ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS 作:大ちゃんネオ
遠くから、オオノの決闘の様子を眺めていた。
まあ、やっぱり、こうなるよなって感じ。
実力差がありすぎるんだ。勝てる相手なわけがない。
……マトバさんも参戦した。確かに、助っ人ありにしてやるって最初に行ってたけど、マトバさんが加わってもキツいだろう。
無駄なことを。
「……なあ、あいつが勝ったら俺達……」
「チーム降ろされちゃうんだよね……」
ふと、そんな会話が聞こえてきた。
ウツミのチームメイト二人が思いの外、自分のすぐ近くにいてバトルを見つめていた。
チームの仲間のバトルを見る目じゃない。
それもそうか、今の彼等の会話を聞いていたじゃないか。この人達はもうじき、チームから外される。
仕方のないことだ、競争の世界なのだから。
上手い人が上に行く。上手い人はたくさん練習して、努力している。その努力が報われる。
ただ、それだけの話。
ボクだって、マトバさんだって、結構頑張ってきた方だと思う。格上相手によく戦ったし、練習量だって部内トップクラスだと胸を張って言える。
だから、上に上がっていける。
「ケンユウくん負けちゃったら私とヒバリちゃん、アリエスに行っちゃうんだよ! 私、そんなの嫌だから! ピスケスが好きだから。だから、勝つの!」
ピスケスが、好きだから。
マトバさん、あんなに堂々と言えるなんて。
強くなれば、上に行ける。
それは一人でか?
一人でだっていいだろう。さっきも言ったけど、これは競争なのだから。
ボクには目標がある。レイカさんを越えること。この目標を実現させるには……アリエスでなければならないだろうか。
分からない。
ただ、今はこの衝動を抑え込むことが出来ない。
妙に清々しい気分で、自然と口許が笑っていることを自覚すると勝手に口が動いていた。
「ほんと、バカ」
走り出す、その小さな背中を見つめていた。
今回の件は先輩としてあまり口を挟まないようにしていたけれど、ちゃんと皆がそれぞれ選んで答えに向かっていったのを先輩は嬉しく思います。
「とはいえ、相手は中等部最強。勝てるとは限らない……」
いや、信じよう。
あの子達は普段はバラバラかもしれないけど、こういう時は強いんだから。
「ネオ・ペーネロペー……!」
銃口をシナンジュ・エスポワールへと向ける白き怪鳥、ネオペーネロペー。
まさかの登場にウツミは嬉しげに口角を上げ、ケンユウとメイは言葉を失っていた。
「ヒバリちゃん!」
「お前、なんで!」
ヒバリのもとに、二人から同時に通信が入る。ヒバリはここ数日の言動もあり、二人から目を逸らすもすぐにいつものように振る舞ってみせた。
「別にチームのためとかじゃないから。……あの人と戦いたくなっただけだし」
「なら引っ込んでろ。いまアイツと戦ってんのはオレだ!」
「マトバさんが来なきゃやられてたくせに」
「んだとぉ!?」
「ヒバリちゃん! ケンユウくんも! こんな時に喧嘩しないの!」
二人を窘めるメイであったが、すぐに破顔した。
楽しげに笑うメイを見て困惑する男二人。どうしたものかと口喧嘩は止まっていた。
「えへへ、いつものピスケスって感じ」
「別に、そんなんじゃないし」
「ああもうなんでもいい! アイツに勝つ! それだけだ!」
三人の視線が黄金のシナンジュへと向く。
その目に迷いはない。
「終わったかな。話も、敗北の用意も」
デブリの上に立っていたシナンジュ・エスポワールが、地面を蹴って宙へと浮かぶ。
「ああ、待たせたな! あと、オレ達は負けない!」
「私達は自分にも!」
「誰にも負けない……!」
三人が紡いだ言葉が合図となって四つの機影が迸る。
黄金の軌跡を描くシナンジュ・エスポワールが加速。その眼前にガンダムエクスカリバーが立ち塞がり、エクスカリバーを構えていた。
「来いッ!」
「ご丁寧に待ってくれる!」
すれ違い様に斬り捨ててやると、シナンジュ・エスポワールはビームサーベルを抜刀。ガンダムエクスカリバーはエクスカリバーを振り上げたまま、なお動かない。
そして、いざ剣戟が始まるという距離になってガンダムエクスカリバーの頭上を越えて、巨大怪鳥が現れる。
「チッ!」
シナンジュ・エスポワールは急制動。盾を構えて防御の姿勢を取りながら、一度距離を取ろうと脚部のスラスターを巧みに操り、ネオ・ペーネロペーの両腕に備わる複合兵装からのビームと頭部バルカンの一斉射を防御、回避していく。
「撃つよ……!」
そこへ更にガンダムアサルトデュナメスがGNアサルトカービンによる援護を開始。
ビームの雨嵐が黄金の盾に打ち付けられていく。
「耐ビームコーティングがあっても、これだけ撃たれれば……!」
「チィ……!」
シナンジュ・エスポワールは防戦一方だ。
しかし、それだけで有利になったわけではない。防御に徹しながら回避コースを正確に計算していたウツミはデブリの影にシナンジュを隠しビームの雨をやり過ごして、一気に加速。
「はやっ!?」
「ボクが追撃する」
ネオ・ペーネロペーはフライト・フォームへと変形し敵機を追う。その加速を見てケンユウは再び「はやっ!?」と驚くのであった。
「流石の機動性だよ。それに、その図体でこのアステロイドベルトをこうも飛び交うなんて」
「これぐらいで褒められても!」
デブリを蹴り、推進力を得ているシナンジュ・エスポワールを追うネオ・ペーネロペー。アステロイドベルトという小惑星、デブリが入り乱れるこの場所で高機動戦闘を行うのは難易度が高い。
障害だらけの場所でスピードを出し過ぎてしまうとどうなるか。
言うまでもない。
ヒバリは特に入部の際のテストで外的要因とはいえ、デブリに衝突するという事故を起こしてしまっている。しかし、今はあの時以上に集中している────。
(軌道予測計算……。攻撃を仕掛けてくるならライフルか。マトバさんの位置は、よし。)
「撃つ……」
フライトユニット肩部のメガ粒子砲が光を放つ。二条の光流が黄金の機影を貫こうと迫る。
だが、ウツミはそう容易く命中させてくれるほど優しい相手ではない。
ビームの上方、ギリギリを回避してシナンジュ・エスポワールは脚部スラスターを巧みに操り方向転換。ネオ・ペーネロペーの方を向くと、ビームライフルをその白い巨躯に向けた。
「いただく!」
放たれようとする黄金色のビーム。そこへ、桃色の粒子ビームが横殴りの雨のように襲いかかった。シナンジュ・エスポワールのライフルは被弾。射撃寸前でのことだったので暴発の危険性は極めて高く、咄嗟にライフルを投げ捨てた。
この時、ネオ・ペーネロペーの方へ向けて捨てたのでライフルの爆発が良い隠れ蓑となってウツミは追撃を免れた。
「どこに……」
シナンジュ・エスポワールを見失い、索敵するヒバリ。デブリ帯という視界不良、隠れ場所も多い。ましてや宇宙という上下も関係ない世界。
四方八方を警戒する必要がある。
そうして、アラートが鳴り響く。
「上か……!」
上下のない世界といったが、結局は頭の方が上となる。
頭上を向くように姿勢を変えて、両腕のウェポンユニットの銃口を襲い来るであろうシナンジュ・エスポワールへと向けた。
しかし。
「実弾……!? ジン!?」
畳み掛けるように実弾がネオ・ペーネロペーに襲いかかる。
ザフト軍の量産型MSジンの改造機。
暗い青という色は宇宙では視認性が悪い。スラスターと脚部はオリジナルのものを自作したようで、ビルダーとしてのスキルが伺える。
さしずめ、ジン・ハイマニューバへと至る過渡期にあった機体のよう。
名を、高機動型ジン。
76mm重突撃機銃を撃ちながら、ネオ・ペーネロペーへと接近していく。
「後ろを取られた。想像より速いな……」
予期せぬ乱入者であったが、すぐにヒバリは思考を切り換えて高機動型ジンを振り切ることに集中する。
「ヒバリちゃん! 援護しなきゃ……きゃっ!?」
メイは高機動型ジンを狙撃しようとデブリの影からアサルトデュナメスを出した瞬間、頭部側面を横切る弾丸。
咄嗟にメイはアサルトデュナメスを再びデブリの影へと戻し、射線を切った。
狙撃手だからこそ、狙撃された際の対応は的確であった。
「撃ち出しが早い……。おかげで精度が下がったみたいだけど……」
デブリを利用して射線を切りながら位置を変えるアサルトデュナメス。場所を変えながら、自身を狙撃した敵機を確認。
白いティエレン。
ティエレン・パイ・ムー。
携行している武器は、ティエレン長距離射撃型の滑腔砲を改造した狙撃銃。
頭部も狙撃のためセンサー能力を強化するために手が加えられており、光るモノアイが通常のティエレンよりも大きいようだ。
「なんなんだよこいつら!」
「中等部アリエス……!」
「まさか、中等部アリエスまでチームで揃うなんて」
観戦していたユナに不安が生じた。
3対1ならば、勝機はあったが同条件である3対3ともなれば話は別だ。
ヒバリとメイならば、実力からいってそう悪くない。1対1ならば勝利の可能性もあり得る、いい試合をするだろう。
しかし、ケンユウはそうはいかない。光るものはあるが、まだそこ止まり。
3対3であれば、中等部アリエスの方が総合力で上回るのだ。
「余計なことを……。分かってるのかい? この戦いの条件を」
ウツミが、バトルに乱入したチームメイト二人、ゴトウとクリヤマにそう通信を飛ばした。
ウツミが勝てば、ヒバリとメイを引き抜くという条件。
ゴトウとクリヤマはチームメンバーからは外される。
だというのに、何故自分に利するようなことをするのかと問いた。
「別にお前に勝ってもらいたいんじゃねえよ。天下のアリエスがピスケスなんざにやられたなんて、恥もいいとこだろうが」
「チームの相手は……チームで、でしょ」
「ふん……勝手にしたまえよ」
高機動型ジンがネオ・ペーネロペーを追撃。それを、追い込みにしたのはウツミの判断。
デブリ帯を迂回し、ネオ・ペーネロペーの到達ポイントを予想し、正面へと躍り出た。
「挟まれた!?」
「いただく」
黄金のビームサーベルを抜刀したシナンジュ・エスポワールのスラスターが青い火を灯し、加速。
前後挟み撃ち。左右はデブリに囲まれている、この状況から脱け出すにしても、被弾は確実か。
ダメージを最小限にするためのコースを導きだし、回避行動に入るヒバリ、であったが。
「うおおおおッ!!!!」
「チッ……」
シナンジュ・エスポワールへと斬りかかるガンダムエクスカリバー。ビームサーベルと対艦刀エクスカリバーが斬り結ぶ。
「これなら……!」
ヒバリは当初の回避という選択を迎撃へと切り換える。高機動型ジンへとビームを撃って、ウェポンユニットを反転。ビームサーベルを発生させ、高機動型ジンへと向かっていく。
「チッ……!」
高機動型ジンは重斬刀を抜いて、ネオ・ペーネロペーのビームサーベルと打ち合い、鍔迫り合う。が、それも一瞬。ガンプラのパワーに差があった。
「デカブツがッ!」
後方へと勢い良く弾き飛ばされる高機動型ジンに向けて、ネオ・ペーネロペーはマイクロミサイルを発射。
スラスターを噴かし、体勢を立て直して回避しようとする高機動型ジンであったが、ここはアステロイドベルト。無数に浮かぶ小惑星の一つに背をぶつけた高機動型ジンは体勢を立て直すことも出来ず、マイクロミサイルの雨に撃たれ爆発。
「くそぉ!!!」
ゴトウの叫びに背を向けて、ネオ・ペーネロペーは宇宙を翔ける。
ガンダムエクスカリバーとシナンジュ・エスポワールのもとへ。
(存外、もってるな……)
ヒバリはケンユウの戦いぶりを見て感心していた。
中学トップレベルのファイターであるウツミとそれなりに剣を打ち合っている。
「うおおお!!!!」
「ふぅん?」
ウツミの方はまだ余力がある様子。
ケンユウに付き合ってあげているといった風ではあるが。
シナンジュ・エスポワールの黄金のビームサーベルが巧みにエクスカリバーを受け流し、ガンダムエクスカリバーの胸部へその切先を向ける。
鋭い刺突が繰り出されようとした瞬間、ネオ・ペーネロペーが放ったビームがシナンジュ・エスポワールのビームサーベルの刃に直撃。一瞬だが、刃を失くしたビームサーベルに好機を見たケンユウはガンダムエクスカリバーを突進させて間合を詰めた。
「チッ……泥仕合がお望みかい」
「なんでもいいから勝ってやる! うおおお!!!!」
シナンジュ・エスポワールとガンダムエクスカリバーが取っ組み合うが、推力ではシナンジュに軍配が上がりガンダムエクスカリバーは押し返されていく。
「上なんだよ。バトルの腕もガンプラの出来も。僕の方が!」
「だったらなんだよ!」
「棒切れを振り回すだけしか能のない奴が!」
「うわぁ!」
巧みなスラスター操作で素早くガンダムエクスカリバーを蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた衝撃で、ガンダムエクスカリバーは小惑星にぶつかりエクスカリバーを手放してしまう。
そんな隙だらけのガンダムエクスカリバーへとシナンジュが再びビームサーベルの切先を向ける。
「いい加減、堕ちろ!」
「させない!」
メガ粒子のビームがシナンジュの頭上から降り注ぐ。
舞い踊るように回避し、ビームサーベルで斬りかかるネオ・ペーネロペーとシナンジュが斬り結ぶ。
「ゴトウをもう墜としたか。ますます君を僕のチームに入れたくなった!」
「チッ!」
シナンジュはデブリを利用して身を隠し、突撃という奇襲戦法を繰り出す。
苦戦するネオ・ペーネロペーだが、更なるアクシデントがネオ・ペーネロペーに降りかかった。
「……この感じ」
操縦桿を操るヒバリはその微細な感覚に気が付いた。
幾多の斬撃を受け止めたネオ・ペーネロペーの右肘が限界を迎えようとしていることに。
先日のイツキ・リナ、ウイングガンダムゼロオーバーとの戦いで損傷し、形だけのオーバーホールしかしていないネオ・ペーネロペーはこれだけのバトルをこなせるまでには至っていない。
ヒバリは相手に悟らせないようにとしたが、経験値ではウツミが圧倒的に優っていた。
目敏く右腕の不調を見つけると、ウツミは目を細めて笑う。
「そんななっていないガンプラで戦おうなんて、ナンセンスだ!」
「っ!」
ビームサーベルで斬り上げるシナンジュに右手ではなく、左手のサーベルで受け止めようとしたヒバリ。
だが、左手は弾かれて隙だらけ。そこへビームサーベルが迫る。
咄嗟の判断でネオ・ペーネロペーは右手のビームサーベルで受け止めるも、いよいよ耐え切れずに右肘が折れて爆発。
爆煙に包まれ、両機は飛び出る。
右腕を失ったネオ・ペーネロペーは加速しシナンジュから距離を取ることを選択するも、万全ではなくダメージも負ったネオ・ペーネロペーの機動力は目に見えて落ちていた。
ヒバリを覆うコックピットを形成するホログラムも正常時の青からイエローへと変化してダメージを伝えている。
「くっ!」
「終わりだ! 君を倒して、マトバ・メイも墜とせば勝ったも同然!」
ウツミが叫ぶと同時に、ネオ・ペーネロペーの前方で爆発。
ガンプラが墜とされたほどの爆発ではないが、爆煙からはアサルトデュナメスが落下するように現れて、小惑星へと着地。
主武装たるライフルを失い、狙撃手としては最悪の状況にあった。
「マトバさん!」
「ごめんね……。こんなでも私、チームアリエスの一員ってプライドがあるから!」
ティエレン・パイ・ムーを駆るクリヤマが悲鳴にも似た叫びを上げた。
おとなしそうな彼女がそんな声を発したことに、周囲は静まりかえる。
「私も頑張ってここまで来たの! だからぁ!!!」
無骨で長大なライフルの銃口がアサルトデュナメスへと向けられる。
コックピットでは照準が今にも合おうとしていた。だが、クリヤマの昂った感情にあてられてか、マーカーはなかなか一致しない。
呼吸は荒く、この瞬間がクリヤマには永遠のように感じられた。
「マトバさん……!」
ネオ・ペーネロペーで救援に向かおうとするヒバリだが、シナンジュがそれを許さない。
今、他に気を回せば墜とされてしまうという確信があった。
そんな中で、アサルトデュナメスは傷だらけの身体で立ち上がっていた。
「わたしにも……」
「えっ……」
「わたしにもチームピスケスってプライドがあるから!」
身体は傷だらけでも、心は燃えている。
力強い瞳でメイは前を向き、アサルトデュナメスの瞳もまた輝く。
それと同時にクリヤマの照準が合うと同時に引鉄が反射的に引かれる。
重い銃声。
それを裂くように、メイは叫んだ。
「トランザム!」
着弾と同時に煙が舞う。
爆煙ではない。小惑星が砕けたのだ。
赤い閃光がティエレン目掛けて翔けていく。
「なっ!?」
ティエレンはライフルをアサルトデュナメスへと向けるがトランザムの機動力には追いつけず、狙いがつけられない。
「そんな傷だらけの機体でトランザムなんて!」
「お願い、もって!」
機銃でアサルトデュナメスを牽制するティエレン。当たれば今の状態ならそれなりのダメージに繋がるという期待もあった。
弾丸のひとつが、GNビームピストルに命中し爆発。
これで武装は潰せたとクリヤマは安堵する。
それでもなおアサルトデュナメスは、マトバ・メイは止まらない。
「はあぁぁぁ!!!」
「っ! しつこい!」
間合いは完全に白兵戦の距離。
ティエレンはライフルでアサルトデュナメスを突き飛ばそうとするが回避され、逆にライフルを蹴り飛ばされてしまう。
だがクリヤマとて中等部トップクラスの実力者。すぐに腰にマウントしていたカーボンブレイドを装備させてアサルトデュナメスへと斬りかかる。
アサルトデュナメスもまた滅多に使わないビームサーベルを抜き放ち、鋒を向けた。
カーボンブレイドがアサルトデュナメスの左肩から袈裟にめり込む。
ビームサーベルがティエレンの胸部中央を少し左に逸れて突き刺さる。
「っ! まだぁ!」
ティエレンがカーボンブレイドを更に押し込もうとする。
それよりも早く、アサルトデュナメスはビームサーベルを手放し後退と同時に腰部フロントアーマーに装備されているGNミサイルを発射。
「あ……」
全弾、至近距離で叩き込まれたティエレンは爆発。
アサルトデュナメスもまた爆発の衝撃に押されて小惑星に叩きつけられたことがトドメとなってダウン。
ダウンするも、メイは赤く染まったコクピットの中で力強く言い放った。
「……わたしの、勝ち!」
その決着に会場が沸くと同時にヒバリもまた闘志が滾る。
あんな戦いを見せられて弱気になんてなってはいられない。
逃走していたネオ・ペーネロペーを反転させてシナンジュへと向けてビームとミサイルを放つ。
「まだ勝つ気でいるのかい?」
「当たり前だ!」
ビームとミサイルを回避したシナンジュがビームサーベルを振りかざす。
その瞬間、ネオ・ペーネロペーは前へと出た。
ビームサーベルを放ち、シナンジュのビームサーベルを切り裂いてみせた。
「なに!?」
即座にビームサーベルを投げ捨てたシナンジュへとネオ・ペーネロペーは追撃をかける。だが、左腕もまた限界を迎えていた。
振り上げた衝撃でネオ・ペーネロペーは左腕すらも失ってしまう。
「勝ちを急いだね!」
シナンジュは二本目のビームサーベルを抜いてネオ・ペーネロペーへとトドメを刺そうと迫る。
窮地だが、ヒバリはウツミに言い返した。
「いいや! ずっと待っていたんだ!」
「なに?」
ヒバリの言葉に、ウツミは嫌な感覚に襲われる。
畳み掛けるようにヒバリは言葉を続けた。
「この瞬間を待っていたんだ。ボク達が勝つ瞬間を!」
「おかしなことを言う……勝つのは僕だ」
「たしかにあなたはボクには勝った。けど、今日あなたが勝つべき相手はボクじゃない」
「なに? ……まさか」
その瞬間、アラートが鳴る。
シナンジュが振り向くと、後方から彗星のように迫るガンダムエクスカリバーの姿。
「やぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「馬鹿みたいな突進など!」
フォースシルエットの推力でスピードは充分。だが、ウツミは冷静に回避するつもりであった。
それをヒバリが阻止する。
フライトユニットをパージし、ネオ・オデュッセウスガンダムが半壊した右腕でシナンジュを羽交締め。
「なに!?」
「今日あなたが勝つべき相手を忘れた! それがあなたの敗因だウツミ・テツト!」
「ぐっ……」
「チームピスケスは、マトバさんが撃って、ボクが飛んで、そして……!」
「オレが斬るんだぁぁぁ!!!」
「こんな! こんな!」
操縦桿を乱暴にとにかく動かすウツミ。半壊した右腕だが、シナンジュとネオ・オデュッセウスガンダムとでは体格差があり簡単には振り解けない。
もがいている間にもガンダムエクスカリバーは迫り、聖剣が黄金のシナンジュを一刀両断。
唖然とするウツミをよそにシナンジュが爆発。
アナウンスがバトルの終了と勝者を静かに告げる。
その結果に、観戦者達は夢を見ているのではと思っていた。
最下位チームのピスケスが、最上位チームのアリエスに勝利してみせたのだから。
そんな静寂の中でホログラムが投影を終了し、ピスケスの三人はそれぞれ顔を見合わせるとヒバリが口火を切る。
「……遅いんだけど」
「しょうがねぇじゃん。エクスカリバー、どっかいっちまってずっと探してたんだから」
「まあまあ。そのおかげで作戦成功したところあるし」
作戦。
なんてことはない。チームピスケスの基本戦術。
アサルトデュナメスが狙撃で援護し、ネオ・ペーネロペーが先陣を切り敵を撹乱。そしてガンダムエクスカリバーが各個撃破。
「メイもすごかったぜ!」
「うん。なんか、根性って感じだった」
「そ、そうかな……えへへ」
照れ笑いを浮かべるメイに釣られてヒバリとケンユウもまた笑顔となる。
一方、アリエスの面々は。
「負けた……」
項垂れるウツミのもとにゴトウとクリヤマが歩み寄っていた。
「ウツミ……」
「……なんだい、笑いに来たのかい」
「ウツミ君。ごめんなさい」
ウツミの予想に反して、クリヤマは頭を下げた。
そのことに驚いて、ウツミはすぐに言葉を発せなかった。
「負けちゃったのは私達が弱かったから……。アリエスなのに……」
「……そもそも、俺とクリヤマが弱いって思ったからあいつら引っ張ろうとしたんだろ。正直すげぇ腹立つし、納得いかねぇけど、納得した。お前と比べたら、俺達全然だって」
「これからもっと頑張って強くなるから。だから、まだチームでいてくれる?」
二人の言葉はどれもウツミが想像していなかったものばかりで、ウツミは返す言葉もなく、力の抜けた身体を筐体へと預けると顔を右手で隠して誰に向けるでもなく呟くのだった。
「ほんと、バカ」
夕陽が沈みかけた頃、ピスケスの部室を三人で出る。
結果として、ボクとマトバさんのアリエスに引き抜かれる話は無くなったが、他の人達からは本当にアリエス行かないの?とたくさん聞かれたが。
そんなこんなで色々とありなんというか、ボクも含めてみんな疲れているのだ。それほどの激闘をギリギリで勝ったからこその疲労感に襲われている。
そうして校門を出たあたりで、オオノが言葉を発した。
「なあ」
「どうしたの?」
「オレ達、勝ったんだよな」
時間が少し経ってからか、どうにもオオノはあのバトルに勝利したことに実感を持てないでいるらしい。
夢を見ていたように感じているのかもしれない。
「うん。勝ったんだよわたし達。アリエスに」
「そっか、勝ったんだな」
「うん!」
激しい喜びもないけれど、それがまた良いような気もする。
そんなに喜ぶほどの勝ち方をしていないのも事実だからだ。
100回戦ったら99回負けるような戦いだし、最初はオオノとウツミの対決からチーム戦になってしまったというのもある。
しっかりと戦っていたら勝てていたかどうかは分からない。
「ヒバリちゃんも来てくれたから勝ったんだよ」
突然、マトバさんがそんなことを言い出したのでボクは困った。
そういうことを言うと、オオノが突っかかってくるからだ。
「……まあ、ダイモンが来なかったら二人してやられてたろうしな。あんがと」
まさか、まさかオオノがそんなことを言うとは思わなかった。
なんというか、本物のオオノか疑わしく思ってしまう。
「あ、そうだ。ヒバリちゃん」
「なに」
「なんで助けに来てくれたの?」
嫌な質問をマトバさんはしてくる。
それに、マトバさんは意識して聞いてきている。
いつもの笑顔の中に悪戯心が隠し切れていない。
「……ネオ・ペーネロペーの補修用にパーツが欲しかったから」
「えー? ヒバリちゃん、嘘はダメだよ」
「嘘じゃない」
「嘘なのか?」
「嘘じゃないってば」
「素直になってよヒバリちゃん! デレて! わたしはちゃんと言ったよ!」
「あーもう! 帰る!」
幸い、方向が違うので追われはしなかった。
あれ以上追及されてなるものか。
逃げるように盛岡の街を走っていくけど、この身体に灯った熱からはしばらく逃げられそうにはなかった。