星と水底のおとぎばなし   作:小日向ひより

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25.運命の車輪①

 

 

 ベナレスでちょっとした騒ぎにはなったものの、旅はおおむね順調と言えた。

 

 その後、無事にベナレスを出発した一行は車を調達してデリーを経由して一路パキスタンへ向かっている。

 日本と違って舗装もろくにない悪路でも耐えられるよう、タイヤが大きめの大型四輪駆動車だ。

 郊外を外れて、やがて窓の向こうは荒涼とした景色に変わってゆく。ごつごつした岩肌ばかりで木も少なく、遠くに見える山脈もうっすらと雪化粧が施されていた。

 

「まもなくパキスタン国境か……インドとも、もうお別れですね」

 

 花京院が呟く。

 運転席には免許を持っているポルナレフが座り、彼は助手席だ。

 

「うむ、最初はなんちゅう国だと思ったが、今はカルカッタの雑踏やガンガーの水の流れが早くも懐かしいのぉ」

「……ふん」

 

 後部座席のジョセフが頷き、承太郎が小さく鼻息を漏らす。

 

 その真ん中で挟まれるようにちんまりと澪は座っていた。

 最初は端っこを希望したのだが、「潰れてぇのかよ」とぼやかれたのであえなく断念したのだ。

 確かにドアと筋肉に挟まれていたら揺れるともっと痛いかもしれないし、もし襲撃の際に自分はあまり役に立てないので納得せざるをえなかった。

 とはいえ、この旅の一行は揃いも揃ってガタイがいいので、正直なところわりと居心地が悪い。物理的な意味で。なんせ鍛えられた筋肉サンドなので痛いやら硬いやら。ついでに岩肌に無理矢理引いたような道路はでこぼこや石も多く、ポルナレフの運転が荒いことも手伝って尻も痛い。

 

 赤くなってないといいなぁ、と遠い目をする澪である。さすがに尻は鍛えられない。

 

「俺はもう一度インドへ戻って来るゼ、アヴドゥルの墓をきちっと作りにな」

 

 沈痛な響きのポルナレフに、暗鬱な空気が漂い、澪も黙ったまま俯く。実際のところを知っているため口出しができないのだ。

 ポルナレフへの申し訳なさに苦虫を噛み潰しているような表情になっているのだが、ポルナレフはアヴドゥルを思ってのことだと誤解したらしい。

 

「そん時はもちろん澪も行こうな」

「う、うん……」

 

 なんとか頷くもののすごい罪悪感だった。胃が痛い。

 キリキリと痛むお腹を押さえていると、窓の景色がまた変わっていることに気付く。

 

「道が狭くなってきたな」

 

 ポルナレフの言う通り、両側を岸壁に挟まれた隘路で道幅がかなり狭い。

 すると、いつの間にか前方を塞ぐように先行車が走っていた。

 くすんだ赤色の、昔のタクシーみたいな型をしていてかなり古そうだ。速度が出ないのか前に他の車があるのは判然としないが、かなり遅い。

 

「こんなところで渋滞? 前の前にも車あるの?」

 

 澪が呟くと、助手席の花京院が窓を開けて外を覗き込んでから首を振った。

 

「いや、ない。あの車が遅いだけだ」

「チンタラ走ってるんじゃあねぇぜ! 邪魔だ!」

 

 嫌がらせのように車幅ギリギリまで速度を落とす車の放つ排気ガスと、巻き上がった土埃が開いた窓から流入してきてかなり煙い。

 思わず袖で口と鼻を塞ぐと、ポルナレフが咳き込みながら業を煮やしたようにアクセルを踏み込んだ。

 

「追い抜くぜ!」

 

 ぐん、とスピードが上がり、荒いが確かなハンドル捌きで前の車を追い抜いていく。悪路も相まってオモチャのように車が揺れた。

 

「どわッ」

 

 急激にかかったGで一番体重の軽い澪はシートベルトもないので不幸にもつんのめり、「おぶッ!?」ごちっと前の座席に顔面をぶつけた。とても痛い。

 

「ポルナレフ! 荒っぽいぞ!」

「へへへへへっ! さすがの四輪駆動よのォー、荒地でもへっちゃらさ!」

 

 車を追い抜いて上機嫌のポルナレフは花京院の叱咤なんぞ聞いちゃおらず、そのまま彼は顔面を押さえてうーうー唸っている澪を心配そうに振り向いた。

 

「あたー」

「澪、だいじょ……って、鼻血出てるじゃないか! ポルナレフ貴様!」

「えっ!? わ、悪ぃごぶぅ!」

 

 問答無用の握手(物理)がポルナレフの顔面で炸裂した。

 当たり所が悪かったらしく、澪の鼻からたらたらと血が流れ出ていた。そばにティッシュがなかったので慌てて鼻を押さえて上を向く。

 

「や、すぐ止まるから気にしないで……」

 

 片手でリュックを探り、ティッシュを引っ張り出す澪を見ながらジョセフがしみじみした。

 

「お前さん、昔っからじゃがたまにどんくさいのう。おい、今小石はね飛ばしてぶつけたんじゃあないのか?」

「かもな。ホントごめんな!」

「事故やトラブルは困るぞ。無事に国境を越えたいんじゃから」

 

 確かにトラブルに巻き込まれて到着が遅くなるなんて冗談ではなかった。そういう意味では安全運転をお願いしたい。

 

「おい、上向いてると喉に入るぞ」

「うーす」

 

 承太郎へ適当に返事をしつつティッシュで鼻を押さえ、改めて下を向こうとした──直後。

 

「げぇッ!?」

 

 ポルナレフが突然変な声を上げてブレーキペダルをベタ踏みした。

 急制動で車体ががくんと揺さぶられ、澪どころか全員の身体が大きく傾き、「むげッ!」潰れた蛙みたいな声が出た。

 

「どうしたッ! ポルナレフ!?」

「言ったじゃろ! 事故は困るって!」

「っち、違うぜ! 見ろよ! あそこに立ってやがる!」

 

 ポルナレフの指差す先では、ヒッチハイクの恰好をした見覚えのある少年──もとい、アンが機嫌よさげににっこりと笑っていた。

 

「いよっ! また会っちゃったね! 乗っけてってくれる?」

「アンちゃん! 久しぶり!」

 

 可愛い友達の再登場に喜び、承太郎を乗り越えて手を振った澪だったが、

 

「澪も元気そう……じゃない!? ひぃっ!」

 

 アンも笑顔で応えようとしたのだが、ホラー映画でも見たような引きつった悲鳴を上げた。

 

「え、元気だよ?」

「じゃあなんでそんなに血だらけなのよぉおお!」

「……あ」

 

 二度目の衝撃で澪は喉奥に溜まっていた血液を噎せて吐き出してしまい、鼻血がまだ止まっておらず、ひとりだけ凄惨な事故現場の被害者みたいになっていたのだった。

 

 

 

☓☓☓☓☓

 

 

 

 乗せる乗せないで一悶着はあったものの、結局次の国境で香港に送り返すというところで話はまとまった。

 なにせ危険な道中なので、何かあってからでは遅い。非戦闘員を連れて行くのは可哀想、というより不可能なのだ。

 

 ついでにアンは父に会うために出奔した少女というワケではなく、ただの家出娘という事実も判明した。

 ここまで来る行動力と生活力には目を瞠るものがあるが、やはりまだ若すぎると思う。

 

「だって、あたし女の子よ? もう少したてばブラジャーだってするしさ、男の子のために爪だって磨くわ!」

 

 車内では、そんな少女の青い主張が威勢良く響いている。

 

「そんな年頃になって世界を放浪するなんてみっともないでしょ、今しかないのよ、今しか! 家出して世界を回るのは……! 澪もそう思わない?」

 

 話をふられた澪はぐいんと身体を折り曲げ、逆さで窓を覗き込んで苦笑した。

 

「とりあえず家出って時点でアウトだよ。するならちゃんと手順踏まないと」

「ぶぅ~、意地悪!」

 

 頬を膨らませるアンに手を振って、再び起き上がろうとすると花京院が心配そうに眉をひそめた。

 

「澪、そんなところで本当に大丈夫なのかい?」

「ぜんぜん平気~、結構楽しいよ」

「なら、いいけど……いや、いいのか?」

 

 自問自答している花京院の後ろから、ジョセフが彼の肩を叩く。

 

「ほっとけ、どうせ言い出したら聞かんのじゃ。今のところ問題もないしな」

「ですが……」

 

 なんでこんな会話になっているかと言うと、現在澪の居場所はルーフだからである。

 頑丈さに重きを置いて作られているため、車内が狭くアンまで乗せるとなると座席の問題が出てきてしまったのだ。

 

「あ、じゃあ僕上でいいや」

 

 そこであっさり変なことを言い出しながらひょいっと車のルーフへ移動してしまった澪である。

 一瞬遅れて『上』の意味を理解した面々は当然揃って反対したのだが、本人はあまりにけろりと答えた。

 

「車狭いし、なんかあったらすぐ脱出もできるし、いいじゃん」

 

 いいじゃんとか言われると困るのだが、ここまで当人が平然としているのだからいいんじゃないかという気風も出てくる。

 そして駄目押しのように澪は片手を上げて見せる。ぱち、と小さな燐光が弾けた。

 

「澪、それ」

「くっつく波紋なら、僕でもできるよ?」

 

 驚いたようなジョセフに澪はにっこり笑う。

 波紋自体は弱いがくっつく波紋も弾く波紋も使えることは使えるのだ。ジョセフたちとしてきた修行期間は伊達ではない。

 とはいえ、持続時間はジョセフやシーザーに完全に劣るので、地獄昇柱に挑めと言われても無理である。

 

 しかし、これで澪のルーフ座席を止められる要素はなくなった。

 座る場所自体は安定しているし、バランスと風に気を付ければわりと快適である。

 万が一に備えて警戒態勢を崩したりはしないが、筋肉サンドより開放感があるのは確かで途中で止まっていた思索も巡り出す。

 

「『すごく、トランスフォーマーです…』ねぇ」

 

 さっきの車で思い出したが、そういえばそんな文言だった。

 すぐ思いつくのは往年のアニメと一時期人気を博した実写映画だが、どちらにせよ少年心がくすぐられる車がガシャガシャーンと変形するアレである。

 しかし、あんなボロい車がそんな恰好よく変形するものだろうか。合体するには周囲に車も見当たらないし、想像がつかない。

 そもそもさっきの車が敵だという確証がないのだから、まだ様子を見るべきなのかもしれない。

 

 すると、ゴンッと下から小さな衝撃。

 

「もう、話聞いてる!?」

 

 どうやら思考に埋没していたせいでアンが話しかけてきたことに気付かなかったようだ。いかんいかん。

 身体を折って、窓越しに怒り顔のアンに謝る。

 

「ごめん、聞いてなかった」

「ちゃんと聞いててよ、もう。だからさ、澪は好きな人とかいないの?」

「好きなひと、とな」

 

 なんというか、あまりに女の子全開の質問で思考がストップした。

 最近、面子のせいもあるのだろうが斬った張ったの丁々発止か、作戦会議ばかりの潤いゼロの話ばかりだったので新鮮である。

 澪はなんだからうきうきして、楽しくなってきたので元気よく頷いた。

 

「いるよ~」

「えっ、本当に!?」

 

 なぜかいることに驚かれてしまった。失敬な。

 そしてアンのみならず他の面子も一斉にちょっと体勢を崩した気がする。べつに今揺れてないんだけど。

 

「ね、ね、どんな人? もしかしてこの中に……」

 

 アンは迷うように承太郎へちらちら視線を向ける。

 どうやらアンも彼のイケメンオーラ諸々に惚れ込んでしまったクチらしい。相変わらず罪な男である。

 澪は迷いひとつなく首を横に振った。

 

「そりゃみんな好きだけど。そうじゃなくって、あのね、筋肉ムキムキでー」

「うん」

「身長高くってー」

「うんうん」

「金髪でー」

 

 そこでジョセフが「ワンチャン、ワンチャンあるかもしれんぞ……」とか呟きながら小さくガッツポーズを作り、承太郎が舌打ちしたのが気になったが構わず続ける。

 

「それで?」

「うん、それでね!」

 

 アンも興味津々で身を乗り出し、澪は楽しそうに憧れの人を語った。

 

「身体の半分くらい機械化してて」

「え?」

「目からビームも出るし、お腹から機関銃連射できて、胸の辺りからまっぷたつにされても復活する誇り高い軍人さん!」

 

 瞳に星屑を煌めかせて揚々と語られた内容にもかかわらず、周囲の反応は微妙だった。

 「あ、ああ~……! そうじゃった。澪あいつにぞっこんじゃった」とジョセフが片手で顔面を覆い、承太郎が肩を竦め、ポルナレフは花京院の肩をバンバン叩きながら爆笑している。

 

 アンはちょっと考えてからとても生暖かい瞳で澪に笑いかけた。

 

「澪、あたしは現実のお話をしてるのよ?」

「ええっ、僕の大好きな人が非実在軍人にされた!?」

 

 まさかの諭すような発言に仰天する澪だった。

 確かに誇り高き戦死を遂げたが実在する軍人だったのである。大佐だったのだ。

 

「待って待って! 確かに殉職はしちゃったけど、えっと、ロケットパンチ出せて、ゴルフボール片手で握り潰せるくらい強化してる人で、ツンケンしてたけど僕らを助けてくれて……」

「ああ、最初は敵だったけど途中から主人公の仲間になってくれるタイプなのね。この前見た特撮にそういう怪人がいたわよ」

「ま、間違ってないけど違う! だいたい合ってるけど! そうじゃなくって、ああもう、ジョセフ! ジョセフ~!」

 

 このままでは心のアイドルこと名誉あるドイツ軍人が二次元の存在にされてしまうので、澪は必死で彼を知っている唯一の人物に助けを求めた。

 

「シュトロハイムさんが別次元の存在になっちゃう! アンちゃんに証明したげて!」

「……いや、改めて考えるとシュトロの野郎ほんとに規格外で儂もコメントに困るというか」

 

 過去の戦闘を思い出したのか顔色悪く言い淀むジョセフに澪は食ってかかった。

 「そんなこと言ったら柱の男どころか先生たちも規格外じゃんんん! 水はプリンにするし、二人は地獄昇柱とか飲まず食わずで昇ってきたくせに!」「何を言うか! それならお前さんだって一緒じゃろ! 半日狸になるとか人とかどうかすら怪しいわい!」「ひでぇ! こちとらあの謎ハンデ大変だったんだぞ!? あっ、くそ赤石の恨み思い出した! 雪原にぶん投げたの忘れてないからな! 結局あのあとなんにも奢ってくれなかったし! こうなったらシーザーにチクッてやる!」「や、やめんか! バレると怒られるじゃろ儂が!」「怒られといてよそこは!」ぎゃーすかぎゃーすか。

 

 なんて、言い争いに白熱しすぎて澪は完全に油断していた。

 

 ぐん、と突然車のスピードが上がり、二人が喧嘩している間に追い抜いていたらしい例の車をまた追い抜いていく。

 その瞬間、車体の眼前に突然現れたように超重量のトラックが迫っていた。

 

「なにィ!」

「うあああ! トラック! バカな!」

 

 驚愕の叫びが車内で響き、澪はと言えば危機回避本能で咄嗟にルーフを踏み抜くような勢いで跳躍、岩壁を更に蹴り上がり、足場になりそうな箇所に着地してしまった。

 

「やべっ、」

 

 非戦闘員を置き去りにしてしまった事を思い出し、青ざめる澪だったが、

 

「『星の白金』ッ!!」

 

 眼下では超重量に押し潰されそうになった瞬間に承太郎がスタンドを発動。

 信じられない膂力でトラックをぶん殴り、その反動は車体全体を軽く浮かせ、なんと宙返りして無事に着地。後退することに成功する。

 その間に例の赤い車は走り去っていく。追いかけるには出遅れてしまった。

 

 澪は慌てて岩場から飛び降りて、車をバシバシ叩いた。

 

「ちょ、アンちゃん大丈夫!?」

「テメェ最初の心配がそれか」

「黙れ戦闘民族! でもファインプレイ!」

 

 承太郎の拗ねたような台詞を一蹴し、澪はアンの安否を確かめて小さく息を吐いた。

 

「よかった~、咄嗟に飛び退いちゃってごめんね」

「あたしは無事だけど、澪が無事なことに驚いてるわ」

 

 確かに危機察知と同時にルーフから跳躍して岩場に避難する、なんて芸当ができるのは澪ぐらいだろう。

 

「承太郎の『星の白金』のパワーがなかったら俺たち……グシャグシャだったぜ」

 

 未だ恐怖冷めやらぬポルナレフが、ハンドルに額を当てながらぼやいた。

 

「さっきの車なら、あっちの方に走り抜けていきましたよ」

 

 澪の位置からでは逃げるように走り去っていく車がはっきりと見えていた。

 

「ふん……。どう思う? 今の車の野郎、『追手のスタンド使い』だと思うか? それともただの精神のねじまがった、悪質な難癖野郎だと思うか?」

「追手に決まってるだろーがよォーッ! 俺たち死にそうになったんだぜ!?」

 

 承太郎の問いにポルナレフが即答するが、正直確証は持てない。

 

「だが、しかし……今のところ『スタンド』らしい攻撃はぜんぜんありませんでしたよ?」

 

 花京院の言う通り、あの車はドラテクを駆使してこちらの車に物凄い嫌がらせをしたに過ぎない。

 スタンド使いである、と結論を下すのは早計である。

 

「とにかく、用心深くパキスタン国境へ向かうしかないじゃろう。もう一度仕掛けてきたら、誰だろうとぶちのめそう」

「それが妥当……かな」

 

 ジョセフの意見に頷く澪。

 スタンド使いなら倒すし、悪質ドライバーならお礼参りだ。ぶちのめすことに変わりはない。

 

「あのトラックはどうします? 『星の白金』が殴ったからメチャクチャですよ」

 

 花京院の示す先では、確かに運転席が見る影もなくへしゃげている。あのままではまた走り出せるかは怪しい。

 

「知らんぷりしてりゃあいいんだよ、ほっときな」

「できるか馬鹿!」

 

 澪は反射的に突っ込みを入れ、メモ帳にさらさらと何かを書き出してからジョセフに突き出す。

 

「SPW財団名義で損害賠償と治療費及び示談金提示したから、ジョセフ番号とサイン書いて」

「ん? あ、おお」

 

 ジョセフは言われるがままにさらさらとメモにサインと番号を書き記した。

 SPW財団にせよジョセフにせよ、阿呆みたいな金持ちなのだから納得のいく金額を申し出てくれれば問題ない。

 

「じゃ、これトラックの運ちゃんの所に挟んでくるから」

 

 言うだけ言って、澪はメモを持って本当にトラックの運転席の目立つ辺りにセロテープでメモを貼り、戻ってきた。

 

「あとで難癖つけられたら困るのはこっち、もとい運転してたポルナレフさんなんだからね? もう」

 

 承太郎に念を押すようにそう言って、澪はまたルーフに戻ってしまった。

 

「気のせいか、手慣れてねぇ?」

 

 ぽつりと呟かれたポルナレフの言葉を拾ったらしく、上から声が響いた。

 

「長年承太郎と付き合ってたら、自然とそういう役回りって覚えるもんなんです」

 

 そういう面でホリィは迷いがちだし世俗に少々疎いところがあり、彼の父は不在がちだしで、結局は澪が尻ぬぐいというか事後処理を引き受けていたのだ。

 

「……」

 

 全員の注目が承太郎に集まったが、彼は帽子を目深に被ってしまった。

 

 

 

 

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