ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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メイ大地に立つ

 新生チームピスケス結成から3日。

 先輩のペナルティ付きガンプラ製作指導にも慣れて、オオノもパーツを落とすことは少なくなってきた。

 そして今日は先輩がオオノに付きっきりでガンダムエクスカリバーの作り直しを行っている。

 ボクとマトバさんはというと自主練習。

 ボクは制限時間内にマトバさんのアサルトデュナメスの狙撃を掻い潜り接近する練習。

 マトバさんにとっては機動力の高い相手に対する狙撃精度の向上を目指した練習となっている。

 ダメージレベルもCに設定したのでガンプラは壊れない。

 フィールドはジャングル。

 10回目のトライとなるが熱帯雨林の中に伏せて隠れたアサルトデュナメスの狙撃を回避し続け接近していくというのはなかなか難易度が高い。

 というのもマトバさんの狙撃の腕がいいのだ。

 そしてなによりも絶対に近付けさせないという気迫を感じる。

 動きを止めたらそれは敗北に繋がる。  

 なのであの試験の時並みに。いや、それ以上に操縦桿を動かし続けなければいけない。

 横に避けるのでは駄目だ。

 少しずつでも前に進まなければ。

 

「当てる……当てる……」

 

 制限時間はもうわずか。

 一気に勝負を仕掛ける!

 一度、機首を左に向けるが即座に切り返す。

 するとアサルトデュナメスの粒子ビームがボクが進むだろうと予測された空を撃った。

 この隙に!

 ネオ・ペーネロペー直下の木々達が嵐に襲われた時のように揺れる。

 もうこうなれば容易い。

 迎撃のビームは飛んでくるがどこに撃ち込んでくるかが読めるからだ。

 そうしてMSフォームへと移行し着地すると同時にアサルトデュナメスをタッチ。

 これで6勝目である。

 それと同時にオオノの「出来た!」という声が部室に響いた。

 

「さて、パワーアップしたエクスカリバーの力見せてやるぜ! ダイモン交代だ!」

「分かった」

 

 もう10回もやったし、作り直されたエクスカリバーの性能というものが見たいしという理由もあり素直に交代。

 しかし……。

 

「うそッ!?」

「あぁッ!?」

「今度こそ!」

「ばっちこい!」

「いやー!?!?」

「マジかッ!?」

「なんでぇ!?」

「もっかい!」

「も"っ"か"い"!」

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!!」

 

 こうしてオオノもボクと同じように10回トライしたところで一旦終了して休憩となった。

 

「なんでそんな当てられるんだよ!」

「いやなんでそんな当たるの」

 

 よもやここまでいいようにやられるとは思わなかった。

 マトバさんの狙撃もボクとやってた時よりも精度上がっていたようなというか、焦りもなく落ち着きのあるいい狙撃をしていたというか。

 

「なんていうか、その、ヒ……ダイモン君は的は大きいけど動きが予測出来ないから狙いにくくて。オオノ君はその、すごく動きが読みやすいから狙いやすいかな……」

「ようするに動きが単調ってことよ単細胞君。真核生物になって出直してきなさい」

「誰が単細胞だ! 次はじゃあ予測出来ないような動きしてやるぜ」

 

 そう言うが既にどんな動きをしようか考えていることが顔に出ている。

 分かりやすい奴。

 なんてことを思っていると扉を叩く音が。

 アクエリアスの連中とは違い正しいノックだ。

 先輩がどうぞと返事するとこれまた丁寧に失礼しますと言いながらおとなしそうな男子生徒が入室してきた。

 いや、それが普通なんだけどね。

 

「お疲れさまですピスケスの皆さん。僕はチームサジタリアスのチームリーダーのカドヤといいます」

 

 カドヤさんが懇切丁寧な自己紹介中に横腹を肘でつつかれた。

 こんなことをするのはオオノぐらいしか、いや先輩もやりそうだが今回はオオノだった。

 ひとまず、小声でやり取りする。

 

「なに」

「なあ、サジタリアスって俺達の何個上だ?」

「ええっと……魚座、水瓶座、山羊座、射手座でこの間アクエリアスに勝って順位変動したから……二個上」

「ほーん。じゃあこいつらに勝てば一個飛ばしで昇格ってわけだ」

 

 勝てばの話だしそもそも試合の話かどうかも分からないのでまだなんとも言えない。

 そうして話が進むと練習試合をしないかということ。

 練習試合では順位変動は行われないことが先輩から説明された時、オオノは不服そうだったがボク達がどこまで通用するのかを試すいい機会だし向こうから話を振ってきたということはそれなりに実力を認めてくれているのだろう。

 というわけで早速。

 

「練習試合なのでダメージレベルはCで。お互い気楽にやりましょう」

「いいみんな! 練習試合だからって気を抜かず相手を絶望させてきなさい!」

「えぇ……」

 

 サジタリアスのリーダーさんとの人格の差が出てるぞ先輩。

 

「練習試合だから大丈夫落ち着いて……。すう……はぁ……」

 

 マトバさんは緊張を解しているようだ。

 さっきリーダーさんが言っていた通り気楽にやるべきだろう。

 そしてバトルが始まる。

 フィールドは海上。

 よかった、うちのチームは全員飛べるので地形的不利はない。

 

「えっ」

 

 左隣のマトバさんが声を漏らした。

 

「あ? なんかしたか?」

「ううん……。なんでもないよ……」

 

 何かあったのだろうか。

 しかしなんでもないと本人が言ったのだからなんでもないのだろう。

 

「ダイモン・ヒバリ。ネオ・ペーネロペーで出る」

「オオノ・ケンユウ! ガンダムエクスカリバー、行くぜ!」

「マトバ・メイ。ガンダムアサルトデュナメス、いきます……!」

 

 出撃。

 青い空と青い海。

 バトルとか関係なしにネオ・ペーネロペーを飛ばすのにいいシチュエーションな気が……。

 

「ッ!?」

 

 そんなことを暢気に考えていると突然、操縦桿が重くなった。

 そしてネオ・ペーネロペーにも大きな衝撃が。

 

「なに!? ……え?」

 

 敵の攻撃を開始早々受けてしまったかと思ったが、この衝撃をもたらしたのは全くの想定外のものだった。

 

「あの、マトバさん?」

「は、はい……」

「えっと、その、なにしてるの……?」

「これは、その……」

 

 どうして。

 どうして、ネオ・ペーネロペーの背(左側)にアサルトデュナメスがしがみついているの?

 本当にどういうこと?

 え?

 え?

 

「おいお前ら来るぞ!」

 

 オオノが通信で呼び掛けるが待ってくれ。

 アサルトデュナメスを背負った状態では真の性能を発揮出来ないぞ。

 しかし相手にはそんな事情など通じない。

 チームサジタリアスはバイアラン・カスタム、ウィンダム、イナクトで構成されている。

 向こうも飛べる機体ばかり。

 

「マトバさん。この際このままでいいから撃てる?」

「えっ……。うん、やってみる……」

 

 何がどうして仲間を背負ったまま戦わなければいけないか分からないが仕方ない。

 幸いにもネオ・ペーネロペーはデカイし推力もあるからこの間みたいに1機ぐらいだったら。

 だけど……。

 

「流石に、機体が傾いて……!」

 

 操縦が、まずい。

 バイアラン・カスタムが手のメガ粒子砲を撃ちながら迫る。

 これを避けるのも精一杯。

 ビームライフルを撃ち返してバイアラン・カスタムから距離を取るが今度はウィンダムがこちらに狙いを定めて接近してくる。

 ジェットストライカーに装備されているロケット弾が発射されたので回避していく。

 無誘導のものなのでロケット弾の射線上から移動すればいいだけなのだがバイアラン・カスタムのメガ粒子砲が目の前を横切った。

 そしてロケット弾がネオ・ペーネロペーに命中していく。この程度ならネオ・ペーネロペーは問題ない。

 

「あ……」

 

 しかし、アサルトデュナメスが着弾の衝撃で思わず手を離してしまったようで機体が軽くなった。

 これでようやくまともに動けるようになったと思った。

 だが、アサルトデュナメスは重力に逆らい浮遊する術を持っているはずなのに海面へと叩きつけらる。

 そうして、制限時間を迎えるまでアサルトデュナメスが海中から現れることはなかった。

 

 

 

 

 

 練習試合後といえば反省会を兼ねたミーティングである。

 そしてやはりいの一番に議題に上がったのはマトバさんのことで……。

 

「メイちゃん。そうね、まずは私達に分かるように説明してくれるかしら。なんでああなったのかを」

「それは、その……」

 

 俯いて、黙ってしまったマトバさん。

 これではなんであんなことになったのかまるで理由が分からない。

 ……そういえば。

 

「マトバさん。そういえば、ボクはアサルトデュナメスが地面に伏せているところしか見たことがないんだけど、もしかしてさっきのって……」

「……はい。私は、その、バトルでガンプラを立って歩かせることが出来ません……」

 

 チーム結成から4日、衝撃の事実が発覚してしまったのだった。

 

 

 

 部活終了後。

 マトバさんは逃げるように部室を出ていってしまい、オオノもしれっと帰っていた。

 

「あーどうしよウソでしょ。マトバさんにそんなとんでもない致命的な欠点があったなんて……。伏せていることしか出来ないなんてバトロワゲーの初心者じゃないんだから……」

 

 頭を抱える先輩だが、気持ちは分かる。

 アクエリアスと戦った時や今日の自主練習、練習試合の時の3回しかまだボクはアサルトデュナメスを動かすところを見ていなかったのだ。

 アクエリアスと戦った時は森林、練習中は熱帯雨林と迷彩を活かすために伏せているものだとばかり思っていたがそんな理由があったとは。

 

「マトバさん。チーム分けの試験の時はどうだったんですか」

「試験の時は出撃してすぐ小惑星に取り付いて狙撃で1機撃墜。ここまではすごくよかったわ。だけど居場所のバレたスナイパーはダメね。試験官に接近を許してしまい撃墜されたわ」  

 

 なるほど。

 先輩も試験官をしていて見ていたはずと思い質問したがそこでもやはりか。

 

「うーん。練習メニューの変更ねぇ。流石にあのままじゃ不味いし……」

「どうして……」

「ん?」

「どうして、この部活に入ったんですかね」 

 

 純粋な疑問が知らず、口から出ていた。

 

「ヒバリ君あなた辛辣ね……」

「そういう意味じゃありません。純粋な疑問です。それに、あれだけの射撃の腕があるんです。立ち上がることが出来れば、すごい頼りになると思います。……それじゃあ、お先に失礼します」

 

 これ以上部室にいても何もならないと先輩に挨拶して部室を出た。

 

「あ、うんお疲れ……。……思ってたよりは、冷たいってわけじゃないのね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 近所の公園のブランコに座り、アサルトデュナメスを眺める。

 やっぱり、こんな私じゃ……。

 目を閉じると思い出す、この子との出会い。

 

『メイ。誕生日おめでとう。これ、私からのプレゼント』

『ありがとう! お姉ちゃんが作ったの?』

『そうよ。メイとあんまり遊んであげられないから私の代わりだと思って』

『うん……。けど、お姉ちゃんとも遊びたいよ』

『あはは……。そうね、お姉ちゃんがもっと元気だったらね……。そうだ! メイがそのガンプラでガンプラバトルしてるところ、いつかお姉ちゃんに見せて』

『えぇ!? 私に、出来るかな……』

『メイが自信持てて、強くなってからでいいから。それまでお姉ちゃんも待ってるから。ね? 約束』

 

 約束。

 だけど、未だにその約束は果たせそうにない。

 約束してからもう何年が経っただろうか?

 

「もう、3年もお姉ちゃんを待たせてる……」

 

 3年もやってて、未だに伏せていることしか出来ないなんてお姉ちゃんが知ったらどう思うだろう。

 この間は思わず嬉しさのあまり報告なんてしに行ったけれど、それでも、やはり……。

 

「なにしてんだよこんなところで」

「え……」

 

 ふと、顔を上げるとオオノ君がいて……。

 

「えと、どうして……」

「た、たまたまだよたまたま! それより、隣いいか?」

「う、うん……」

 

 そうして、隣のブランコに腰かけたオオノ君。

 一体、なんだというんだろう。

 こんな私を怒りにきたのかな……。

 

「……その、さ。別に先輩も怒ってたわけじゃないぜ。ダイモンも別に、ていうかあいつは多分何にも思ってないと思う。短い付き合いだけど、なんとなくそんな気がする。だからあんまり自分を責めるなよ」

 

 ……もしかして、慰めてくれているのだろうか?

 

「な、なんだよ……」

「その、怒りに来たのかと思ってたから……」

「んなわけあるか! オレはそこまで鬼じゃねえ。ああそうだ、先輩の方が何倍も鬼だぜ」

 

 そこから始まるクレハシ先輩への愚痴。

 どんどん出てくる。

 まだ数日しか関わってないのに……。

 

「……ふふっ」

「んだよ」

「だって、まだ会ってから少ししか経ってないのにそんなに愚痴が出てくることないよ」

「それはあの先輩が何もかも悪いからだ! ……って、あいつまで来たか」

 

 あいつ?

 オオノ君が見ている方を見ると、今度はダイモン君まで現れて……。

 

「ヒ……ダイモン君。どうしたの?」

「二人が見えたから……。うん、たまたま」

 

 目線を逸らしながら前髪を弄るダイモン君と、たまたまという理由にまた少し笑ってしまった。

 

「ちょうどいい。チーム三人揃ったんだ。その、聞かせてくれないか? バトルだと立てない理由をさ」

「それは……」

 

 いや、二人なら大丈夫だろう。

 きっと、二人は信じられる。

 そう信じて、私は話す決心をした。

 

「聞いても、笑わない……?」

 

 訊ねると二人は首を縦に振ってくれた。

 

「その、ね。アサルトデュナメス……この子はお姉ちゃんから誕生日にプレゼントされたガンプラなんだ。お姉ちゃんが私のためにって。だから、この子のこと大事にしたくって、傷付けたくなくって……」

「だから、出来る限り傷付かないように隠れて……」

「そう。臆病だし変だよね。それならガンプラバトルなんてするなって話なんだけどね、お姉ちゃんと約束したんだ。いつか、お姉ちゃんにガンプラバトルしてるところ見せるって」

 

 そう、きっといつか。

 私が自信を持てる時に、お姉ちゃんに見せてあげたい。

 私のバトルを。

 そして出来れば……私の、勝利を……。

 

「……だけどこの子が傷付くところは見たくない。この子を傷付けてしまったら私は……」

「それならダメージレベルの設定が……」

「違えよ。違えんだよ、それとは……」

「……ごめん。……優しいんだよ、マトバさんは」

 

 そう、ダメージレベルの問題ではない。

 大切なものを傷付けたくない。

 だけど、お姉ちゃんとの約束を果たすためには……。

 

「ガンプラは壊れても直すことが出来る。けど……戦うのは怖いし……」

「……よし、マトバ。今からオレとバトルしようぜ」

「え……」

 

 突拍子もない言葉に呆気に取られる。

 それに、今からバトル出来るところに行くのは……。

 

「あるだろ? 多分あそこなら大丈夫だと思う」

「……ああ、ああいうとこならまあ……」

 

 ダイモン君はオオノ君の言っていることを理解したようだけど私にはさっぱりで……。

 

「ほら行くぜ!」

「え、う、うん!」

 

 いつの間にか二人は公園から出ようとしていて慌てて追いかける。

 お父さん、お母さんごめんなさい。

 今日は帰りが遅くなります……!

 

 

 

 

 

 

 しばらく走り、学校の方角に行っているようだったけれど今からの時間に学校に入るのは……。

 そんなことを思ったけれど、オオノ君が着いた!と言ったのはこの前来た駄菓子屋さん。

 タケさんと呼ばれている店長さんがもう店じまいしているところだった。

 

「すんませーん! ちょっと待ってください!」

「ん? お前らはユナの……。いいぜ、やってきな」

 

 まだ何も言っていないのに店長さんには何かが伝わったようだった。

 そうして、閉店間際の駄菓子屋さんに入りバトルスペースへ。

 

「よっしゃ、マトバやろうぜ!」

「でも……」

「とりあえず、やってみたら? 何か考えがあるみたいだし」

 

 ダイモン君にもそう言われ、オオノ君と本気でバトルすることに。

 フィールドは都市。

 ここなら、伏せることが出来る……。

 

「それじゃあ、ダメだよね……」

 

 折角、二人が私のためにしてくれているのだから……。

 

「私は……!」

 

 出撃するアサルトデュナメス。

 大丈夫、練習の時のように……!

 ゆっくりと、姿勢制御しながら高度を下げて……。

 

「立つ……!」

 

 しっかりと、二本の足で立った。

 あとは、このままオオノ君とバトルして……。

 

「よし、まずは立てたな! それじゃあこっからは伏せるの禁止だ! 思い切り来やがれ! 行くぜ!」

「いきなり!」

 

 アサルトデュナメスの目の前に着地したガンダムエクスカリバーはエクスカリバーを連結させて私に迫ってきた。

 この距離は、私が苦手な距離……。

 大きな刃が横薙ぎに振るわれる。  

 それをしゃがむことで避けてそのまま地面に……。

 

「だめ!」

 

 そうだ、いけないんだ。

 私が変わるためにも。

 前転の要領でエクスカリバーの脇を通り抜け背後を取る。

 それと同時に武装を選択。

 この距離ならば、GNビームピストル。

 2丁構えてエクスカリバーの背に向けて連射。

 

「ぬお!? けどまだここはオレの距離だ!」

 

 スラスターを使い一気に加速してくるエクスカリバーのスピードは目を見張るものがあった。

 クレハシ先輩と作り直した成果が発揮されている。

 そして今度は上段からエクスカリバーが振り下ろされようとしている。

 ここは確かにオオノ君の距離。

 だけど……。

 

「前に出る!」

「なっ!?」

 

 こちらもGNドライヴの出力を上げて加速。

 私がこんなことをするとは思わなかったであろうオオノ君は面食らっている。

 その隙をついて、がら空きの胴を蹴り飛ばしビームピストルで追い討ちをかける。

 

 

 

 二人のバトルを見学中。

 ボクは久しぶりに他人のバトルに見入っていた。

 

「……すごい、ガン=カタだ」

「おとなしい嬢ちゃんだと思ってたけど意外とやるな」

「店長さん……」

「タケさんでいいよ。それにしても、お前さんもクール系かと思いきや案外ギラギラしてんな。バトルしたいって顔してるぜ」

 

 そんな顔、しているだろうか。

 だけど……。

 心は確かにバトルをしたいと叫んでいる。

 そしてそれはマトバさんも同じようで……。

 

 

 

 

 

 

 一度距離を取ったエクスカリバーは都市の中を低空飛行してアサルトデュナメスを撹乱しようとしていた。

 しかし、エクスカリバーが角を曲がった瞬間、先回りしていたアサルトデュナメスのGNアサルトカービンが火を吹く。

 

「チッ!」

 

 上空に飛び立つことで回避したが今度は身を隠すものがなくなったエクスカリバーにビームの嵐が襲う。

 両腕に装備したシールドで防御を続ける。

 

「またこのパターン……。だけど!」

 

 右腕のシールドを取り外し、アサルトデュナメス目掛けて投げ付ける。

 続いて左腕のシールドも。

 迫る二つのシールドだがあの勢いのものと衝突してはただでは済まないとメイは判断し射撃を中断し回避行動に移るがそれこそケンユウの狙い。

 エクスカリバーを構え、上空より吶喊。

 アクエリアスとの戦いで行った戦法の応用である。

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 シールドに気を取られていたメイは反応が遅れてしまった。

 普通ならばもう回避することは出来ずエクスカリバーに貫かれる未来が待つのみ。

 だが、アサルトデュナメスには隠し球がある。

 エクスカリバーがアサルトデュナメスを貫くその瞬間、アサルトデュナメスが消えた。

 

「なにぃ!?」

 

 貫くべきものが消失し、エクスカリバーはビルに突き刺さる。

 そして、紅に染まったアサルトデュナメスがガンダムエクスカリバーの背後を取っていた。

 

「トランザム……!」

 

 アサルトデュナメスの指がGNアサルトカービンのトリガーにかけた指に力を込めていく。

 

「へへ……負けたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 バトル終了後、すっきりした顔のマトバさんとオオノがバトルスペースから出てきた。

 

「あー負けた! けど次は勝つぜ!」

「うん。次も負けないよ、()()()()()

「おう! ……ん?」

「名前呼びになった」

 

 一体どういう風の吹き回しか、オオノのことを名前で呼んでいる。

 言い間違えた?

 

「ヒバリ君もありがとう」

「ヒバリ君……」

 

 まさか、ボクまで。

 

「お、おい。急になんだよ名前で呼び出すなんて」

「同じチームだから名字で呼ぶより名前で呼んだ方がいいかなって思って」

 

 オオノと顔を見合わせる。

 お互い、首を傾げる。

 いまいちその理屈が分からない。

 

「あ、けど……。ねえ、ヒバリ君」

「なに」

「あのね、ヒバリ君の呼び方なんだけど……。ヒバリ君じゃなくてヒバリちゃんでいい?」

 

 ヒバリ、ちゃん。

 隣のオオノが吹き出し、笑いそうになるのを堪えている。

 なんて、失礼なやつ。

 

「嫌なら、本当に嫌って言っても大丈夫だから……」

「あ、ああ、その。なんで、ちゃんなのかが気になるんだけど……」

「ああ、あのね、ヒバリちゃんは背も小さいし」

 

 うっ。

 

「顔も可愛いし」

 

 うっ!

 

「たまに仕草とかも可愛いから」

 

 うぅっ!

 

「ヒバリ君っていうより、ヒバリちゃんって感じがするなぁって思って」

「ずっとボクのこと呼ぶ前にヒ……って言ってたのは」

「思わずヒバリちゃんって言いそうになってたから……。あはは……」

 

 ……ちくしょう。

 ここにも姉さん達みたいなことを言う人がいた……。

 呪縛から解放されたと思っていたのに……。

 

「ふ、ふふ……。お、おい……ヒバリ、ちゃん……ふふぅw かわいいなぁwww」

「……オオノ。お前は殺……」

「それで、その、ダメ、かな……?」

 

 うっ。

 なんというか、その、マトバさんは姉さん達とは違うタイプの女の人なので微妙に苦手……というのもまた違うんだけど、上手く言い表せないのでもう苦手でいいのだろう。

 姉さん達の何倍もマシだけど。

 

「……まあ、好きにしたら」

「やった!」

 

 仕方ない。

 まあ、別に呼ばれ方で人生が変わるというものではないしいいだろう。

 

「かわいいかわいいヒバリちゃーんwww」

「うっさい」

 

 脛を蹴るとオオノも黙った。

 いや、痛みに呻いている。

 

「ダイモンてめぇ加減しろ加減!」

「加減してそんなに痛い痛いって喚くなんてお可愛いな」

「んだとぉ!?」

「うん。ケンユウ君も可愛い顔してるよ?」

「え」

「ぶっちゃけ二人共女装させた……」

「「ひえっ」」

 

 マトバさんの恐ろしさの片鱗が垣間見えた。

 このチームで一番恐ろしい人であることが確定した瞬間である。

 

 

 

 

「青春してるねぇ……。いいこといいこと。俺も久しぶりにあいつを出すとしますかね……」

 

 少し離れたところで三人を眺めるタケノワもまた自身の青春を振り返り、かつての熱が再び燃え上がろうとしていた。

 かつての愛機との再会はもうすぐそこ……。

 

 

 

 

 

 翌日の部活。

 この間作ったストライクフリーダムとネオ・ペーネロペーを並べてネオ・ペーネロペーの強化案について考える。

 すると勢いよく部室の扉が開いて先輩が現れた。

 こんな登場の仕方するのはあの人ぐらいだ。

 

「メイちゃんのために特別メニューを筋肉痛の身体に鞭打って徹夜で考えてきたわ!」

「あ、お疲れさまです」

「お疲れさ……ちょっと待ってヒバリ君」

「なんですか」

「あれは、なに?」

 

 先輩が指差したのは昨日のリベンジとマトバさんに挑むオオノと連勝記録を伸ばしたいマトバさん。

 二人のバトルである。

 

「え、昨日バトルだと立てないって。え? え? どういうこと? ねえ! ヒバリ君!」

「さあ、なんでしょう」




駄菓子屋でメイ達がバトルを終えた頃の病院

キュピーン
エリ「あ!今すごい面白いことになってる気がする!メイに何かあった気がする!なんで私はこんなところにいるの!お姉ちゃん今すぐ行くからねメイ!」

看護師「マトバさん!?ちょっと誰か手伝って!マトバさんが脱走しようとしてます!!!」
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