ゴブリンの女王は死にたくない   作:フリーズドライ

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全然話が進んでないので初投稿です。


第3話

 やあやあ、どこかから見ているかもしれない外宇宙の諸兄よ。ご機嫌いかがだろうか。

 まぁ、そんな超存在がいなくても頭の中でだらだらとしゃべるのはやめないんだが、どこかに観測者がいてくれた方が精神的には楽なのだ。無意味じゃないからな。

 

 くくく、本当は聞こえてるんだろう? 俺にはわかるんだぜ。

 

 

 実は最近、ちょっと精神状態がマシになったんだ。といっても、女性の悲鳴に慣れたってわけじゃない。女性の悲鳴が減ったからだ。

 いや、亡くなったんじゃないぞ。まぁその、死んだみたいに完全に反応がない人が何人かいるのは事実なのだが……新たに3人の女性がゴブリンを妊娠したんだ。

 

 いくらゴブリンが早熟とはいえ、妊娠して即生まれてくるわけがない。なので、妊娠した女性は子育て部屋に移される。そして、その部屋での女性へのご無体はご法度なのである。ゴブリンもおそらく本能的にか経験的にかは分からないが、妊娠中に無体を働けば子が流れることを知っているんだろう。

 ただ、ゴブリンを妊娠させられた人にとっては地獄の延長線上でしかないんだろうが……それでも、彼女たちの悲鳴がない分、俺にとってはマシなのである。

 

 

 俺を酷い奴だと思うか?

 

 少し言い訳をさせてもらうと、彼女たちを助けようと一度はチャレンジしたんだ。

 俺の自我が確立されてしばしのち、俺はゴブリンどもからちやほやされ、絶対に危害を加えられないと分かった。だから、俺が身を挺して女性たちを庇えばどうにかできると思ったんだ。

 

 だが、その考えは甘かった。

 俺は、女性たちに近づけなかったんだ。俺が近づくと、彼女たちは金切り声を上げて後ずさった。恐怖、敵意に満ちた目に射すくめられ……俺は踵を返すしかなかった。

 

 すごすごと私室に帰ってきて、何がいけなかったのかを考え、ふと思い出した。俺、今、ゴブリンだったわ、と。

 もしかしたら女性たちを助けられるかもしれないと喜び勇んで、それ以外のことをすっぱりと忘れてしまったのが敗因だった。

 

 自分のあほさ加減に一晩凹んだあと、実際のところ自分はどんな容姿なのかが気になった。

 ゴブリンの巣に鏡なんてもちろんない。なので、水面の反射で見れるかな?と、水瓶を覗き込んでみたが、いくらなんでも部屋の明るさが少なすぎて見えなかった。

 それではとコップに水を汲んで松明の下で見てみたが、今度はコップが小さいせいで非常に見にくい。かろうじて判別できた限りでは、普通の人間とそう変わらない顔立ちのようだった。それに触った限りでも特別変な目鼻立ちではなかった。

 だが、耳は尖ってて長く、口を開けば鋭い牙も見える。体の色にいたっては薄めの緑、髪はあまり光沢のない金髪だった。

 

 大人になれば、よくもまぁここまで醜悪な表情ができるなと、もはや感動すら覚えるゴブリンであるが、子供はというと、シワのないつるっとした肌、くりっとした目、体全体に比べて大きな頭をしていて、意外と可愛い。肌の色は大人よりも薄めの緑といった感じ。全員ややかぎ鼻な傾向があるが、そこまで人間離れした顔ではない。ゴブリンだけど。

 

 つまるところ、違いは髪があるくらいで、俺は子ゴブリンとそんなに変わらないのだった。

 

 で、ゴブリンは子供を大切にする。子育て部屋は大人のゴブリンが常駐し、母乳をあげる女性たちを監視しているし、未だ反骨精神を持つ女性に至っては頸枷まで嵌められている。

 

 繁殖部屋と俺が勝手に呼んでいる部屋では子ゴブリンに関わらないため頸枷は嵌められないが、その分、逃げなきゃそれでいいやと言わんばかりにゴブリンどもの女性への扱いは手荒くなる。

 そんな繁殖部屋で、子ゴブリンに見える俺が近寄っていったら、女性たちはどんな目にあうか……。

 

 そうだな、これも敗因だ。俺はちゃんと周りを見ていなかった。女性たちの扱われ方をちゃんと知りもせずに、行動に移してしまったんだ。

 

 

 じゃあ、繁殖部屋にやってくるゴブリンどもを押しとどめられないかと頑張ったが、多勢に無勢だし、いくらゴブリンの体格が人間の子供程度でも、俺はそれ以上にちんまい幼女ぼでぃ。あっさりと小脇に抱えられて連れ出されてしまった。

 

 何にもならなかったけど、一応、頑張ってはみたんだ……。

 

 

 ゴブリンどもは俺のわがままは「基本的に」何でも聞いてくれる。例えば、食事にでかい芋虫は嫌だ、果物がいい、ウサギの肉も欲しい、焼いてくれればディ・モールトベネ!とか言ってみたら、なんと全て通った。まぁ、ウサギ肉は部分的に炭化していてて、ゴブリンの能力的な意味で不可能なことはあったが。

 炭化した部分はこそいで食べた。焼きすぎだったが、涙が出るほど美味しかった。

 

 ともかく。その「基本的に」に含まれないのが、この生殖行為であった。

 

 当たり前といえば当たり前だ。

 ゴブリンは小さく弱い。だから数でカバーする。また、成長が早いというのは言い換えれば寿命が短いということ。そんな彼らに子供を産ませるな、などと言って聞き入れてもらえるわけがなかった。

 なお、この巣のトップであるゴブリン…メイジ?シャーマン?に言ってみたが、鼻で笑われただけだった。

(こいつ、他のゴブリンよりも頭が良いせいか、変なことするとあからさまに馬鹿にしてくるんだよな…)

 

 もう一つ、「基本的に」に含まれないことがある。

 

 勘のいい諸兄は気付いているかもしれないが……俺はこの巣から出られないんだ。外に続くと思われる通路には必ずゴブリンが何匹か常駐していて、俺が行くとやんわりと押し返されてしまう。退けと言ってもダメで、この幼女ぼでぃでは押し通ることも不可能。それ以外であれば巣穴のどこに行っても止められないんだが…その通路の先だけは通してもらえない。

 

 

 単独での脱出は叶わない。

 

 巣から逃げ出したいと願う女性たちとは協力することもできない。

 

 時間は敵だし、冒険者が巣を殲滅に来るかもしれない。もしそうなったら、俺は見逃してもらえるだろうか…?

 

 

 ……これってもしかして、詰みでは……?

 




洞窟の中で、道具もなくて、どうやれば自分の姿を確認できるんだろう…(自縄自縛)
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