玖渚友は退屈していた。
この世の中にある物事全てに、何かが決定に欠けていると感じていたのだ。当初は己の優秀さ故の退屈だとばかり思っていたが、どうにもそれとは違うらしいと言うことも、同じように、確信めいた強さで感じていた。
けれどもその確信たる理由だけは不明のままで、それこそ己自身の、世間のあまりなつまらなさに対する防衛機能か何かなのではと疑うことも多々あった。そして不思議なことに、どうやらそれも違うらしい。
玖渚友は困惑していた。
この確信の、確信たる理由について。そして確信たる何かを探そうとする、自分だとは到底思えないようなその意欲に。
天才たる己に理解できないのは、何故なのだろうと。
そしてその確信の正体はあまりに唐突にあっさりと判明した。
その日は少しぼうっとしながらも、死んだ様に働く緩慢とした脳味噌で砂の一粒一粒の動きを計算していた。単なる手遊びの一環である。
だがそこには、単なる、なんて言葉はまるで似つかわしくないような砂の城が建っていた。それは余りにも頑健で、頑丈で、誰かに崩されでもしない限り壊れることなんてなさそうな、というよりも確実に無いと断言できるような絶対性を持った城となって。そしてそれはとうとう、玖渚友がそこを離れるまで、崩れることも、砂の粒がひとつも落ちることすらなく完成された。完成されてしまった。
しかし、その絶対的にわかりきっていた結論に対し、玖渚友は疑問を持ったのだ。城が完成するのはオカシイ、と。この城は確実に今ここで崩れるべきだと。
そしてその疑問は、立ち去ろうとする玖渚に一つの計算外の行動を、たった一回振り返るという効果を与えた。
玖渚友が振り返った時、その一つの計算外の動作は砂の城へと伝達し、たった一粒、それでも絶対的にあり得なかったはずの、たった一粒の零れを作り出した。
そしてそれは切欠へと転じることとなる。
玖渚友は確信した。
この城は壊れなくてはいけないのではなく、本来壊れていたはずなのだと。
つまりそこには、玖渚友にとって、それこそ絶対的な計算外たる誰かがいたのでは無いかと。
玖渚友は確信した。
そこには確実な故意があったはずだと。この砂の城を崩すことには、なんらかの意味があるのだろうと。そしてそれは、そこには、つまらなそうな表情をした、目の死んだ子供がいたはずだと。
「あ。」
玖渚友は、振り返って
自分は今、誰も殺さずとも人間なのだろうと。
そしてその時。
「うにっ。」