ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS 作:大ちゃんネオ
ガンプラバトルとはガンプラ(ガンダムのプラモデルの通称)を操作して戦うゲームである。
ガンプラはプラモデル。
つまりは組み立てなければならない。
更に言えばガンプラバトルではそのガンプラの出来栄えが機体性能という形で表れる。
ともすればガンプラバトルで強くなりたいならば腕前と同時にガンプラの製作技術も磨かなければならない。
ビルダーとファイターの二人組なんかもいないことはないがやはり自分の手で組み立てたガンプラで勝利したいと思う者は多い……。
「というわけでしばらく三人にガンプラ製作の指導をするわ」
「んだよ今更ガンプラの作り方なんて。それよりバトルしようぜバトル。昨日みたいなことがあるかもしんねぇだろ」
昨日みたいなこととはつまりチームアクエリアスの連中みたいに他のチームが襲撃してくること。
いやまさかそんなことが立て続けに起こるわけ……。
「ないとも言い切れない。アクエリアスの連中を倒したってことで部はみんなの話題で持ちきりよ。実力を試したいと言ってる上位チームも少なくないわ」
なんと。
まさかそんなことになっていようとは。
「それにねケンユウ君。あなたのガンダムエクスカリバーはフォースシルエット背負ってる割に推力がないのよ。あれじゃお荷物よお荷物」
「んだとぉ!?」
「まあ、それも結局は出来の問題よ。完成度を高めれば高めるほどガンプラはその性能を増すわ。高い性能のガンプラを作り上げるビルダーと高い技量のファイター。その両方に皆はならないといけないというわけ」
先輩の言うことは最もだ。
強いファイターになるということは、高いレベルのビルダーにもなるということと繋がっている。
今後、勝つにはバトルの技量だけでなくビルダーとしての腕も磨いていかなければならない。
「ちなみに勝利チームにはボーナスが与えられるという仕組みにもなってるのよこの部」
「ボーナス?」
「そう。勝ったチームには活動資金が得られるのよ。そしてそれで……ガンプラや製作ツールなどを調達することが出来るというわけ! というわけでみんなでガンプラ買いに行きましょう!」
ガンプラを、買いに。
今から。
あれ、製作技術の指導は?
「よっしゃあ!!!! 行きましょう先輩! ガンプラ買いに!」
「いいノリねケンユウ君! ノリがいい子は好きよ!」
あれ、君そういうキャラだっけオオノ。
さっきまであんな反抗的な態度を取っていたじゃないか。
一体どういう風の吹き回しだと疑問に思うとマトバさんと目が合い、二人で首を傾げた。
学校の近所は特に何の変哲もない住宅地である。
ガンプラを買いに行くなら色々お店のある駅の方に行けばいいのになんでこんなところに……。
「さあ着いたわよ。ここが私のイチオシのショップよ」
「イチオシのショップって……。あの、ここ……」
「駄菓子屋じゃねえか!!!」
オオノの言う通り、先輩がショップと言い張ったのは学校から徒歩5分の駄菓子屋である。
それも古い、典型的な駄菓子屋。
「懐かしいな、この感じ」
「んなこと言ってる場合か! あの女に騙されたんだぞオレ達!」
「騙してないわよ人聞きが悪いわねー。ほらいいから入るわよ」
ずかずかと慣れた足取りで駄菓子屋の中に入っていく先輩の後を渋々ついていく。
中は普通の駄菓子屋のようだと思ったが、違う。
外から見たよりは結構店内は広く、ガンプラバトルの筐体も置かれているしガンプラも少ないが売られている。
確かにガンプラは売られていたがショップと呼ぶのは……。
「タケさんいる~?」
店の奥に向かって呼び掛ける先輩。
タケさん?
このお店の人だろうが、そういう風に呼ぶということはそれなりに親交はあるようだ。
「は~いよっと。なんだ、ユナか」
店の奥から現れたらのは若い男。
目鼻立ちがくっきりとして美形と称するに相応しい爽やかな青年である。
「なんだじゃないわよ。ちゃんと店番しててよね」
「別に盗られて困るもんはないからな。ん? なんだ、後輩か?」
先輩とタケさんが仲良さそうに会話していたがタケさんがボク達に気付いた。
「そう。入ったばっかりの新入生よ。私が面倒見てるの」
「ほぉ~。苦労してそうだ」
「どういう意味ですかそれ~?」
「おお怖い怖い。あ、自己紹介がまだだったな。俺はここ、タケノ駄菓子の店長をしてるタケノワ・タミオだ。よろしく」
よろしくお願いしますと三人それぞれ返礼して、名前を名乗っていった。
なんとなく、これからよくお世話になりそうな気がして。
「それじゃあみんな、サクッとガンプラ選んでね。戻ったら早速指導を始めるから」
あ、買ったらまた戻ってそのガンプラで技術指導していくのか。
それじゃあ手早く買ってしまおう。
といっても、今作りたいようなガンプラってなんだろう。
「ヒ……ダイモン君は何にするか決めた?」
悩んでいたところ、マトバさんが声を掛けてきた。
こうしてコミュニケーションを取れるなら、マトバさんとは上手くやっていけそうだ。
「いや、悩んでる。マトバさんは?」
「私も悩み中。やっぱり、迷っちゃうよね」
確かに、模型店と比べると品揃えは少ないがガンプラをどれにしようか決める時は悩むものだ。
けれど……。
「ペーネロペーの時はこんなに悩まなかったんだけどな」
「そうなの?」
「うん。ガンプラ始めて少し経った頃にお店で見て、これだってなった。そういうのはあの時だけだった」
それ以来バトルでもペーネロペーを使うようになって、ペーネロペーが一番自分に馴染んだような気がして。だから、ペーネロペーを使っている。
「なんだか、いいね、そういうの。運命的って言うのかな?」
運命、か。
あまりロマンチストではないと自分のことを思っているけど、あの出会いは運命であってほしいと思う────。
「はーい。あと10秒で決めてね~。10、9、8」
「えぇっ!? ま、どうしよどれにしよう……!」
唐突なカウントダウン。それも、早い。
あーくそもうこれに決めた!と手に取ったのはHGCEストライクフリーダムガンダム。
マトバさんもボクと同じようにして焦って手に取ったのはHGUCガンキャノン。
リバイブ版である。
こうしてなんとかカウントダウン終了前にガンプラを決めることが出来た。
「なんだよお前らそんな焦って。さっさと決めろよな」
そういうオオノは既に会計を済ませているようだった。
何を買ったのかと思い見てみると……。
「インジャ……」
「そういうお前はストフリ……」
なんだかよく分からないけれどオオノとボクの間に変な空気が流れている気がする。
互いに、睨み合うというほど剣呑な雰囲気ではなく、本当に微妙な空気。
「な、仲良しだね!」
マトバさんがフォローするように言葉を掛けるが効果はなく。
この空気が消え去ることはなかった。
「いやー青春してるねぇ。俺にもあんな頃があったなぁ」
「ウソ、タケさんに?」
「なんだよウソって。これでも総帥の奴等となぁ」
「ハイハイ。それじゃあ私達は部活があるので失礼しま~す」
「あいよ。……また来な、新人達」
タケさんに見送られて店を出る。
バトルの筐体もあるし、通うことになりそうだ。
そして、学校に戻ってきて指導が始まったのだが……。
「イ、インフィニットジャスティスガンダムさんごめんなさい、いち……。インフィニットジャスティスガンダムさんごめんなさい、に……」
「ほらー! 腰が浮いてるわよ!」
「くっそ覚えてろよ……!」
「ひぃ……」
部室で何故か腕立て伏せをやらされているオオノ。
隣では怯えながらガンキャノンを組み立てるマトバさん。
果たして何が起こっているのか。
それは先輩のこんな一言から始まった。
「もうみんな普通にガンプラは作れるでしょう? ただ作るだけじゃあれだからそうね。パーツを床に落としたらペナルティとして作ってるガンプラの名前の文字数だけ腕立て伏せよ!」
なんという横暴。
なんというスパルタ。
ここは軍隊ではないんだぞ、今は令和だぞと様々な抗議の声が上がったが先輩の命令は絶対だということでペナルティありでのガンプラ製作が始まってしまった。
そうしてオオノは3回目の腕立て伏せを現在行っている真っ最中だが、回数を重ねるとやはり辛くなってきたのか動きに余裕がなくなってきている。
名前の文字数だけやるというとインフィニットジャスティスガンダムは名前が長い方なので自然と辛くなってくる。
多分、先輩は狙ってやったのだろう。
こんなことになるならジムとかザクとか短い名前のガンプラを買うんだった。
ボクの買ったストフリも正式にはストライクフリーダムガンダムと長い方なのでもしもパーツを落としてしまったらと思うと恐ろしい。
「絶対落としませんように絶対落としませんように……!」
マトバさんはこういうスパルタ的なものに慣れていないようでかなり怯えている。
そんなに手を震わせていたらいつパーツを落としてしまうか分からない。
「……マトバさん」
「ひゃいっ!?」
呼び掛けただけでこの怯えようである。
「マトバさんもそうだと思うんだけどさ、ガンプラ作る時って集中するでしょ」
「う、うん……」
「だからさ、いつも通りにやればいいよ。あんまり気にせずにさ」
「気にしないでガンプラを作る……」
自分に言い聞かせるように呟くとすぐにマトバさんは自分の世界へとのめり込んでいった。
凄まじい集中力だ。
昨日のバトル中で見せた狙撃も正確だったし、元々の集中力はかなり高いのだろう。
「おっと余裕みたいだねヒバリく~ん」
今のやり取りを見ていたようで先輩が絡んでくる。
そうやってボクにパーツを落とさせる気のようだ。
「メイちゃんにあんなこと言ってたけど君は集中出来てるのかな~?」
「集中してますよ。それに、普通にやってたらパーツ落としませんし」
「ほほう。口を動かす余裕があるんだね~」
挑発するようにボクに顔を近付ける先輩。
まじまじと見つめられながらもボクは作業を続行。
「……動じて、くれないんだ」
「そうですね。動じる要素がないので」
「動じる要素がない!? あなた中1よね!? もっと初々しい反応してくれたっていいじゃない!」
何をそんなに怒られなくてはいけないのかと思うのも束の間、先輩が机を強く両手で叩いたせいでストフリのパーツというか、ランナーが落ちた。
「これは、ボクのせいで落ちたんじゃないのでカウントしないですよね」
「……」
そう、今のは先輩のせいで落ちたのだ。
ボクのせいではない。
というわけで。
「ストライクフリーダムガンダムさんごめんなさい、いち……」
「ほらどうした先輩! 人にやらせてた割には自分が出来てねえじゃん!」
さっきと立場が逆転している。
先輩は元の筋力があまりないようでもう既にキツそうだ。
「く~! ダイモン、お前のおかげですっきりしたぜ! ありがとな!」
「別にそういうわけじゃないけど……」
さっきまで自分を虐げていた悪しき女帝を討ち取った英雄を褒め称えるかのようだ。
そして昔からの友達であるかのようにオオノは肩を組んできて、先輩が腕立て伏せをし終えるまでその様子を見物することになったのだった。
その間に、マトバさんはガンキャノンの組立を終わらせていた。
シンヤ・レイカは湯船に浸かりながらスマホをいじっていた。
同年代の女子がやっているようなお洒落なSNSを見ているわけではなく、世界中のガンプラバトルに関する情報などを収集するのが彼女の趣味であり、特にこの時期は全国高校(中学)ガンプラバトル選手権大会が近いので各地域の注目株などを探すのだ。
特に今年は中学の方で何やら有望株が同じブロックで現れたというのでそれが気になっている。
そんな彼女のスマホに一件の着信が。
相手はクレハシ・ユナから。
メッセージを確認すると、この二日間で彼女がピスケスの三人から感じたものを纏めたもの。
経過報告。
チームピスケスの三名について彼等の得意なこと、不得意なことなどを報告する。
・オオノ・ケンユウ
製作技術、総合的な戦闘技術共に未熟。
根性あり。
近接戦闘に拘るようなのでまずはそこから伸ばすべきか?
向上心、闘争心はチームでも一番。
今後、大きく伸びると思われる。
・ダイモン・ヒバリ
製作技術、戦闘技術は総合的に見て現在チームで一番高い。
射撃、近接戦闘もそつなくこなすが特に抜きん出ているわけではない。
彼の優秀な点は広い視野で物事を見れることと小惑星帯で高速機動を行うことが出来る度胸と自信。
ファンネルミサイルを使用中は棒立ちとなってしまう弱点があるのでファンネルミサイルを扱えるようになる練習を積ませるか、別の道を探らせるか。
・マトバ・メイ
製作技術は丁寧で基本はおさえているようだが彼女のガンプラ、アサルトデュナメスには及ばない。アサルトデュナメスを製作したのは彼女の姉とのこと。
近接戦闘は不得意。敵に近付かれると一目散に逃げていた。
しかし射撃の腕は高く部内でもトップクラスと思われる。
精神面が未熟、自信なさげで取り乱すことが多いが集中力は高いようなのでメンタルトレーニングを行うとよし。
追伸
明日は筋肉痛になるのであまり無茶な注文はしないでね!
「何故、筋肉痛……?」
大事な報告であったが、それ以上に筋肉痛が気になって仕方ないレイカであった。