの映像だ。
フィールドは都市。
青と白のカラーリングのウイングゼロが映し出される。
このウイングゼロと同じチームのザクIIとジムが相手チームのシャイニングガンダムの改造機を二方向から射撃で追い込んでいく。
シャイニングガンダムのファイターはそれなりの腕のようで二方向からの射撃にも動じず冷静に躱し続ける。
だが、シャイニングガンダムが光に飲まれる。
ウイングゼロのバスターライフルによるものだ。
ウイングゼロはこの間、相手チームの他二機を相手取っていた。その合間にシャイニングガンダムを撃墜していた。
その後、バトルは数の利を得たウイングゼロのチームが有利に進めていく。
ザクとジムがシャイニングガンダムに行ったのと同じように陸戦型ガンダムに攻撃を仕掛ける。
ウイングゼロはその間、デルタプラスを相手取り……再びバスターライフルで陸戦型ガンダムを仕留め、残ったデルタプラスもまた同じようにバスターライフルによって撃墜しバトルは終了。
「分かるかい?」
「ザクとジムが一機を集中攻撃。エースのウイングゼロがその間に他二機を足止めしつつ集中攻撃を受けてる機体の隙が出来たら仕留める。これの繰り返し。完全なエース一強型のチームね。ウイングゼロを倒せば途端に瓦解するわ」
「そうだね。だが、もっと深掘りするとだ。この動きはしっかり計算されている。仕留めるタイミングも隙が出来たらではなく、指定のポイントに追い込んだら、だ。シンプルだが、緻密だ」
「なるほどね。で、どこの県? 全国で当たる心配ならまだしなくても……」
「このチームは、岩山中だ」
岩山中。
毎年、県予選では下から数えた方が早い順位。
そんな学校のチームの動きだとは、ユナは信じられなかった。
「今年の県予選。心して挑まなければならないね……。その前に、部内での出場権獲得が優先かなピスケスは。まあ、実はもう出場権はあるようなものだけどね」
「……どういうこと?」
「実はね……」
レイカの言葉に、ユナは息を飲んだ。
ユナとレイカが部長室で話しているのと同じ頃、ピスケスの部室に一人の少年が訪れた。
ヒバリと同じぐらいの身長にきつめの眼鏡をかけ、いかにも自信ありますといった風貌の嫌味ったらしい少年である。
「ここがピスケスの部室かい? 汚いねぇ」
「なんだお前。いきなり来て本当のこと言うな! これでも掃除したんだぞ!」
「君は……オオノ・ケンユウだね。君には用はない。僕が用があるのはダイモン・ヒバリとマトバ・メイの二人さ」
いきなり名前を言われて首を傾げるヒバリとメイ。
お互い、この少年とは面識はなく、ガルマみたいな髪型だなぁと暢気に思っていた。
「とにかくお前は誰だよ? 一年生だろうけど……」
「失礼な! これでも二年生だぞ!」
「よし、身長同じだけどボクの方が若いぞ」
「そこ喜ぶところなんだ……」
「ごほん。僕はウツミ・テツト。チームアリエスの中等部チームのリーダーだ」
チームアリエス。
模型部のチーム内ランキング最上位のチーム。
アリエスの中等部チームのリーダーと聞いてケンユウ以外は驚いていた。
「その……アリエスのリーダーさんが私とヒバリちゃんに何の用ですか……?」
「単刀直入に言おう。ダイモン・ヒバリとマトバ・メイ。二人をスカウトしに来たんだ」
ニタニタとした笑みを浮かべるウツミ・テツト。
チームピスケスにとって、最初の試練が始まろうとしていた……。
ユナが言っていた「イチニ」とは!
イチニとは、ヒイロ×デュオのCPことである。
またひとつ賢くなったね!