ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 気づけばもう大晦日…。時間が経つのは早いですね。






   それでは、どうぞ


ファン感謝祭

 『これより、秋のトゥインクルシリーズファン大感謝祭を開幕します。心ゆくまでお楽しみください』

 

  ファン大感謝祭。それは、ウマ娘達を応援するトゥインクルシリーズファンに向けた感謝の祭典である。ウマ娘達が作った手作りグッズや料理などを売店で出品する。その他にも、記念撮影やサインなどももらえ、正にファンにとって一生の思い出になるに違いないだろう。そんな盛り上がりのある祭典の一角で…。

 

 

 「はぁああああッッ!!」

 

 「ッ!」

 

  感謝祭の会場から少し離れたコース場で汗を流す者達がいた。

 

 

  〜トレーニング場・燈馬side〜

 

 「お疲れ2人とも。前よりもタイムが上がってるよ!」

 

  とゴールした俺とタイシンの元にトレーナーが近づいてくる。

 

 「…けど、ハァ…。私より先に…、あいつがゴールしたけど…。ハァ…」ハァハァ…

 

 「うん、確かにタイシンさんよりも先に3馬身程離して燈馬君がゴールした。けど、今見るべきポイントはそこじゃない。この前のタイムと比べてタイシンさんのスピードは格段に上がっている。これは、褒めるべきものだよ」

 

 「でも、レースはそんなことを言ってられない。タイムが良くても1着にならなきゃ意味がない。勝負の世界では常に勝ち続けなきゃいけないの」

 

 「それは「タイシンの言うとおりだ」燈馬君…」

 

  とトレーナーの会話に割って入る。

 

 「タイシンの言うとおり、レースでは例えタイムが良くても1着でないなら意味はない。それがレコードであっても、優遇されるのは1着になった者だけだ」

 

  勝負の世界とは残酷だ。常に勝者と敗者が存在する。勝者だけがスポットライトの光を浴びることができ、敗者はその影に隠れてしまう。だから、勝利という光を我が物にする為に勝って勝って勝ち続けなければならないのだから。

 

 「けどなタイシン、自分の成長から目を背けるのは良くない」

 

 「どういうことよ」

 

 「勝負を意識してトレーニングをすることは俺達を始め、アスリート達も行っていることだ。けど、今自分がちゃんと成長しているかどうかを認識出来ない者は勝負に勝つことは出来ない」

 

 「!」

 

 「自らが日々成長していることを認識し、認識した上でまた成長出来るようにトレーニングをする。成長している過程を自らが知っておかなければならない」

 

  成長というのは見た目だけではわからない。例えば数字であったりなど成長率を明確化して、自分がこの前の自分よりどれだけ成長出来たかを知ることが出来る。また、そこに自分の欠点などがあればいち早く対応することができ、カバーすることも可能だ。

 

 「タイシン、勝負にこだわるなとは言わん。自分のモチベーションに繋がるならこだわりを持つことに否定はしない。だが、自分の成長から目を背けるな。成長があることがこそ、勝利に繋がる第一歩になるんだ」

 

 「…わかった」

 

  とタイシンはトレーナーの近くに言って。

 

 「ねぇ、私のタイムどうだった?」

 

 「良かったよ。この前の燈馬君との併走のタイムと比較すると前より20秒も上がってる。これは、自己最高記録だよ」

 

 「に、20秒も上がってたの!?」

 

 「恐らく相手が燈馬君ってこともあるかもしれないけど、この調子で行くと次のレースは確実に1着は獲れるね」

 

 「…そ、そうなんだ」ポリポリ

 

  と自分のタイムの速さに驚きを隠せないタイシン。俺に勝ちたいという意欲がタイムとして表れたのだろう。いい傾向にあると思われる。

 

 「この調子で行くと燈馬君ともいい勝負が出来ると思うよ。徐々に差も縮まってきているしね」

 

 「わかった。次は負けないからね、燈馬。アンタを追い越して吠え面かかせてやる」

 

 「そう来る日を楽しみにしてる」

 

  とタイシンが俺に指差して宣言する。タイシンだけじゃない、ライスもオグリもクリークも俺に勝とうと必死にトレーニングをしている。俺も頑張らねばな。

 

 「さて、次は「タイシ〜〜〜〜〜ン!!!!」ん?チケットさん?」

 

 「チケット!?なんでここにいんのよ!!」

 

  とトレーニングを再開しようとするとチケットがコース場にやってくる。

 

 「もう、感謝祭始まってるのに何やってんのさ!!早く感謝祭行こうよ!!」

 

 「あのね、私は騒がしいところが嫌いなの。それに私は次のレースがあるから感謝祭に出てられないの」

 

 「でもでも、感謝祭だよ!?お祭りだよ!?一緒に回ろうよ!!」

 

 「だから嫌って言ってるでしょ」

 

  一緒に回りたいチケット、感謝祭に出たくないタイシン。両者一歩も譲るつもりがないようだ。仕方ない。

 

 「行ってやれ、タイシン」

 

 「はぁ!?アンタ何いってんの!」

 

 「ここ最近、トレーニング続きなんだ。たまには羽根を伸ばすのも悪くないと思うぞ」

 

 「けど、私は「根気詰めてケガでもされたらレースも何もないぞ」…そうだけど」

 

  と中々引き下がらないタイシン。

 

 「チケット、連れて行ってやれ。俺が許可する」

 

 「ちょっと、何アンタが「ホント!わかった!!」ちょっと、引っ張らないでよ!!」

 

  とチケットに無理矢理引っ張られるタイシン。

 

 「〜〜〜〜ッ!!覚えてなさいよ燈馬ぁあ!!!」ズルズル

 

  とタイシンはチケットと一緒に(無理矢理)感謝祭に行ったのであった。

 

 「…さて、トレーニングの続きでもするか。トレーナー、メニューはなんだ?」

 

 「燈馬君って、意外と畜生なんだね」

 

 「さぁ、何のことかわからんな」

 

  と準備体操を始める。

 

 「そういえば、アイツはどうなったんだ?浦部利紀」

 

  とトレーナーに聞く。秋華賞で俺が蹴飛ばした奴だ。

 

 「浦部は逮捕されたよ。ウマ娘に対する罵詈雑言や暴力行為などが後々になって出てきたんだって。それに、菊花賞のメールと燈馬君の勝負服の犯人も彼だったよ」

 

 「なるほどな。他には?」

 

 「浦部は、浦部家は財務大臣の柏木とつるんでたんだって。何でも、燈馬君の菊花賞の出場停止をさせた暁にはシービーさんを好きなようにさせてやるってさ。全く酷い話だよ」

 

  とお手上げのポーズをするトレーナー。確かに話を聞く限りクズに等しいな。

 

 「まぁ、その浦部っていう家も柏木大臣が襲われた次の日に襲われてるしね。襲った犯人はまだわかんないけど」

 

  とトレーナーは顎に手を当てて犯人を推測し始める。

 

 「まあ、その話は後にしよう。今はトレーニングだ」

 

 「それじゃあ、トレーニングを再開しようか」

 

  と俺はトレーナーから次のトレーニングメニューを行っていったのだった。

 

 

   〜⏰〜

 

 

  ピリリリ…、ピリリリ…、ピリリリ…

 

 「あれ、電話だ。もしもし」ピッ

 

  とトレーニング中にトレーナーの電話が鳴り、トレーナーが少し離れたところで話しをする。

 

 「…はい、わかりました。では失礼します」ピッ

 

 「誰からだ?」

 

 「たづなさんだよ。何でも感謝祭の警備に回ってほしいって電話があったんだ」

 

  とトレーナーが電話の内容を話す。

 

 「何かあったのか?」

 

 「ううん、ただ人手不足っていうだけ。僕の仕事は受付だけだし、丁度良かったよ」

 

 「そうか、それじゃあ残りのメニューは俺一人でやるよ」

 

 「うん、それでおね「燈馬ぁああ!!」ん?」

 

  とトレーナーの話を遮るように俺の名前を呼ぶ人物がいた。

 

 「何の用だ、マルゼンスキー」

 

 「もう、今までどこに行っていたのよ!ずっと探したんだからね!!」プンプン

 

  と頬を膨らませるマルゼンスキー。と言ってもだな…。

 

 「…悪いが、俺は感謝祭に出るつもりはないし回るつもりもない。他を当たってくれ」

 

 「なんでよ!一緒に回るわよ!!」グイッ

 

  と腕を掴まれて無理矢理引っ張られる。何でこいつらはこんなにも力が強いんだ。

 

 「丁度良かったじゃないか。羽根を伸ばすのも悪くないと思うよ、燈馬君。ゆっくり楽しんで来なよ」

 

 「いや俺は「マルゼンスキーさん、燈馬君のことお願いしますね」おい、俺の意見は」

 

 「モチのロン、あたり前田のクラッカーよ!」

 

  と俺の腕を引っ張る。だから、お前らは力が強いんだからもう少し緩めてくれ。

 

 「嫌よ!緩めたらすぐに何処かへ行こうとするんだから。絶対にハナサナイカラ」ハイライトオフ

 

 「お前らはテレパシーか何かを持ってるのか?」

 

  と何故心の声を読まれるのか疑問に思いながらマルゼンスキーに引っ張られるのであった。

 

 「因みに、燈馬の居場所を教えてくれたのはタイシンちゃんよ。あの子には感謝しないとね!」

 

  アイツ、次はコンテンパンに叩きのめしてやる。

 

 

 

 

  〜感謝祭会場〜

 

 「たい焼きいかがですか〜!」

 

 「今なら熱々のたこ焼きが食べれっで〜!」

 

 「貴方の運勢を占ってしんぜましょう!!」

 

   ・・・・

 

 「凄い賑わってるわね!」

 

 「そうだな」

 

  と俺はジャージから制服に着替えて感謝祭の売店を回っていた。もちろん、マルゼンスキーに腕を絡められてだが。

 

 「あ!燈馬、私あそこ行きたいわ!」

 

  とマルゼンスキーが指を指す。見たところアイスクリーム屋のようだ。

 

 「アイスか、いいぞ」

 

 「それじゃあ行きましょ!」

 

  とアイスの売ってある売店に行く。

 

 「すいませーん、イチゴアイスを一つ下さい!」

 

 「はーい!そちらの方はどうされますか?」

 

 「(何にするか。う〜ん…)」

 

  いちご、抹茶、バニラ、みかん、チョコ、ラムネ…。

 

 「そうだな、ラムネを一つ」

 

 「はい、かしこまりました!」

 

  と店員のウマ娘は着々とアイスを作っていく。

 

 「お待たせしました。こちらがイチゴアイスでこちらがラムネアイスです!」

 

 「ありがと〜う!!はい、燈馬!」

 

 「あぁ、どうも」

 

  とマルゼンスキーからカップアイスを受け取る。ていうか、今更だが今時期にアイスってどうなんだ?今、11月だぞ。

 

 「う〜ん!!とってもまいう〜だわ!!バッチグーね!」

 

 「悪くはないな」

 

  ラムネ味のアイスもイケるな。

 

 

  チョイチョイ

 

 「ん?」

 

 「あ〜ん♡」

 

  とイチゴアイスを掬ったスプーンを差し出してくる。

 

 「…はむ」パク

 

 「どう?」

 

 「美味しいよ」

 

 「ふふっ。それじゃあ、燈馬のラムネも頂いちゃおうかしら」

 

 「はい」

 

  と俺はアイスの方を差し出す。

 

 「もう!燈馬ったら、冗談はよしこさんよ!食べさせたんだから私にどうするかわかってるでしょ?」

 

 「…」

 

 「あ〜あ。早くラムネのアイス食べたいな〜」

 

  とマルゼンスキーが隣に擦り寄ってくる。

 

 「…はい」

 

 「!あ〜ん♡ん〜!燈馬のアイスもまいうだわ!」

 

  とマルゼンスキーがほっぺたに手を当てて美味しそうな表情をする。

 

 「ねぇ燈馬、私と行きたいところがあるの!」

 

 「何処だ?その場所って」

 

 「実はね─────。」

 

  とマルゼンスキーに連れられてその場所まで移動した。

 

 

  〜⏰〜

 

 「なぁ、マルゼンスキー。ここって…」

 

 「そうよ!私達“リギルの執事喫茶”よ!」

 

  とマルゼンスキーに連れられたのはリギルが経営する執事喫茶だ。感謝祭ではクラスだけでなく、チームも売店や喫茶店などの許可は出ているので、チームで経営するところもある…が今はそんなことを言っている場合ではない。

 

 「俺、用事思い出したから「それじゃあ行きましょ、燈馬!」待て、おい!」

 

  とマルゼンスキーに引きづられて店内に入る。

 

 「お帰りなさいませ。お嬢…おや、マルゼンスキーじゃないか」

 

  と出迎えて来たのは執事姿のフジだった。

 

 「どうしたんだい?シフトはまだのはずだけど」

 

 「今はお客さんとして来てるわ。そ・れ・と、特別ゲストもね」

 

 「特別ゲスト?」

 

 「えぇ!実はね私、燈馬と一緒に感謝祭を回ってるの!!」

 

 「へぇ〜。燈馬と」チラ ハイライトオフ

 

  とフジが目を細めてこっちを見る。俺はすぐにフジから目を逸らした。いや、圧が凄いんだよ圧が。

 

 「これは確かに特別ゲストだね。最ッ高のおもてなしをしなくちゃね」

 

  とフジは俺に顔を近づけて─────。

 

 「今日は忘れられない一日にしてあげるね、ご主人様♡」

 

 

  キャーーーー!!!

 

 「それではテーブル席までご案内しますね」

 

  とフジがテーブル席まで案内する。

 

 「こちらが当店でのメニュー表となっています。お決まりになられましたらお声がけ下さいね、ご主人様」

 

  とフジが厨房の方へ戻って行った。

 

 「と・う・ま?」

 

 「な、なんだ?」

 

 「今は私と一緒にいるの。鼻の下伸ばしちゃ駄目だからね!」

 

 「いや、伸びてはいなかっただろ」

 

 「どうだか。それで、燈馬は何にする?」

 

  とメニューを見せてくる。

 

 「私はダージリンとフルーツタルトにしようと思うのだけど」

 

 「…」

 

  と俺はメニュー表を見ながら考える。確か“ペアリング・マリアージュ”と言ってケーキと紅茶がお互いの味を引き立て合わせる組み合わせのことだってババアが言っていたな。ダージリンは独特な香りがするが、フルーツタルトの果物の酸味を邪魔しない。オススメの組み合わせって書いてある。

 

 「(そもそも、何がどうなるって俺にはわからないしな…。)」

 

  と考えていると。

 

 「ご主人様でしたら、チョコレートケーキにアールグレイなんてどうでしょう。ご主人様の口にピッタリなペアリングだと思いますよ」

 

 「!誰だ」

 

  と耳元で囁かれたので振り返る。

 

 「ご主人様が大変お困りなお顔をしておられましたので、失礼ながらお声をお掛けになったまでです」

 

  と一礼をする執事姿をしたルドルフだった。

 

 「ルドルフか。驚かすなよ」

 

 「君が余りにも考えていたからね。ちょっとしたアドバイスさ。それより、メニューは決まったかな?」

 

 「マルゼンスキーはダージリンとフルーツタルト。俺は…、ルドルフの言っていたのにするよ」

 

 「かしこまりました。すぐにお持ちします」

 

  とルドルフは厨房へと歩いて行った。

 

 「やっぱり、伸ばしちゃってるじゃない」

 

  とマルゼンスキーがジト目で俺を見る。

 

 「いや、今のはルドルフが…」

 

 「ふーんだ。燈馬のことなんか知〜らない」プイ

 

  とそっぽを向く。

 

 「こういうところは初めてなんだ。ケーキと紅茶の組み合わせとかもわからないんだ」

 

 「だったら、そう言ってくれれば私だってアドバイスしてあげるのに」

 

 「そ、それはそうだが…」

 

  ダメだ、返す言葉もない。その場しのぎの言葉を言っても突っ返されるのが目に見えている。

 

 「お待たせしました。ご注文の品々です」

 

  と注文したケーキと紅茶が運ばれてくる。イチかバチか、やってみるか。

 

 「なあ、マルゼンスキー」

 

 「なによ」

 

 「…はい、あ〜ん」

 

  とケーキを一口サイズに切り、マルゼンスキーの前に差し出す。

 

 「!…急にどうしたの」

 

 「俺では食べ切れないから、食べてもらおうかと…」

 

  嘘である。ケーキは俺でも食べれるサイズのケーキだ。傍から見れば、完全に機嫌を取りにいってると分かるくらいだ。

 

 「…ぷ、フフフ…」プルプル

 

  とマルゼンスキーが口を押さえて震え出す。

 

 「…なんだよ」

 

 「だって、フフフ。燈馬ったら…フフフ」クスクス

 

  ったく、なれないことなんかやるんじゃなかった。

 

 「フフフ、そんな顔しないの。ちょっとからかってただけじゃない。でも、差し出されたケーキはちゃんと食べないとね」

 

  とマルゼンスキーが少し身を乗り出す。

 

 「あ〜ん!……ん〜、まいう〜!!」

 

  と頬に手を当てて、もぐもぐとケーキを食べる。

 

 「そ・れ・じゃ・あ〜…。はい、お返しのあ〜ん!」

 

 「…ん」パク

 

  とマルゼンスキーが差し出したフルーツタルトを食べる。うん、美味しい。

 

 「(こんなの、誰かに見られれでもすれば…)」チラ

 

  と店内の様子を見る。

 

 「「「「………」」」」ジ〜  〈● ●〉

 

  見てた、めっちゃ見てた。しかも何あれ、目の色がなんか滲んでたんだけど。あの、ルドルフさん?紅茶淹れながら俺を見るのをやめてもらってもいいですか?フジキセキさん?お客さんの相手をちゃんとしてください。『バキッ!』え、なんで鉛筆を折るの?怖い怖い怖い。それとシービー、これはだな…。待て待て待て待て、怖いからそんな顔をするな。近づいてくるな。っていうか、なんでお前ここで働いてるんだよ。『バコッ!』すみません、訳はちゃんと話すので、お盆がヘシ曲がってるのでやめてあげてください。あのエアグルーヴさん、さっきから何作ってるの?え、俺の紅茶のおかわり?いや、俺さっき貰ったばかりなのに『ピシッ!』もらいますもらいます、貰わさせていただきます。

 

 「とっても美味しわ〜!次はケーキの専門店なんか行きたいわね〜!」

 

 「そう、だな…」

 

  俺がここから生きて帰れたらの話しだがな。

 

  〜⏰〜

 

 「ん〜!楽しかったわ〜!そろそろ出ましょうか」

 

 「そうだな、いい時間になったし」

 

  とマルゼンスキーと俺は席に立ち上がり、お会計へと進む。

 

 「お会計、1520円になります」

 

 「一緒に払います」

 

 「え、いいのに。私の分は私で出すから「誘ってくれた礼だと思ってくれ。…2000円で」そう」

 

 「お預かりしますね。お釣りは480円です」

 

 「どうも」

 

  とお釣りを受け取る。

 

 「またのお越しをお待ちしております。お嬢様、ご主人様」

 

  と背中から従業員の挨拶を聞いて──────。

 

 「どういった経緯かちゃんと説明してもらいますからね、ご主人様

 

  とドアの傍に居たルドルフの声も聞いて、店を出た。これ、絶対にヤバいやつだ。

 

 

 

  〜広場にて〜

 

 「すっかり日も落ちゃったわね」

 

 「秋だからな。時間の流れが早くなった証拠だな」

 

  と広場にある休憩スペースでくつろいでいた。リギルの喫茶店に行った後は売店で食べ歩きや甘い物を食べたりなど感謝祭を満喫していた。

 

 「感謝祭が明ければ、秋のレースが待ってるわね」

 

 「今年の秋はどうするんだ?レースには出ないのか?」

 

 「レースには出るわ、と言ってもG2ぐらいしか出ないわ」

 

 「どこか悪いのか?」

 

 「いいえ、どこも悪くないわ。今はW・D・T(ウィンター・ドリーム・トロフィー)の為の調整。それが明ければ、次は“大阪杯”に出るわ」

 

 「“大阪杯”、ブライアンと競うのか」

 

 「ええ。そろそろ私が勝とうかなってね☆」パチーン

 

  とウインクする。ブライアンとマルゼンスキーの一騎打ち、面白そうなレースになりそうだ。

 

 「悪いが負けるわけにはいかないな。勝つのは私だ」

 

 「あら、ブライアンちゃんいつからいたの?」

 

  と俺の隣に座ってきたのはブライアンだった。

 

 「ついさっきだ。大阪杯の話をするものだからなんだと思ったら、アンタも出るんだな」

 

 「モチのロンよ。アナタと走ってみたいんですもの、先頭のまま突っ切るから」

 

 「フン、ぶち抜いてやる」

 

  とお互い闘志がたぎっていた。

 

 「そういや燈馬、お前は秋天か。スズカと走るんだろう?」

 

 「まあな、負けるつもりは毛頭ない」

 

 「…だそうだぞ、スズカ(・・・)

 

 「え?」

 

  と振り返るとそこにいたのは─────。

 

 「そうですね、先頭の景色は譲るつもりないですから」

 

  とそこにいたのは秋天で競うスズカだった。

 

 「スズカ…」

 

 「燈馬君、私は全力で挑むから。アナタに勝つから。だから、燈馬君も全力で来てほしい」

 

 「…あぁ、もちろんだ。俺はお前に負けるつもりはないぞ」

 

 「うん」

 

  とスズカが小さく頷く。

 

 「スズカもいらっしゃい。みんなで喋りましょ!」

 

  とマルゼンスキーがスズカに手招きして隣に座らさせる。

 

 「スズカは何してたの?」

 

 「私は────。」

 

 「そうなんだ!ブライアンちゃんは?」

 

 「私は─────。」

 

  と色々な話をした。相変わらず、楽しそうに喋るんだな。そう眺めていると──────。

 

 

 

 

 「楽しそうですね、私も混ぜてくださいな」

 

 

 「ッ!!!」

 

  この声…。こいつ、なんでここにいるんだ…!!

 

 「……何の用だ、樫田(かしだ)!!」

 

 

  〜スズカside〜

 

 「……何の用だ、樫田!!」

 

  と楽しい雰囲気から一変、燈馬君の一言で険悪な雰囲気に変わった。後ろを見るとスーツを着て、眼鏡をかけた細身の男性が立っていた。

 

 「おやおや、私はただこの感謝祭を楽しみに来ただけですよ。私にだってお祭りくらい来てもおかしくはありませんよ」

 

 「お前はクソババアから謹慎処分と外出禁止令が出てるはずだ。あのクソババアが外出許可を出すはずが無い」

 

  と燈馬君は男性の方を向かずに喋っている。

 

 「理事長にはちゃんと言いましたよ?“外出したいから許可を出してほしい”と言ったら快く許可を出してくれました」

 

  と樫田と呼ばれた男性が近づいてくる。

 

 「貴方がナリタブライアンさんですか?」

 

 「そうだが?」

 

 「私、実は貴方のだ〜いファンでして。是非一度、お話をしませんでしょうか」

 

  とブライアンさんに向かって手が伸びてくる。何でだろう、この人を見ているととても気分が悪くなる(・・・・・・・・・・)

 

 

  パシッ!!

 

 「気安くコイツに触んじゃねぇよ、とっとと失せろ」

 

 「と、燈馬…」

 

  とブライアンさんに伸びてきた手は燈馬君によって静止された。

 

 「おや、貴方はナリタブライアンさんのボディガードか何かですか?随分と執着してるのですね」

 

 「ブライアンだけじゃない。マルゼンスキーもスズカにも手出しさせるわけにはいかねぇんだよ」ブン

 

  と燈馬君が掴んでいた腕を乱暴に振り放す。

 

 「いたたた…。貴方、私が貴方の教え子ということを忘れてはませんか?それに、私は武天の“教頭”でもあるのですが」

 

 「黙れ。お前みたいな教員、俺は知らない」

 

  と燈馬君はずっと前を向いていた。それも、睨んだまま。

 

 「やれやれ。全く誰に似てるんだが」フルフル

 

 「さっさと失せろ。それとも何か?……この場で“消されたいか”?」

 

 「「「!!!」」」ゾクゾク

 

  燈馬君の言葉に私達は身震いがした。あんな燈馬君、見たことない。

 

 「そんな言葉を使ってはいけませんよ。女性が多いこのトレセン学園で、そんな言葉を使ってはいけません」

 

 「あぁ?

 

 バキッ!!

 

  と燈馬君の置いていた手の机にひびが入る。

 

 「こ、この空気…ヤバいわね」

 

  とマルゼンスキーさんが耳打ちしてくる。燈馬君、落ち着いて…。そう願っていた時だった。

 

 

 「樫田教頭、お久しぶりです〜!良かったら俺と一緒にあっちで話でもしませんか?」

 

 「樫田教頭、おっひさ〜。良かったらさ、俺と一緒に感謝祭回んな〜い?と言っても、感謝祭から帰って来れるかはわかんないけどね」

 

  と2人の男の子が男性に近づく。

 

 「おやおや、次は君達ですか。江藤君、大森君」

 

 「ここよりも、もっと面白いところがありますよ。一緒に行きませんか?」

 

  と一人の男の子が男性の前に立つ。

 

 「そうですね…。その場所に行けばきっと私は帰ってこれないでしょうね」

 

  と男性はこっちに背を向けて歩き出す。

 

 「今日はこの辺りで失礼します。来年の感謝祭も参加しますね」

 

 「二度と来るな、クソ野郎」

 

  と男性はそのまま歩いて行った。

 

 「…全く、あの野郎。いつから来てたんだ?」

 

 「最悪だぜ。アイツの顔を見ただけでケーキが不味くなった。はむ…。もう一個取ってこよ」

 

 「待てアホ英道。お前、どれだけ食う気だ」

 

 「あと…、10個?」

 

 「食い過ぎだ、どアホが。さっさと帰るぞ、閉園時間だ」

 

 「マジ!?ちょっ、待てよ!!」

 

  と2人の男の子は校門に向かって歩いて行く。

 

 「あ、そうだ」

 

  と一人の男の子が振り向く。確かあの男の子は男性の前に立っていた子だ。

 

 「じゃあな、燈馬!天皇賞、負けんじゃねぇぞ!」

 

 「あ、ホントだ!じゃあな燈馬〜!天皇賞頑張れよ〜!!」

 

 「あぁ、頑張るよ」

 

  と燈馬君は手を上げる。すると、2人はそのまま校門へと行ってしまった。

 

 「…悪かったな、変なもの見せて」

 

 「う、ううん。大丈夫…」

 

  と私は首を振る。

 

 「燈馬、あの男は何なんだ。気色悪い男だったぞ」

 

  とブライアンさんが男性の感じたことを言った。私もブライアンさんには同意見だ。

 

 「アイツの話は余りしたくないんだ。悪い」

 

  と燈馬君の顔は下がったままだった。

 

 「気にしなくてもいいわよ。私達は何ともないから」

 

  とマルゼンスキーさんが燈馬君にフォローする。

 

 「そうか。…悪い、ちょっと離れるわ」

 

  と燈馬君は席を立ち、その場から去って行く。

 

 「(燈馬とあの男性…。一体何があったんだろう)」

 

  私の頭にはこの疑問しかなかった。

 

 

 

  こうして、秋のトゥインクルシリーズファン大感謝祭は幕を閉じた。




読んで頂きありがとうございます。

 ギリギリ年内に投稿出来てよかったです(笑)。

 皆さんはこの一年、どういった一年でしたでしょうか。良い事も悪い事もあったでしょうけど、2022年は楽しく過ごしていきましょう!!!!!






   それでは皆さん、良いお年を!!!!!




  それでは、また〜
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