それと知っている方もいらっしゃると思いますが、ウマ娘のガイドラインについて後書きでお話したいと思います。
それでは、どうぞ
〜トレセン学園・立花side〜
「いよいよ菊花賞だね」
「待ち遠しいな」
僕はトレセン学園で明日に控えた菊花賞の調整を燈馬君と2人で行っていた。距離3000mという長距離レースの上、アップダウンが激しい。今回のレースの肝だね。
「…ねぇ燈馬君、シービーさんの方はどう?」
「元気にやってるってよ。もう少ししたら学園に来るってさ」
と燈馬君はストレッチをしながら答えてくれた。
凱旋門が終わってフランスから帰国した燈馬君とシービーさんは空港にいたトウショウボーイさんの車でそのまま帰った。トウショウボーイさんは記者達がいると思ってたくさん車を用意していたらしいのだけれども、どうやら記者達は来ておらず別のところへ間違えて行っていたらしい。因みにシービーさんだが、理事長の計らいのもと一度実家で療養を取ってから学園に来るそうだ。
「シービーさんの手荷物検査は一度通ってるんだよね?なのになんでまた手荷物検査なんて」
「大会後の検査で発覚する例は滅多にない。極稀に何人かのウマ娘はそれで失格になったと聞いたことがある。けど、一番気になるのはなんでレースの途中で発覚したのか、だ」
「確かに。普通ならレース前とかにもう一度、手荷物検査や緊急で検査するなんてことも出来るのにね」
「…考えたってどうしようにもない。今は菊花賞と次の秋華賞のことだけを考えよう」
「そうだね。それじゃあトレーニングを始めよっか」
と燈馬君はストレッチを終えてトレーニングを始めた。
〜部室〜
「─────集合場所は夜に連絡するから。遅れて来ないようにね」
「わかった、よろしく頼む。また明日」ガチャ
「また明日〜」バタン
と燈馬君は部室を出て帰っていった。僕はパソコンに向き直り資料作成へと移る。菊花賞に出場するウマ娘達のデータの作成や今回のレースでの注意点、あとは菊花賞後にある秋華賞の資料作成をやらないといけない。
「まあでも、これぐらいは前の仕事に比べればまだ優しいほうかな」カタカタ
僕の知っている仕事の中では資料作成はまだ軽いほうだ。これよりももっとひどいのを知っているしね。
ピリリリリリ…ピリリリリリ…
「ん?たづなさん?…はい、立花です」ピッ
『もしもしたづなです。すみません立花さんは今、学園内にいらっしゃるでしょうか』
「はい。居ますけど」
『少し手伝ってもらっていいですか?今、手が離せなくて』
「わかりました。理事長室に行けばいいですか?」
『はい、お願いします』
「すぐそちらに向かいます(力仕事かな。資料作成も進んでるし手伝いに行こう)」ピッ
と僕は電話を切ってたづなさんの元へと向かう。
♪ピロン
「あ、URAからメールだ。菊花賞のものかな、後で確認しよう」
と僕はパソコンに来たメールをあとにしてたづなさんの元へと向かった。
・・・・・
ガチャ…。コツコツ。
「…」スーッ、カチカチ
From URA
送り先 立花隆二 様
件名 菊花賞について
─────菊花賞ですが予定通り京都レース場で行います。時間は──────────。
「…」カタカタ…
─────菊花賞ですが予定通り京都レース場で行う予定でしたが、中京レース場で行います。場間15時で───────。
「……」ニヤ
スタスタ。ガチャ…。
「────。」カリカリ スッ…
ザシュ!…
〜自宅・燈馬side〜
「どうだいあんた、菊花賞は取れんのかい?」
「さあな、明日になってみないとわかんねぇよ」
俺はトレーニングから帰った後、ババアと菊花賞について話しをしていた。
「あんたのことさね、ちゃんと勝つんだよ」
「へいへい、わかったよ。……ん?」ピリリリリリ
と携帯が鳴ったので見てみるとトレーナーからだった。
「明日は中京レース場だとよ」
「中京?京都じゃなくてかい?」
「さあな、急な変更だとよ」
「…」
京都レース場で何かあったのだろうか、まあそれは追々判るだろう。
「じゃあ俺、明日早いから寝る「燈馬」あ?」
「明日、ここを早く出な」
「言われなくても早く出るよ。衣装とか取りに行かないといけないし「そういう意味じゃない」…じゃあどういう意味だ?」
「わからないさね。ただ…嫌な予感がする」
とババアが目を細める。
「(目を細めるっていうことは何かあるんだろうな)…わかった、明日は早めに出て行く」
「そうしな」
と自分の部屋に戻り、明日に向けて寝た。
〜菊花賞翌日〜
俺は10時に家を出るはずだったのだが、昨日ババアに言われた通り1時間早く家を出てトレセンに向かった。その時だった───。
ピリリリリリ…ピリリリリリ…
「たづなさんだ。…もしもし」
『もしもし!燈馬さんですか!?』
「どうしんです?そんなに慌てて『大変なんです!すぐにトレセンに来てください!』…わかりました」ピッ
と俺は電話を切ってすぐにトレセンへと向かった。
〜部室〜
俺はトレセンの門をくぐってすぐに部室へと向かい、扉を開ける。
「一体どうしたんだ」
「…」プルプル
とトレーナーが座り込んで震えている。隣にはたづなさんが目を見開き、口を抑えていた。
「おい、トレーナー。一体何があったん…!」
とトレーナーの肩を掴んで揺さぶろうとした時だった。
「…ごめん、燈馬君。君の、君の勝負服が…!」プルプル
と震えた手に持っていたのは、“切り刻まれた俺の勝負服”だ。
「…心当たりは?」
「ないよ、朝一番に来て燈馬君のロッカーを開けたらこの有り様さ。昨日は出る時にちゃんと鍵をかけたのに」
「他に部屋を出た時はあるか?」
「一度だけ、たづなさんに呼ばれて校舎に戻ったくらいだけど…」
「え…」
とトレーナーがたづなさんの名前を口にすると、たづなさんは驚いた表情をする。
「私、
「え、でも電話で「私、昨日は理事長と一緒に地方へ視察に行っていたので朝から学園にはいませんでしたよ」で、でも確かに昨日電話で…!」
「やられたな、トレーナー。それは偽の電話だ」
「ニセモノってどういう「単純だ、トレーナーをこの部室から遠ざける為に敢えて偽の電話をかけたんだ。それに相手がたづなさんだったら尚更行かないといけないしな」そんな…」
と落胆するトレーナー。騙されたんだ、落ち込むのも無理はない。
「ごめんね、燈馬君。トレーナーなのにこんな失態をするなんて…」
「謝るのはあとだ。まずは勝負服をどうにかするのが優先だ。15時まで時間はあるんだ、ゆっくり考えよう」
とトレーナーを宥めていたら、たづなさんが口を開く。
「あの、15時ってどういうことですか?」
「菊花賞ですよ。中京の15時に始まるんでそれまでに「燈馬さん!」ん?」
とたづなさんが声を荒げる。
「菊花賞は京都レース場の
────え、13時…?
「待ってください!URAからのメールでは中京レース場の変更と15時開始と書かれていました!」
「違います!!URAはきちんと京都レース場の13時開始と書かれていました!!」
「トレーナー!まず、メールを見せてくれ!」
とトレーナーがパソコンを使ってURAのメールを開く。メールには確かに中京レース場の変更と15時開始と書かれていた。
「私のもどうぞ」
と今度はたづなさんが携帯を見せてくる。そこには京都レース場の13時開始と書かれている。どちらも違う内容で本当の内容がどっちかわからなくなってきた。
「ルドルフにかけてみる」
と俺はルドルフに電話をかけた。
『燈馬か?どうかしたのか?』
「ようルドルフ、朝早くから悪いな。菊花賞なんだが何処でやるか聞いているか?」
『
どうやらたづなさんの方が正しいようだ。しかし、ここまで違うと他の奴がやったとしか思えない。
『それとなんだが、さっき新幹線が止まったそうだぞ』
「止まった?」
『あぁ。何でも吊架線が切れたとかで運転を見合わせると放送があった。君も京都に来る際は気をつけるんだぞ』ピッ
と電話が切れた。
「シンボリルドルフさんは何と仰られていましたか?」
「…京都の13時と言っていました」
「では、すぐに「ただ、吊架線が切れたとかで新幹線が運転見合わせをしているそうです」そんな…!」
とたづなさんは驚いた表情をする。これで交通手段の一つである電車が使えなくなってしまった。残るは車だ。
「トレーナー、車をこっちに『ピリリリリリ…』…」
「すみません。…ハイ、たづなです」
『たづなか!?私だ!』
「理事長!どうされたのですか!?」
とたづなさんの取った電話相手は理事長のようだ。
『深刻!今、渋滞に嵌ってしまい京都への到着が遅れてしまう。なので京都レース場にいるURAに連絡してくれぬか!』
「えぇ!?理事長からは連絡出来ないのですか!」
『失態…。携帯の充電を忘れていて今、もう少ししかないのだ。一度私の方で電話をかけたのだが繋がらなくてだな。だからたづなの方で連絡しておいてくれ!』
「わ、わかりました…」
『では、たのm────。』ツーツー
と理事長の電話の切れる音がする。
「電車もダメ、車もダメ。飛行機なんてものはもっとダメだ。これじゃあレース不在で失格だ…」グッ
「トレーナーさん…」
とトレーナーが切り刻まれた服を握り締める。トゥインクルシリーズのレースはレース開始予定時間になっても出走するウマ娘が現れない場合は不在として失格となる。
「ここまで、ここまで来たのに!三冠も目の前なのに!こんなところで諦めたくない!!」
「トレーナーさん、余り言いたくはないのですが今回のレースは諦めましょう。クラシック三冠は無くてもトリプルティアラなら獲れますよ!それだけでも十分凄いことなんですから!」
「くっ…」グッ
諦めたくないっか───。
「────やるしかないな」
「「え…」」
と俺はトレーナーにあるURLを送る。
「トレーナー、さっきトレーナーの携帯にURLを送った。そこにパソコンに来たメールをそのURLに送ってくれ。安心しろ、そのURLはウィルスでも何でもない、知人のやつだ」
そして…。
「次にたづなさん。あなたは理事長に言われたことともう一つ、勝負服を仕立ててくれたヒトに連絡を取って俺の勝負服の修正が出来るか聞いてみてください」
「わ、わかりました…。ですが、燈馬さんはどうするのですか?」
「決まってるじゃないですか。
時間の流れが一瞬止まったかのように思えた。やっぱそうなるよな。
「無茶だ!そもそもここから京都なんて400km以上も離れてるんだよ!?」
「そうです!トレーナーさんの言うとおりです!今日のレースは運が悪かったと思って「やってみないとわからないでしょ」ですが!」
と俺は部室を出て準備体操を始める。400kmか…、未知数だな。
「待ってくれ燈馬君!君は自分が何を言っているのかわかってるのか!」
「わかってるよ。それでも俺は行く」
俺はウマ娘と同じで走れるし、ヒト並以上の体力はある。後はどれくらいの速度で走るかが問題だ。
「(下手にスピードを出すと警察に止められる可能性がある。それだと時間が大幅にロスしてしまう。となると…。)」
ヒト通りが少なく、かつヒトに見られない道。
「住宅の屋根、建物の上がベストか…」
「燈馬君、君本当に「そういうことだ。後は頼んだぞ」燈馬君!」
と俺はトレーナーの静止の声を聞かずにそのまま地面を蹴って京都へと走って行った。
「(開始時間まで約4時間弱。それまでに着く!)」
〜京都レース場・ルドルフside〜
『トゥインクルシリーズファンの皆様、お待たせしました!只今より、菊花賞の開催を宣言します!!』
「いよいよですね、会長」
「あぁ。どのウマ娘にとって大事なレースだからね」
午後13時。URAの関係者がレース場にて菊花賞開幕の宣言をする。ここ京都レース場では5万人余りの観客の歓声が一気に上がる。
『ここからは実況の赤坂と解説の細川さんでお送りします!細川さん、よろしくお願いします!』
『よろしくお願いします』
『ではまず、出走するウマ娘ですが────。』
と実況と解説の方が今日の菊花賞に出走するウマ娘について話し始める。
「ルドルフ、少しいいか?」
「ん?どうした、オグリキャップ」
とオグリキャップにチームクレアのウマ娘達が近づいてくる。
「何かあったのか?」
「実は、さっきから燈馬がいないんだ。控え室に行ったんだが、トレーナーもいなくてな。何か知っているか?」
「いや、知らないな」
燈馬か。朝、連絡があって以来こちらも何もないな。
「まさかあのたわけ、遅刻とかしてないだろうな」
「菊花賞だぞ、それはないだろ。それにあいつは三冠がかかってる。渋滞にでも巻き込まれたんじゃないのか?」
「う〜ん。それだとURAには連絡がいっているはずだしね」
とエアグルーヴ達も考え始める。─────ん?
「いや、待てよ…」
「どうしたんです?会長」
「朝、燈馬から連絡があったんだ。確か“菊花賞は何処の何時にやるんだ”って。それで私は“京都レース場で13時”と答えたんだ」
「それがどうしたんです?」
「いや、どうにも引っかかってね。普通、事前にURAからトレーナー宛にメールが届いて、そこで時間と場所がわかるだろう?なのになんで聞いてきたのか不思議でね」
「確かにそうですね。メールが届いているにも関わらず、聞いてくるのはおかしいです」
「それを踏まえて考えると「あいつが時間と場所を間違えたってか?」そういうことになるよ、ブライアン」
とブライアンは鼻で笑う。
「それならあいつはよっぽどのバカってことだな」フッ
「どういうことだ」
「女帝様でもわからないのか?あいつのことだ、レースに舞い上がって時間と場所を間違えたんだろ」
「それは違うんじゃないのかい?燈馬は常に冷静だよ。レースで舞い上がるなんてことはないと思う。考えられるとなると誰かに裏工作でもされて誘導されたとか…」
「それこそテレビの見過ぎじゃあないのか?フジ」
とブライアンがフジキセキの言葉を否定する。フジキセキの言うことも一理あるがブライアンの言うとおり、そんなことはテレビでしか見たことがない。
「…まずは燈馬が今どこにいるかを知る必要がある。エアグルーヴ、燈馬に連絡を『ピリリリリリ、ピリリリリリ…』…」
「ごめん、私だ」ピッ
とナリタタイシンが電話を取る。
「もしもし?ナリタタイシンだけど『タイシンさん!?今、大丈夫?』うるさ、あんま大きい声で喋んないでよ」
とナリタタイシンの携帯からクレアのトレーナー君の声が聞こえる。
「それで?要件は?」
『あ、あぁ。そっちに燈馬君いない?』
「それ何だけど、あいつ何処行ったのよ。菊花賞も始まっちゃったし他のところに行っても『えぇ〜!!菊花賞、始まっちゃったの!?』うるさ!だから大声出さないでってば!」
とナリタタイシンがトレーナー君に注意するが、電話からはどうしよう、という不安の声がする。
「何かあったの?」
『実は、URAから僕宛のメールが誰かに改ざんされてて燈馬が4時間くらい前に東京を出たんだ!』
「「「「「えぇえええ!?」」」」」
「ちょ、それアンタどういうことよ!」
『わからないんだ。犯人は今、探してるんだけど見つからなくて…。それに燈馬君、そっちに走って向かってるんだ!』
「は、走るたって…ここまで何時間かかると思ってるのよ!!新幹線でも2時間はかかるのよ!?」
『そんなことはわかってるよ!今は新幹線も止まってるし、車で行こうったって渋滞が凄いんだ!』
「じゃあアイツはどうなるのよ!」
『恐らく、失格になるだろうね…』
「そんな…!」
ここまで来て、燈馬が失格だと…。ふざけるな!
「こんなこと、許されるわけがない!」
『タイシンさん、悪いんだけどURAに燈馬君が少し遅れて来ることを伝えおいてくれないかな』
「…わかった、伝えて「やめておきなさい、突っ返されるだけよ」なんでよ!」
と今度は私達のトレーナーがやってくる。
「立花、あなたURAのルールを覚えてるわよね。“レース開始時間にいなかったら失格になる”って」
『わかってます…、けど!「子供地味たことを言うのは辞めなさい」くっ…』
「あなたの想う気持ちもわかるわ。私があなたと同じ立場なら同じことをするもの。…けど、ルール化されている以上、何も言えないわ」
「だったら、さっきトレーナーが言ったことをURAに報告すれば「そうすると、じゃあなんで他のヒトに確認を取らなかったのかって聞き返されるだけよ」…」
『じゃあどうすれば「信じるのよ」え…』
「あの子が、風間燈馬が来るのを信じるの。時間までに間に合って、ちゃんと菊花賞で走るのを信じる。それが今の私達に出来ることよ」
確かにトレーナー君の言うとおりだ。今ここでどうこうしても時間は過ぎる一方、だったら燈馬が来るのを信じるしかない。
『…わかりました、燈馬君を信じます』
「えぇ。それと、担当ウマ娘にもちゃんと謝っとくのよ」
『はい。すみませんタイシンさん、大声を出してしまって』
「…いいよ、こっちこそ悪かった」
「…立花、そろそろ電話を切っておきなさい。運転中でしょ?」
『はい、わかりました。「それと風間のことは任せなさい。こっちで見ておくわ」何から何までありがとうございます』
「いいのよ。これくらいどうってこともないわ」
『ありがとうございます。燈馬君のこと、よろしくお願いします。では』ピッ ツーツー…
と電話の切れる音が聞こえる。燈馬、本当に大丈夫なんだろうか。
「レース開始まであと10分。それまでに来なさい、風間」
パドックは既に終わっており、出走するウマ娘達は既にゲート前に集まっている。
「お願い、来て…燈馬!」ギュッ
とマルゼンスキーが祈るように両手を合わせる。同じように他のメンバーもギュッと目を瞑る。
「間に合ってくれ、燈馬…!」
早く、早く来てくれ…!!
「…あと5分」
刻一刻と時間だけが過ぎていく。
『…只今、URAから菊花賞に出走する予定であるシノンが現在、レース場内にいない為、捜索していると報告がありましたのでしばらくお待ち下さい』
『早く見つかるといいんですが…』
「なんだよ、早くしろよ!」
「そうだそうだ!そんな奴ほっとけ!」
と観客から怒りの声が上がる。
「(頼む!間に合ってくれ!)」
みんなが燈馬が来ることを願っている、その時だった。
ガヤガヤ…ザワザワ…
と後ろの方でざわめく声がする。それを見たマルゼンスキーが。
「…ねぇ、あれって!」
とマルゼンスキーが後ろ方を指を指し示す。その先には────。
「ハァ…ハァ、すまない、通してくれ…!」ハァハァ
「「「「「燈馬(さん)!!!」」」」」
と制服姿の燈馬が後ろにいた人達を掻き分けて走って来た。
「あと2分ね。ルドルフ、風間にレースの再確認を行ってきて。なるべく簡潔に」
「はい!…燈馬!!」ダッ
と私は燈馬の元へと走り出す。燈馬は観客席の背もたれ部分を上手くジャンプしながらターフへと向かっていき、私は燈馬にレースのことを簡潔に伝える。
「燈馬!そのままでいい、聞いてくれ!今日の菊花賞は芝3000mの右回り、第3〜4コーナーの坂に注意だ!」
「わ、わかった…」タンッタンッ
と燈馬は柵を飛び越えてそのままゲートへと走って向かって行った。
「絶対に勝て、燈馬!」
私は燈馬を見送ったあと、そのまま元の場所へと戻って行った。
〜スズカside〜
『────それでは、各ウマ娘準備が整いました。クラシックロード終着点、菊花賞を制し最強の称号を手にするのは誰だ!』
『ウマ娘の皆さんには全力を出し切って欲しいですね』
『菊花賞のレースが今────!』
《big》パァン!、ガコンッ!《/big》
『スタートしました!各ウマ娘、綺麗なスタートです!』
「よぉし、スタート完璧!」
「いっけぇええ!スペぇえええ!」
「「スペ先輩、頑張ってください!」」
「スペちゃん、頑張れ!」
「…」
私は今、とても心配な気持ちでいます。それはスペちゃんではなく、遅れてやってきた燈馬君にです。
『先頭に出てくるのはやはりこのウマ娘、セイウンスカイ!続いてレオリュウホウ。その後ろボールドエンペラー、その内並んでダイワスペリアー。キングヘイローは5番手、外の位置です』
『いい位置につけてますね』
「にしてもよ〜燈馬のやつ、な〜んで開始ギリギリで来たんだ?」
「さぁ、あの人は謎が多いですから。何を考えてるかわかりませんわ」
とゴルシとマックイーンが遅れて来た燈馬君の話をする。
「トレーナーさん、私ちょっと離れます」
「え、おっおい!スズカ!」
と私はチームのみんなから離れてある人の場所へと向かった。
「エアグルーヴ!」タタッ
「スズカ!どうしたんだ!」タタッ
「燈馬君のことが気になって…」
「あいつのことか…」
とエアグルーヴの顔が暗くなっているのがわかる。
「何かあったのね」
「それは「教えて、エアグルーヴ」…実は─────。」
とエアグルーヴはこれまで何があったのか、現状を知る限りのことを教えてくれた。
「─────ということなんだ」
「そんなことが…!」
「まだ、犯人はわかっていないそうだ。だから、余り話を広めないで欲しい。特にゴールドシップとかにな」
「うん、ゴルシには絶対に言わないわ」
あの子はすぐに広めようとするからね。
「でも、どうして燈馬君なの。燈馬君は恨まれるような人じゃないし…」
「わからないな。しかも菊花賞という大事なレースを狙ってくるなんてな…。一体誰が」
燈馬君、大丈夫かな…。
『メジロランバートは外の位置、スペシャルウィークは中段に位置しています。そして、先頭集団は1周目に差し掛かってきました。バ体はやや縦長で先頭は依然としてセイウンスカイがリードしています』
「────今はレースに集中しよう、スズカ。スペシャルウィークも出ているんだろ?ちゃんと応援してやろう」
「そうね、エアグルーヴ」
と私はターフの方へと向き直り、レースを観戦する。今は先頭が向正面へと走っていて中段位置には10人くらいのウマ娘が固まっていた。スペシャルちゃんは集団より少し前にいた。
「燈馬君、どこにいるんだろう…」
「アイツなら最後方にいるぞ。1バ身離れてな」
「どこにもいないけど…」
「そういえば、スズカには教えていなかったな。実は────。」
と私はエアグルーヴから燈馬君がミスディレクションという技法を使っていることとどうやって見つけるのかを教えてもらった。やってみると、エアグルーヴが言っていた通り燈馬君は最後方にいた。でも…。
「でも、ちょっと苦しそう」
「無理もない、東京からここまで走って来たんだ。休憩もせず、すぐにゲートに入ったんだからな」
東京から京都までは400kmを超える。それに着いてすぐレースなんていくら燈馬君でも追いかけるのに精一杯だと思う。とにかく、今は無茶だけはして欲しくない。
『第3コーナーへと移ります。早くもセイウンスカイがリードを広げている。およそ8バ身のリード!徐々に差を詰めてくるダイワスペリアー!レオリュウホウも上がってくる!スペシャルウィークはどうか!?4番手の位置にいるぞ!』
とレースはクライマックス、最後の直線へと入っていきました。スペちゃんもセイウンスカイさんとの差を徐々に詰めて行きます。
『セイウンスカイだ!セイウンスカイが逃げる逃げる!スペシャルウィーク追いつけるか!?』
「行けぇええ、スペシャルウィーク!!」
「負けるなぁああ!セイウンスカイ!!」
と観客からの声援も上がり、もの凄い盛り上がりを魅せる。
「─────確かにセイウンスカイとスペシャルウィークの差は4バ身程。後続の奴らも追いつくのは厳しいし、何より差が離れきってしまっている。この状況なら普通は誰であっても諦めるだろう。
もしかして…!
『いや、外から!外からシノンだ!スペシャルウィークを抜き去り、セイウンスカイとの差を縮めてきた!!』
ともの凄いスピードで最後方から追い上げて来たのは燈馬君だった。というより─────。
「なに、あのスピード…!」
「スタミナはほぼ底を尽きているのにも関わらず、あのスピードは一体何なんだ」
燈馬君はまだ第4コーナーの途中に居たはず…。なのにあの追い上げは異常だ。
『交わした交わした!シノンがセイウンスカイを交わした!先頭はセイウンスカイからシノンへと変わる!セイウンスカイ、厳しいか!?』
燈馬君が残り300mというところで先頭に立つ。セイウンスカイさんも必死に追い上げようとするも、今のスピードの燈馬君には到底追いつくのは不可能だ。
「勝負あり、だな」
『ゴール!!!シノンが今1着でゴールしました!セイウンスカイ、惜しくも2着!スペシャルウィークは3着です!』
『非常に惜しいレースでしたね。どの娘もよく頑張りました』
『そして、シノンはなんと!皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制し“クラシック三冠”を手に入れました!!』
「おめでとう、燈馬君。スペちゃんもお疲れ様」
という労いの言葉も虚しく。
「ふざけるな!なんでよりによってお前なんだよ、シノン!!」
「そうだそうだ!遅刻しそうになった奴の分際で調子に乗るな!!」
「あんたにクラシック三冠なんて勿体無いわ!今すぐに剥奪しなさい!!」
とブーイングの声も上がる。燈馬君はというと、観客の方を見ずにそのままターフを去って行った。
こうして燈馬君はクラシック三冠を手に入れ、残るはトリプルティアラの一つ、“秋華賞”だけとなった。
読んで頂きありがとうございます。
次は秋華賞のお話ですので、楽しみにしていてください。それと今後からは“人”と”ヒト”の表記ですが、統一して“人”にします。何かと書いてるとややこしいので。
※ここからは飛ばしてもらっても構いません
・ガイドラインについて
前書きでも言っていたガイドラインについてですが、本作品『ウマ男 新たな歴史を創る者』は削除する方針はございません。ガイドラインに則って話を進めていく方針でございます。まあ、作者自身のやるからには完結させたい欲が凄いんですけどね(笑)。感想などで「この表現、ちょっと危ないんじゃない?」とか「規制違反してるよ!!」など言ってくれれば訂正するので、今後ともよろしくお願いします。
皆さんの力で『ウマ娘プリティーダービー』という作品をより面白くしていきましょう!!!
──────さて、後書きも書いたしシービーのヌフフな話でも…。ニマニマ
ピンポーン
──────誰だよ、こんな時に…。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…
──────うるさいな〜。はいはい、わかったわかった。今、出ますよ〜っと…。
その後、ある男の人の証言によると一人の男性が何人もの男性達に担がれたまま車に乗せられ、その後から姿を見ていたないとか…。
それでは、また〜