ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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ピスケス好き?

 宇宙を駆ける金色の機影。  

 金色のガンプラの名は、シナンジュ・エスポワール。

 チームアリエスの中等部チーム。エースであるウツミのガンプラだ。

 デブリ帯の中を自由自在に駆け回り、デブリの影から現れた敵機。青いジンの改造機をライフルで仕留める。

 

「くそッ!!!」

 

 ジンのファイター。アリエスの中等部チームのメンバー、たしかゴトウと言ったか。

 三年生で、体格がよく、スポーツ刈り。

 タイプ的にはオオノより。

 直感的で、本能的。

 

 バトルは続く。

 狙撃。

 実弾が、シナンジュ・エスポワールを貫こうとする。

 だが、極最小の動きで弾丸を回避するとシナンジュ・エスポワールは敵機に向けて銃口を向ける。

 敵機は……白いティエレンだった。

 同じOOに登場する、ティエレン長距離射撃型が装備する長滑腔砲を改造したと思われるスナイパーライフルを構えている。

 狙撃手が敵に見つかっては。

 ましてや、機動性の高い相手に。

 

「くっ……!」

 

 白いティエレンのファイターは中等部2年の女子生徒。

 クリヤマとかそんな感じの名前だった気がする。

 シンプルな黒縁の眼鏡をかけていて、真面目そうな外見だし、バトルスタイルからもそれが伺える。

 シナンジュ・エスポワールと射撃戦を繰り広げる。

 ……なかなか、いい腕。

 

 しかし、シナンジュ・エスポワールの放ったビームが、ティエレンのライフルを撃ち抜いた。

 

 狙撃手が銃を失う。

 丸腰になったというわけではないが、同じことだろう。

 白いティエレンは腰部にマウントしていた滑腔砲を右腕部に装着し、シナンジュ・エスポワールを迎え撃とうとするが遅い。

 ライフルを捨てたシナンジュ・エスポワールはビームサーベルを抜きながら加速。

 一気に距離を詰め、黄色い光の刃が白いティエレンを貫いた。

 

 黒い宙に浮かぶ、金色。

 

 ガンダムUCに登場したシナンジュを金色にしただけのように見えるが、完成度の高さ、作り込みはこの強豪ひしめく星涼模型部の中でもトップクラスだ。

 バトルの腕もいい。

 無駄のない動き、機体性能を十二分に発揮している。

 

「オオノが勝てる相手じゃない……」

 

 あの馬鹿……。

 本当に、馬鹿。

 馬鹿過ぎる。

 

「ああ、ていうかボクも何してるんだ……」

 

 わざわざアリエスの部室に来て、見学なんて。

 これじゃウツミと決闘するオオノのために情報収集に来たみたいじゃないか。

 

「どうだい、僕の実力は」

 

 さっさと出ようとした瞬間、件の人に話しかけられてしまった。

 

「……強いです」

「それは、誰と比べて?」

「誰とって……。普通に、うちの部内で」

「なるほどね。で、君と僕がやったらどっちが勝つと思う? 今のバトルを見ながら、シミュレーションはしてただろ」

「それは……」 

 

 シミュレーションはしていた。

 あそこに、ボクとネオ・ペーネロペーがいたらと。

 結果は……。

 

「五分だね」

「……そうでしょうか。ボクの勝率は30%ぐらいかと」

「謙遜するなよ、五分だ。君と僕の実力は」

 

 見抜かれてる。

 そしてこの人はボクのことを理解している。

 ボクの実力を。

 

「だから君をスカウトしたんだ。僕と実力が同等の君を。まったく、シンヤ部長はなんで君をピスケスなんかに入れたんだろう」

「それは、テストでヘマしたから……」

「いいや、違うよ。最初から動きが違った。君が今年の新人の中でもトップクラスなのは理解していた。それに、しっかり成長してくれている」

 

 この人はボクの実力を理解し、評価してくれている。

 誰かから理解されるということは、嬉しいものだ。

 ただ。

 ウツミの後方、ゴトウ、クリヤマの先達両名の視線がさっきからずっと突き刺さる。

 あの二人はウツミの現状のチームメイトだ。

 

「マトバ・メイも期待出来る。いいファイターだよ。だから、ぜひ二人とも僕のチームメイトになってもらいたいな」

「……すいません。用事があるのでこれで」

 

 失礼しますと頭を下げて、そそくさとアリエスの部室を出た。

 正直、あの視線に耐えられなかった。

 それに、これ以上ウツミの言葉を聞いたらボクは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室の扉を開けた瞬間であった。

 

「よっしゃ! やるぜメイ!」

「ひゃっ!?」

 

 気合漲るケンユウくんが大声を上げて急接近。

 肩を掴まれ部室に連れ込まれるとバトルの筐体の前に立たされた。

 

「え、えーっと、ケンユウくん……?」

「特訓だよ特訓! 三日後決闘するんだからやらなきゃだろ!」

 

 ケンユウくんの三日後の決闘。

 アリエスの中等部チームのウツミさんと私とヒバリちゃんを賭けて決闘することになっていた。

 ……私はピスケスでいたいからケンユウくんに勝ってもらわないと困るな。

 というわけで特訓には付き合うよ!

 

「うん! 特訓手伝うよ!」

「さんきゅ!」

 

 特訓はとにかくバトル。

 バトルして、バトルして、バトルして……。

 

「あ、あのケンユウくん……。私、五連勝……」

「くっそぉ! もっかい! 特訓は始まったばっかだ!」

「そ、そうだね! がんばろ!」

 

 そうして、私の白星が増え続けていった。

 

「大丈夫かな……」

「あー! メイお前なんか強くなってないか!?」

「そ、そんなことないよ。むしろ……」

 

 ケンユウくんの動きが、なんだかいつもより悪い。

 機体制御も雑だし、攻撃も大振りでこっちとしては予想しやすく、回避しやすく、反撃しやすい。

 まるで、入部したばかりの頃みたいに。

 

「ああくそ! もっかいだ!」

 

 頭をかきむしり、自棄になってるケンユウくん。

 こんな状態でバトルしたって……。

 一旦休もうと声をかけよう。そう思った瞬間だった。

 

「なにしてるの」

 

 部室にヒバリちゃんがやってきた。

 ネオ・ペーネロペー達が入っている大きなエナメルバッグを机に置いて、改めてケンユウくんと向き合い返事を待っていた。

 

「なにって、特訓だよ特訓」

「特訓?」

 

 ケンユウくんの言葉を聞いたヒバリちゃんの眉間にシワがよった。

 どうしよう……。明らかに、機嫌が悪くなってる。

 

「特訓とか、バカなの」

「んだと……!」

「ケンユウくん落ち着いて! ヒバリちゃんも……。ケンユウくん勝とうと思って頑張って……」

「特訓なんて付け焼き刃だ」

  

 その言葉が、胸に突き刺さったようだった。

 

「決闘するから特訓とか、舞い上がってんじゃないよ」

「オレは舞い上がってなんか……!」

「相手は普段から特訓並の練習してんの。決闘やるからとか大会が近いからとかそんなん関係なしにね。そんな相手にそんなんで勝てるわけないでしょ」

 

 ヒバリちゃんはとにかく言うだけ言って部室から出ていった。

 ……何しに来たんだろう。

 

「……あ~っ!」

「わあっ!?」

 

 いきなりそんな声を上げて、ケンユウくんは自分のほっぺたをはたいた。

 バチンと、明らかに痛い音。

 

「ケ、ケンユウくん……?」

「あいつ……くそ、まともなこと言いやがる」

「まとも……?」

 

 ケンユウくんはガンダムエクスカリバーを手に取り、見つめる。

 真剣な眼差し。

 さっきまでとは全然違う雰囲気。

 浮わついたものが、地に足ついたよう。

 不安定なものが、落ち着いたみたい。

 

「真面目にやれ。あいつはそう言ってたんだ」

「ケンユウくんは一生懸命……」

「違う。闇雲に突っ走ってただけだ」

 

 けど、今は違う。

 そう言ったケンユウくんの目には、もう闇雲なんかではなく向かうべきひとつの目標が見えている。

 

「やるぞ、練習」

「うん。あ、でもちょっと待ってて」

「? どっか行くのか?」

「ちょっとだけ、すぐ戻るから!」

 

 それまで一人でやっててー!と少し急いで部室を出た。

 まだ遠くには行ってないはず。わっせ、わっせと小走り……に見えるかもしれないけど、頑張って走ってる。

 運動は苦手。

 だから、ちょっと走っただけで息が上がっちゃう。

 たまにガンプラが羨ましくなる。

 私は、あんな風には動けないから。

 

「はあ……はあ……! 見つけた……!」

 

 校門のところ。

 もう学校から出ようとしてる。

 頑張って、出来るだけ大きな声でヒバリちゃんの名前を呼ぶ。

 気付いてもらえない。

 二回目、もっと距離を詰めて。もっと声を張って、名前を呼ぶ。

 

「……? マトバさん……?」

 

 気付いてくれた。

 けど、幻聴?みたいな感じで首を傾げている。

 とにかく、ヒバリちゃんが立ち止まっている今がチャンス。

 

「あの……ちょっと……ひぃ……待って……」

「え、あ、うん……。とりあえず、深呼吸して息整えて」

 

 深呼吸。

 夕方の、少し肌寒くなってきた空気が肺に流れる。

 ……よし。

 

「何か用?」

「ええっと、用って言われると実はちょっと、まだしっかり考えてないっていうか……。とりあえず、お話したいなって。ほら、私達二人で話すってあんまりなかったし……」

 

 私はケンユウくんと一緒のことが多く、ヒバリちゃんはユナ先輩と一緒のことが多いと思う。

 だから、私とヒバリちゃんという組み合わせは珍しい。

 

「……すぐそこの公園」

「え?」

「立ち話って感じでもないでしょ。ベンチあるから、座ろ」

「そうだね。……もしかして、気を遣わせちゃったかな?」

 

 走ってヘトヘトだし。

 そこのところ考慮してくれたのかも。

 

「……エナメルバッグ。重いから」

 

 私から目線を外して言った。

 ヒバリちゃんが肩に提げる大きなエナメルバッグには、ネオ・ペーネロペーや他のガンプラ。ガンプラ製作の道具やちょっとした工具なんかが入っている。

 確かに、それを提げたまま立ち話は辛い。

 ただ、歩き出すヒバリちゃんの耳が夕焼けに照らされつつもほんのり赤いのを、私は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 学校からすぐ近くの公園。ベンチに、一人分の隙間を開けて座る。

 なんとなく、それが今のヒバリちゃんと私の距離感なのだと思った。

 

「……それで、なに話すか決まった?」

「えっ……。ああ、えっと……。まず、ケンユウくんは真面目に練習を始めたよ」 

「……そう」

「ヒバリちゃん、ケンユウくんを励ましてたんだね。効果覿面って感じだったよ」

 

 今のケンユウくんの様子を伝えると、ヒバリちゃんは別にそんなんじゃないと否定する。

 それはただ、ケンユウくんがそう解釈しただけだと。

 けど……。

 

「もしも私がケンユウくんの立場だったら多分、ヒバリちゃんは違う言い方してたよね」

「そりゃ……」

「うん。やっぱりヒバリちゃんは優しいね。ちゃんと相手に合わせてる」

「ち、違うから! ほんと、ただあいつが気に入らないだけだし……」

 

 ……ふへへ。

 ツンデレ、ありがとうございます……。

 じゃなくて!

 

「ヒバリちゃんは、ピスケス好き?」

「っ……」

「私はね、好きだよ。ヒバリちゃんとケンユウくんと一緒にバトルして、ユナ先輩からいろんなこと教えてもらって……。だから、ケンユウくんに勝ってもらわないと。……ヒバリちゃんは、どう?」

 

 ヒバリちゃんは、黙って地面を見つめていた。

 好きだって即答は、やっぱりしないよね。

 

「……ボクは、強くなれればどこだって……」

「そっか……。目標、あるもんね」

 

 部長を越えること。

 あの部長を越えるには、それなりではいけない。

 たくさんバトルして腕を上げて、ガンプラ製作の技術を上げて……。やることはたくさん。

 けど、多分。

 

「強くなるなら、場所も大事だと思うな」

「場所?」

「うん。環境っていうか……。私は、ピスケスだったから立てるようになったと思う。ピスケス以外だったら、多分今も変わらないままで……」

 

 だから、ピスケスが好き。

 今のピスケスとしてやっていきたい。

 ヒバリちゃんも、そうだったらいいな……。

 

「……帰る。ネオ・ペーネロペーの補修しないといけないから」

「……うん」

「……オオノのこと」

「え?」

「……なんでもない」

 

 ヒバリちゃんは何も言い残さずに帰っていった。

 先日、すごいファイターと戦い引き分けになったとか。

 それでネオ・ペーネロペーもそれなりのダメージを負ったみたい。

 早く補修してあげたいだろうから、呼び止めることはせずに背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 部室に戻ると、ガンダムエクスカリバーが剣を振っていた。

 素振り……。

 ただ、その素振りには目を見張るものがあった。

 何か、凄味というか、なんというか。

 

「ケンユウく……」

 

 話しかけようとして、やめた。

 ケンユウくんが、あまりにも集中していたから。

 

 

 

 

 

 

 

 毎日、剣を振れ。

 そうアドバイスされてから毎日、素振りをしてきた。

 最初はその言葉をただ信じて、剣を毎日振っていれば強くなれると思っていた。

 だけど、やればやるほど疑念が積もる。

 

 本当に、こんなことで強くなるのかと。

 

 ただ剣を振り続けて強くなれるなんて、やっぱりおかしいのではないかと。

 そう思い始めた時に、気が付いた。

 剣の振りにブレがあること。

 真っ直ぐ振り下ろしているつもりだったけれど、少し右にそれている。

 直そうと思い、振った。

 すると今度は真っ直ぐ振ることにばかり意識が行って、振りのスピードが落ちてしまった。

 これじゃ駄目だ。

 こんなノロマな剣じゃ避けられる。

 真っ直ぐ、速く。

 そう意識する。

 今度は、腕だけで剣を振っているような気がしてきた。

 試しに、今の振りでフィールドに転がっていた岩を斬ってみた。

 岩の半分ほどで、剣は止まった。

 次の課題は、パワー不足。

 ガンダムエクスカリバーの機体、全身を使って剣を振るう。

 

 今も、それを意識して振り続けている。

 

「……! ……!」

 

 違う、もっと踏み込め。

 イメージしろ、あの岩を真っ二つにするんだ。

 集中。

 目の前には、あの岩。

 これを、切り裂く────。

 

「こらぁ!!!!!」

「うわぁ!?!?」

 

 突然、耳元で大砲が撃たれたかのような衝撃。

 耳が……耳が……。

 

「な、なんだよ!? って、先生か……」

 

 ネズミみたいな中年の男、担任の根津先生がいた。

 ……なんで先生が?

 

「いつまでやっとるんだ! 部活動の時間はとっくに終わってるぞ!」

「えっ」

 

 部室の壁掛け時計を見ると時間は……8時!?

 いつの間にそんな時間が……。

 って、メイは?

 先輩も今日来てたっけ?

 

「あれ、これ……」

 

 ホワイトボードに貼り紙。

 

『すごい集中してて邪魔するのも悪いからメイちゃんと先帰るね! 水の星ではなくユナより愛をこめて』

 

「なんだろう。すっげーイラっときた」

「いいからとっとと帰れ! 施錠するんだから」

 

 さーせんと適当に謝って、帰り支度。

 筐体の電源を落として……。

 エクスカリバーも回収して、出る。

 

「先生さいならー!」

「寄り道するなよ! 家の人心配してるぞ!」

 

 言われて、肝が冷えた。

 やっべぇ、母ちゃんに叱られる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオ・ペーネロペーのダメージはそこまで酷いというわけではない。

 だが、それなりに無茶をさせたので関節が少し摩耗したようだ。

 福女戦とか、レイカさんとのバトルとかで蓄積もあるだろうけど。

 

「……ペーネロペー、買うか? けど高いんだよな……」

 

 パーツの予備としても使うだろうし買った方がいいのだけど、HGUCペーネロペーはちょっと中学生のボクが買おうと思うと清水の舞台から飛び降りるような勇気が必要というかなんというか。

 部費で落とせるか?

 明日、先輩に聞いてみよう。

 

『ヒバリちゃんは、ピスケス好き?』

 

 ふと、マトバさんの言葉が思い返された。

 好きか嫌いかはともかくとして、居心地は、まあ悪くない。

 それなりに楽しいってなる時もあったし……。

 けど、だからこそ。

 強くなるには、そんなところに浸かるのではなく、もっと厳しい環境に身を置くべきじゃないかとも思う。

 

「ヒバリ~? 入ってもいい~?」

「どうぞ~」

「手塞がってるから扉開けて~」

 

 作業の手を止め、席を立つ。

 扉を開けて、スズメ姉さんを出迎える。

 洗濯したものを持ってきてくれたようだ。

 礼を言って姉さんから受け取り、スズメ姉さんは部屋を出ると思った。

 だが、スズメ姉さんは暇なようで、話相手を求めてもいたみたい。

 ボクのベッドに腰掛け居座り始めた。

 まあ、会話は作業しながらでも出来るからよしとする。

 姉さんを背に、机の上のネオ・ペーネロペーと再び向き合う。

 

「学校はどう~?」

「別に、普通」

「お姉ちゃん、ヒバリの普通分かんないな~」

「……特に異常なし」

「あ、それは異常あるってことね」

 

 ボクの普通は分からない人がなんでこんなことは分かるんだ。

 

「大したことじゃない」

「大したことない話、聞きたいな~」

 

 話しても仕方ないことだって、言えたはずだった。

 なのに、口は何故かそうは動いてくれなかった。

 

「スズメ姉さんは、さ」

「うん~?」

「何かに上手くなるなら、やっぱり厳しいところの方がいいと思う?」

 

 スズメ姉さんの方を見ながら、訊ねていた。

 なんでだろう、心臓の鼓動が早い。

 

「う~ん、そうだな~。確かに、強豪校とかはそういうイメージあるよ。怒鳴られたりとかしながら、みんな必死になってやってる感じ」

 

 それは、ボクも同じイメージだ。

 例えば、甲子園に出るような野球部とかなんとなくそんな感じ。

 

「でも、好きで楽しいからのめり込んで強くなることも出来るんじゃないかな~」 

「え……」

「楽しい方が長続きもすると思うし、お姉ちゃん的にヒバリには楽しくやってほしいけどな~。特に、それはそういうものでしょ」

 

 机の上のネオ・ペーネロペーを指差し、スズメ姉さんは言った。

 楽しく……。

 

「……」

 

 なんとなく、感情というか、なんというかの行き場がないので机に向かいネオ・ペーネロペーの補修作業を再開する。

 ……。

 

「……集中しちゃった。……りんご、剥いてくるね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三日後。

 チームアリエスの部室にメイ、先輩と共に殴り込み。

 ……ダイモンのやつは来なかった。

 あらかた探してもみたけど見つからず。こんな時にどこ言ったんだよ……。

 ああもうともかく、あの調子乗り野郎の鼻っ柱をへし折ってやる!

 

「逃げずに来たこと、褒めてあげるよ」

「逃げるなんて男らしくないだろ」

「ふっ。男らしくない、ね……」

「なんだよ」

 

 憎たらしく笑うウツミに問いかけた。

 

「いや、ハンデをあげようと思ってね。君と僕とじゃ実力差がありすぎるから助っ人をありにしよう」

「はあ? そんなんいらねぇ! 全力でお前に勝つ!」

 

 たしかにオレはあいつより実力は下かもしれない。

 けど、負けられない時があるんだ。

 

「ケンユウくん……」

「メイ。助っ人とかいらねえからな!」

「……とにかく落ち着いて。ひとつひとつの動きを丁寧にね」

「先輩……。おう!」

 

 二人に見送られ筐体に向かう。

 この数日で実力が上がるなんてこと無いのは分かってる。

 それでも、気合なら負けてないはず。

 勝負は最後まで、分からないのだから。

 

「オオノ・ケンユウ! ガンダムエクスカリバーいくぜ!」

 

「ウツミ・テツト。シナンジュ・エスポワールで出る」

 

 フィールドは宇宙。

 石ころだらけで鬱陶しい。

 そんな空間を軽やかに飛び回る、金色。

 

「速い……!」

「君が遅いだけさ」

 

 石ころ……デブリだったか?を蹴り飛ばし、一気に距離を詰めてきて……!

 

「君の得意な距離で戦ってあげるよ」 

「余裕ぶりやがって!」

 

 シナンジュのビームサーベルが振り下ろされる。

 左のエクスカリバーで受け止め、右のエクスカリバーを右薙ぎに振るう。

 だが、シナンジュは分かっていたかのように後方へと飛び退き回避。そのままデブリの影へと消える。

 

「どこいった!?」

「ここだよ」

「ッ!?」

 

 左から、警報。

 咄嗟にシールドを構える。

 迸る光線。間一髪、防御が間に合うもシールドが破壊されてしまった。

 

「脆弱ッ!」

「チィッ!」

 

 立ち止まっていては駄目だ。

 とにかく、動き回るんだ。

 オレもあいつみたいにデブリを利用して……。

 これでもかくれんぼは得意だったんだ。

 やってやる!

 

「無駄なことを……」

 

 ここならば、見つからない。

 そう思っていた。

 だが、突然ガンダムエクスカリバーを隠していたデブリが爆発した。

 

「3発目で発見とは」

 

 あいつ、デブリを山勘で撃って見つけたのかよ!?

 くそ!

 さっさと動く!

 

「もう、終わりだよ」

 

 シナンジュが加速する。

 ガンダムエクスカリバーじゃすぐに追い付かれちまう!

 ビームサーベルがまた抜刀されて、やばい斬られ……。

 

「っ!」

 

 桃色のビームが、通りすぎていった。

 シナンジュの頭部に命中したけど……無傷!?

 

「耐ビームコーティング!?」

 

 そんな、メイの驚く声がした。

 そして、フィールドにはアサルトデュナメスがいて……。

 

「おいメイ! 助っ人なんていらねぇって……」

「ケンユウくんのバカ!」

 

 うっ。

 なんだろう、ダイモンに言われるのと違って、なんか、心にくる……。

 

「ケンユウくん負けちゃったら私とヒバリちゃん、アリエスに行っちゃうんだよ! 私、そんなの嫌だから! ピスケスが好きだから。だから、勝つの!」

「ふっ……。そうこなくっちゃ、面白くない!」

「メイ! そっち行った!」

 

 ウツミのシナンジュがオレには見向きもせず、真っ直ぐアサルトデュナメスへと向かっていく。

 あの野郎、オレなんかどうでもいいってのかよ……!

 こうなったら意地でも叩き斬ってやるとシナンジュを追いかける。

 だが、機動性の差はやっぱり大きい。

 どんどん離されていく。

 しかもこっちには射撃武器がない。

 シナンジュに近付かないと……!

 

「くっ……」

 

 アサルトデュナメスはスナイパーライフルからアサルトカービンに持ち変えて、ビームを連射しシナンジュを近付けさせまいとする。

 けど、あのシナンジュはダイモンのネオ・ペーネロペーぐらい速い。

 それにビームが効かない。

 ビームの雨をまったく気にせずシナンジュは加速する。

  

「実弾はGNミサイルだけだろう?」

「……そうです!」

 

 腰部のフロントアーマーと両膝のアーマーが開閉し、GNミサイルが放たれる。

 シナンジュは減速し方向転換、上へと飛ぶ。

 ミサイルはシナンジュを追跡する。だが、シナンジュは一発のビームだけでミサイルを全て撃ち落としてしまった。

 

「やばい……。メイ! そいつとは相性が悪い!」

「だからなに!!!」

「僕に負けるということさ」

 

 デブリを蹴り、アサルトデュナメスへと一直線。

 

「────」

 

 メイ!

 そう叫んでいた。

 アサルトデュナメスを、獲物を睨み付けるシナンジュのモノアイが、怪しく光る。

 駄目だ、もう間に合わな……。

 

「音……」

 

 何か、音を聞いた気がした。

 どこかで、聞き慣れた。

 大きな、白い鳥が飛ぶイメージが脳裏に浮かんだ。

 次の瞬間には、はっきりと音が聞こえるようになって……。

 高速で飛翔してきた白い巨体が、アサルトデュナメスとシナンジュの間に割って入った。

 

「なに!?」

 

 シナンジュを蹴り飛ばし、右腕の複合兵装ユニットからビームを放ち牽制した、それは……。

 

「ネオ・ペーネロペー……!」

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