星と水底のおとぎばなし   作:小日向ひより

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16.今日から背後霊になります

 

 

 澪とアンがシャワー室であーだこーだしている間に現れたスタンド使いは、船員どころか船長がなりすましていたらしい。爆弾が仕掛けられていたのも納得である。

 

「確かに半魚人みたいなスタンドじゃった」

 

 なんでも『月』の暗示を持つスタンド使いで、その意味は水のトラブル、嘘と裏切り、未知の世界への恐怖。タロット大アルカナ18番目のカードだそうだ。

 

「あー、やっぱり」

 

 承太郎が海に引きずり込まれて苦戦を強いられたそうだが、隙を突いてボコボコにしたとのこと。

 イタチの最後っ屁とばかりに爆発させられてしまった船はもはや渡航不可能なので、船員含めた全員で救命ボートへと移り、現在は救助を待っている状態である。

 

 道筋を決めた途端にこれなのだから、前途多難もいいところだ。

 

 ゆらゆらと不規則に揺れるボートはかなり不安定で狭く、体育座りをしたままぼんやりするくらいが関の山だ。

 既に夜も明けて日差しは熱く、海水が乾いて服と肌がぱりぱりする。顔を両手で拭ったら塩が落ちた。

 

「せっかくシャワー浴びたのに、ごめんねアンちゃん」

 

 自分と同じような感じになっているアンに小さく頭を下げると、アンは首を振った。

 

「あのまま蒸し焼きになるよりはいいわ」

「そう言ってもらえると救われるよ」

 

 せっかく危険から遠ざけようとしたのに裏目に出ていたような気がするので、本人にそう言って貰えると幾ばくか安心する。

 

「水を飲むといい」

 

 胸を撫で下ろしていると、ジョセフがアンに水の入った水筒を差しだした。

 

「救助信号は打ってあるから、もうじき助けは来るだろう……」

 

 どうやら爆発する直前に計器を使って信号を送ったらしい。そこら辺は抜け目のない男の面目躍如といったところか。

 アンは水筒を受け取りながら、戸惑ったように周囲に視線を巡らせる。

 

「何が何だかわからないけど、あんたたち一体何者なの?」

 

 アンにしてみれば密航先でいきなり鮫だのスタンドだの爆発だのと、普通に生活していたら出会うはずのない災難に遭遇しているのだ。疑問を抱くのも当然だろう。

 

「君と同じに旅を急ぐ者だよ」

 

 ジョセフは即答したが、それだけだとたぶん説明が足りていない。

 

「もっとも君は父さんに会いに……儂は娘のためにだがね」

 

 病床の娘を助けるための特効薬を求めて旅をしている、と言えば聞こえはいいが実際問題のハードルが高すぎる。

 アンにとっては本当にいらんトラブルに見舞われまくりの不運としか言いようがない。

 とりあえず彼女の安全は確保しなくては、と決意を固めた。

 

「……ん?」

 

 その時、澪の背筋を撫で上げるような悪寒が走った。

 

「うぶふっ!」

 

 同時にアンが口に含んでいた水を吹き出す。

 

「こらこら、大切な水じゃぞ。吐き出すやつがあるか」

 

 ジョセフが軽くたしなめるが、アンはそれどころじゃない。

 

「ち、違う」

 

 ある一点を見つめたまま、目を見開いて驚愕している。

 

「み、みっ、みん、みんみんみんみんなあれを! 見て!」

 

 蝉みたいだなとちらっと思いつつアンの指差した方を振り向くと──見上げるほど巨大な、黒塗りの船舶が間近に迫っていた。ぎょ、と身体が硬直する。

 

 周囲には霧が渦巻き、貨物船と思われる船舶は死んでいるようにひそとも音がしない。

 波の揺れもほとんどなく、目の前にあるのに現実感の薄い、幽霊船のような船だった。

 既にタラップまで降りていて、こちらを受け入れる準備は万端である。周囲は助かっただのと歓声を上げているが、正直すごく不気味だ。

 

「え、ええー……これ乗るの」

 

 ぼそっと呟く。

 どう見ても罠っぽい。丸出しすぎて逆におののくレベルだ。

 疑問を持ったのは澪だけではなかったのか、承太郎も険しい目つきで貨物船を睨み付けている。

 

「承太郎、それに澪も……何を案じておる?」

 

 不審がっている二人を見て、ジョセフが首をひねった。

 

「まさか、この貨物船にもスタンド使いが乗っているかもしれんと考えているのか?」

 

 承太郎は貨物船をつぶさに観察しているようだった。

 

「いいや、タラップが降りているのに何故誰も顔を覗かせないのかと考えていたのさ」

「僕はこんなでっかい船が近付いたのに、ボートひっくり返らなかったのが不思議」

 

 普通、ここまで大型船舶が近付けば波頭が救命ボートにぶつかって大なり小なり揺れるはずだ。なのに、この小さな救命ボートは小揺るぎもしなかった。

 しかしそれも単に気付かなかっただけかもしれない。みんなの喜びに水を差すような、言ってみればいちゃもんに等しい。

 疑問はあっても確証はないから、ただの救助船という可能性だって捨てきれたわけではないのだ。

 

「ここまで救助に来てくれたんだ! 誰も乗ってねえワケねえだろーがッ!」

 

 と、痺れを切らしたのか一足早くポルナレフがタラップを駆け上がってしまった。

 

「例え全員スタンド使いとしても俺はこの船に乗るぜッ!」

 

 あかんそれフラグや。

 

 推理小説やホラー映画で真っ先に殺されそうな人みたいな台詞を吐くポルナレフに続き、船員たちも続々とタラップを上がってしまう。

 ここでぐずぐずしていても進展がないことは分かったので、承太郎と澪は顔を見合わせてから貨物船に視線を向けた。

 仮にスタンド使いが乗船していても、善戦できるくらいの人員はいる。ある程度調べてからでも遅くはないだろう。

 とりあえずしんがりくらいは務めよう、と澪は残ったアンを視線で促す。

 

「掴まりな、手を貸すぜ」

 

 承太郎が紳士的に手を差し出したが、アンは仏頂面をしてジョセフに飛びついてしまった。どうやら胸を揉まれたことを恨んでいるらしい。

 ちなみに、救命ボートに乗っている間に澪は本当に承太郎に一発入れていた。すごく睨まれたが自業自得である。

 

 やり場のない手を見つめている承太郎がちょっと面白くてくすくす笑っていると、じろりとこっちを見てその手を方向転換。

 

「アンちゃんに振られて残念ですなぁ」

「いいからさっさと乗れ」

 

 これ以上茶化すと怒られそうだったので、澪は大人しく承太郎の手に掴まってひょいとタラップに乗り移った──瞬間だった。

 

 ぽんッ!

 

「うぇッ!?」

 

 着地した爪先の金属板から小さな葉がいくつも弾け、ふ、と踏みしめていた床の感覚が消失する。

 ぞくりと首筋が泡立つのも束の間、澪は落とし穴よろしくそのままひゅー、と落ちそうになった。年末によくあるドッキリ企画みたいだった。

 

「ッおい」

 

 咄嗟に承太郎が掴んでいた手を引っ張ってことなきを得たが、災難はそれに留まらない。

 

「え、え、えッ!?」

 

 なんとか着地しようとタラップに足先をかけた端からぱちぱちぱちッ、と炭酸の弾けるような音とともに名前も分からない植物が芽吹き葉が散り花が咲いて、そのたび澪は海に放り出されそうになる。

 相変わらず正体の判然としていないスタンド(?)が発動したことで、澪の体重は既に紙風船くらいあるかどうかだ。

 ふわふわと頼りないので捕まえている承太郎に苦はないが、それよりお互いに混乱が先に立つ。

 

「どうした!?」

「わ、わ、わかんない、スタンドに誤作動ってあるの?」

「俺が知るか!」

 

 そりゃそうだ。

 

 承太郎に支えられたまま無意識に手すりに触れようとすれば、可愛らしい桃色の花弁がはらはらと舞い、指先はすり抜けてしまう。

 これは困った。船に触れない、どころか支えてくれる誰かがいなかったら澪はそのまま海に落ちる。お陀仏だ。泳げないのだから。

 

「あ、アヴドゥルさん! アヴドゥルさーんッ!」

 

 困った時のスタンド知恵袋、澪は全力でアヴドゥルを呼ばった。

 

 

 

☓☓☓☓☓

 

 

 

 結論として、アヴドゥルにも原因は分からなかった。

 

「もしかしたら、以前のジョジョのように暴走しているのかもしれない」

 

 それは、承太郎がスタンドを認識する前、悪霊と呼んでいた時のことだろう。まだ自覚がないから制御が効かず、野放図に暴れていた時期があった。

 その時のように澪のスタンド(?)が何らかの要因で暴走しているのでは、というのがアヴドゥルの推論である。

 

「うう、面目ない」

 

 船に降りるどころか立つことも叶わないので、澪は現在花京院の肩に掴まって背後霊よろしくふよふよしている。

 航行しているのだから当然風があるので、気流の流れで後ろにひっくり返ってしまったらアウトだ。誰かに掴まっているしかない。

 

「ごめんね典明くん」

「いいさ、重みも感じないくらいだ。でも困ったね」

「困ってるー、どうしよう……」

 

 眉根を寄せてしょんぼりしている澪に花京院は苦笑する。

 

 スタンドの取り扱いについてなら一日の長がある花京院だが、彼女のスタンドは未知数故に助言のしようがない。

 ただ、誰かに常に頼らなければならないということは、澪が無茶をできないということでもあるので……その点は安心材料でもあったりする。

 

 誰かに害が出ているワケでなし、適当に誰かに掴まっていればいい話なのでしばらくはこのままでもなんとかなるだろう、というのが全員の結論だった。

 ちなみにアンは何を勘違いしているのか「澪ってそんな手品もできるの!? すごいわ!」とか目をきらきらさせていた。シャワー云々の時に何かやらかしていたらしい。

 

「狸の時より役に立たないとか僕ってば紙くず以下じゃん……」

「そう卑下するな。しかし見えるゴーストとは新しいのう」

「感心しないでよ、もう」

 

 にやにや笑っているジョセフを睨み付けていると、ポルナレフが吹き出した。

 

「そうやってると花京院の新しいスタンドみたいだぜ」

「ポルナレフさんまで……」

 

 情けないやら申し訳ないやらで澪はなんとも身の縮まる思いだった。

 ここなら平気かな、とこっそり降りてみようとしてもその度にぽんぽん花が咲いたりするからすぐバレるし、ちょっとは我慢してろと怒られてしまう始末だ。常時発動しているのか体重も元に戻らない。

 

 まぁ、そんな澪のオモシロ現象はともかく、それよりも優先して解かなければならない謎がある。

 

 それは、この貨物船は完全に無人という事実だ。

 どこにも人気がないのに計器類は正常に機能しているのだから不気味すぎる。

 ポルナレフは全員下痢気味で便所に籠もってるんじゃねぇのとギャグを飛ばしていたが、これは由々しき事態である。

 

 考えられるのは、ひとつは正常作動している船から乗組員が突如として消失したか、或いは始めから誰も乗っていないか。

 

 操舵室の計器板を調べていたジョセフが思いついたように顔を上げる。

 

「あ、機械類には触るんじゃないぞ。花にされちゃかなわん」

「分かってるよ。でも、好きで花咲か婆さんやってるワケじゃないんですけど」

 

 いまいち緊張感のない会話をしていると、アンが慌てた様子で別の船室から飛び出してきてこちらを手招きした。

 

「みんな来てみて、こっちよ! こっちの船室よ」

 

 全員で行ってみると、船室の中央に頑丈そうで大きな檻が鎮座しており、中には一頭の大猿がいた。

 茶色い体毛はごわごわしており普通のオランウータンよりも大きいが、それよりも妙に賢しそうな目つきをしているのが澪の勘に引っかかった。

 

 猿、いやオランウータン……鳴き声?

 

「あ」

「猿なんぞどうでもいい! こいつに餌をやっているヤツを手分けして探そう!」

 

 澪の呟きはジョセフの声にかき消された。

 

 脳裏に閃く文字列。例の手紙に書いてあったのは『ウホウホ海賊時代』。

 前回があれだったのだから、今回は目の前にいるオランウータンがキーパーソンになっているのかもしれない。

 しかし、動物がスタンドを使えるなんてあるのだろうか。

 だがこの場で澪が手を出したら、せっかく錠前がついているのにオランウータンを野に放ってしまうことになりかねない。檻が消えてしまっては困る。

 

 アヴドゥル辺りに尋ねてみようか、と考えている間に全員で船室を出た。

 

 まばゆく差し込む太陽光線で一瞬目が眩む。甲板ではちょうど船員とアヴドゥルがクレーンなどの機械の様子を見ているところだった。

 見上げると、さすが貨物船とあってクレーンの大きさは凄まじく、極太のケーブルに繋がれたかぎ爪も物々しい。

 

 不意に、それが僅かに軋んだような気がした。

 

 あの重さでは風程度の影響など受けないだろうに、ぎい、と巨人がケーブルを引くかのように持ち上がり──

 

「アヴドゥル! その水兵が危ないッ!」

 

 いち早く危険を察知したジョセフが叫ぶ。

 高々と持ち上がったクレーンは自重と振り子の原理で大きく弧を描いて、凄まじい速さで真下にいた船員の頭部に直撃する──かと思われた。

 

 ごちーんっ!!

 

「にぎゃーッ!」

 

 響き渡ったのは、澪の悲鳴だった。

 

 肩の僅かな重みがなくなったことに気付いた花京院が振り向くと、承太郎が何かをぶん投げたポーズをしていた。

 船員に直撃するはずだったかぎ爪やケーブルにはタンポポだのなんだのといった花が咲き乱れ、半ばから消失している。

 その下では、船員を下敷きにして頭を両手で押さえて悶絶している澪の姿。

 

 まさか。

 

「ジョジョ……」

「役に立ってよかったじゃあねぇか」

 

 しれっとしたものである。

 

 承太郎の瞬発力と洞察力、そして判断力は抜きん出ていた。

 

 突如として船員を急襲しようとしたクレーンを視認した瞬間、承太郎の脳裏に澪の暴走しているスタンド(?)が掠め、咄嗟に花京院の近くでふわふわしていた澪の襟首を『星の白金』でひっつかんで全力で投擲。

 暴走していても敵意のないスタンドは変わらず通用したのは僥倖だった。

 

 軽そうに浮かんではいたが『星の白金』の腕力で投げられればそれなりの質量になったらしく、澪は船員にぶつかりクレーンは消失。

 船員に頭突きをかましてしまうことになったが命に別状はない。事なきを得たのだった。

 

「でかしたぞ承太郎!」

「ナイスコントロールだったぜ!」

 

 船員の命は助かったのでジョセフたちは当然賞賛したが、面白くないのが約一名。

 

「は、ぐぅッ、い、いたぁああ……!」

 

 一瞬頭が割れたかと思うほどの衝撃と痛みだった。目の奥がまだちかちかする。

 

「の、脳天が……ッ、へこんでたらどうしてくれる」

「安心しろ、へこんではいない」

「うう、それでもひどいと思います。おもに頭部と僕の扱いが……」

 

 頭のてっぺんを押さえてしくしくしている澪をアヴドゥルが支えながらなぐさめている。

 ようやく落ち着いたらしく、澪はまだ倒れている船員を足場に軽く飛ぶとジョセフと承太郎の前に降りて怨念の籠もった涙目で睨み付けた。

 

「じょーたろぉおお! ていうか、僕すっごいデジャヴ!」

 

 床に触れると落ちるので、承太郎の胸ぐらを掴んでムカ着火ファイヤーである。

 

「前にジョセフにもやられたんだぞ!? こんなの絶対おかしいよ!」

 

 ジョセフがぎくりと肩を強ばらせながらそっぽを向いた。

 

 澪はジョセフとの共闘時代、狸の時にそーれとってこーい、とばかりに当時何が何でも守らなければならない『赤石』というものを敵より先に奪取するためにぶん投げられた。

 結果としてそれは成功したのだが、怖いし寒いし敵が間近で死ぬかと思ったし散々だった。今度はこれだ。呪われているんだろうか。

 

「それともジョースターの血統は僕をぶん投げないとならない使命でも帯びてんのかーッ!?」

「そんな使命ねぇよ」

「あったら困るわ!もーッ!」

 

 渾身のツッコミである。

 肺を絞るまで声量を使い切ってぜーはーしている澪に、承太郎は小さく鼻を鳴らしてからその頭をぐしゃぐしゃ、と撫でる。よくやった、というように。

 

「人命救助だ。しょうがねぇだろ」

「うぐ……」

 

 そう言われると弱い。前もこんな感じだった。

 とはいえ、自分だってそこまで聖人君子でも仏様でもないので、ここまでやられると悔しいやらムカつくやらで鬱憤は消えない。

 澪はじとりと承太郎を睨め付けたまま、器用に背中へと回ると子泣き爺よろしくぺったり張りついた。

 

「人助けができたのはよかったけど、腹は立つので船出るまで承太郎にひっつくことにします」

 

 宣言して、両肩に手を置いてぶつぶつ恨み言を呟く様子はそれこそ承太郎に取り憑く悪霊みたいだった。

 

「好きにしろよ。重さも感じねぇけどな」

「むぎぃい! くそっ、都合よく目覚めろ僕のなんかそれっぽい能力! 今すぐ体重二倍、いや百貫くらいになれ!」

 

 あまりに悪びれる様子がなかったので、すごい無茶を言い出す澪だった。

 

「375㎏になったら問答無用で振り落とすぞ」

「うう、このよくわからんスタンド(?)が憎い……」

 

 しょぼくれて影を背負ったままくっついている澪に目もくれず、承太郎は普通に歩き出してしまう。

 女性には基本的に紳士的なジョースター家なのに、澪が相手だとその範疇から外れるらしい。扱いが非常に悪い。

 

 一連の事態を呆然と見ているしかなかった船員たちの間に、じわじわと恐怖が伝播したのはその頃だった。

 

「誰も触らないのに……誰も! あの操作レバーに触らないのにクレーンが動いたのを俺は見たッ!」

「ひッ、ひとりでにあのクレーンはあいつを刺し殺そうとしたんだッ!」

「い、一体!?」

 

 助かったとはいえ、不気味な現象には違いはない。

 動揺と焦燥が走り、スタンドの脅威を知っている面々よりその不安は大きい。

 スタンドが扱える面子としては、明らかにこちらを殺すつもりで襲ってきたのだからどこに敵が潜んでいるのかを確かめなければならない。

 花京院はさっそく『法皇の緑』を船内にくまなく這わせ、異常がないか探り始めた。

 

「な……何が何だかわからないけど、やっぱりあんた達がいるからヤバい事が起こるんだわ」

 

 不安そうなアンの声が妙に響いた。あながち間違っていないのが辛いところである。

 

「疫病神なの? 災いを呼ぶ人間がいて、巻き込まれるからそいつには近付くなって……そうなの?」

「おおむねそんな感じかなぁ」

 

 ふよふよしながらあっさり頷く澪である。

 アンの頬が恐怖で引き攣ったが、空気も読まずに更に追撃した。

 

「どっちかっていうと災いがこっちを集中砲火してる、というか」

 

 こちとらDIOが倒せればそれでいいのに、次から次へと邪魔してくるのはあちらさんである。

 

「こらこら、あんまり女の子をビビらせるんじゃあない」

 

 ぴん、と澪の鼻先を指で弾いてから、ジョセフはアンの前に膝をつく。

 

「君に対して、ひとつだけ真実がある」

 

 す、と指先をアンへと示して。

 

「我々は君の味方だ」

 

 アンは巻き込まれただけの女の子だ。守るべき優先順位は誰よりも高い。

 

 全員で力強く頷いた。肯定するように。

 

 そしてジョセフは身を守る最善の策として機械類や動いたり電気を流すもの一切に触れないよう、船員たちに向かって下知を下した。

 

「命が惜しかったら儂の命令に従ってもらおうッ! 機械類には決して近付かず、 全員いいと言うまで下の船室内にて動くなッ!」

 

 船員たちは口々にぶーたれていたものの、この貨物船が不気味であることは船乗りの勘で察したらしく、渋々と船室の方へと向かった。

 

 

 

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