ゴブリンの女王は死にたくない   作:フリーズドライ

19 / 21
今回も1週間遅れで、申し訳ないです。
しかも、次は大丈夫かもしれませんが、その次は多分長期休暇を頂くことになるかと思います。
詳しく決まりましたら、活動報告でお知らせします。


第16話後編

 やーやー、どーもどーも。二ヨ動の生配信だと枠を取るっていうんだっけ? いや、あれは開始の時か? じゃあ枠の延長? とまれ、引き続き実況はニエラ、解説もニエラでお送りしていきます。

 

 さて、現在は太陽もだいぶ傾いており、夕方の手前くらいの時間だろうか。集まったのがお昼食べた後だったし、リスコ先生の長い授業に、実習と、結構な時間が経っている。

 ……あんなに誰かが長時間喋ったことは今までなかったな。

 

 実習の時は皆興奮してたし、俺も興奮してたもんだから、全体を詳細に触れることなく終わってしまった。なので、ここで3人の精霊の相性を整理しておこうと思う。

 俺の精霊との相性は、火がまぁまぁ、水が秀才レベル、樹が天才レベルとなっているが、他はどうにも振るわなかった。魔法を使えない程ではないんだが、魔法使いとしてメインの属性に据えるかというと…まぁ、ないわな?という感じ。なので、仮に俺がエレメンタラーとして冒険者をやるとしたら、火か水をメインに戦うことになるだろう。やっぱ火力といえば火だし? 水はまだしも、樹ってあんまり攻撃的な感じしないし?

 ホリィちゃんの相性は、空が天才的、水と風が結構凄い、樹がエルフとしてはギリギリといったところ。他は俺と同じように振るわなかったな。特に土は、魔法すらまともに使えるかどうかも怪しいレベルだそうだ……まぁ、本人は気にしてないので別に構わないだろう。

 エッナちゃんは、命が天才的、土と風と樹が結構凄くて、水がまぁまぁ、と、水がもう少し良ければエルフの典型的なパターンなんだとか。そして命の精霊との相性が周りが引くほどヤベーので、リンム様(癒し手様)の後継者入りすることがこの時点で確定したらしい。

 と、俺たち3人の精霊との相性はこんなかんじである。

 

 ところで、最初に聞いていた予定ではここで終わるはずだったのだが、会話ができる最高位の精霊を2人も引き当ててしまったので追加の授業が設けられることとなった。

 相性判断お試し魔法を合計8回もやった身としては結構疲れていて、できれば早く帰って休みたいところなんだが……リスコ先生のさっき以上に真剣な表情に、俺たち3人とも――いや、エッナちゃんは相変わらずか。俺とホリィちゃんは思わず固唾をのんだ。

 ――いや、隣から晩御飯を調理する良い匂いが漂ってきているせいではないよ? お腹ぎゅうぎゅういってるけど、ホントダヨ?

 

 

「ホリィとニエラが最高位の精霊を呼び出せたことは、非常に喜ばしい。が、それは同時に大変に危険なことでもある。もう少しの間付き合ってもらうぞ」

 

 と、リスコ先生が言葉を切ったところでタイミングよく、サーラさんの空の精霊がどこからか飛んできた。そしてその手にはなぜか絵本が。リスコ先生はその絵本を受け取り、俺たちに見えるように掲げる。1人の騎士が子供向けのタッチで描かれた表紙は、残念ながら俺の見たことのないものだ。あ、布製だから表紙じゃなくて表布?

 

「ホリィとエッナは読んだことがあるだろうが、ニエラがいるので大まかな内容を説明する。これはある人族の英雄の一生を書いたおとぎ話だ。彼は精霊に愛され、君たちと同じように最高位の精霊を呼び出せた。彼はその精霊に、剣と魔法を習った。修練の末に人族の間では並ぶ者なしと言われるようになったころ、彼は国の長に乞われて、竜の討伐に向かった。大冒険の末に竜を退治した彼は、国に帰り、英雄として称えられた」

 

 うんうん、昔のサクセスストーリーそのままな物語だ。精霊が魔法はともかく剣まで使えて、それを教えてくれるっていうのがびっくりだが……おとぎ話、つまりは創作だろうし、突っ込むのは無粋か。というか、この世界に竜っているのかな? ファンタジー的にはいて欲しいところだが、いたらいたで襲われそうで怖いな。

 

「だが、彼の成功を妬む悪い精霊使いにそそのかされ、彼は精霊とのたわいもない約束を破ってしまう」

 

 はい、いきなりきな臭くなってきました。ちらりとホリィちゃんの横顔を見てみると、なんとも渋いお顔。結末はあんまりよろしくないもののようだ。

 

「そして彼は精霊に殺された」

 

 ヒエッ……精霊さん厳しすぎぃ!?

 

「この物語の教訓は“精霊との契約は絶対に守ること”だ。それがたとえどんなに些細なものだったとしても。もしくは、“精霊とは魔力以外を対価とした契約を結ばないこと”だ」

 

 ん? それは……魔力なら破ってもOKなのか?

 

「私や各々の家人が教える呪文は全て、対価を魔力に限定している。なぜなら、魔力を対価にしていれば、術者が魔力を支払おうとしなくとも、精霊が魔力を徴収することで片が付くからだ。まぁ、その際に魔力欠乏で死ぬ可能性はあるがな……だが、魔力ではなく特定の行為や物を対価とした場合、精霊にはそれを強制する手段がない。そこで初めて契約は破られたこととなり、精霊はその代償に術者の命を取る」

 

 えぇ……契約違反=死とか、物騒すぎやしませんか……前世的に考えれば、物とか行為とかの価値を金銭に換算して損害賠償をするのが普通。まぁ、精霊には金銭なんて意味ないと思うが、魔力ならば換算できそうなものなのだが…?

 リスコ先生。契約を破った代償は、例えば他の行為や物、もしくは魔力で払うとかはできないんですか?

 

「精霊と合意できるなら、それもあり得るとは思う。だが、精霊にとって契約は絶対だと言ったな? 契約を破ることを前提とするような話は、精霊は聞く耳を持たない。下手につつけば激昂されるかもしれないから、試そうとするなよ?」

 

 ジロリとリスコ先生に睨まれた俺は、壊れたおもちゃのように頭を縦に振った。

 でも、それはそれとして、なんで契約違反の代償は命なんですかね?

 

「これも研究されていないが……私は、神と精霊との契約で、精霊が神に準じる地位にあるとか、代償を命とするとか、そういった内容が定められているのではないかと考えている。神と精霊の契約の詳しい内容はまったく何も分かっていないが、これ以外に候補がないからな」

 

 ふーむ、本当のところは分かってないのか……ところで、精霊が神に準じる地位にある場合に契約違反=死ってことは、やっぱり神様との契約違反も=死ですか…?

 

「神に助力を乞いながら対価を渡さないんだ、当然だろう?」

 

 アッハイ……。

 

「そういうわけでだ。精霊と語り合えるホリィとニエラは、対話の中で精霊が魔力以外のものを求めているような話を聞いたとしても、それを対価として契約を結ぶことは絶対にしないように。いや、魔力以外の対価を掲げての契約は絶対に結ぶな。分かったな?」

 

 リスコ先生の言葉に俺とホリィちゃんが間延びした返事をし、エッナちゃんがこくこくと頷いた。というところでようやくの解散である。

 

 :

 

 疲れたねー、ホントねー、なんて3人でげっそりしながら喋っていると、最初に広場に来ていた2人の女性たち、つまりはホリィちゃんとエッナちゃんの母親が迎えに来たので、3人でばいばーいと手を振り合った。

 空もだんだんと茜色に染まりつつあり、森の中もだいぶん暗くなってきた。まぁ、俺には普通に見えるんだけどね。いやぁ、ゴブリンに転生なんてと思ったけど、この目だけは便利だ。この目のためにゴブリンに転生したいとは絶対に思わんけどな!

 なお、夜目とか特にもってないサーラさんなのだが、もはやこの村の中なんて自分の庭みたいなものなんだろう。もう結構暗いはずなんだが、ひょいひょいと進んでしまうので、俺は必死になって追いかけるのだった。

 さーて、きょーぉのごっはんはなーにっかなーっと。

 

 :

 :

 :

 

 今日の晩御飯は、主食の焼きコロッケ、主菜に野菜とキノコの炒め物、俺だけ焼いたベーコン、汁物で野菜スープでした。美味しい。美味しいんだが……レパートリーがあんまりなくて、ちょっともにょっとし始めている。そのうち何とかしたいなー、なんて思っているんだが、材料がねぇ……。

 まぁそれはとりあえず置いといて、晩御飯が終われば寝るまでの間は自由時間だ。とは言っても、せっかく同年代(?)の友達ができたわけだが、電話なんてないので気軽に話すこともできない……いや、あるにはあるんだが、希少かつ高価なもので、一般家庭にあるようなものじゃないんだ。双子草という1株から必ず2つの花を咲かせる草があり、その花を加工して作る魔法の道具があるんだが、採りすぎて数が激減してしまったのだとか。それに、何となく察せると思うが、対となる花の間でしか声を届けられないので、電話みたいにどの端末にでも、というわけにはいかない。早い話が、どこまでも声が届く糸のない糸電話みたいなもので――ん? 糸電話、か……構造も簡単だし、材料が集まるか分からないが、今度試してみようかな。

 おっと、また話が逸れてしまった。何が言いたかったのかというと、寝るまでは暇だってことなんだ。唯一ある娯楽は本だが、あれよあれよと空が雲ってしまって月どころか星も見えないせいで、さすがに読むのが辛い。光源は蝋燭があるものの、まぁまぁ高価らしいからあんまり使いたくないし。カソを呼ぶ? 昼にあれだけやったから、さすがに今日はパスだ。

 というわけで、諸兄を相手に面白いかな?と思う話をだらだらとやっていこうと思う。幸い、前編でちょっと触れた話があるし。そう、暦、カレンダーの話である。

 

 まず初っ端から申し訳ないが、エルフ村の各家庭にカレンダーは存在しない。地球なら、何年の何月何日と言えば、ああ、あの日ね、と全世界共通で通じる話だが、エルフにはこの確定的な“何月何日”といった概念がないのだ。これがなぜかというと、エルフ村の暦は変動するからである。

 エルフは自然と共に生きる種族なので、暦も季節や自然と深く連動しているのだ。例えば、春の初めの月は、雪を割って芽吹く……な、ナントカっていう木の芽が出てから、雪解けが終わるまでとか……すまない。説明するとか言っておきながら、実はまだ暦を覚えられていないんだ……言い訳がましく聞こえると思うが、エルフは1年を20の月に分けている。四季(この世界にもある)それぞれを5つの月に分けているんだ。そのどれもが、〇〇の花が咲いたら、とか、××の実が終わるまで、とかで、それに1月とか2月とかいった数字じゃなくて、□□の月みたいに名前がついているもんだから、固有名詞のオンパレードなわけだ。ちょっと、その……覚えきれない……。

 

 それに、面白いと感じたのは、エルフの年齢に対する感覚である。何月何日といった概念がないので、誕生日という概念もちょっと変わっているのだ。というのも、実際に産まれた日を祝うという風習が、これまたエルフにはない。母親代表のマウさん曰く、子が生まれた日は親にとっては大切な日だけれども、特別に何かをすることはないのだそう。じゃあ誕生日パーティとかしないの?というと、それは冬至に行われる。

 諸兄は中学校の理科を覚えているかね? 冬至と夏至の定義、ちゃんと言えるかい?

 冬至は一年で最も昼の時間が短い日、夏至は最も長い日である。大丈夫だな? 現役の中学生諸兄はここテストに出るよ。天体の動きと合わせて、どこが夏至でどこが冬至なのかをあてなさい、とかな。

 

 で、ちょっと唐突なんだが、この世界には太陽神と月神、それと分離前の唯一神モードの神を合わせて3柱の神がおられるわけだが、分離したのになぜかこの唯一神モードも普通に信仰されている。それどころか、他2柱の上にある、主神のような扱いを受けている……神が実在する世界で、存在しないはずの神が主神?……と、あんまりよそ様の宗教にあれこれ言うのもアレなので、まぁ、そういうものと思っておいてくれ。そして、なぜこんな話をしたかというと、この神様たちが暦を司っているんだ。

 冬至を境に昼が長くなっていく期間は太陽神が司っており、夏至を過ぎて昼が短くなっていく、つまりは夜が長くなっていく期間は月神が司っている。そして、夏至と冬至は唯一神モードの神が司っているわけで、この夏至と冬至には盛大なお祭りが開かれるのだとか。これはエルフに限らず、どの種族でもそうなんだと。

 さらに、神様が一年の始まりを冬至と定めたので、冬至は生きとし生けるものすべてにとって大切な日というわけだ。だから、エルフは冬至を全員の誕生日としたんだな。

 

 そういうわけで、エルフは誕生日パーティを冬至=元日に全員がそろって行う。つまり、その日に全員がそろって1つ歳を取る。うん、エルフの年齢って数え年なんだ。まぁこれは前編で俺の年齢を“数えで”と言っていたので、皆分かっていたと思う。その理由が、今までつらつらと述べていたものなわけだ。ちなみにだが、数え方も地球の数え年と同じで、生まれた瞬間から1歳、元日を迎えれば2歳である。0歳何カ月とかじゃないの?って聞いたら、0歳ってなんだよ?と逆に聞かれてしまった。実年齢に本当に頓着がないようである。しかも、2~300年も生きていれば自分の年齢なんてどうでもよくなるらしく、このあたりから10歳単位で年齢が増えていく。さば読みまくりである。

 数え年だと実年齢と乖離することになるのだが……平均寿命500歳、50歳で成人という超長寿種族は、生後2日の2歳児がいても別段気にならないようである。50年後にはンなもん誤差よ誤差!

 1年で成人するゴブリンにとっては誤差どころの話ではない時間だし、ゴブリンよりも成長が格段に遅いとはいえ、俺にとっても(成長期である)1年はかなりの差になる――のだが。エルフ村で俺を年齢に沿った取り扱いをするはずもなし。ゴブリン社会に年齢なんて概念は多分ないだろう。そもそもゴブリン社会に戻るつもりもないし。ということで、俺が数え年を採用してもなんら問題はないのであった。

 え、オチが“結局は何の問題もない”話なんてするなって? ざ、雑談枠だからセーフ……。

 

 んー、他には……ああ。各家庭にカレンダーがないってことは、どうやってエルフは暦を確認してんの?という疑問もあるかと思う。さすがに、今日から何月というのをバラバラにやるわけではない。暦は星詠みの巫女であるイナ様が管理しているのだ。イナ様は星詠みで、いつが冬至、夏至なのかを聞き、また常日頃から先々を占っては、この月はもうすぐ終わって次の月が来る、なんてのを記録しているのである。

 イナ様の星詠みに合わせて村が動くので、星詠みの巫女というのは超重要ポジションなのである。

 

 あと、この話をするために今日がいつなのかをリスケさんに確認してきた。今日は、空が最も高く晴れ渡る月、エルフ語でケル・クォッロの月、その2日目。ケル・クォッロは16番目の月で、今年の元日である3番目の月の8日目から数えて228日後と言っていた(エルフの記憶力ヤベェ)ので、地球で言うところのおおよそ8月頭くらいだ。228日後なら8月中旬だろって? 確かにこっちはそうなんだが、元日=冬至(12月20日くらいだっけ?)で計算しているから、地球の暦に換算すれば10日ほど遅くなるんだ。

 地球だともう夏真っ盛りというような季節だが、こっちは森の木々と小川のおかげか、はたまた精霊に頼んでいるのか、もしかしたら標高が高いのか、涼しくてとても過ごしやすい。都市部にお住いの諸兄は、熱中症で死なないようにお気をつけを。

 ……俺は、今から冬の到来が恐ろしいよ……。

 

 あ、それと、この世界の1年は360日なんだそうだ。生命が生存できる天体を作成したら、おのずと365日前後になるのかもしれないが……単純に12カ月×30日だろ?と何か作為っぽいものを感じざるを得ない。時計なんてものもないが、半日過ごした感覚からして、どうせ1日も地球の24時間と同じくらいだと思う。あれだな、天体を作ったときに神様が面倒くさがったんだろ。

 ついでに。1日を24で割ることを考えたのは、12(24)は約数が多いから、というのを聞いたことがある。あとは、12カ月の12からとか、12進数を使ってたからとか……本当のところは知らん。諸兄の持っている情報機器を駆使して正解を調べて欲しい。

 

 

 というところで、今日俺が話したいことは大体喋ったかな。雲で月が見えないから今何時なのかは分からないが、いい感じに夜も更けたんじゃないかと思う。

 今日は随分と長い一日だったが、それに付き合ってくれた諸兄も、お疲れ様でした。

 それではまた次回に。

 おやすみなさい。




というわけで、怒涛の説明回でした。
なお、この世界の1日が地球時間で24時間なのは、神(私)が面倒くさがったせいです。
360日の方には一応意味があります。が、伏線が回収される日がいつ来るかは……いやほんといつになるんだろう。
なるべくエタらずに頑張りたいと思います。

22/8/21 7月下旬だろって?→8月中旬
はい、日数の計算もできないバカは私です。さしあたって周辺の表現も調整しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。