元プロ野球ドラフト候補が何故か国見比呂の息子としてMAJOR 2ndの世界に転生して再びプロ野球選手を目指してみた   作:意思を継ぐ者

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第3話 父と母

「部活は野球をやろうと思う」

 

緊急に行われた国見家の家族会議は俺のその一言から始まった。

母さんは俺の一報に手を叩いて大はしゃぎして、何故だか晩御飯を食べていた箸を置くと台所から急いで飛び出ていき、姿は見えないが何かバタバタしているようだ……。

 

「そか まぁ頑張れよ」

 

ーえ?……それだけ?ー

 

母さんの反応は予想の範囲内だとして、父さんの反応はちょっとだけニヤリとしたようにも見えたが、素っ気なさすぎて少し拍子抜けしてしまった。

まぁ元から口数が多い方ではないというのも差し引いても特段、嬉しそうな様子はない。

ただ父さんも母さんと同じで野球が大好きでしょうがない人間だ。

もしかしたら今まで野球に興味を示さなかった俺が突然、野球をやると言ったのでビックリしたのかもしれない。

それを悟られないようにこんな反応をしているのではないだろうか。

俺が今まで過ごしてきた中で見てきた「国見比呂」という父はそういう人間だ。

 

「ごちそうさまでした……」

 

ご飯三杯おかわりしただけで、もう動けない程にお腹が膨れ上がっている。

俺の貧弱な身体を野球用の身体にするには筋トレをする必要があるがそれだけでは効率が悪い。

たんぱく質や炭水化物、野菜などを多めに取る食トレも必要になってくるだろう。

だから胃袋も同時に鍛えていかなければならない。

だが今日は既にお風呂にも入ってるし、とっとと寝るか……。

 

「さて、寝るかな」

 

「なんだ もう寝んのか?」

 

「明日、朝練から部活参加だから」

 

時刻はまだ21:00になったばかり。

同年代の奴らはまだ寝ない奴らの方が多いのではないのだろうか?。

だが明日から朝練に参加する為に5時には起きないと間に合わない。

しかもバスではなく足腰と体力強化を兼ねて自転車通学にするから尚更だ。

 

「そっか お疲れ……あ、悠太、今度時間空いたらキャッチボールでもすっか? お前に野球は甘かねぇこと教えてやるよ」

 

やはり父は俺が野球をやる事に対して嬉しかったようだ。

俺が今までは野球を拒絶していたこともあるのだろうが「キャッチボールをやろう」なんて父は一度も言ったことはなかったはず。

顔の表情は相変わらず崩してないが、俺には父の目が笑っているように思えた。

そんな父はまだ現役のプロ野球投手でそんな生きた教材の誘いを俺が断る理由など一つもない。

二つ返事で「お願いします」とだけ言うと俺は寝室に向かう。

 

「母さんか? 何をしてんだ?」

 

ドヤ顔で俺の部屋の前に立つ母……。

俺がまだ台所にいた時から何やらガサゴソと動き回っていたが何をしていたのだろうか……。

 

「いや別に! 悠太、部屋に誕生日プレゼント置いといたからね 大事に使ってね」

 

そういうと母は俺の部屋の前から鼻歌を歌いながらルンルンで立ち去って行った……。

 

ーいや、誕生日まで後、3ヶ月近くあるんですが……ー

 

母はしっかりしてそうでかなりのドジッ娘というか天然というか……。

高校野球に憧れてたらしいが、何をとち狂ったのか当時はまだ野球部のなかった千川高校に進学したという逸話がある……。

それを聞いた時はさすがに苦笑いしたが、こんなのは序の口。

話すと長くなりそうなのでまた今度の機会に母親のエピソードは話すとしよう……。

俺が自分の部屋に入ると、そこには金属バットに加え、マスコットバット、キャッチャーミットとファーストミットを始め、投手、内野、外野手用グローブそれぞれ一式、バッティンググローブにアンダーシャツにソックス、レガース、スライディングパンツなど野球に必要な物が全て揃えられていた。

 

ー準備していたのか……用意周到がすぎる……ー

 

しかも試しにグローブや手袋をはめて見ると、不思議なくらいフィットした。

スリーサイズはともかく、母親とはいえ手のサイズとドンピシャで分かるものなのか……。

 

ー母さん、あんたはいったいナニ者なんだ……ー

 

前世を思い出さなければ野球をしなかったろうにやる前提でこれ全部買っていたのか……。

もう奇行すぎてさすがに苦笑いしかできないが、ただそんな母にこれだけは言わせてほしい……。

 

ー母さん、ありがとうー

 

準備は万端。

後は寝るだけなので、電気を消してベッドに横になるが、明日から野球ができると思うと血が騒いでしまい眠気が全くこない。

俺の中で新しい環境でやるワクワク感と自分がどこまで成長できるのかという不安が交錯している……。

それでも寝ないと、初日から朝練に遅刻とかしたらシャレにならない。

 

ー腹筋でもするかな……ー

 

回数無制限で腹筋を眠くなるまでしよう。

眠りにつくには疲れるのが一番手っ取り早いし、数も数えながらやれば効果テキメンだろう。

と、思っていたのだが50回くらいからもう起き上がれなくなり、そのまま寝てしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

意識を取り戻したのはセットしていたスマホのアラーム音。

結構早く寝たのに眠く、目を擦る。……。

以前から感じていたことがあるが、もしかしたら睡眠の質が悪いのかもしれない。

アスリートは睡眠の質も大事だ。

睡眠の質が良いと疲れが回復しやすいので良いパフォーマンスを維持しやすくなる。

野球だけに限らずこういう私生活も何とかしなければな……。

とりあえず俺はパジャマから体操服に着替える。

練習着もユニフォームも発注して届くまで1週間くらいかかるらしいのでとりあえず暫くは体操服で部活に参加しなければならない。

バッグに野球道具を詰め込み、リュックに教科書や制服を入れて台所に置かれた弁当と別に作ってもらったお握りを持って家を出ると、納屋から自転車を引っ張り出す。

とりあえずタラタラ自転車を漕がず、ペダルを漕ぐ回数を増やさなければトレーニングにはならいので初っぱなから立ち漕ぎでスタートする。

 

暫く進んだところだ……。

背後から聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「悠太、おはよう!今日からだね!」

 

振り返って確認する必要もない。

声の主など大吾にだと分かってる。

 

「あぁ よろしくな」

「朝練始まったらアップがあるんだけど、終わったはキャッチボールがあるんだ 一緒にやろう!」

 

「いやありがたいんだが、俺じゃなく睦子さんとやった方がいいと思うぞ」

 

「えっ? 睦子と? 何で?」

 

「いや、何でと言うか……」

 

全く……中学生になっても女心に鈍感なのは相変わらずか。

今後、二人が発展するのはいつになることやら……。

それはそうと風林中に行くまでのこの坂道がキツすぎる……。

バッグに加え、野球道具が重くのし掛かり自転車のタイヤの空気を入れることも忘れていたので中々、前に進まない。

 

「まだ時間あるから悠太はゆっくりきなよ」

 

この坂道でも大吾は朝飯前といった涼しい顔して俺を置いてゆく。

 

ークソッ!!ー

 

息が苦しい……。

ペダルが重い……。

何とか坂道を突破して風林中にたどり着くと心臓の鼓動が早くなり、息は切れ、汗が滝のように流れ落ちる。

そしてグランドにはもうみんなが集まり始めいて、慌ててグローブ以外の道具を部室の片隅に置いて、駆け足でグランドに向かう。

何とか間に合ったが、明日からは坂道を考慮してもうちょい早く出ないといけないと胸に刻む……。

 

【おはようございまッス!!】

 

天野監督が杖をつきながら、俺たちの方に来ると全員が帽子を取る。

 

「おはようございます 今週の土曜日に名池一中と練習試合を行います 地区は違いますが勝ち進むと今年の県大会で当たる可能性もある相手なので気を引き締めて臨んでください」

 

【はいっ!!】

 

試合か……まぁ夏の大会が近いからどうせ3年生中心で俺の出る幕などないだろう。

と、この時の俺はまだ2試合目に1、2年生同士の試合が組まれていることを全く想定していなかったのである。

そして朝練が俺の風林中での初練習が始まったのだった。

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