いつも通りに過ごしていたある日。外は雨がザーザー降っていて、トレーニングするウマ娘もみんな室内トレーニングしているであろう日。私は自室で優雅に紅茶を飲みながらお仕事中。
そんな時、部屋をノックする音がした。しかも勝手口から。私の部屋は私が夜遅く、それこそ寮の玄関が閉まった後に帰ってくるなんてことも考えられて、勝手口がついている。まあ私はまだ使ったことないのだけれどもね。
「はーい」
そう言いつつ、勝手口を開けると、そこには思いもよらぬウマ娘がいた。
「スズカ!? どうしたのそんなとこで!」
そこにいたのはずぶ濡れになったサイレンススズカ。ただただ下を見て、雨でぐっしょりと濡れたジャージをそのままにぼんやりと立っている。
「ああもう、風邪ひくから早く中に入って」
とりあえず、スズカの手を引いて部屋の中に入れる。すぐにバスタオルを持ってきて、スズカの頭に乗せてわしゃわしゃと髪の水気をふき取る。
「はい、頭老けたから、後はいつも通り自分でやって」
そう言ってスズカから離れて、お風呂のスイッチを入れつつあったかい飲み物を用意しようとキッチンへ向かう。そこで牛乳をコップに入れて電子レンジにかけ、スズカの様子を見に戻ると、さっき私が拭き終わったときのまま動いていなかった。
「ああもう、仕方ないわね。脱がすわよ?」
仕方なく、ジャージを脱がして下着姿にして全身の水気をふき取る。下着以外の水分をふき取るも、長時間雨に当たっていたのか、スズカの体が完全に冷え切っていた。
「はぁ、これじゃ風邪ひいちゃうし・・・。仕方ない。お風呂、入るわよ」
このままのスズカにお風呂に入るよう言っても動かないだろう。仕方なしに、私も一緒にお風呂に入り、スズカの体を洗って、一緒に湯船につかってスズカの体を温めた。
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「で、どうしたの?」
お風呂から出て、またスズカの全身を拭いて、適当に私の部屋着のだぼっとしたTシャツを着せて椅子に座らせ、目の前にあっためた牛乳を出すとこまでは何とか終えられた私は、スズカの反対側に座ってスズカの奇行の原因を探ろうとしている。しかし、スズカは一向に牛乳を飲もうともせず、微動だにもしない。これはよほどのことがあったのだろうと思いつつ、手詰まりになっていた。そんな時、ルドルフから電話が入った。
「あ、ルナ。どうかしたの?」
その時のルドルフの声は、今までにないくらい焦っていた。
「スズカにドーピングの疑いが掛けられた!! 下手すれば永久出走停止処分になるかもしれない」
「・・・・・・・・・は??」
後のルドルフ曰く、この時の私の声はとっても低く、また冷え切ったものであったらしい。
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それからルドルフと情報共有をして、詳細を把握した。
ことの発端は、どこかのゴシップ雑誌の書いた記事だった。
スズカのあの速さは普通じゃない、ドーピングしているに違いないと。そんなことあるわけがない。私達がよくスズカを知っているというのもあるし、更にはレース前のドーピング検査や普段の学園でのドーピングの使用をさせないための監視など、トレセン学園のウマ娘がドーピングに手を出そうとしただけでもそれが発覚するような仕組みを生徒会、委員会が一丸となって整えている。だからこそ、ドーピングなんてことは絶対にありえない。
でも、この報道を受けて一部のアホ新聞社やテレビ局がトレセン学園に取材を仕掛けてきたらしい。それで急遽理事会が招集。スズカのドーピングの使用がないとわかるまで出走停止、もしやっていたと発覚したら永久出走禁止処分にすると。
「迷惑極まりないことを・・・」
しかも面倒なことでもある。やってないことを証明するのは不可能に等しい、悪魔の証明である。でも、それを証明しないとスズカは走れない。この話を聞いたスズカがこうなるのもわかる。スズカは走ることしか考えてない。その走ることを封じられたのであれば。こうなってもおかしくないだろう。
まあ、スズカの身の潔白については生徒会と委員会で動いて絶対に証明して見せるとして。あと、こんなゴシップを撒いた出版社にはサトノ家とかスズカの友人の家系も全部使って報いを受けさせるとして。
「まずはこの娘を正気に戻さないといけないわね」
茫然自失の状態から帰ってこないスズカを普通に戻すべく、私の付きっ切りでのお世話が始まった。