ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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剣友伝説~序章~

 それはケンユウが13才の誕生日のことであった。

 

「起きなさい。私の可愛いケンユウや」

 

 母さんの声で目を覚ます。

 母さんが開けたであろうカーテンから射し込む太陽の光が暖かく、爽やかにオレを目覚めさせた。

 

「おはようケンユウ。もう朝ですよ。今日はとても大切な日。ガンプラバトルの世界大会決勝戦だったでしょ。この日のためにお前を勇敢なガンプラファイターとして育てあげたつもりです。頑張ってきなさい」

「ああ! 絶対世界一になってやるぜ!」

 

 朝飯をかっこみその他諸々の準備をマッハで終わらせ家を出る。

 オレの世界最強伝説へと向かって駆け出す─────。

 

 

 

「ちょっとケンユウ朝よ起きなさい! ケンユウ!!!」

「んー……あれ」

 

 さっきのは……ああ、夢かぁ。

 確かに夢の中の母さんあんなじゃないしな。

 私の可愛いケンユウやなんて絶対言わないし。

 まあいいやと身体を起こす。

 朝飯食べて学校行こうといつも通りの朝を迎えたつもりで時計を見ればそんないつも通りの朝なんかではいられなくなっていた。

 遅刻寸前である。

 

 

 

 

 怠い授業を消化して部活の時間。

 部室に行くと先輩とマトバはおらずダイモンが一人のみ。  

 しばらく二人きりだったので軽く雑談をする。

 

「ふぅん。それで今日めっちゃ走って学校に来てたんだ」

 

 今朝のことをダイモンに話した。

 話に興味は無さげにガンプラを弄っていたがどうにも今朝走っていたところを見られていたようだ。

 

「それでお前はなにしてんだ?」

 

 ペーネロペーをばらしているし、プラ板でなにやら工作中だ。

 他にもこの間買ったガンプラの箱が3箱積まれている。

 あと、なにやらガンダムではなさそうなロボットものの雑誌も。

 

「ネオ・ペーネロペーの改修。今度の福女との試合に向けて。いろいろと課題も分かったし」

「そっか。……え、じゃあ俺の練習相手は?」

「マトバさんだね。まだ来てないけど」

「それじゃあマトバが来るまで暇ってことかよ」

「そういうことになるね。というかオオノもバトルの練習ばっかじゃなくてガンプラの手入れとかしたら?」

 

 やはりダイモンの言葉は気に障る。

 上から目線なのが気に食わない。

 だからこいつの言う通りにするとダイモンに従ったような気がして嫌だ。

 しかしダイモンの言葉は正しいことも分かるので余計にむかっとくるのだ。

 あれだ、母さんから宿題やりなさい!と言われた時と同じような感覚だ。

 

「……なに」

「べ、別に。なんでもねえよ」 

 

 言われても動かなかったオレに苛ついた語をぶつけてくる。ダイモンのこういうところがオレは……嫌いだ。

 なにを話すにしてもいちいち言葉にトゲがあるというか。

 言葉に刃物を忍ばせないと会話出来ないのかこいつは。

 

「ごめんなさい! 遅れちゃった!」

 

 救いの女神現わる。

 

「マトバ遅えぞ! バトルすっぞバトル!」

「う、うん。ケンユウ君やる気満々だね」

 

 それは当然。

 バトルが好きだからである。

 最近は戦績が振るわないがそれでもバトルは好きなのだ。

 とにかく早くエクスカリバーで闘いたい。

 逸る気持ちでバトルシステムの前に立つと再び部室の扉が開いた。 

 先輩である。

 

「お疲れ様~。早速で悪いんだけどミーティング始めるわよ~」

「えー! 今からバトルするとこだったのに!?」 

「バトルならミーティング終わってから。部活まるっとミーティングするわけじゃないんだから」

 

 まあ、それならと渋々席につく。 

 ミーティングなんてさっさと終わらせようと思ったがしかし。

 

「おーいヒバリン。ヒバリ~ン。ヒバリちゃ~ん。こうなったら……ヒバリンコ!!!」 

 

 先輩が大声で呼び掛けてようやくダイモンに反応があった。肩がびくんと跳ねていた。

 

「あ……。す、すいません」

「もう。ガンプラ弄って集中しちゃうのは分かるけどね」

 

 注意されてやんの。

 いやオレも家でよくやるけど。

 大体母さんに叱られる。

 それはさておきミーティング。

 先輩がホワイトボードの前に立ち、なにやら書き始めた。

 

「まずミーティングの内容なんだけど、チームリーダー会議で話し合われたことの報告を行います」

 

 ふむ、そうなのか……うん?

 

「あの、チームリーダー会議ってなんですか?」

 

 オレと同じ疑問を持ったマトバが先輩に質問した。

 チームリーダー会議ってなんだ?

 

「チームリーダー会議はそのままね。チームリーダーが月に一回集まって会議を行うの。しばらくは私がピスケスのチームリーダー代理として出席するけど、そのうち三人のうちの誰かに出てもらうからそのつもりで」

 

 なるほど。

 そんな会議があるのか。

 

「それで、まずは今月中に募集締切される大会の案内ね。みんなも知ってのとおりガンプラバトルの大会は公私を問わずたくさん開かれるわ。チームでも個人でも、たくさん大会に出場して経験を積んでいってね。あ、狙うは当然優勝だから!」

 

 大会かぁ。

 賞金が出る大会があるらしいのでそういうのに出ていきたい。

 

「金! 優勝賞金が出る大会出たい!」

「お、お金? ケンユウ君お金欲しいの?」

「おう。うち、貧乏だから。少しでも稼ぎたいんだ」

 

 昔……。

 オレが小学校低学年ぐらいまでは家が裕福だった。

 親父の会社がかなり上手くいっていたのだが親父が友達の借金の連帯保証人とやらになり、その親父の友達は雲隠れ……というよくある話である。

 

「若いのに殊勝な心掛けじゃ。よろしい。賞金が出る大会をピックアップじゃ」

 

 ふざけた口調の先輩をダイモンが冷めた目で見ていた。

 いや、基本こんな目付きだったわ。

  

「賞金が出るのは……五月末の東京ガンプラショーと全国ガンプラ射撃競技会……。これはメイちゃん向きね。えーとあとはジオンボーイコンテストと……あ、これがあった」

 

 先輩が広げたチラシの中からある大会のものを見つけた。

 その大会の名は……。

  

「GUNPLA SWORD MASTER……」

 

 ガンプラソードマスター。

 最強のガンプラ剣豪を決める大会。 

 武装は剣及び近接武装のみ。

 一対一の真剣勝負。

 これはまさにオレ向きの大会……!

 

「先輩。もっと現実的な大会を紹介するべきです」

 

 いきなり、ダイモンがそんなことを言いやがった。

 

「この大会、参加者のレベルが高いのは先輩だって知ってますよね。上位入賞者は全国……いや、世界レベルです。オオノのレベルも考えてください」

「おいダイモン。それどういう意味だ」 

「オオノのレベルじゃ予選落ちで終わるって話。それぐらい自分がよく分かってるでしょ」

 

 身体が熱くなったのを感じる。

 頭に血がのぼっていく。

 こいつは……!

 

「それよりも、家にお金いれるってならもっと堅実に行くべきでしょ。大体この大会東北予選は仙台だし。交通費は? 宿泊費は? 家にお金ないなら……ほら、これとか」

 

 ダイモンが見せてきたチラシは隣町のおもちゃ屋が開催する大会のものだった。

 賞金は……1万円。

 

「隣町なら自転車でも行けるし、この手の大会は狙い目だよ」

 

 真面目な顔で、オレを見つめながらそう提案してきた。

 なんで、こいつわざわざそんな……。

 

「そりゃ、ソードマスターに比べたら賞金は1/100だけど……。普通の中1が一日で1万円を稼いできたら家の人も喜ぶんじゃない? 知らないけど」

 

 最後の方は照れ隠しであることに気付いた。

 なんだこいつ。

 意外と分かりやすい。

 ……それで、だ。

 

「とりあえず、それ出てみるよ。けど、ソードマスターには挑戦したい」

「……マジで言ってんの?」

「ああ。まだ全然上には届かないけど、それでも戦ってみたい。それがファイターってもんだろ」

「それで、交通費は」

「せ、仙台まで自転車で行ってやらぁ! 隣の県だし行けるべ!」

 

 よくそういうことやってる人いるしと付け加えるとダイモンは露骨にため息をついた。

 人を馬鹿にして。

 金が浮くし体力トレーニングと思い出作りも兼ねることが出来ていいと思うんだ。

 

「……義兄さんなら暇だしいけるか」

「兄さん? お前、兄貴いたのか?」

「義理のね。更に言うと元もつく」

「なるほど。ヒバリンコのお姉さんの元旦那さんか」

「な、なんだか複雑だね……」

「まあそうだね。けど仲悪いのは姉さんとだし。ボク個人は別になんもないし。連絡取ったことがバレたらあれだけど……」

 

 ダイモンの顔が青くなった。

 果たしてバレたらどうなるのか……。

 それはさておきその義理の兄さんとやらがなんだというのか。

 前の話とまるで繋がっていないと思うのだけど。

 

「義兄さんもガンプラバトル好きでさ。大会とか見に行ってるみたいだから足に使おうかなって」

「わーおヒバリン魔性のオトコ。けどそれが出来たらかなり助かるわね。うちの部、移動に関しては上位チームでかつ勝てる大会でないと車とかお金出してくれないからね」

 

 そんなシビアなルールが……。

 結構人もいるし部費もそれなりに入ってると聞いたのになんてケチなんだろう。

 うちの母さんみたいだ。

 

「それはそうと出ると決まったからには早速特訓だ! マトバやるぞ!」

「え! う、うん」

 

 まずはマトバに一勝!

 それを目標に特訓!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か"て"な"い"!!!!!」

 

 何回やっても何回やってもマトバが倒せない。

 俺の距離で戦わせてもらってるのに!

 勝てない!!!

 

「あはは……。もうケンユウ君の手の内は全部分かっちゃったから……。手加減するのも失礼だし……」

「それはありがたいけど……。いや、俺が強くなればいいだけか!」

 

 頬を叩き気合を入れ直す。

 ……ふと、ペーネロペーの改造をしているダイモンが視界に入った。

 真剣な顔で先輩とやり取りしている。

 あいつも、強くなろうとしているんだよな……。

 そうだ。

 

「なあ、ダイモン!」

「……なに」

 

 集中していたところに話しかけたのでダイモンの声はやはりどこかトゲがあるがこちらも真面目な話なので怒られはしないだろう。

 

「質問なんだけどさ、お前は接近戦してるときなにを意識してる?」

 

 そう問いかけるとダイモンの手が止まった。

 どうやら考えているようだ。

 一瞬考えてからダイモンの手が再び動き始める。それと同時に口も動く。

 

「ペーネロペーは機体が大きいしあのなりだから運動性能も正直あれ。だからあんまり白兵戦はしたくない。白兵戦をする時は必ず仕留められるって時だけにしてる」

 

 必ず仕留められる……。

 

「要は見極めってこと。勝負勘がしっかりあれば出来る技よ。試合の流れを読み取って流れを自分のものにする。それが強いファイターへの一歩ね」

 

 先輩が補足してくれた。

 勝負勘。

 試合の流れを読み取る。

 どれも、自分には足らないもの……。

 

「よっしゃマトバ! もう一戦だ!」

「うん。いいよ」

 

 言われてすぐどうこう出来るというものではないだろう。

 それでも……。

 

 

 

 

 フィールドは月面。

 身を隠せる場所は少ないように見えるがクレーターなんかが役立ったりする。

 早速クレーターに隠れたであろうマトバのアサルトデュナメスの狙撃がオレとエクスカリバーを襲う。

 相変わらず正確な射撃。

 この距離ではオレは何もすることが出来ない。

 

「つまりオレが不利だからオレが有利な流れに持ってけばいいんだな……」

 

 けど、どうやって?

 ダイモンは仕留められる時にだけと言っていたがそれはダイモンだから。

 まずオレが勝つには相手に近付かなければいけない。

 なんせ武装がエクスカリバーとビームサーベルと頭のバルカンだけ。とても遠距離には対応出来ないからだ。

 そもそもそういう作りにしたのだからそういうものなのだが。

 エクスカリバーで相手に接近しエクスカリバーで切り裂く。

 それが、オレの目指した勝ち方。

 これは捨てたくない。

 

「けど無理して接近しようとしたらそれはいつものパターンだしなぁ……。どうすればいいんだ?」

 

 考える。

 考えなれていない頭で考える。

 作戦は……作戦は……。

 

「だぁぁぁ!!! そんなの思い付けるかよ!」

 

 頭の上の方が熱い。

 これが知恵熱というものだろうか。

 だとしたらこの一瞬でオーバーヒートを起こすなんて、回路が粗末過ぎるぞオレの脳。

 

「けど考え続けないと……」

 

 考え続けないと、ヤバい。

 あ、もうダメだ。

 言葉も浮かばなくなってきた。

 

「……流れを読み取って、読み取ってどうするんだっけ?」

 

 ヤバい、さっき言ってたことすらもう朧気だ。

 えーと、確か流れを読み取って……自分の、自分のものにする、だ。

 自分のものにする、か。

 流れはいま完全にマトバのもの……。

 

 そう思った時にふと、突風が吹いた気がした。

 向かい風の中にいるようだと。

 これが、マトバの流れ……なのか?

 この感覚ははじめてだ。

 だけどこれが流れを読み取るということなのだろうか?

 全てが初めてのことなので疑問ばかりであるが、なんとなく分かった気がする。

 この風を吹き飛ばせばいいんだ。

 風なら……斬れる!

 

「うおぉぉぉおおお!!!!!」

 

 一気に動き出す。

 策が思い付いたわけでもない。

 勝てる見込みがあるわけでもない。

 それでも、動き出していた。

 

「来た! すぅ……ッ!」

 

 マトバの射。

 だけど、これは避けられる。

 避けたあと、本命はそっち。

 二射、三射、四射。

 見えて、きた。

 

「避けられちゃった!?」

 

 狙撃の正確さが削がれていく。

 取るべきルートが見えていく。

 そして取るべき攻撃は。

 

 エクスカリバーを連結させる。

 長大な剣となったエクスカリバーをアサルトデュナメスに向けて槍投げのように投げつける。

 

「ひっ!」

 

 予想外の攻撃にマトバは反応が遅れたようでライフルはエクスカリバーに貫かれる。

 アサルトデュナメスはアサルトライフルに持ち変えて再び距離を離そうとビームを放つ。

 だがもうここまで近付けば……。

 ビームサーベルを抜き、追い込む。

 そして……。

 ぷっつん。

 

 ぷっつん?

 

「……あ、あれ? オレなにして……」

「?」

 

 次の瞬間にはビームの雨を食らわされた。 

 なにが起こったのかさっぱりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に覚えてないの? なんにも?」

「だぁかぁらぁ! バトル始まってから少しは覚えてるけどそっからやられる前のとこまで覚えねえんだって!」

 

 先輩からの追求にもう何度目か分からない同じ答えを返す。

 本当に、本当に記憶にない。

 

「けどケンユウ君すごかったよ! わたし負けちゃうと思ったし……」

「それも記憶がなきゃ意味がないんだって!」

 

 折角勝てそうだったというのに一体なんだってんだ本当に。

 

「……ゾーンに入ってた、とかじゃない?」

「ゾーン? なんだそれ?」

「ものすごく分かりやすく言うとすっごい集中した状態。そうなると周りの音とか景色も排除されるらしいよ。姉さんの本に書いてあった」

 

 ゾーン……。

 なんか、すっげぇ、かっけぇ!

 

「なぁ! ゾーンになるにはどうしたらいいんだ!?」

「そこまでは読んでないから分からないしそもそもオオノのそれがゾーンかもまだ分からないし……」

「じゃあ姉さんからその本借りてきてくれ!」

「はあ!? その本実家なんだけど! 本ぐらい自分で買……。ううん……」

「とにかく、さっきのバトルでのケンユウ君の動きはこれまでで一番良かったわ。あれがいつでも出来るようになればかなりの強味になるはずよ。だから頑張って習得しましょう!」

「はい!」

 

 まさか、オレにこんな強味があったなんて。

 これを絶対ものにしてみせるとその後もバトルしたが一切ゾーンには入れなかった。

 

 四日後、ダイモンの実家からその本が届いたとのことで読んでみた。

 さっぱり意味が分からなかった。




オマケその1

ユナ「なんかヒバリン、ケンユウ君に優しくない?」

ヒバリ「どこがですか。なにを見てそんなこと思ったんですか。先輩の目は節穴ですか」

ユナ「いやさ、普段はそんな感じだけど仙台までの車手配してくれたりなんやかんや本用意したりとかヒバリンやっぱりツンデレね☆」

ヒバリ「う、うるさいです! 黙って手伝ってください!」


オマケその2

ヒバリ「姉さん、そのなんか集中力がどうの~って本送ってくれない?」

姉1「いいけどその代わりに自撮りちょうだい自撮り」

交渉しても無駄だったので自撮りした(スズメ姉さんのヘルプつき)


オマケ3

メイ「全国ガンプラ射撃競技会かぁ……」

男くさい自衛隊みたいなチラシ

メイ「……もうちょっとかわいい大会がよかったなぁ」

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