ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS   作:大ちゃんネオ

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研究と連携と

 福音女学院との練習試合が近付いている。

 ネオ・ペーネロペーの改修も進捗は8割ほどと順調。

 慣らしの練習時間を考えてもまずまずいいだろう。

 しかしやるべきことはネオ・ペーネロペーの改修だけではないのだ。

 

 薄暗い部室。

 モニターにはガンプラバトルの映像が流れている。

 モニターの横には先輩が立っており、ボクとオオノ、マトバさんは並んで席に座り、そのガンプラバトルの映像を観察していた。

 

「福女のAチーム、グローリーフラッグスは3機がフラッグの改造機で構成されたチームよ。空戦に特化し、チームの連携はかなり高い練度を誇るわ。これをいかに崩すかが勝敗を分けることになるわね」

 

 先輩が福女のチームについて説明している。

 敵を知るのは大事なこと。グローリーフラッグスについては東北大会などその他大会にも多く出場しているので動画などが出回り情報は多く入手出来る。

 なにより同じ地区なので交流試合をうちの部と多く行っているためより詳細な情報も持っていると先輩は言う。

 

「チームリーダーのシロガネ・ユキノ。伝統を重んじる福女にガンプラバトル部を創設させた女傑。シロガネグループのご令嬢でまさしくお嬢様って感じ。ちなみにスリーサイズは上から72……」

「だ、駄目ですよユナ先輩!」

 

 マトバさんが慌てて止めた。

 今のはもうセクハラとプライバシーの侵害以外の何物でもない。

 というか先輩が持っている詳細な情報ってこれのことなのか。多分、いや、きっとそう。

 この人はそういうことする。

 

「なあダイモン」

「なに」

「上から72ってなんの数字だ?」

「……テストの点数とかでしょ」

「ふーん。意外と普通の点数なんだな」

 

 オオノのことを思って嘘をついた。

 正直に説明したら鼻血だけではすまないかもしれない。

 

「ごほん。スリーサイズはさておきガンプラの方の説明するわね」

 

 最初からスリーサイズの話なんてせずにガンプラの話をすればいいのに。

 

「えーと、あ、これねこのガンプラ」

 

 動画を一時停止させ、シロガネ・ユキノのガンプラを映す。

 白銀のフラッグ。

 なによりも特徴的なのは太陽炉が備わっていること。

 粒子の色は緑。擬似太陽炉ではないようだ。

 純正の太陽炉を得たGNフラッグ……。しかし、このガンプラさっき変形していた。

 GNフラッグには飛行形態への変形機構はオミットされていたがそれを出来るように改造したようだ。

 設定的にはソレスタルビーイングが所有するユニオンフラッグソレスタルビーイング仕様の強化版みたいな?

 武装もGNソードⅡ改。いや、GNソードⅡロングかあれは。少し手が加えられているようなのでなにか機能が追加されているかもしれない。

 他にも機体各部のあれは……アヴァランチユニットから流用したであろうパーツが見られる。

 これは想像以上の機動性になるだろう。

 

「機体名GNフラッグブリザード。とてつもない機動性が売りのガンプラね」

 

 機動性が武器のガンプラ、か……。

 

「あの、このフラッグはヒバリちゃんのネオ・ペーネロペーより速いんですか……? そうだったらわたし、撃っても当てられる自信ないです……」

 

 自信無く言うがそれはボクもオオノも同じこと。

 動く的に当てることがそもそも難しいのに更に速いとなれば難易度は跳ね上がる。

 

「確かにヒバリンのネオ・ペーネロペーより機動力は勝っているわ。けど、ネオ・ペーネロペーの改修が正しく終わればそれもどうなるか分からないわ」

「正しく終われば? どういう意味だ?」

 

 オオノの疑問にボクが答える。

 なんせ、ボクのガンプラの問題なのだから。

 

「ネオ・ペーネロペーの改修は主に火力増強と追加装甲による防御力の向上を主題としてやってるんだけどそれによってかなり機体の重量が増える。それだと機動性がかなり落ちるからスラスターも追加してるんだけど、かなり考えてスラスターを配置しないと……最悪、機体の制御が出来なくなる」

「どの機体でも起こりうることだけどペーネロペーという大型のガンプラだからこそより慎重にやらないといけないの。幸い、作業は順調だしぶっつけ本番で操縦なんてことにはならないだろうからいいけど……」

 

 それでも、やはり不安である。  

 慣れない機体で格上との戦い。

 どう負けるかが重要とレイカさんは言った。

 だけど、それでも、負けたくはない。

 勝ちたい。

 新しいネオ・ペーネロペーで、勝ちたい。

 

「それじゃあ対戦相手の研究は一旦ここまでにして、バトル練習とかガンプラの調整とか各々やってね。ヒバリンコは引き続き私とネオ・ペーネロペーの改修やるわよ。久々に手応えのある改修に付き合えて私も楽しいわぁ!」

 

 ペーネロペーの改修について話してから先輩にはずっと手伝ってもらっている。

 先輩がいなければ福女との試合までに間に合わなかっただろう。先輩には感謝しても足りないぐらいだ。

 口に出すと調子に乗りそうなので言わないが。

 

「あ、あの。ちょっといいかな?」

「なんだ?」

「あのね、わたし達も連携とかフォーメーションの練習した方がいいかなって思って……」

 

 福女の試合映像を見て、マトバさんは自分達も連携が出来た方がいいと考えたらしい。

 それは当然出来た方がいいのだが……。

 

「ネオ・ペーネロペーは改修中だからオオノとマトバさんの二人でやってて。二人の連携だったら合わせられるから」

「ほほう? 自信満々だねヒバリー」

「まあ、この調子でいけば明日には動かして最終調整まで持っていけそうなので。そうしたら三人での練習も行えるので」

「オッケー。それじゃあ練習相手見繕ってくるから先に作業始めてて」

 

 そうして先輩は部室を出ていき5分後……。

 

「さあ頼もしい先輩を連れてきたよ」

「やあよろしく。ピスケスの皆さん」

 

 先輩が連れてきたのは高等部の女子生徒。

 見覚えはないが……。まあ、見覚えある人の方が少ないけれど。

 

「この子はクサナギ・アヤネ。この春高等部に編入してきて選抜テストでは無傷で試験官達を撃墜。見事チームアリエスに選抜されたみんなと同じ期待の星ってやつ」

 

 選抜テストで全機撃墜……。そして最上位チーム。つまりはレイカさんと同じチームということ。

 それだけで実力の高さが窺えるし、なによりこのクサナギ・アヤネという人物から発せられている自信ありげな態度がよりそれを感じさせるのだろう。

 

「それじゃあアヤネよろしくね。今回は二人の連携特訓ということを忘れずにお願いね」

「分かってるって。ちゃんと練習になるように手加減するから」

 

 その一言がオオノの闘争心に火をつけたことは言うまでもない。

 ひとまずそちらはそちらでやっててくれとボクと先輩は改修作業に入る。

 その瞬間、視線を感じた。

 こちらを見つめるアヤネさん。

 ボクがその視線に気付くとアヤネさんは小さく笑みを浮かべ、ボクから視線を外した。

 一体、なんだというのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 ケンユウとメイの特訓の舞台は砂漠。

 砂上に降り立ったエクスカリバーとアサルトデュナメスは索敵を開始する。するとすぐにレーダーに高速で接近する敵機を見つけた。

 照りつける太陽を背にして飛ぶ紅き双頭の飛竜。

 

「ガンダムエピオン……」

 

 視認したメイはそう呟くとすぐに頭を切り替えてエピオンに照準を合わせる。

 放たれたビームを最小限の動きで回避すると二連装ビームキャノンが反撃の火を吹いた。

 飛び退くエクスカリバーとアサルトデュナメス。

 

「エピオンなのに射撃してくんのかよ!?」

「ガンプラは自由だから!」

「その通りガンプラは自由だよ。私のガンプラ、ガンダムエピオンGは射撃兵装もしっかり積んでるから距離を問わず戦える機体になってるのでよろしく」

 

 二機が飛び退いている間に変形したガンダムエピオンGが見下ろしていた。

 両腕の装備はトールギスⅢのメガキャノンとシールド。

 漂う強者のオーラにケンユウとメイは気圧される。

 だが、相手が強いほど特訓の効果は高くなる。

 相手に不足はないと、二人はエピオンGへと立ち向かっていった。

 

     

 

 

 

 

 翌日。

 もう外は暗くなっており、オオノとマトバさんは帰宅している。今日もあの……アヤネさんと戦ってへろへろになりながら帰っていた。

 それでもボクと先輩だけが部室に残っていたのは全てこの瞬間のため。

 

「……出来た」

「出来たねぇ」

 

 机の上に立つ新ネオ・ペーネロペー。

 巨体が更にいかつくなった。

 

「早速試運転しちゃう?」

「当然です」

 

 自然と微笑みながらそう返事していた。 

 早速この出来上がったネオ・ペーネロペーを動かして最終調整などしていかないと……。

 逸る気持ちで筐体の前に立つと同時に部室の扉が開いた。

 来客は……アヤネさん?

 

「こんばんは。君の作業ずっと見てて気になってたんだよね。あとあれ、この間の部長とのバトル」

 

 ……この間のあれ、見ていたのか。

 

「だいぶ部長は君に執心だったからね。戦ってみたかったんだ。それとついでにそのペーネロペーの初陣(はじめて)を奪っちゃおうかと思って」

「ちょっとアヤネ! これから最終調整って時に戦おうだなんて!」

「それだけ気持ちが昂ってるってこと。それに、そちらもやる気みたいだし?」 

 

 気付かれたか。

 まあいい。

 チラチラと見られ続けていた時に気付いた。

 この人、戦いたがっていると。

 だったら望み通りにしよう。見られ続けるのにウンザリしていたところだったのだ。

 

「いいですよ、やりましょう」

「ヒバリ君!?」

「話は決まったね。やろっか」

 

 

 

 バトルシステムを起動させる。

 フィールドは月下の森林地帯。

 湖面には満月とエピオンGが浮かんでいた。

 

「さーて、あの子はどこかな……上か」

 

 夜空を見上げるエピオンG。

 その目が映したのは……。

 月を背にする巨大怪鳥。

 そして次の瞬間、エピオンGをビームと実弾の嵐が襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 帰路についていたレイカのスマホが震えた。

 発信者はクサナギ・アヤネ。

 彼女がこんな連絡をしてくるとはと電話に出ると、アヤネの声は震えていた。

 この震え方は……興奮によるもの。

 

「どうしたアヤネ?」

『ふふふ……。部長が執心のあの子と戦ったんだけど……いいね、あの子。アリエスの中等部チームに今すぐいれてもいいんじゃないかなってぐらい』

「ほう……」

 

 夜の住宅地にそんな一言が消えていく。

 無関心そうに聞こえるが、なによりその顔には歓喜の色が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 アヤネさんとのバトルを終えて、ボクはぐったりと席に座っていた。座るしかなかった。

 汗でシャツが身体にへばりついて気持ち悪い……。

 

「大丈夫ヒバリ君?」

「大丈夫、です……」

「……とんでもない機体になっちゃったわね。正直、デチューンした方がいいと思うわ。戦ったあとにこんな疲労するような機体はやめた方がいい」

「……それは、ファイターであるボクがネオ・ペーネロペーについていけばいいだけの話です。それに、これなら……福女相手にだって、きっと……」

 

 新しいネオ・ペーネロペーを見る。

 絶対に……絶対に、君に追いついてみせる……!




次回予告

新たなる力を手にしたヒバリ。
だが、それでも高い壁というものは存在する。
天空の覇者が三人の前に立ちはだかった。

次回『白銀の翼』

ユキノ「見せてもらいますわ。あなた達のガンプラバトルの腕前というものを」
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