最近、UAやお気に入り登録数がとんでもないことになってて、ガクブルしてます。
普段なら0時に投稿して、その日がピークでUA3桁後半くらいなんですが。
前回投稿の次の日にまさかの3700UAにお気に入り登録170もして頂きました。
当社比4倍くらいですよ。しかもその次の日も1800くらいのUAがありまして……一体なぜこんなことに、と。
( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
, .
(;゚ Д゚) …?!
くらいの衝撃を受けています。ちょっと手震えてますよ(笑)
2ヶ月くらい前にもこんなのあったんですが、今回はその倍はあります…
改めまして、私の拙作をお読み頂き、お気に入り登録までしてくださりまして、心より御礼申し上げます。
今後ともご期待にそえるよう、邁進してまいります。
どうもどうも、いつもこのゴブっ子を見に来てくださる諸兄、いかがお過ごしだろうか? ニエラハーサこと俺は今日も元気です。生活環境が激変したわけだけれど、幸いにも体調を崩すこともなく、日々をのんびりと過ごせている。
今は朝食を食べ終えて、ちょっと一息ついたところだ。次の予定までぼーっとできるのである。
で、諸兄には悪いのだが、実はまた一月ほど時間が経っているのだ。この一月はほとんど部屋にいたし、エルフ語の習得に大部分を掛けていたので、忙しかったのだ。ほら、別のことを考えながら勉強しても身につかないだろ?
ただ、話すことがないわけじゃない。今日はお昼から予定があり、それに関連していくつか聞いていることを報告しておこうと思った次第である。
俺がゴブリンであるということは、サーラさんを通じて村のお偉方さんには知らされていたんだが、俺の取扱いには苦慮したようで、サーラさんを通じて「絶対に1人で部屋の外に出るな」とのお達しが。面倒事を抱え込まず殺して終わり、なんて選択肢だってあっただろうに……サーラさんに尽力してもらったんだろう。頭が上がらない。
この部屋、出入口って布がかかってるだけなんだけど、おっ開いてんじゃーんと外に出れば、おそらくだが首輪がボン!と言うんだろう。上のことが分かってるからこそ、首輪なんてなくても逃げる気なんてさらさらないけどな。
それと、1人じゃなきゃいいのかよ?と言われれば、良いのである。なにせ部屋にはトイレも風呂もないからだ。それらは外にあるので、絶対に外に出ないといけないのだ。
そうそう。エルフ村滞在初期のころはサーラさんが外に出かけていたので、その母親であるマウラッカ・サイノスさん、通称マウさんにお世話をしてもらっていたんだ。この人、俺がここで目を覚ました時に出会った最初のエルフ女性なんだ。うん、まさか母親だったとは、この……別にリハク・アイでも見抜けるよな。挙動が完全におばちゃんだったもんな……見た目だけだとサーラさんとの歳の差が全然分からないあたり、エルフってやべぇ。顔もよく似てて、サーラさんがちょっと釣り目なのに対して、マウさんはやや垂れ目なので、そこで見分けている。
えー、トイレはいわゆるぼっとん式だった。多分肥料にでもしてるんだろう。これについては取り立てて何かを言う必要は……え、最近の子ってぼっとん便所知らない? 下から手が出てくるアレ、知らない……?
ま、まぁ、そのトイレと風呂は誰かに付き添われる必要がある。ふふふ……そう、付き添われて。トイレはともかく、お風呂である!
エルフ村の風呂は、基本水風呂である。村を真ん中でぶった切るように綺麗な小川が流れているんだが、その川の最下流に共同の炊事場とお風呂場があるのだ。中流は上水として使われているので、ここで用でも足そうものならボコボコにされるだろう。水を汚すのダメ・ゼッタイ。
で、風呂場だけれど、やや離れたところに石造りの小さな池のような風呂が作られていて、そこに川の水が引かれている。ぶっちゃけ冷たい。なので焼けた石(炊事場から貰ってくる)を放り込んで温度を上げるのだ。といってもエルフの女性陣はぬるま湯でいいやと思っていらっしゃるようで、元日本人としては非常に物足りなさを感じる。これ、風呂じゃなくて温水プールじゃね?と。風呂を沸かす熱量を考えると、仕方ないのかもしれないが……。
ただし、風景は絶景である。周りは見渡す限り緑だらけ……ではなくて。なにせ、今の俺は幼女。そう、合法的にマウさんや他のエルフ女性さんたちと一緒に風呂に入れるのだ! いやぁ、エルフって全員が美女美少女で、別の意味でちょっと気後れする光景なのだが、ここはありがたく満喫させてもらうことにする。ただ少し残念なのが、皆さん非常に慎ましやかで……どこがとは言わないが。
そんな中、たった1人だけだけれど、凄いお方がいるのだ。どこがとは言わないが。マウさんに聞くところによると、狩猟を生業にしているご夫婦の奥様であるのだとか。俺のご飯に出てくる肉は彼女が取って来てくれているものなのだ。ありがたや~と、二重の意味で拝んでおく。マウさんとその奥様が変な顔をしていた。
あともう1つ面白い話がある。風呂に入れてもらった後、身繕いをするために鏡を初めて見たんだよ。金属板をぴっかぴかに磨いたいわゆる銅鏡(銅かどうかは知らんけど)というやつで、多少像が歪むものの、思った以上に綺麗に映るんだ。で、そこに映ってたのは、エルフの幼女でした。風呂で見たエルフさんたちよりも色黒……色緑?だけど、顔の造形とか耳の形とか、もうほんとエルフそのもの。サーラさんと初めて会ったとき、妙な確信をもってエルフかと聞いてきたのも残当というものよ。あまりにもの美幼女っぷりに一瞬自分でもときめいてしまった。まぁ、俺おっぱいスキーなのと、自分自身に欲情なんざできんし、一瞬だったがな。
やっぱお前エルフなんじゃねぇのって? ここまでエルフっぽいのに、ゴブリンの巣で食われずに育てられてたのが証拠なんだよなぁ。
さて、真面目な話もしておかないとな。
エルフ語の習得なのだが、マウさんと、学者っぽい壮年の男性エルフであるリスコさんことリスコ・ヨルヴァさん、さらに途中からサーラさんを交えての3教師体制で行われた。俺1人のために贅沢なことで、頭が下がる思いだ。今回は単語だけでなく文法も習っている。絵本(布製、絵だけで文はなし)や現物を使って勉強するので、洞窟内とは比べ物にならないほどの効率を叩き出している。
絵本の中身はいろいろだったが、その中でも諸兄が興味をひかれそうな話があったので紹介しようと思う。神話、創世記と呼ぶようなものだ。
はじめ、この世界には力(魔力? マナ?)が渦巻いていたが、その他には何もなかった。そこに神様が光とともに現れ、力と契約を交わして、地、水、風、火の精霊(ヒュンカと言っていたもの。四大精霊?)を作り出した。それぞれの精霊が頑張ることで、世界の基礎が出来上がった。さらに、地と水の精霊から樹の精霊が生まれた。水と風の精霊から天空の精霊が生まれ、樹の精霊がこれを支えた。風と火の精霊から星の精霊が生まれ、天空の精霊によって空に運ばれた。そしてそれらの精霊が見守るなか、火と地の精霊から命の精霊が生まれた。命の精霊は多くの動物を生み出した。
こうして世界はとても賑やかになったが、神様はまだ寂しさを感じていた。世界に命が溢れていても、神様しかヒトがいなかったからだ。なので次に神様は、自分に似せた人間を作り出した。名前はないそうなのだが、彼がいわゆるアダムというわけだな。ただ、1人だけだと今度はその人間が寂しいと考えた神様は、番となる人間、つまりイブを作るとともに、先にいた動物と人の要素を混ぜて、新しい人種も作り出した。これが(“亜”という表現が適切かどうかは置いておいて)亜人の祖先ということになる。
こうして、世界から人類までが誕生することとなったのだ。
神様はこれに満足し、世界を見渡していたが、神様が光っててまぶしすぎるせいで人々は洞窟の中に隠れて生活をするようになってしまった。これを悲しんだ神様は、自身を2つにわけることで力を削ぎ、そしてその2つの力は太陽と月となった。太陽と月となった神様は、それぞれが世界を回ることで昼と夜を作り出した。
――うん。唯一神と太陽・月信仰と四元素説+αのハイブリッドなんて、突っ込みどころ満載というか、ほんまかいな?というような内容だが、この世界は神様がガチで存在する世界なので、この神話もガチらしい。事実、太陽神と月神に心から祈りを捧げると、お声を聞くことができることがあるのだとか。それと、この世界には精霊が満ちているのだとか。俺も精霊魔法の勉強をすれば分かるようになるらしいが、まだまだエルフ語初級のレベルだし、ちゃんと勉強するまで魔法の絶対禁止を言いつけられてしまった。自由に外出できないことよりずっと辛いお……何、趣味からしてお前インドア派だろって? 外に出られないことが辛いとは言っていない。
そんなこんなで、だいぶ俺のエルフ語は上達しつつある。日常会話なら結構分かるようになったのだ。ただ、名前に使われている、古エルフ語とでも言おうか、そっちの方は単語の意味を少し教えてもらっているだけで、ほとんどノータッチである。
あ、俺の名前の意味って、幼いゴブリンだそうですよ。そのまんまだな。ニエラの方は幼いという意味なので、幼子ちゃんと呼ばれてるようなものか。いいんだけどさ、成長してもこのままなの……?
ごほん。最後に、残された女性たちの話だ。
まず、サーラさんだが、俺が目を覚まして感動の再開をした翌日、人間の街へと飛んで行ってしまった。目的はもちろん、巣に残された獣人と人間の女性2人の救出だ。巣の場所を詳しく知っている、天空の精霊(風じゃなかったんだな……)と契約しているので移動速度が速い、なにより、サーラさん自身がブチ切れていて、討伐に意欲的だったという理由より、サーラさんが街に赴いて冒険者に依頼を出すことになったそうだ。多分、サーラさんも巣に突撃してるんじゃないかな……。
そのサーラさんは、それから2週間ほどして帰ってきた。話を聞くと、陰険野郎は早々に逃げ出した後だったようで、数匹のゴブリンしか巣には残っていなかったそうだ。では2人の女性はどうだったかというと、無事救出されたとのこと。2人は妊娠していたにも関わらず置いていかれたわけだけど、陰険野郎は頭は良かったからな。多分だが、2人を連れて行けばいつまでも追いかけられると考えたんだろう。知らんけど。
ただ、残ったゴブリンが相当酷い扱いをしていたようで、かなりギリギリだったらしい。陰険野郎が出て行って、箍が外れたんだろうな……。
2人は今は街の病院で治療と療養を行っているそうだ。しかも、俺宛に手紙を書いてくれたのだ。中身は共通語とされている人間の言葉で、俺は読めなかったので(エルフ文字もまだ読めないが)サーラさんに代わりに読んでもらった。
陰険野郎の統治下では妊娠している女性は無体を働かれなかったので、頸枷をされていたあの2人は時間的猶予があると考えていた。なので、必ず助けに来るとの約束をして、サーラさんは彼女たちを置いて行ったのだが、陰険野郎がすぐにほとんどのゴブリンとともに姿を消し、その直後ぐらいから残ったゴブリンどもの陵虐の嵐が始まってしまったのだとか。ゴブリンが少なかったのと、かろうじて水は飲ませてもらっていたために、ギリギリで助かった、と。今生きているのは、あの時助けようと動いてくれた俺のおかげだ、と感謝の言葉が書かれていた。
……聞いている限りだとめちゃくちゃヤバいことになっていたはずなのに、何故かあっけらかんと話すサーラさんに違和感を覚えて、彼女たちは本当に大丈夫だったのかと聞いてみた。すると、彼女たちはあんまり気にしてないようで、サーラさんは手紙を渡されて、笑って送り出されたとのこと。マジかよ……いや、さすがに何も思ってないことはないんだろうけど……強いなぁ……。
それから、エルフ村に滞在して療養していた4人の女性たちは、2週間ほどで街へと送られていった。正確には、エルフ村に一番近い人族の村までエルフさんたちが護送し、そこから先は冒険者を雇うか、村人と交渉して街まで送って行ってもらうのだとか。
俺はというと、結局最後までお見舞いには行けなかった。俺の立場がそうさせなかったのか、彼女たちの心情か何かを慮ったのか。出立の瞬間には立ち会えたから、俺の立場かなぁ……4人とも洞窟内で見た以上にふっくらと健康的になっていて、その表情にも影は見られなかった。ゴブリンである俺が近付いても体が強張るとかは全然なくて、むしろ4人ともにきゃあきゃあ言われながら交互に抱っこされたりキスされたりしました。
いやまぁ、俺の外見はエルフと変わらないけど……君ら強すぎへん……? それとも、こんな世界だとこれくらいのメンタリティがないと生きていけないのだろうか……。
何はともあれ、彼女たちは人間の街に帰って行った。
さて……最後に残る人について話す前に、用事の方の用意が整ったようなので、そちらに意識を向けよう。今から別の服に着替えることになるんだ。
サーラさんとマウさんは既に着替えているんだが、これがまた凄いんだ。正装というか、戦装束というか……いや、これは俺が着替えるついでで実況しよう。同じものを着るのは分かってるので。
まずはまっぱに剥かれる。何度もお風呂でやられてるし、なんだったら服着てない期間の方が長いんで、別にどうということはない。嘘です、ちょっと恥ずかしいです。特に人の手で脱がされるのが……。
次に、鮮やかな緑の上下の肌着を着る。薄くすべすべの手触りで、着心地が凄く良い。シルクだろうか? 袖と裾に飾りの、そして胸の部分にスペードを豪華にしたような意匠が同系の色の糸で刺繍されている。マウさんに聞いたところによると、親の親、遠い親の樹、とのこと。先祖の樹ってことかな? 下は膝くらいの丈のズボンで、腰辺りで紐で縛る。
その上から濃い緑の長いズボンをはく。こちらはまぁまぁ厚手で、硬くはないけどごわっとしている。ズボンの方は紐を編んで作ったベルトを使う。バックルはリングが2つついたやつで、止め方が分からずにまごまごしてたらマウさんにぱぱっと締めてもらった。
次に上、長袖でこれまた濃い緑の上着を羽織る。上着の前は小さな牙?っぽいものが紐の先に括られていて、もう片方は紐が輪っかになっており、そこに牙を通すことでボタンのように止める形になっている。これが3セット。そして、サーラさんやマウさんの上着は所狭しと刺繍がされており、これ1着作るのに何年かかるの?ってなもんなのだが、俺が着せられた上着には、ない。子供の着るものに手間暇かけても、すぐ着れなくなるもんね。しょうがないね。
最後に胸当てをつけるんだが、俺は幼児なのでオミットされた。その代わりなのか、白い大きな一枚の布を渡された。文字を抽象化したような意匠の刺繍が罫線状に入っていて、相当に手が込んでいる逸品だ。えーと、頭に被って使うらしい。日本の時代劇や伝統芸能で、着物を1枚、頭の上から被ってるのを見たことはないだろうか? あんな感じである。
あと、ちょっとだけ化粧をされた。赤い種子を潰すとその中身も真っ赤で、粉っぽいそれをちょっとの液体で溶いて、目じりと唇に差した。
で、このように着替えたわけだけど、なぜこんな格好をしているかというと……葬式があるのだ。誰のかは、言わなくても分かるだろう。
サーラさんに手を引かれて部屋を出る。村の中央広場に目をやると、そこはもはや物々しさすら感じる威容であった。袖や裾が膨らんだローブを着、多くの装飾品で飾った2人の女性エルフ。胸当てとさらに肩当てまで身に着け、腰に細身の剣を吊った強面の壮年の男性エルフ。その他の普通の正装をしているエルフさん方も、手には弓、背中には矢筒を背負っている。驚くべきことに、矢筒には矢が入っているし、弓には弦が張られていた。そして、性別に関係なく全員が顔に紅を差している。そう、この化粧は戦化粧なのだ。
後に聞いたのだが、精霊の中には狂ってしまったものもいて、遺体に憑りつき、アンデッドとなるそうなのだ。それを防ぐべく遺体には死化粧を施し、葬儀に参加する彼らは、狂った精霊を打ち払うために戦化粧をするのだ。
そんな彼らが守るように中央に安置された、布に包まれた人間大のもの。
まるで今にもどこかに戦争でも仕掛けそうな出で立ちだが……皆の表情は一様に暗かった。中には明らかに泣き腫らした顔の女性もいた。
俺は思わず立ち止まった。俺の手を引いていたサーラさんが、突然止まった俺を不思議そうに見てくるが、そんなサーラさんに取り繕うこともできない。
俺も葬式に出るんだな、なんて能天気に考えていたが、そこに渦巻く人々の感情をまたも理解していなかった。この段になってようやく気付いたんだ。あの人たちは全員ティーラさんの死を悼んでいる。そんな中に俺がしゃしゃり出ていいのだろうか?
俺は、ゴブリンどもに与したつもりはない。だが、どうしようもなく、俺はゴブリンであるし、当然ながらエルフでもない。そんな俺が、あの、ティーラさんの死を悼む人々の中に、入っていいのか?
俺が、ゴブリンである俺が、ティーラさんが死んだ原因ともいうべき俺が……。
おそらく顔面蒼白になっているだろう俺を、サーラさんは何のこともなしにひょいっと抱き上げた。突然視界が高くなって慌てる俺をよそに、ずんずんとあの輪に入っていくサーラさん。
ちょっと、ちょっと待ってくれ。気持ちの整理というか、踏ん切りというか、サーラさんストップ! ここはもう少し穏便に! 神経を逆撫でするかもしれないのに!
が、逃げられるわけもなし。俺のささやかな反抗はまるっとするっと無視され、俺は輪の中に。
どんな反応が返ってくるのかと戦々恐々とする俺の頭をするりと撫でられる感触。目線を上げれば、目を赤くした女性の姿が。今にもまた泣き出しそうな表情に、俺の心臓がきゅっと縮まる。だが……その人は、俺をサーラさんごと抱きしめると、俺の頭をぽんぽんと撫でて、離れていった。
「ロッコ。ティーラと同年代の子。よく一緒に遊んでたの」
サーラさんがささやくように俺に教えてくれる。
次に俺たちのところに来たのはローブ姿の女性だ。
「イナ様です。星を見て先を知る人。月神の神官でもある、とても凄い方」
アルビノかと思うほどに色素の薄い肌に、銀の瞳、そして白髪。神秘的というか、神聖故に触れられない、恐ろしい程に美しい人だ。ただ……表情筋が仕事をしていないのか、ぴくりとも表情が変わらない。
茫洋とした表情のままイナ様は俺の頭と、ついでのようにサーラさんの頭も撫でると、ぺこりと優雅に一礼して去って行った。一言も喋らなかった。
そんな神官様の次にやってきたのも、同じくローブを纏うもう1人の女性。イナ様と対極にあるような、イナ様が月ならば、お日様のような大輪の笑顔を咲かせながら、突撃してくる。
突撃である。
「リンム様! 走っては危ないです!」
「大丈夫大丈夫、気を付けてるって。初めまして、ティーラ・ナーティの娘さん。私はシェーロ・リンムというの。さっきのイナの妹よ。リンムと呼んでね? 話には聞いてたけど、可愛らしいわねぇ。15歳くらいかしら? え、違う? 最高でも3歳? あらぁ、そうなの? 子供って大きくなるの早いわねぇ。そういえば――」
確信した。この人もおばちゃんだ。マウさんと一緒にしたら日が暮れるまで喋り倒すんだろうな……。
「リンム様、イナ様がこちらを見てますよ」
「あら? あらあら、私ったら……ニエラちゃん。ティーラのことは、残念だったわ。でも、死はね、次の生への始まりなの。だから、あまり悲しみすぎないでね? ティーラも心配しちゃうわ。彼女の一時の安らぎと、次の生の幸福を、祈ってあげてね。彼女に我らが始まりの父の導きがありますように」
リンム様が胸に両の掌を重ね、目を閉じ、祈りを捧げる。そしてまたにこりと微笑むと、俺の頭を撫でて離れていった。
その後はせきを切ったように周囲の人々が俺たちのところに集まってきて、俺をもみくちゃにしていったのだった。そこに、俺に対する疑念とか異物を見る目とか、そんなのは一切なかった。
俺は一人恥じた。死者を悼むのに、エルフがとかゴブリンがとか、関係ないんだな。必要なのは、悼む心だけか。
エルフの葬儀に複雑な手順はない。村の村長宅の奥にある森、エルフの先祖が眠る森に埋葬し、祈る。それだけだ。年経たエルフは樹になるらしく、樹になった先祖と一緒に眠るんだ。
先頭を行くのは村の長である、だいぶ皺も目立つようになった老年の男性。その次に戦士のような壮年の人。次に2人の神官であるイナ様とリンム様。そして、ティーラさんの遺体をサーラさん、マウさん、マウさんの夫のリスケさん、泣き腫らしていたロッコさんの4人で運び、その周囲を守るように人々が布陣する。俺はというと、歩こうとしたんだが、リスコ先生に抱かれている。
……リスケとリスコで音が似ててややこしいのだが、リスケさんの意味は“夕暮れ時(黄昏)”で、リスコ先生は“赤い葉(紅葉)”という意味であり、2人は別に兄弟とかそんな関係はまったくない。
それはともかく、祖先の森は、とても静かな森だった。背の高いまっすぐな木が等間隔に並び、木漏れ日がカーテンのようにきらめいていた。ただ、リスコ先生曰く、ここはまだ祖先の眠る場所ではないらしい。もう少し奥なんだとか。
そうして歩くこと10分ほど。一目見てその場所だと分かるところに出たのだった。
等間隔に並んでいた木々の間に、ぽっかりと空いた広い空間。日光がスポットライトのように差し込む中、あらかじめ掘られていた穴があった。
当たりを見回してみると、不揃いな木がたくさん見えた。まだまだ背の低い若木、ある程度大きく伸びたもの、大人の一抱えほどはありそうな立派なもの。先生に聞いてみると、これは全部、エルフが埋葬された後に育った木なのだそうだ。
あらかじめ掘られていた穴の中に、布にくるまれた遺体が下ろされる。そしてイナ様の手がティーラさんの顔が見えるように布を開いた。ティーラさんはしっかりと化粧がされていて、やせ衰えた顔をいくばくかまともに見せていた。さらにイナ様の手が布を開き、胸の辺りまで見えるようになった。ティーラさんは、小さな白い布の塊を胸元に抱いていた。
ティーラさんは妊娠していた。死産だったと、聞いた。生まれてくることも叶わなかった、俺の兄弟だ。
「ニエラ・ハーサ」
鈴の鳴るような声、というのはこういうものなんだろうな、なんてぼんやりと考えていた俺に、イナ様は茶色の種子を手渡した。クルミ大の丸いつるつるしたものだ。
「また、生まれくるための、種。あなたの、手で、渡してあげて」
――俺はティーラさんとは、数えるくらいしか、顔を合わせたことがない。抱かれたこともなければ、会話したこともない。産みの親と言われても、子供だと言われても、その自覚は全くと言っていい程、ない。
……でも、俺の心のどこかで、俺の知らない俺が、記憶として形になることもなく消えていった俺が、泣いていた。
――見る見るうちに視界が涙で、歪み、喉が震えるのを、抑えられなくなった。そんな俺を誰かが抱き上げ、ティーラさんの前まで連れてきてくれた。
憶えてはいない。でも、きっと、ティーラさんは、俺を優しく抱いてくれていたに違いない。だからこそ、俺の中の俺が泣いているんだ。きっと、俺は、母の温もりを知っていたんだ。
俺は種を、そっと、胸に重なる手に握らせた。
「我らが、始まりの父の、導き、が、ありますように……お母さん」
というわけで、脱出後のあれこれ残っていた書くべきことを混ぜた結果、ちょっと後書きのようになってしまった箇所があります。
イケメン獣人お姉さんともう一人の人族のお姉さんですが、サイコロコロコロした結果、ギリッギリで生き残りました。どれくらいギリッギリかというと、両名15%を成功させた、というくらいにギリギリでした。
一本書けそうなくらいなのですが……幕間その1のサーラさんの話と結構被る内容になってしまいそうなので、この話で後日談的に処理してしまいました。
21/9/13
リスコ・ヨルヴァさんことリスコさん→リスコさんことリスコ・ヨルヴァさん
逆になってました。全部の“こと”を見直さないと…
誤用の報告ありがとうございます。
-/-/19
よくよく考えたらこの話を幕間にする意味はなかったので、本編に編入として、タイトル変更します。
タイトルしか変わってません。