書く時間がとれなかったり、設定に致命的な矛盾点が見つかったり(未解決)、リアルの失敗でモチベが死んだりそれどころじゃなくなったりしていました。
あ、皆様あけましておめでとうございます(5カ月遅れ)。
……あれ、今年もう半分近く終わったって、マジ?
どうもおはようございます、諸兄。毎度おなじみ、ゴブ幼女のニエラです。
こちらは現在、清々しい朝。ハウスツリーの天辺まで登れば、エルフの森をその裾野に抱く
――多分。
前に木登りしようとしたら危ないってリスケさんに怒られて、それ以降チャレンジしてないんだ。まぁ、家の屋根に登るようなものだから分からなくはないんだが、木といえば登るもの。ちょっとくらいいいじゃんねぇ。
閑話休題。洞窟から助け出されてすぐのころは、時差ボケ?で夜に眠れず朝に眠かったこともよくあったが、最近ではもうめっきりと規則正しい生活が身についた。具体的には、空が白み始めたころに起き、日が沈めば寝るといった感じで。
とは言ったものの、こちらの暦では秋の初めに入っており、夏至もとうに過ぎていて日の長さは日に日に短くなるばかり。俺もそうだし、他の村民も日が落ちればすぐさま寝る、というわけではない。じゃあ何をしているのかというと、冬ごもりに向けてせっせと働いているのである。世のお母さま方は機織りを、お父さま方は保存食を仕込んだりしている。他にも、樹の精霊に頼んで壁を厚くしたり、窓を小さくしたりといった、ハウスツリーの間取りを冬用に変更したりしている。そして、冬の一大イベントである新年のお祭りで配りあうプレゼントの作成は、忙しい日々の中での潤いの一時となっているのだ。
で、サーラさんもいいお年頃なので、マウさんの厳しい指導の下で花嫁修業として織物の練習をしている。ただ、サーラさん、あんまり手先が器用な方ではないようで、半泣きになってるんだよな。
俺はというと、この幼女ぼでぃはまだまだ子供なので、お手伝い程度はするものの本格的に教わるにはまだ早い。ニエラは早く寝なさいね、と部屋から追い出されてしまうのだ。
さっき言ってた新年祭で配るプレゼントの作成は?と聞かれると、内容はだいたい決まっていて、しかし材料がまだ森にないので作成に取り掛かれない。
することがない。しかしまだまだ眠くない。
うん、前回も言ったが、夜は暇なんだ。なので、昨日の夜に思いついたアレの実験をやってみたいと思う。アレ、糸電話だ。なんで糸電話なんか作るんだって? 実は、俺ん
ホリィちゃん
:
というわけで、朝ごはんもばっちり食べて、やってきましたエッナちゃん家。まずはエッナちゃんを誘ってホリィちゃん家に突撃するのだ。
エッナちゃーん、あっそびっましょー。
あ、1階の窓からエッナちゃんのお母さんが顔を出して、こっちに向かって手を振ってくれた。おはようございまーす。エッナちゃん起きてますか? あ、起きてる。今ご飯を頑張って食べてると。分かりました、待たせてもらいます。
……ちょっと早すぎたかな……? 気がはやった小学生みたいなムーヴをしてしまったかも。
数分後、リスみたいにほっぺに朝食を詰め込んでもごもごしながらエッナちゃんが走ってきた。後ろでお母さんがお行儀が悪いって怒ってるよ、エッナちゃん……代わりにというか、元凶の俺が謝っておこう。ごめんなさい。
さて、エッナちゃんをパーティに入れて、次はホリィちゃん家に突撃である。ホリィちゃん家はまぁまぁ遠いんだ。俺とエッナちゃんの家は川の西側(つまり太陽の沈む側)にあるが、ホリィちゃんの家は東側(つまりry)にある。川を越えないといけないし、アップダウンもあって、俺の足だと大体15分ほど歩く必要がある。直線距離だと……400メートルくらいかな?
あ、ついメートルと表現したが、あくまで感覚的なものだ。俺の身長が、以前洞窟でもちょろっと計算したように、仮に1メートルだとしたらこれくらいかな?というものだ。俺の身長の400倍とか言うよりもずっと想像しやすいと思う。
ほんと、実際のところはどうなんだろうな? 諸兄とやり取りができるなら話は早かったんだがなぁ……はい、この放送は俺の独り言でお送りしております。
ま、そんなどうでもいい話はおいておいて、ホリィちゃんをパーティにインだ。
:
「早い! 今何時だと思ってるのよ!」
ごめーん。やっぱり早かったか。朝食を食べてすぐ来たもんだから、朝の7時半とかそれくらいだろう。うむ、こんな時間に遊びに来たなんて言ったら、現代なら一回家にお帰りと言われるな。
ホリィちゃんは偉い子なので朝から家のお手伝いをしていて、今は朝食に使った食器を籠に入れて抱えていた。洗い物にいくのだろう。
……俺も家の手伝いをしてから出てくるべきだったなぁ……食器とか全部そのままだ……マウさん、申し訳ない。明日からちゃんとお手伝いします。
と、ホリィちゃんの後ろからにゅっと手が伸びてきて、食器の入った籠をひょいっと取り上げた。
「ホリィ、行ってきていいよ」
「父様! ホント!?」
ホリィちゃんの後ろからひょこっと現れたのは――とは言っても身長差から丸見えなんだが――ホリィちゃんのお父さんだ。まさに、この親にしてこの子あり、と言うくらいの美男子で、しかもエルフって皆若く見えるので、もはや年の離れた兄といった風情である。うーん、凄い(語彙力消滅)。
こいついっつも凄い凄いって言ってんな?
「その代わり、帰ってきたらしっかりとお手伝いすること」
「はーい! 二人とも、行こ!」
こちらでも頭を下げておこう。朝早くてすみませんでした。次からはちゃんと時間を考えて来ます。
:
「で、何するの? こんな朝早くに来るんだもん、何かあるんでしょ?」
うん、今日は糸電話を作ってみようと思ってねー……って電話なんてエルフ語は知らない。というか、存在しない、よなぁ。似た物で、この前にちょっと話した僻地と会話する魔法道具は存在するが、カップと糸でその魔法道具を作るよ!魔法使わないけど!なんて言ったって訳わからんことになりそうだ。こういう場合は素直に説明するに限る。
というわけで、遠くと会話するためのおもちゃを作ってみる予定なんだー、と言ったら、なぜか不思議そうな顔をするホリィちゃん。
「遠くと会話? おもちゃ? それ……いや、いいわ。まずはやってみましょっか!」
なーんか歯切れが悪いですねぇ。やる気になってくれてるから別にいいけどさ。
で、糸電話である。用意するのはコップと長い糸、これだけだ。糸はひとまずは10メートルくらいあればいいかなと思っているんだが、糸電話って何メートルまで声が届くんだろうか? 実験してみるのもいいかもしれない。
と言うわけで、まずは長い糸を探しに行こう。どこに行けば貰えるだろうか?
「糸なら家にあるでしょ? ん、家のは遊びに使いたくない? 贅沢ねぇ……そうするとヴォルトムラさんに頼まないといけないわね」
さっきも言ったがエルフはご家庭で織物をするので、前世の日本の一般家庭以上に糸が豊富に置いてあるのだ。種類、色、長さ、太さ、どれも比にならないくらいに。が、これはあくまでも織物に使うためにとってある物で、遊びに使うのはちょっと違うと思う。
で、ヴォルトムラさん? 聞いたことのない名前だな。
「ニエラちゃんは会ったことない? とっても体格が良くて、糸や布を作るところの長よ。セティラットにも入ってるわ……セティラ、知らない? 村を敵から守る人たちのことよ」
なるほど、ヴォルトムラさんは紡績関係の部署のトップ、と。で、セティラットは何と訳そうか……守り人とか防人? うーん、人たちって言ってたし、集団だよな。村を守る集団……自警団? うん、自警団でいいな。防衛力という意味ではちょっと怪しい表現になってしまった感が拭えないが、そもそもこの村って30人ちょっとしかいない小さなものだし、自警団でいいでしょ。
「ヴォルトムラさんの職場って、村の外周にあるんだけど……ニエラって勝手に行ってもいいの?」
と、ホリィちゃんがちょっと心配そうに、俺の顔よりもやや下に視線を下げた。あー、うん、首輪ね。確かリンムさんが言うには、村の外に出るなら大人の人についてもらえってことだったか。外延部って村の外なのか? ちょっと怪しいな……。
万全を期すならば誰かについて行ってもらうのがいいかな。俺の言葉にうんうんと頷いたエッナちゃんが、あっち、と指をさす。その方向は、前に村を案内してもらった時に行った、畑のある方向だ。確か、コンゴスさん、だったっけな?から、案内ついでに大量に野菜を貰ったところだ。あ、でも仕事中だよな、邪魔をしちゃ悪い……いや、そもそもの話、暇している大人ってのがいないか。
どうするかなぁと思っていたが、ホリィちゃんも特段反対しないのか、俺とエッナちゃんの手を引っ張って畑の方へと歩き出した。まぁ、時間があるか聞いてみるだけならタダか。
というわけで、比較的平坦な場所に出た。木もまばらでここは日光が村の中でも一番通りやすい。畑を作っているんだから当然と言えば当然なんだが。ここって日光が村の中よりもずっと多いので、ぽかぽかして気持ちいいんだよなぁ。それに土の匂いが濃くて、深呼吸すると清々しい気分になるね。人は土から離れて生きてはいけないのよ。
ホリィちゃんとエッナちゃんについていくと、前に案内してもらった畑に来た。畑は半分くらいが収穫されており、黒々とした土がむき出しになっている。と、その畑で作業するザ・ファーマーなエルフ、コンゴスさんがいた。うーん、麦わら帽子とオーバーオールを着せたい。
「お父さーん」
――えっ?
隣から聞こえてきた声はエッナちゃんのものである。が、内容を脳が正しく認識するのに数瞬かかった。えっ、コンゴスさんがエッナちゃんのお父さん? この超アウトドア系のコンゴスさんが、超インドア系に見えるエッナちゃんのお父さん? えっ、あー、えー、そういわれれば目元とか似ている気がしないでもない、かな?
はいそこ、エッナちゃんって喋れたの?とか言わない。描写していなかっただけで、精霊魔法の呪文やらを唱えたりとか、普通に喋ってます。まぁ、本当に必要最小限しか喋らない子だが。
「おお、エッナ! それにホリィちゃんと、ニエラちゃん。まだ朝早いのに、どうしたんだい?」
「おはようございます、おじ様」
おはようございます、朝早くにすみません。ちょっと混乱したが、ホリィちゃんに続いて挨拶をしておく。アイサツはジッサイ大事。古事記にもそう書いてある。
で、コンゴスさんについてきてもらうの?
「ついていく? どこに?……ふーむ、森長のところか。確かに、子供たちだけで行くにはちょっと危険かな。イノシシとかと出くわすかもしれないしね。分かった、ちょっと待ってくれるかい」
言うなり、コンゴスさんはごにょごにょっと口早に呪文を唱えた。すると畑の土がぼこっと盛り上がって、緑のとんがり帽子にりっぱな口ひげと顎ひげを蓄えた小人がにょきっと顔を出した。おー、土属性の精霊だ。地球で分類するならノームだろうか? はいほーとか言って欲しいけど、残念ながら喋ってくれない精霊のようだ。
ところで聞いたことのない単語、森長というのが出てきたが、これはさっき言っていた紡績の関係のトップを表す単語のことでいいんだろう。
もりおさ、だぞ? もり〇がではないからな? お菓子メーカーは関係ないからな。
などとどうでもいいことを考えている間にコンゴスさんはノームと契約を済ませていた。ノームはしゅぴっと手を上げると、畑の穴からよっこいしょと出てくる。動作はいちいち可愛いのだが、顔が老人っぽいのがちょっとマイナス点だなぁ。あぁでも、土を操って吐き出させた根菜を複数人で頭上に持ち上げて運んでいるのは可愛くて得点高いよ。
「よし、じゃあ行こうか」
あ、お世話かけます。
進む方向は畑のさらに奥であり、木の密度が村の中に比べてマシマシになっている。一目見て薄暗いし、道以外は藪も深い。エルフの装束って大体が長袖長ズボンで、ファンタジーによくあるへそ出しとかの露出度高い恰好なんて全く見なかったんだが……この木々や草の密度を見れば当然だなと思う。露出度高めの服装で森になんて入ったら、全身傷だらけになる(確信)。
というわけでコンゴスさんを先頭にして細い道を進むこと20分ほど。ようやくお目当ての場所に着いたのだが……俺はまったく想像もしていなかった光景に出くわすことになった。
まず、暗い。さっきよりもさらに暗い。木の密度が高くて何重にも葉が覆っているので、空なんてほとんど見えない。そんな中で目につくのは、木々の間に無数に張られた白い糸だ。何の糸かはすぐに分かった。蜘蛛の糸だ。なにせ、白い蜘蛛がそこらにわんさかいるんだもんな……あ、映像をご視聴の諸兄で蜘蛛に耐性のない方はブラバ推奨です。え、遅い? こんなん俺も想像してねーよ、不可抗力でしょ……。
蜘蛛。地球でも見かけるような普通の、頭と腹があって8本の足がついていて、お尻から糸を出して、巣を張って虫なんかを捕食している、アレである。あ、でも白い蜘蛛ってのは地球にはいなかったかな? いるか? いないことはないとは思うが、少なくとも俺は初めて見た。
で、ここにいる蜘蛛なんだが、形状は地球と同じだが、大きさが地球の蜘蛛とは比べ物にならない。でかいのだと足を入れないで体だけで小型犬くらいある。
俺は蜘蛛にそこまで苦手意識はなかったんだが、さすがに木や巣にこんなでかいのがわんさかと鈴なりになってると、いくらなんでも怖い。
俺の実況だけ聞いている諸兄もちょっと想像してみて欲しい。蜘蛛の目は赤くて、頭に…ひーふーみー…8個ついている。これが薄暗い森の中でもはっきりと見えるんだ。一方、体は白いといっても暗いところだとぼんやりとしか見えず、輪郭が捉えにくい。そのうえで大量にいるもんだから、木々の間に立ち込める濃霧に赤い目をたくさん散りばめたように見えるんだ。
夜に見たら、叫んで漏らす自信がある。
「ハーサちゃんはこの子たちを見るのは初めてだよね? このホモホッカはサルッカ糸を取るために飼ってるんだ」
ホリィちゃんが説明を――ホモ掘っか!? ああ、いやいや、蜘蛛ね、蜘蛛。蜘蛛がわんさかいる理由を説明をしてくれる。でも、蜘蛛の糸をサルッカ糸と呼ぶ? ホモホッカ糸じゃなくて?
サルッカって何?とホリィちゃんに聞いてみたものの、サルッカは…サルッカだよ?と言われてしまった。どうやらうまく説明できなかったらしい。これはあとで、ヴォルトムラさんに聞いておこう。
……ところで、なんでホリィちゃんの俺の呼び名が安定してないんですかね? 他の人も含めてハーサと呼ばれたのは初めてだ。
「え? うーん…なんだかしっくりこないというか…ニエラちゃんって見た目はニーちゃんって感じなんだけど、話してたらニエラさんって感じだし、ハーサっぽさはあんまりないし」
うーん? 感覚的過ぎて分からない。ま、まぁ、好きに呼んでくれていいよ。
って、エッナちゃんが足元をガサガサ歩いていた1匹の蜘蛛をひょいっと持ち上げてこっちに近、ちか――こっちに来るなぁ!? ひぃぃ、わしゃわしゃ動く足の付け根がキモイ! それに毛深い! あ、でも目は意外とつぶら……8個もなけりゃ可愛げもあったがなぁ!
よし、時に落ち着け。まずはそれを置くんだ、可哀想だからゆっくりとな。うん、置こうか。ね、置こう?――エッナちゃん、なんで満面の笑みでこっちに来るんですかねぇ!? え、大人しくて可愛い? お、大人しいのは分かるが、可愛いか……?
ちょっ、まっ、無理だってぇ!?
――エッナちゃんから逃げ回るという貴重な体験を数分間、ようやく諦めてくれた。しかしまぁ、小型犬並の大きさの蜘蛛を抱えて微笑む美少女エルフという、凄い絵面ができてしまった。ヤベーよ、この配信で変な扉開く人が出ないだろうな……。
さて、俺たちがわちゃわちゃやっている間にコンゴスさんがヴォルトムラさんを呼んできてくれていた。ヴォルトムラさんは壮年に見える方で、ということは相当なお年ということだ。焦げ茶色の短い髪とがっしりとした体つきに中々の高身長と、加えて切れ長の目がちょっと威圧感を与える見た目の人だ。糸とか布を作っているイメージとはあんまりそぐわない人だなぁ。
初めて見る……あ、いや、一度葬式の時に見た、かな? 少なくともちゃんと会話していないことは確かなので、初めましてと挨拶をしておこう。
「ああ、初めまして。俺はコルクオ・ヴォルトムラ。ヴォルやヴォルトムラと呼ばれているが、好きに呼んでくれ」
はい、ヴォルトムラさんだとちょっと長くて言いにくいので、ヴォルさんと呼ぼう。というわけで今回の目的について話す。
話した。
いや、何度も同じことを言わなくていいでしょ? 省エネ省エネ。TRPG御用達の圧縮言語、カクカクシカジカである。
で、当然のことながら不可解そうな顔をしているヴォルさんから5メートルくらいの蜘蛛糸を1本貰った。本当なら採取した後に洗って、いろいろと処理をするらしいのだが、遊びに使うならこれで十分だろうとのこと。はい、十分です。ありがとうございます。
糸はすっごいツルツルで光沢があり、蜘蛛の体の色と同じで真っ白だった。というか、この肌触り……母さんの葬式の際に着せてもらった戦装束の肌触りに似ている気がする。あの布は絹みたいなものかと思っていたが、蜘蛛の糸だったのか……ん? じゃあサルッカって絹のことか?
ヴォルさんに聞いてみると、どうやら当たりのようである。こちらもサルッカは芋虫の繭から取るらしい。で、案の定、地球よりもでかいようだ。外骨格生物はその構造上、巨大化できないはずなんだが……目の前で地上最大の甲殻類であるヤシガニ以上の大きさの蜘蛛が元気にわさわさ動いているんだから、真面目に考えても無駄だな……。
「それで? その糸をどうするんだ?」
切れ長の目をちょっとばかり見開きながらヴォルさんが聞いてくるので、次にすべきこと、つまりは両端にコップをつけるのだと返事をする。コップ???と、コンゴスさんとエッナちゃんが首を傾げている。うん、さすが親子、動作が一緒だ。
くくく、何が起こるのかは出来上がってのお楽しみってね。
……ところでコップってどこで貰えばいいんだろうか?
「それくらいなら、樹の精霊に頼めばいいんじゃないかな?」
ん? あ、そっか。コンゴスさんの言葉にぽんと手を打つ。前世含め、精霊や魔法といったものがない生活が長かったもんだから、魔法を使うという選択肢が基本頭の中にないんだよな。
とはいえ、こんなことを気軽に精霊にお願いしてもいいものなのかな? 怒られたりしない?
「ははは。リスコは最初に子供たちを怖がらせる。確かに、魔法は扱いを間違えれば命に係わるが、精霊は理由なく我々を害したりはしない。自分の力を知り、正しく契約を結ぶことが大切なのだ」
「それに、ニエラちゃんは樹の精霊と会話できるだろう? なら、契約の内容も話し合って決めればいいんだよ。その結果として対価が支払えないくらい多くなるなら、契約しなければいいだけさ。それにまぁ、小さなコップ2つくらいなら、実体化にかかる魔力の方がずっと多いしね」
なるほど、契約相手と交渉するのは至極当然の話だ。というか、交渉相手と会話できないなんてすげぇ面倒なのに、ここのエルフさんたちはみんな魔法を手足のように操るんだよ。長年の経験と、精霊との信頼関係構築の賜物ということなんだろうな。
俺もそうなりたいもんだ。
ま、何はともあれ、樹の精霊を呼び出すことにしよう。呪文は昨日と同じなので以下略! おっと、体の内からぞろっと熱が逃げていくようなこの感覚、慣れないなー。
で、俺の目の前にあった木の表面がざわりと波打ったかと思うと、内側から、なんというか……ゴムの膜に押し付けたみたいに、人が浮き出てきた。木目の見える素体人形のようだったそれは、すぐさま色づいていき、昨日見た美しいドリアードへと変貌した。
前回のファンシーな登場から一転して、しかも樹の幹から上半身だけ生えてるとか、とんだホラーだよ!
ドリアードの登場にめっちゃビビった俺を見ながら、ドリアードは面白そうにクスクス笑った。
「昨日ぶりね、可笑しな子。話はだいたい聞いていたけれど?」
お、おぉ、これは話が早くてよい。細かく言いますと、両手で水を掬うくらいの大きさのコップを2つ作ってください。厚さはまぁこれくらいで、と指でちょびっとの隙間を作る。これだとどれくらいの魔力量になりますかね?
「そうね……木を変形させるなら、今私を顕現させた魔力の5分の1くらい。1から創造するなら2分の1といったところよ?」
変形で全然かまわないです。あ、あと、コップの底に小さめの穴を1つ開けてください。
「コップの底に、穴……?」
ドリアードが心底不思議そうな顔で首をひねっているが、俺の要望どおりの小さなコップを2つ作ってくれた。で、底の穴に蜘蛛糸の先端を通し、玉止めをする。もう片方も同じように。あ、でも穴が大きくて糸が緩むな……ドリアードさん、穴を小さくして糸を止めてください。
「ええ。その程度、お安い御用よ」
お、よしよし。いい感じに完成しました。糸電話です! あ、ドリアードさん、ありがとうございます。もうお願い事はありません。
と、帰ってくれてよかったんだが、何をするのか気になるらしく、ドリアードは顕現の時間いっぱいまでそこにいるとのことだった。
「これで、遠くと会話ができるの?」
最初にちらっと説明している、首を傾げているホリィちゃんに片方のコップを渡し、俺はもう片方を持って糸がピンと張るまで離れる。で、コップを耳に当てるように指示し、俺は持ってるコップにささやいた。
こちらニエラ、こちらニエラ。ホリィちゃん、聞こえますかー?
「!! えっ、聞こえる! すごい! 耳元で!
そうでしょうそうでしょう。ささやくような小さな声でも、まるで耳元で喋ってるように聞こえ――え、風の声って何?
「ティールンオーナ。風の精霊に遠くに声を届けてもらう魔法よ。これみたいに、隣にいるように遠くの人と会話ができるの」
……それ、もっと早く言ってよ~……なぁんだぁ、それで最初、妙な反応してたのかぁ……。
「遊びに行くって意気込んでたのに、言えないじゃない。そ、それに、これも凄くないかしら!? ほら、えっと……魔力使わないし!」
ばつが悪そうに、精一杯のフォロー、ありがとう……それに空気の読める良い子だね、ホリィちゃんは。
そうだよな、魔法なんていう、科学的な理論や過程をすっとばすものを長年にわたって使ってきたエルフなんだから、日常で便利な魔法もそりゃ考えるよな。
はぁ~……まぁ、そもそもエッナちゃん家とホットラインを引けるかも分からないし、この魔法があればホリィちゃんとも会話できるし、良しとするかぁ。
「ところで……これは、どうして声が聞こえるのか、ニエラちゃんは知ってるのかい?」
ん? コンゴスさんが神妙な顔つきで、ホリィちゃんから受け取った糸電話の片方をためつすがめつしつつ聞いてくる。その隣でヴォルさんも難しそうな顔をしているな。ちょっと興味がおありで? なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情けってやつだな。
というわけで、声が空気の振動であることだとか、糸が振動して声を伝えているとか、糸をつまむと聞こえなくなるとか、知ってることを得意げにしゃべり、時に実演する俺であった。そこ、急に早口になるなとか言わない。伝えたい情報量が多いのが悪いんだ。
――そして、それがどういう意味を持っているのかに気付かないあたり、俺のアホさ加減が良く分かるのだった――
「ふーむ……なるほどなぁ。揺れ、振動か……これを、ニエラちゃんはどこで知ったんだい?」
……。
…………おうっ? え、えっとぉ……どこで?
そりゃそうだ。原始的な狩猟生活をしているゴブリンが知ってるはずがないし、基礎知識もないんだから自力で辿り着けるわけもない。陰険野郎は多少頭は良さそうだったが、それでもエルフの知らないことを知っているとは思えない。本を読んだ? 俺、当時は文字読めないっす。捕まっていた女性に聞いた? 近付くことすらできなかったっす。
どうする……どうする俺?
正直に転生者だと言う? そうするとこの先がどうなるか分からない。エルフの文化・死生観的には転生、生まれ変わりは普通のことだ。だが、実際に転生して、生前の記憶が残っていますとか、あまつさえ別の世界の人間でしたとか……受け入れられるのか拒絶されるのか、まったく見当もつかない。もし、拒絶され追い出されようものなら……野垂れ死には確実だ。
なら、適当なことを言ってごまかす? 正直、ここからごまかせる気がしないわけだが……幸い、ここはファンタジーな世界だ。神の啓示だとか、唐突にひらめいたとか、証明のしようのないルートで知識を得ることもなくはないんじゃなかろうか。それでごり押す? 変な奴度合いが増えるだろうが、既に変な奴だと思われているだろうし、それでも捨てられるまではいかない……と、いいなぁ……。
え、えーと、実は……――
どういう嘘をつけば…………
――
いくらエルフの娘であり、その姉の恩人とはいえ、
知ってなお、こんなのの友達になってくれた、この愛らしい少女たちを。
それは……ダメだよなぁ……。
っ、実は、ですね――
お読みくださりありがとうございます。
まだまだ書きたいこと、出してない設定、やりたいクエスト等があるのですが、書く時間がなかなかとれません。
続けたいとは思っていますので、ふと思い出した際にでも読んでいただければ幸いです。