ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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バトローグ、それは奇跡の共演的なやつである。
BFとかでガンダムキャラのそっくりさんがいたような感じで自分の他の作品のキャラ達がAMBITIOUSの世界にいたらというテーマで書きます。
第一弾は好評連載中の仮面ライダーツルギより登場。


AMBITIOUS WORLD-BATTLOGUE
BATTLOGUEー1 剣、弓、鏡


 ヒバリ達が運命の出会いを果たしたのと同じ頃、隣県のとある街。

 その街にある聖山高校には3人だけの模型部が存在していた。

 そんな模型部の面々はいま、東北ガンプラバトルアリーナに来ていた。

 東北地方最大のガンプラバトルの施設。

 学校にガンプラバトルの筐体がないため、彼らはここで活動しているのだ。

 

「はぁー。リン君が入部したから私も入りましたけどぉ~。まさか先輩が恋敵とは。アリス、最悪ですよミレイ先輩」

 

 長い黒髪を弄りながら挑発的な笑みを浮かべる少女はミヤハラ・アリス。

 施設内の休憩スペースで斜め正面に座り、文庫本を読む少女に挑発を投げ掛ける。

 

「そう。ちなみに私はもっと可愛げのある後輩が欲しかったわ」

 

 文庫本から一切目を離さずにそう言い返したのはサキシマ・ミレイ。

 二年生ながらに聖山高校模型部の部長を務め、学内でも有名なクールビューティー。

 切り揃えたストレートボブという髪型のおかげか大人びて見える。

 

「それなら叶ってますよ。だって、私美少女ですから! 可愛い後輩ですよ~♪」

「自分で言うようなのは数に含まないわ」

 

 ああ言えばこう言う二人の舌戦は終わる気配がない。

 どちらかが倒れるまで続くのだ、この戦いは。

 この間なんかはガンプラバトルで決着をつけようと本気でバトルをしたが途中乱入してきたトールギスを邪魔するなと見るも無残な姿に変えてしまった二人の争いに関わるべきではない。

 しかし唯一この戦いを終わらせることの出来る存在がいる。

 

「お疲れさまです! すいません遅れました……」

 

 二人のもとへ慌ててやって来た少年。

 彼の名はミツルギ・リン。

 あどけない少年らしさを残した顔立ちは、まだ中学生に見られることの方が多い。

 

「リン君! 会いたかった!!! ……あれ?」

 

 リンの姿を捉えたアリスは目にも止まらぬスピードでリンにダイブしていく。

 しかしアリスの両腕が抱き締めたのは空。

 リンは身を屈めてアリスを回避すると同時に席に着いた。

 ちょうど、ミレイの真正面。

 

「遅かったわね」

「学校出る時に図書委員の人から本で読んだことを試したいので手伝ってくれって頼まれまして……」

「大体見当がついた。あとで私から注意しておくわ」

「友達なんですか?」

「ええ」

「流石ミレイ先輩顔が広いですね!」

「顔が……」

 

 自分の顔をぺたぺたと触るミレイ。

 表情には出ていないが、内心ひどい危機感に襲われていた。

 

「あの、リン君の前でだけIQ下がるのやめてもらっていいですか。そういう意味じゃないですから」

「……おほん。ともかく、三人揃ったことだし始めましょう」

 

 はーいと返事するリンとアリスの一年生二人。

 空を抱き締めていたアリスも席についてまずはミーティングを始める……ところだった。

 

「ねえねえそこの君達暇ー?」

「俺達と遊ぼ~よ~」

 

 いきなり声をかけてきた男二人組。

 まず第一印象は二人とも、チャラい。

 

「うーわ。私が美少女なせいで変な虫が寄ってたかって来ちゃいました~。けどアリスぅ、お兄さん達みたいな脳味噌すっかすかな顔は好みじゃないんです。他を当たってくださいな」

 

 アリスの毒舌が男達に炸裂する。

 臆することも、オブラートに包むこともしないアリスの言葉を聞いてリンとミレイは内心頭を抱えた。  

 こんなことを言われた男達が次にどうなるのか目に見えて分かるからだ。

 

「んだとてめぇ!」

 

 激昂する男達。

 ミレイは面倒なことになったとため息をついた。

 

「きゃー怖い。すーぐ怒鳴り散らして、そうすればなんとでもなると思ってません? だから脳味噌すかすかに見えるんですよ」

 

 挑発を重ねるアリスは更に畳み掛ける。

 隣に座るリンの腕に抱きついて男を、そしてついでにミレイを嘲笑う。

 

「ちなみに私はリン君みたいな可愛いけど芯のしっかりした、筋の通った強い男の子が好きなんです。ラブラブなんです私達」

「えっ。ちょっ!?」

「アリス……!」

 

 自身の胸をリンに押し付けて憚らぬアリスの挑発の目標は男達からミレイに移り変わっていた。

 最早、男達など眼中にはなく先程の続きをしようと勝負を仕掛けたのだ。

 

「あらどうしたんですかミレイ先輩? 怖い顔が更に怖~い顔になってますよ~?」

「そういう貴女こそいつもの女狐っぷりに拍車がかかって本性現れてるわよ。リンがエキノコックスに罹ったらどうするの」

「私を病気持ちみたいに言わないでくれます? 私は清・純・派! なんですぅ!」

 

 睨み合う二人。

 見えないが絶対に二人の間には火花が飛び散っているだろう。

 

「最早言葉なんて不要です。ガンプラバトルで決着をつけましょう!」

「ええ、望むところよ。今日こそ決着をつける」

 

 そして二人は隣のバトルスペースの方へと、他の客達が避けるほどの威圧感を放ちながら向かった。

 もうすぐ、恐ろしい女の戦いが始まる。

 

「もうああなったら止まらないからなぁ……」

 

 今日は3人の連携を練習するという話だったのにと一人取り残されたリン。

 そんなリンを見たチャラ男二人組は顔を見合わせると悪い笑みを浮かべた。

 

「あー君も大変だなぁ。苦労してるでしょ」

「あはは……。いつもあんななので……」

「いつもあれかぁ。あ、そうだ。君、ガンプラバトルしに来たんだろ? あの二人は二人で始めたしよかったら俺達とバトルしようぜ」

「え、いいんですか! お願いします!」

「それじゃあ行こうぜ」

「はい!」 

 

 意気揚々とした足取りでバトルスペースへ向かうリンを見るチャラ男二人組はまた悪い笑みをする。

 彼等の狙いは、リンに移り変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 へへ、罠にかかった……。

 口には出さないが、舌舐りはする。

 標的はあのガキだと。

 大して強そうではない。

 

「トールギス・ツルギ、ミツルギ・リン! いきます!」 

 

 フィールドである森林地帯に真っ白い機体が現れる。

 トールギスⅢを改造したもののようで、名前通り剣が装備されている。

 メガキャノンの代わりに両刃の大剣、左腰には刀を差している。

 目に見えて分かるのはそれだけだが白兵戦に持ち込まれたら不利ということは分かる。

 そんな弱点だらけで対策法が確立しているような機体に俺のグフイグナイテッドが負ける道理はない。

 そしてこいつを負かしたら……あのトールギスはいただいてあの方に献上する。

 なかなかの美品だしあの方も気に入るだろう。

 傷付けないように注意しろと待機している仲間に目線を送る。

 負ける気なんてないが、万が一のために仲間が乱入出来るようにしてある。

 

「近付けさせなきゃ楽勝だろあんな機体……」

 

 トールギスの性能を活かした高い機動力で距離を詰めてくるが馬鹿正直に真っ直ぐ突っ込んでくる。

 直撃させてくれと言っているのと同じだ。

 両腕の4連装ビームガンを撃てば終わる……!

 

 緑色のビームが横殴りの強い雨のようにトールギス・ツルギに降り注ぐ。

 だが……。

 

「……」

「なにッ!?」

 

 トールギス・ツルギは、更に加速した。

 絶対に直撃したと思っていた男は驚愕に捕らわれ、次の行動に移るのが遅れてしまった。

 接近を許してしまったので白兵戦に移行しようとテンペストビームソードを抜刀しようとする。

 だが、柄に手をかけた時にはもうトールギス・ツルギはグフイグナイテッドの背後にいた。

 そして落ちて、爆ぜるグフイグナイテッドの両腕。

 

「なにをされた……!? なにをされたんだ!?」

 

 自身のガンプラがどうなったのかと原因を求める男だがそんなものは戦いが終わってからすることだ。

 戦いの最中にそんなことをしていては、相手に隙を見せるのと同じこと。

 特に、彼には。

 縦に一閃、切り裂かれたグフイグナイテッド。

 

「よくも仲間を!!!」

 

 待機していた仲間が乱入してくるがもう襲い。

 既に仲間は撃墜された後である。

 4連装ビームガンを放ち、トールギス・ツルギを撃墜せんとする。

 だが、リンは冷静であった。

 トールギス・ツルギの太刀を一度鞘へと戻し、醒めた思考でビームとビームの間を縫うように回避しグフイグナイテッドへ向かっていく。

 

「ひぃ!?」

 

 トールギス・ツルギから、リンから放たれる圧、剣気が男を圧倒する。

 そしてすれ違い様。

 鞘走る。

 煌めく、白銀の刀身。

 空中で静止するトールギス・ツルギとグフイグナイテッド。 

 

「なんだ、何もねえじゃねえか……。ビビらせやがって。おら! 背中ががら空きだぜ!」

 

 勢いよく振り向き、ビームガンを向けようとするグフイグナイテッド。

 だが、振り向いた瞬間グフイグナイテッドの上半身が滑り落ちた。

 爆炎を背にするトールギス・ツルギのバイザーから緑光が溢れる。

 

「つ、強え……」

 

 チャラ男も思わずそんな感嘆の声を漏らすほど。

 無駄のない挙動、そして剣技。

 男達の戦法は決して間違いではない。

 ただ、その戦法が通じないほどの技量をミツルギ・リンが持ち合わせ、トールギス・ツルギがリンの操縦に応えることが出来るほどの性能を持っているからこそ可能なのである。

 対策なんてされることは分かりきっている。

 ならばその対策をどう掻い潜るかを考えるのは必然。

 リンが得た答えは最小の動作で回避し最短距離で敵に接近するということ。

 

「も~2対1なら言ってくださいよ~。びっくりしたじゃないですか~」

「ひっ……」

 

 あれほどの剣気を放っていたリンがいきなり笑顔を向けるので怯え、竦むチャラ男二人。

 あの笑顔の奥に何か潜んでいるのではないかと思えてならないが二人にとってもっと恐ろしい存在が現れた。

 

「ちょっとアンタ達。なに二人して一人相手に負けてるのよ」

「「ひ、姫!?」」

「姫?」

 

 現れた少女はリンと同年代と思われた。

 派手なピンク色の髪をして、背後に厳つい黒服の男を二人侍らせている。

 

「弱い奴等は姫の配下に相応しくないわ。配下がそんなんじゃ姫の格も落ちるじゃない。どうせ負けたのも大したガンプラじゃ……うそ……」

 

 姫と呼ばれた少女は筐体の上に置かれたトールギス・ツルギを見つけるとぐいぐいと迫り、まじまじと眺める。息を荒くしながら。

 

「ね、ねえ君!」

「は、はい」

「このトールギス作ったのあなた!?」

「そうですけど……」

「美しい!!! 美しいわ!!! ガンプラの作り込みはもちろん高い機動力を活かして敵に接近し切り裂くという一点にのみ特化したこの機体! 在り方が美しい!!! まさしく日本刀のように!!!」

「在り方が、美しい」

 

 怒涛の勢いに押されるリン。

 ポカンとするしか他なかった。

 

「ねえ名前は? このガンプラの名前は?」

「トールギス・ツルギです」

「素晴らしいッッッッ!!!!!!!! 最高の名前だわ!」

 

 少女の頬は朱に染まり、息は荒く、もう色々と危ない。

 危ないと思われた。

 姫のボルテージは最高潮だった。

 だが、最高潮を迎え姫の雰囲気が変わる。

 

「素晴らしいから姫、あなたのガンプラが欲しくなっちゃった……」

「駄目ですよ! 僕が丹精込めて作ったんですから」

「じゃああなたごと……。ガンプラバトルで姫が勝ったらあなたとトールギス・ツルギを物にする!」

 

 もうこの話の通じないヤバい女から逃げたくて仕方なかった。

 しかし姫に仕える黒服が逃がしてくれそうにない。

 こうなればとリンは戦う覚悟を決めた。

 

「ふふふ。姫のグフイグナイテッドヴァイオレンスが相手するわ」

「ぐ、グフイグナイテッドヴァイオレンス……」

「そう! グフイグナイテッドヴァイオレンスよ!」

 

 グフイグナイテッドヴァイオレンス。

 グフイグナイテッドの改造機。

 黒と赤のカラーリング。

 全体的に刺々しさを増した、名前の通り暴力的なガンプラとなっている。

 長いのでこれ以降はグフと呼称する。

 

 フィールドは荒野。

 天候は曇天。雷を伴っている。

 

「さあ、トールギス・ツルギちゃん。私のコレクションに加わりなさい」

「そんなことさせない!」

 

 トールギス・ツルギとグフが激突する。

 このグフはスレイヤーウィップで戦うことを得意とする。

 二本のスレイヤーウィップが妖しく蠢きトールギス・ツルギを絡め取ろうと迫る。

 対してリンは冷静にスレイヤーウィップの動きを回避しながら見極めようとしていた。

 人は不規則な動きをしているつもりでもどこかで規則的な動きをしてしまうもの。それを見極め、攻めに転じようとしている。

 この冷静な見極めと、敵の動きを読み取る読みの剣はリンの得意とするところ。

 そして、視えた。

 

「ッ……!」

 

 トールギス・ツルギのブースターが火を噴く。

 その場から消えたかのような錯覚に陥るほどの加速力。

 その光景を見たならば誰もがトールギス・ツルギの勝利だと思うだろう。

 だが、リンは相手に誘われたことをこの瞬間に悟った。

 

「もう遅いわ」

 

 トールギス・ツルギの両腕を何処からともなく現れたスレイヤーウィップが捕らえた。

 現れる黒いグフイグナイテッドが二機。

 地面に膝をつかされ、身動き取れないようにされてしまった。

 

「ミラージュコロイド……!」

「ご名答。察しのいい子は姫好きよ。それじゃあいただくわ、トールギス・ツルギちゃん……!」

 

 スレイヤーウィップで地面を叩きつけながら迫るグフイグナイテッドヴァイオレンス。

 ブースターを用いればグフイグナイテッド二機ぐらいは引き摺って逃走することは出来るがスレイヤーウィップの電流により満足に働かない。

 万事休すか……。

 

 雷鳴が鳴り響く。

 その雷鳴の中に、鳥の声を聞いた。

 

 曇天の空から、蒼い火の鳥が飛来しトールギス・ツルギの左腕を縛っていたスレイヤーウィップが切り裂かれる。

 自由となった左手で腰にマウントしていた短剣を取り出しスレイヤーウィップを断ち切り拘束から逃れ、その短剣を投擲しグフイグナイテッドのメインカメラを潰した。

 

「一体、何が……」

「何がじゃないですよ~。リン君に近付く泥棒猫を私が許すわけないじゃないですか~」

「泥棒猫は貴女もでしょう。何にせよ、うちの部員に手を出した報いは受けてもらうわ」

「ミレイ先輩! アリス!」

 

 曇天の空が晴れる。

 日光が照らすのは蒼と白。

 

 ミレイの翼、ウイングガンダム(あお)

 左手に持つウイングガンダム特有のウイングとバックパック、シールドを改造し生み出された弓型複合兵装バスターアローを装備する。

 アリスの移し身、ミラージュトーラス。  

 白いトーラスであるが表面は鏡面仕上げされており光沢が眩しい。

 

「やっぱりトールギスⅢの隣にいるべきはトーラスですよトーラス。ウイングガンダム使いのミレイ先輩は自爆でもしててくださいジ・バ・ク」

「貴女を倒したあとにいくらでもしてやるわ自爆ぐらい」

「もう二人共いいですから! 今はあっちが敵です!」

 

 リンが二人の口喧嘩をひとまず終わらせる。

 今は戦いに集中すべきとミレイとアリスは口の矛を収め、姫達のグフイグナイテッドチームに相対する。

 

「ほら! あんた達いきなさい!」

 

 姫の指示で黒服のグフイグナイテッドが突撃してくる。

 二機の放つ4連装ビームガンのビームの嵐がリン達に襲いかかる。

 だが、この程度はなんてことない。

 

「プラネイトディフェンサー・リリィ、開花」

 

 ミラージュトーラスに搭載されたガンダムシリーズでも有数の性能を誇る防御機構であるプラネイトディフェンサー。その改良型で自分を含めた味方をドーム状に包むことが出来る。

 ビームガン程度の威力では破ることは不可能。

 

「……バスターアローチャージ完了。アリス、上を開けて。リン、飛び込むわよ」

「分かりました!」 

「それじゃあ上部開放っと」 

 

 プラネイトディフェンサー・リリィの上部が開き、そこからトールギス・ツルギとウイングガンダム蒼が飛び出る。

 前に出たトールギス・ツルギに狙いが変わる。

 だが、ミラージュトーラスのビームライフル二丁による射撃でグフイグナイテッド両機の腕が撃ち落とされた。

 ならばスレイヤーウィップと二の矢を用意するが既に矢は番えられていた。

 トールギス・ツルギがスレイヤーウィップを切り裂く。

 そして、トールギス・ツルギの背後にいたウイングガンダム蒼は更に高度を上げてその姿をさらけ出す。

 ウイングガンダム蒼は、弓を構えていた。

 

「当てるわ」

 

 バスターアロー全体に蒼い炎が灯る。

 その炎は一点に集中し、矢を形成する

 放たれる蒼い炎の矢。

 グフイグナイテッドの胴を貫き、風穴を開けた。

 ウイングガンダム蒼が着地すると同時に真っ赤な爆炎が背景を彩る。

 

「まず一機。いえ、もう二機ね」

 

 ミレイが一機撃破するのとほとんど時を同じくしてトールギス・ツルギがもう一機のグフイグナイテッドを撃破。

 残るは姫のグフイグナイテッドのみ。

 

「こいつら強い!? ええいッ!」

 

 再び二本のスレイヤーウィップを振るい、惑わす姫であったが既にリンはこのスレイヤーウィップの動きを一度見ている。

 一度見た技は、通用しない。

 冷静にスレイヤーウィップを捌いていくトールギス・ツルギ。

 だが、グフイグナイテッドはスレイヤーウィップを振るうと同時にビームガンも放つ。

 どこも狙っていない無茶苦茶なビーム。

 それが逆に回避することを困難にしていた。

 まるで癇癪を起こした子供のような射撃。

 それが、トールギス・ツルギに迫る。

 

「リン君危ない!」

 

 ミラージュトーラスがトールギス・ツルギの目の前に躍り出る。

 本命のトールギス・ツルギではなかったがまず一機墜としたと歓喜する姫。

 しかし、歓喜は驚愕へと変わる。

 ビームはコックピットを直撃した。

 だというのに奴は無傷だ。

 更に、自分が放ったビームが自分目掛けて反射してきたではないか。

 あまりの事態に回避が遅れ、左肩に反射されたビームが直撃する。

 

「ふふ。ヤタノカガミぐらいご存知ですよね? なんたってそのグフイグナイテッドと同じガンダムSEED DESTINYに登場したアカツキのものなのですから」

「だからって、なんでトーラスに……」

「私、この子を作る時に頑張り過ぎてしまって。ヤタノカガミを再現出来るほどの鏡面仕上げをしちゃったんです。まあそこはアリス天才ということでって、そんな口動かしてる暇あなたにあるんですか?」

「え……」

 

 トールギス・ツルギが迫ってくる。

 上がらない左腕のために右腕のビームガンで迎撃するがそれもビームの矢が阻止した。 

 ならばとテンペストビームソードを構えてこちらから斬りかかる。

 だが、神速の抜刀により放たれた太刀の威力の前にテンペストビームソードは砕けた。 

 

「これで決める!」

 

 右肩に懸架されていたバスターソードを手にして振り回し宙へと投げたトールギス・ツルギ。それを追うようにして自身も飛び立ちバスターソードよりも高く舞い上がると空中で飛び蹴りの姿勢を構えた。

 加速するトールギス・ツルギ。

 突き出された右足が宙を舞うバスターソードの柄とドッキング。

 巨大な質量のバスターソードと大推力で加速するトールギス・ツルギ。

 トールギス・ツルギの最大威力の技。

 天斬脚(てんざんきゃく)である。

 

「斬り砕く!!!」

「……!」

 

 最早、姫から言葉は失われた。

 ただ静かにバトル終了のアナウンスが流れた。

 

 

 バトル終了後、膝から崩れた姫。

 黒服達が駆け寄り声を掛けるが返事はない。

 

「あの、姫さん」

 

 そんな姫に対して目線を合わせてリンは話しかけた。

 優しい声色で。

 

「……なによ。どうせ姫のこと笑いに来たんでしょう」

「ええそうです笑ってあげますよ私が。あーはっはっはっ!!!」

「貴女は黙ってて」 

 

 後ろの二人……特にアリスについて謝罪してリンは姫に言った。

 

「また、バトルしましょう。今度はちゃんと正々堂々と」

「─────!」

 

 まっすぐと姫の瞳を見つめてリンは言った。

 姫にとっても予想外の言葉であった。

 

「そんな、いいの……?」

「はい。ガンプラバトルで競いあえる人が増えれば増えるだけいいですから!」

「そ、それじゃあ私が勝ったらトールギス・ツルギちゃんを……」

「あげません!」

 

 いい笑顔で言われてシュンとした姫だったがすぐに顔を上げ、決意に満ちた目でリンを見返す。

 そして宣言する。

 

「あなた、名前は?」

「ミツルギ・リンです」

「ミツルギ・リン……。決めた、あなたに勝って、あなたを物にする!」

「え?」

「は?」

「ちょっとちょっとミレイ先輩聞きましたぁ? リン君を物にするとか言ってますよあの女。シめます? シめます?」

「誤解しないで。あくまでも姫の親衛隊に加えるということよ。親衛隊の筆頭にしてあげる」

 

 なにやら話が勝手に進んでいるしミレイ、アリスと姫の間には火花が散っているしでリンはもうこれはどうすることも出来ないとこっそりとその場を去ったのだった。

 女の戦いの怖さをリンはよく知っているのだ。

 それに誰であれあんな場所にはいたくないだろう。

 一足先に離脱したリンだったが黒服達も遅れて離脱。なんやかんやでリンと黒服は仲良くなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活終わり。

 リンとミレイは帰る方角が一緒なので途中まで一緒に帰るのがいつものことであった。

 ちなみにアリスは二人と反対方向なのでいつも帰る時は怨めしそうな目でミレイを見てから帰るのだ。

 

「今日もいっぱいバトルしましたね」

「そうね」

「姫さん面白い人でしたね」

「そうね」

 

 何を言っても同じ返事しかしない。

 普段のミレイは口数が少ない方なので普段を知る者がこの光景を見たらいつものことと何も気にしないだろう。

 だが、リンは違うのだ。

 

「ミレイ先輩怒ってます?」

「怒ってない」

「怒ってますよ」

「……今日、あんまり構ってくれなかった」

 

 ミレイの本音を聞き、リンは足を止めた。

 そして振り向いたミレイの頭を撫で始める。

 

「ちょ……。外ではやめて……」

「ごめんなさいミレイ先輩。けど、可愛いかったので」

「……手、握って」

 

 ミレイの要望通りに手を握るリン。二人はしばらく静かに歩いた。

 

「……怒ってること、まだ色々ある。アリスに腕組まれた時にアリスの胸を見たことと怪しい奴等についてってガンプラバトルしたこととあの姫とかいう女に優しくしたことと……」

 

 沈黙を破り、ミレイの怒りの原因が色々と紡がれる。

 リンはミレイの姿を見てはいたが、ミレイの言葉は耳に入っていなかった。

 

「ちょっと、聞いてるの」

「え?」

「まったく。人の話はちゃんと聞きなさい」

「あはは……。やっぱり可愛いなぁって思ってたらつい」

「バカ。可愛いって言えば許すと思ってる?」

「そんなんじゃないです」

 

 少し、喧嘩っぽくなってしまったと思わず黙るミレイ。

 つい刺々しい口調になってしまうのは悪い癖だと自覚しているのでリン相手にはしないようにしていたのにと後悔と自己嫌悪が渦巻く。

 リンを怒らせてしまったのではないか、嫌われてしまうのではないかなんてことまで想像してしまう。

 それだけは嫌だと、ぐちゃぐちゃの心がミレイの口を動かした。

 

「……好き」

 

 振り絞るような声。

 正直、リンの耳に届いている可能性は低い。

 だけど、この想いは本物。ならば、それでいいとした。

 

「はい。僕もミレイ先輩のことが好きです」

 

 綺麗な笑顔をミレイに向け、リンは言った。

 さっきの言葉は、届いていた。

 

「……バカ」

 

 本当に、彼には敵わない。

 彼と共にこうして歩いていけることが、何よりも幸せで────。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということが今日あったのよ」

『それを聞かされた私はなんて答えればいいんだ』

 

 夜、ミレイの電話の相手はシンヤ・レイカ。

 幾度となくぶつかってきたミレイの数少ない友達の一人でライバル。

 

「リン、可愛いでしょう」

『それはどうか分からないけれど……。可愛いと言えば、私にも可愛い後輩が出来たんだ。彼ならばきっと……』

 

 ガールズトークもとい後輩話に花を咲かせる二人。

 同じ時、二人の少年がくしゃみをしたという。




人物ざっくり紹介
ミツルギ・リン(御剣燐)
高1 かわいい犬系男子で学校では飼い主のミレイ先輩に尻尾を振る姿が見られるが外ではネコ系のミレイを可愛がる剣の達人。剣道部からの勧誘パない。普段とバトル時のギャップに落とされる人多数。圧倒的光属性

サキシマ・ミレイ(咲洲美玲)
高2 三年生がいないため二年生にして模型部部長に。文武両道のクールビューティーだが自己評価が低め。中学の頃に出会ったリンの影響でガンプラバトルを始める。中学卒業の際にリンから告白されて交際スタートするが自分が卒業してから現れたアリスにより毎日ハラハラすることに。愛が重い闇属性。

ミヤハラ・アリス(宮原アリス)
高1 中3の時にリンの学校に転校してきた自他共に認める美少女。自信家の裏返しでミレイと同じく自己評価低めなので自分を褒めて自己肯定感を高めている。
リンの影響でガンプラバトルを始める。トールギスⅢ(リン)の隣に立つなら白いトーラス一択!という理由で初心者ながらに頑張って旧キットのトーラスを改造(ほぼフルスクラッチに近い)してミラージュトーラスを作り上げた。しかし完成した頃にHGACトーラス発売が発表された。リンに13回告白して全て断られているがいつかミレイから奪ってやる。ただし正々堂々とした形で!と野望に燃えている。座右の銘はn度目の正直。
属性は恋は攻めてこそ赤単速攻な火属性に見せかけてやはり闇属性。


姫。

スッ
https://syosetu.org/novel/216700/
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