人生を全うし、競走馬として死に、ウマ娘となって生きる人物のちょっとしたお話

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特に他の作品や競馬、ウマ娘のゲームの批判をするつもりの内容ではありません。

個人的に競走馬からウマ娘へ転生した場合に起こり得る展開の1つとしてこういう話も良いかなと思い書きなぐりました。

一応内容が内容なのでアンチタグつけてはいます


過去の栄光と今

 何故なのかはわからないが、元々は人間だった俺は死後に過去へ競走馬として転生した。

 

 ウマ娘という作品が流行り、流行に乗る流れでアニメを視聴しアプリを嗜んでいたが、全く興味がなかった競馬知識はほぼ皆無で、ウマ娘の名前やレースの名前、中山の直線は短い程度のうろ覚えの記憶しかなかった。

 

 流行りに便乗した2次創作も読んだ事があり、ほとんどがエタっていたが、活躍しなかったり、怪我した馬がどうなるか言及した作品もちらほらとあり、嘘か誠かはわからないが、どうせなら勝ってこの馬としての生を老衰で死ぬ最後まで愛される馬として華々しく咲かせてやろうと思った。

 

 血統がいいのか、真剣に調教を受け身体を鍛えてきたからなのか、あるいは騎手の実力か、俺はデビュー戦から勝ち続けた。

 

 そもそもが馬の身体に人間の頭脳を搭載しているのだから、他の馬とは明確に差が出るのは当たり前の事なのかもしれない。

 

 言い方は悪いが彼らはレースに勝ちたいと思って走っている訳ではない、そういう風に調教されているから走っているに過ぎないのだ。

 

 決して嫌々走っている訳ではないだろうが、大勢の人間に囲まれ体力の限界まで走る事は大きなストレスと身体へのダメージがある。

 

 だが俺には彼らが感じるストレスはなく、勝つために走り、考えて走る事が出来る。

 

 俺は無敵だった、馬として競馬の歴史に名前を残し、そして寿命を全うした。

 

 あまりにも強すぎた為、一時は競馬がつまらなくなった当のバッシングを受けたこともあったらしいが、そんなのは極一部のゴシップ記事だ。

 

 実際に観客の動員数や経営者側の懐に影響はあったのかもしれないが、そんな事は個人が考える事じゃない。

 

 唯一抜きん出て並ぶもの無し、俺は無敗の王として競馬史で永遠に語り継がれる存在となった。

 

 そして、俺の生の黄金期はそこで終わった。

 

 馬としての生の後、俺は再び生を受けた。

 

 ウマ娘として。

 

 俺は自分が積み上げて来たものが根底から崩れていく感覚を味わった。

 

 ありがちな2次創作ならここで狂喜乱舞し、馬だった頃と同等かそれ以上の活躍をするのだろう。

 

 本当に愚かしい、短慮だと言う他ない。

 

 何故自分が勝てたか考えた事があるのか問いたい、俺が勝てたのは全て自分で考える事が出来る頭脳があったからだ。

 

 俺は確かに数々のレースで勝ち、レコードだっていくつも塗り替えたが、俺より本来速く、長く走れる馬は大勢いたのだ。

 

 彼らが心からレースに勝ちに行っていないから、そこそこの地力しかない馬である俺が勝てたのだ。

 

 だが今生は違う、全員が同じ条件で競い会う。

 

 真剣に鍛え、勝ちたいと心から思うウマ娘達しかいない。

 

 馬として生きた時、同じ土俵で戦っている振りをして、勝って当たり前のレースで得意気になっていた時の罰が今生なのだ。

 

 もしかしたら、前世での活躍を再現する為に天才的な身体能力を持っているかもと期待した瞬間もあったが、半年もトレーニングすれば自分の凡庸さは痛いほど理解出来た。

 

 幸い俺の前世の活躍を知るのは俺だけだ、俺が惨敗しようが誰も裏切られたと感じる人はいない。

 

 最強の馬がゲームでウマ娘化したら一勝も怪しい程に弱すぎるステータスだったなんて、消費者も馬主も激怒案件だろう。

 

 少しほっとしたのは、俺が弱くとも前世のレース結果通り俺が勝ってしまうのではないかと言う疑念が、デビュー戦であっさり敗北したことで覆された事だ。

 

 レース結果は誰も知らない、その言葉に偽りはない。

 

 実を言うと走るのを辞めようかとも思ったし、今でも定期的に考えてしまうけど、それでも。

 

 それでも前世で俺に負けた、俺と言う不正で栄光を逃してしまった馬やその関係者の事を思えば、俺は逃げる訳にはいかない。

 

 負けて、負けて、負けて、負けて、走る事の出来るレースがなくなるまで、俺は走り続ける。

 

 でももし、この誰もが平等のレースで勝つ事が出来たら、それは最高に気持ちが良いと思う。

 

 負けるつもりでは走らない、俺はずっと勝つつもりで走っている。

 

 唯一抜きん出て並ぶもの無し、俺はまた誰かにそう言わせて見せる。


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