それでは、どうぞ!
〜食堂、燈馬side〜
「はいよ、にんじんハンバーグ定食ね」
食堂のおばちゃんがおいたトレーを持って席を探す。授業を終えて俺は今、食堂に来ている。この時間帯はウマ娘達がたくさんくるので早く席を確保したいところだ。
「燈馬君」
名前を呼ばれ、振り返ると栗毛のウマ娘がいた。そいつも同じようにトレーを持っていた。
「良かったら一緒に食べませんか?」
「席、空いていて良かったね」
とお互い持っていたトレーを机に置き、向き合って座る。ちょうど2人だけ席が空いていたので助かった。
「それじゃあ、冷めない内に食べましょうか?」
「そうだな」
「「いただきます」」パンッ
と俺と栗毛のウマ娘が手を合わせて食べ始める。にんじんハンバーグは普通のハンバーグよりサイズがでかい。もともと、ウマ娘用のサイズなのでとても大きい。そして極めつけはにんじんだ。ハンバーグの中にたくさんにんじんが入っていると思いきや実はハンバーグの上からぶっ刺している、しかも丸々1本。食べれるのかと言われれば正直言って無理にひとしい。いや、無理でしょ。成人男性の2倍くらいの量だぞ?普通の高校生が食べれたもんじゃない。見てみろよ、俺が4分の1しか食べてないのに対して目の前のウマ娘はほぼ完食に近いぞ。
「あ、あの…。そんなに見られると食べづらい…です」
「ん?あぁ、すまん」
と顔を頭の上にある耳をピコピコさせながら言ってきた。
ウマ娘。それは古来より人間と共に共存してきたもう一つの人種。耳と尻尾が生えており、何よりヒトより“驚異的な身体能力”がある。例えば、時速60キロの車と並行して走ったり、大型トラックを持ち上げたりなどとにかく身体能力が凄い。そして、食べる量も計り知れず、凄い奴は5キロくらいの食事を難なく食べる。とにかくいろいろ凄い。そういう俺はどうかって?俺はウマ娘みたいに耳と尻尾は生えてないし、たくさん食べれない、パワーもない。しいて言うなr「♪ピロリン」ん?
『来ているのだろう?すぐに“生徒会室”に来てくれ』
突然、携帯が鳴って見てみるとこんなメッセージが来ていた。行きたくねぇ、面倒くさいし。
「いやでs「♪ピロリン」?」
おいおい、まだメッセージ打ってる最中だz…
行きます行きます、行かせていただきます。だからそんなに怒らないで下さい。俺は急いで残りのご飯と“デザート”を口の中にかきこむ。
「ごちそうさま」ガタッ
「あれ?どこか行っちゃうの?」
「あぁ、なんでも“生徒会長”様がすぐ来いっていうからな。行かねぇと何言われるか知ったこっちゃない」ハァ…
「人気者ね」フフッ
「うっせぇ」
俺は食事の終えたトレーを持って席をたつ。
「じゃあな“サイレンススズカ”。また教室で」
と言ってトレーを戻しに行こうとした時、「待って」と服を掴まれた。
「サイレンススズカ、じゃなくて“あの時”みたいに呼んで欲しい」
と言って顔を俯けてお願いされた。
「…。じゃあな“スズカ”、また教室で」
と言うと俯いていた顔が上がり
「うん。また教室でね、燈馬君」
とスズカは掴んでいた服を離し、見送ってくれた。
「それじゃ、行きますか」
トレーを戻し、目的のところへ駆け足で行った。ドンドンドンッと音がしたが、気の所為だろう。
〜サイレンススズカside〜
「(行っちゃった…。もう少し引き留めたかったけどしょうがないよね、生徒会長さんに呼ばれちゃったら行かなきゃいけないものね)」
私、サイレンススズカは燈馬君の背中を見送ってそんなことを思っていた。
「(燈馬君、強くなって帰ってくるって言ってたし、“あの時”も十分強かったけど、どれくらい強くなったか楽しみだわ)」
これから話したかったことがたくさんあったのだけれどそれはまた別の機会に取っておこうかな、とこれからの事に胸を踊らせる私でした。
「(さてと、それじゃあデザートの“にんじんケーキ”でも…ってあら?)」
と私がトレーの上にある小皿に手を伸ばそうとしたときだった、小皿の上にあった“にんじんケーキ”がなくなっていたのだ。
「???」
試しに机の下を覗く。当然、ケーキの形カケラもない。
「(おかしい、食べてる時はまだあったはず…。自分で食べた記憶もないし…、まさか)」
と思い、携帯を取り出したのと同時に携帯が鳴る。画面を見ると『メッセージ 1件』と表示されていた。
おそるおそるタップしてみると送信者は『燈馬』となっており、内容は、
『デザート、美味かった』
と書かれていた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
このコメントを見た私は人目を気にせず思っきり地団駄を踏み、顔を伏せる。
「(燈馬君の、バカァァァァァアアア!!!!)」
と心の中で思いっきり叫んだ。すると、
「あなたがサイレンススズカさん?」
と声をかけられたので顔を上げると食堂のおばさんがいた。
「は、はい。なんでしょうか」
と慌てて髪を整えなから聞くと
「ごめんなさいねぇ。あなたの持っていたケーキなのだけど実は廃棄する予定だったのを職員が間違えて渡してしまってたのよ」
ちゃんと分けて置いていたのだけれども、ごめんなさいねぇ。と言いながら新しいケーキを渡してくれたので受け取った。
「あ、ありがとうございます…。あ、あの、そのケーキ食べたらどうなってたんですか?」
と聞いてみる。
「ん?別に身体に害ってわけじゃないのよ。ただ、塩と砂糖を間違えて使っちゃった、ただの辛いケーキさ。」
といい、続ける。
「それを食べた男の子があたしに言ってきてね、代わりのケーキを出すと言ったら『代わりのケーキはサイレンススズカに渡しといてくれ、俺は腹がいっぱいだ』って」
と言って「それじゃあ、ゆっくりしていってね〜」と言いながら厨房の方へ戻っていった。
「…」
帰っていく姿を見た後、私は机の上に置かれた新しいケーキを手に取って、
「燈馬君のばか」ボソッ
と誰にも聞こえないような声で呟いた。そして、今日のケーキはいつも以上に甘かった。
〜生徒会室前・燈馬side〜
俺は今、生徒会室前に来ている。理由は昼ご飯を食べていた時にきていたメッセージの件だ。半ば強制みたいなもんだがな…。と思いながらドアノブに手をかけ、扉を押す。
「Eclipse first,the rest nowhere.君はこの言葉の意味を知っているかな?」
と部屋に入るとこちら側にせ同時に聞かれた。
「“唯一抜きん出て、並ぶ者なし”だろ?かの有名な伝説のウマ娘、“エクリプス”が世に放った言葉の一つだ」
と答え、さらに続ける。
「そして、それを体現させたウマ娘がいる。“トキノミノル”、“シンザン”、“ミスターシービー”、そして…
お前だ、“シンボリルドルフ”」
「フフフッ」
と椅子から立ち上がり、こっちに近づいてきて
「久しぶりだな、燈馬」
と右手を差し出してきた。
「久しぶりだな、ルドルフ」
と俺も右手を出して握手した。
「立ち話もなんだ、座って話さないか?」
と近くのソファに案内された。
俺は出入り口側のソファに片脚をのせて座り、ルドルフは俺の反対側に座って腕を組んだ。そして数秒間、張り詰めた空気が流れ始める。
「君は相変わらずノックをせずに入室するのは変わらないな」
「そういうルドルフこそ、そのお堅い姿勢はどうにかならんのか」
「何を言う、これでも軟らかくなったほうさ」
嘘つけ、とツッコむ。それを聞いてルドルフが笑う。
シンボリルドルフ、鹿毛色の耳と尻尾と腰まである長い髪を持ち、前髪部分が黒く一部分だけ白色メッシュが入っている。そして、無敗でクラシック三冠を制し、その後七冠を制するという偉業を成し遂げたウマ娘だ。「現代で最強のウマ娘は?」と街のヒトに聞けば十中八九「シンボリルドルフ」と口を揃えて答えるくらい凄いウマ娘だ。まさにその姿は“皇帝”と言ってもいいだろう。現在はレースを退き、生徒会長として学園を引っ張っている。まさに、トレセン学園の
「それで、用件は?」
「1年ぶりに君の顔が見たくなった…、ではダメか?」
「そんなこと思ってないだろ」
まったく、らしくもない事を。と思いながらルドルフの顔を見るとジト目で俺を見ていた。
「なんだよ」
「君のそういうところはいち早く直したほうがいいのかもしれないな」ハァ…
何をいう、俺は至って普通だ。
「紅茶が入りました」コトッ
「あぁ、すまない。“エアグルーヴ”」
「ん?なんだ貴様、来ていたのか。全く気づかなかったぞ」
「よう、エアグルーヴ。相変わらずそのツンツンは変わってないようだな」
「貴様もその舐め腐った態度は変わってないようだな」フンッ
と腕を組んでこちらを睨んでくるのは生徒会副会長のエアグルーヴだ。黒色の耳と尻尾、ショートヘアで右目が隠れている。彼女もルドルフと並ぶくらいの多大な功績を残している。エアグルーヴは別名“女帝”と呼ばれ、その気高さと気品のある姿から後輩のウマ娘達では“誰もが理想とするウマ娘”とも呼ばれている。俺とは大違いだ。
「それで貴様はここに何をしに来たのだ?」
「それはそこにいる生徒会長様にでも聞いてくれ」
と親指でルドルフを指す。
「今回、君に来てもらったのは他でもない。今後のレースについてだ」
と真剣な眼差しで話し始めた。それを聞いてエアグルーヴも顔を引き締める。
「燈馬、今後の君の方針を聞かせてくれ」
「俺は…」
と俺は今後のことについて話し始めた。話してる途中、エアグルーヴとルドルフにも驚かれたが理由を言ったら納得してくれた。それからは他愛もない話しをして時間を過ごしていった。
キーンコーンカーンコーン〜♪
「お、もう予鈴か。やはり君といると時間が経つのが早く感じるよ」
「そうか。それじゃあ俺は教室に戻るよ」
「そうだな、では私も戻るとしよう」
「はい」
と3人同時に立ち上がり、俺は出入り口の扉に向かう。
「燈馬」
と俺はルドルフにまた呼び止められ、こっちに近づいてきた。
「改めてもう一度…。おかえり燈馬、そして共に勇往邁進していこう」
ともう一度右手を差し出してきた。
「俺は問題児だぞ?それでもいいのか?」
「私は君がそうには見えない。まあ、態度が少しアレだが…だが、君は絶対この学園の為に尽力してくれると断言出来る。だって君はy「もういい、わかった」…」
「わかった、協力する」
と俺も右手を差し出して握手をする。
「そう言ってくれると思ったよ。さて、もうすぐ授業だ戻るとしよう」
俺、ルドルフ、エアグルーヴの順に生徒会室を出ていき、エアグルーヴが鍵を閉める。
〜生徒会室前・エアグルーヴside〜
「では、私はここで」
「会長、お疲れ様でした」ペコッ
「ん、じゃあな」
と会長が背を向けて歩いて行った。
「では私達も戻るぞ」
「ああ」
と私と燈馬は会長とは反対の廊下を進んでいく。
「しかし、まさか貴様あんなことを言い出すとは…。“それ”を認めた理事長も大変な御方だ」ハァ…
「まあ、それぐらいしてもらわないと」
まったく、貴様という奴は“1年前”と何も変わっていないな。
「それで、勝機はあるのか?この学園はたくさんの猛者達がいる。生半端の気持ちでは勝ち目はないぞ」
「勝つさ、必ず。その為に俺は1年間、死に物狂いで頑張ったんだ」
と真剣な眼差しで言った。どうやらコイツは本気のようだ。
「それはそうと、アイシャドウ変えた?」
「?いつもどうりだが」
と返す。私のしているアイシャドウは母がレースに出ていた頃からしていたアイシャドウだ。私が幼い頃から母のレースを見てきて、いつか母のように素晴らしいウマ娘になりたいと思い始めてから母に頼み込んで教えてもらったのだ。
「どうした、急に」
「いや、前よりも綺麗になったなって」
「なっ!!!!?」カァッ!
なっ何を言っているんだ、このたわけ!!!
「どうした?顔赤いぞ」
と燈馬が近づいてくる。まずい!追い払わねば!!
「こっこのたわけが!!!早く自分の教室に行け!!!」カァッ!
「え?けどy「いいから早く行け!!」わかった、そんなに怒るな」
じゃあな、と言って燈馬は階段を降りていった。
「まったく、あのたわけが。安易に女性に近づくとはどういう神経だ」ハァ…
と思いながら教室に入り、自分の席につく。そして、前髪を直しながら
「あっあんなにも近くに来られたら、はっ恥ずかしいではないか…」カァッ…
と午後の授業に集中できなかったエアグルーヴであった。
〜トレセン学園、掲示板・燈馬side〜
午後の授業も終わり、俺はスズカと一緒に掲示板を見に来ていた。理由はレース場をどこのチームが使っているか確認する為だ。スズカにはついて来なくていいといったのだが、「私も行く」と強引について来た。レース場の使用は予約制でどのレース場をどこのチームが使っているか掲示板に貼り出されるのだ。
「スズカさ〜ん!!」
と後ろからスズカの名前を呼ぶ声が聞こえた。俺とスズカが振り向くと黒茶色の耳と尻尾が生え、ショートボブの髪、前髪の真ん中辺りが白色のウマ娘が学園用のジャージを着て走って近づいて来た。
「スペちゃん、どうしたの」
「どうしたもなにも、練習始まってますよ!」
と大きな声を出す。時間を見てみると午後の4時を回っており、周りを見渡すとウマ娘が列になってランニングしているのが見えた。どうやら練習が始まっていたらしく、スズカのいるチームはどうやら練習が始まっているみたいだ。
「さあ早く練習に行きましょう!…ってこの人は誰ですか?」
「ええ、この人は…「もしかして…」?」
とスズカが説明をしようとした時、そのウマ娘がスズカの話しを遮る。
「もしかして、スズカさんを私達のいるチームから引き抜こうとスカウトしにきたんですか!?」
「は?」
何を言っているんだ、コイツ。
「スズカさんは私達のチームの“スピカ”の一員なんです!引き抜こうだなんてそうはさせません!!」
と俺とスズカの間に割って入り、大きく両腕を広げ、俺を睨む。
「スっスペちゃん、待ってこの人は…」オロオロ…
とスズカがオロオロし始める。
「ハァ…、スカウトも何も俺はこの掲示板を見に来ただk「嘘です!」…」
「そうやって嘘をついてスズカさんを勧誘しようとしてるんですよね!お母ちゃんが言ってました!都会は嘘つきが多いって!!」
どんなお母ちゃんだよ、ていうか嘘つく奴は都会だけじゃないだろ。と俺とショートボブのウマ娘との押し問答になっていた時、「彼の話は本当だよ」と割って入って来る奴がいた。
「「“フジキセキ”さん(先輩)」」
「フジキセキか、見ていたのか」
「やあ燈馬、久しぶりだね。それと“スペシャルウィーク”彼の言っていることは本当さ」
とフジキセキと呼ばれたウマ娘がスペシャルウィークと呼ばれたウマ娘に説明をする。
「彼は一人で掲示板に向かっていたのさ、レース場の使用チームの確認の為にね。それをスズカが追うような形だったのさ」
と俺の話を補足して説明してくれた。
「え、じっじゃあスズカさんの引き抜きは…」
「君の勘違いってことになるね」
とフジキセキが笑顔で言うとスペシャルウィークの顔が青ざめる。
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!私の勘違いでこんなことになってしまってごめんなさい」ペコペコ
と謝りたおされた。
「いい、気にするな。誰だって勘違いはするものだ」
まあ、男とウマ娘が2人でいたらスカウトに見えなくない。ましてやそれがチームメイトなら尚更だ。
「さあ、早く練習に行かないと時間が無くなっちゃうよ?」
と言われ時間を見る。あれから20分くらい経ったのか今は午後4時30分だ。
「スズカ、早く練習に行ってやれ。他の奴らが心配してるだろうからな」
「うん、わかったわ。それじゃあまたね。行こ、スペちゃん」タタタッ…
「はい!スズカさん!」タタタッ…
「あぁ、またな」
とスズカとスペシャルウィークは走って行った。
「すまないね。スペシャルウィークはちょっと思い違いの激しい
とフジキセキは俺に説明する。まあ、それくらいの事で怒ったりはしないので大丈夫だ。
「しかし、もう学園に来ていたのか。言ってくれれば迎えに行っていたのに」
と俺の方に振り向いて言った。フジキセキ、男でも惚れてしまうようなイケメンなところがあり、黒色の耳と尻尾が生えている。髪も黒く、髪型はどちらかといえば男の髪型に近いと言ってもいい。そしてレースだか、“皐月賞”を目の前に足の怪我でレースを断念、“幻の三冠ウマ娘”と呼ばれるようになった。
「お前がいなかったらさらに最悪な空気になっていたところだった。すまなかったな」
「いいや、困っている“ポニーちゃん”を助けるのが僕の仕事さ」
ポニーちゃんとはウマ娘のことだ。フジキセキはそのイケメンなところからウマ娘の中にはフジキセキのファンがいて、今でも黄色い声援が飛び交っている。
「それはそうと君も“君のチーム”が練習をやっているんじゃないか?早く行って顔を見せてあげな」
きっと喜ぶよ、と笑顔で言う。俺は掲示板の方に意識を戻す。
「(第1レース場は“リギル”、第2レース場は“スピカ”、第3レース場は…あった)」
俺は自分の所属するチームを見つけると下駄箱へと向かう。
「さっきは助かった。礼はする」
「礼には及ばないさ。でも、そうだね…」
とフジキセキが考え込む。そして、何か閃いたような顔をする。
「敷いて言うなら、僕と併走トレーニングでもしてもらおうかな」
と提案してくる。
「わかった、予定が決まったら連絡する」
ありがとう、とフジキセキが言うと俺は靴を履き替え、目的の場所へと向かおうしたらフジキセキに呼び止められた。
「燈馬、レース楽しみにしてる」
「あぁ、またな“フジ”」
「またね、燈馬」
とフジキセキ、もといフジが手を振る。俺は手を上げて再び目的の場所に向かった。
〜練習用第3レース場・???side〜
「よし、ラスト1本!次は全力で走るんだよ!!」
「「「はい!」」」
と僕はトレーニングをしている3人のウマ娘達に指示を出す。そして、ウマ娘達がコーンのところに戻っていき、もう一度スタートの構えをする。
「よーい、ドン!!」
掛け声と共にウマ娘達がスタートする。それと同時にストップウォッチを押す。ウマ娘達は最初のコーナーをを曲がり、直線を駆け抜け、再びコーナーを曲がって直線に入った。
「2人には負けない!」
「それは私もだ!」
「ライスだって、負けない!」
と3人がほぼ横一直線になって200m地点を切る。
「「「うおぉぉぉぉぉオオオオ!!!!」」」
そして、ビュウンッという風の音を残してゴールし、僕はストップウォッチを止める。
「3人ともお疲れ様。3人ともタイムが縮まっててよかったよ」
と止めたストップウォッチを見せる。
「“オグリキャップ”さんは前の測定より3.5秒、“ライスシャワー”さんは4.5秒、そして“ナリタタイシン”さんは4秒、タイムが縮まっているよ」
「やった!」
「よし」
「まあまあかな」
と3人が自分の出したタイムに喜んでいる。
「それじゃあ3人共、今日はここで終わりにしよっか。僕は道具を片付けるから、ゆっくりストレッチをするんだよ」
はーい、という返事を聞いて僕は練習で使った道具を取りに向かおうとした時だった。
「なあ、もう練習は終わりか?折角、着替えてきたんだが」
「ん?もしかして見学者の子かな。ごめんね、もう練習は終わったんだ。だから次の日に改めて…来て…ほ…しい…」
と後ろから声がしたので振り返るとそこには無表情の男の子が一人立っていた。
「…帰って来てたんだね」
「ただいま、トレーナー。いや、“立花”さん」
「おかえり、燈馬君」
僕は思わず涙が出そうになったが、堪える。今じゃない、泣くのは今じゃない、と心にそう言い聞かせる。
「「「燈馬(さん)…」」」
後ろから声がする。タイシンさんとオグリさんは目を見開き、ライスさんは口に手を押さえている。
「ただいま。オグリ、ライス、タイシン」
と燈馬君が言うと3人は燈馬君のところに走っていき、思いっ切り抱きついた。
「心配したんだぞ!急に学園からいなくなるんだから!」
「燈馬さん…、もう勝手に何処かへ行かないで…!」
「まったくあんたって奴は!少しは私達の気持ちを考えたらどうなの!」
「悪かった、急に学園を離れて。ちゃんと話さずにすまなかった」
と燈馬君が両手を上げて3人に謝る。燈馬君が学園から離れたのを知っているのはごく一部の人達しか知らない。僕は知っている、何故燈馬君が学園を離れたのかを。
「それはそうと、燈馬君。随分と身体が大きくなったね」
「まあ、1年も離れたんだ。身体くらい変わるさ」
本当に見違えるほど大きくなった。前よりも筋肉が発達していて、逞しくなっていた。
「でも、これでようやく、スタートラインに立てた」
と燈馬君が呟く。無理もない、あれだけ悲惨な事があったんだから。
「G1に出るのかい?」
「当たり前だ。その為にもサポート頼むぞ、トレーナー」
「よし、それじゃあまずは“皐月賞”だ!チーム『クレア』頑張るぞー!」
「「「おぉー!!!」」」
「だな」
それじゃあ早速、トレーニングメニューを考えないと。“再来週”から皐月賞なんだから!再来週…
「あーー!!!!」
「どうした、トレーナー」
とオグリさんが僕に聞いてくる。
「どうしよ、明後日と来週のレースのどちらかを勝たないと燈馬君皐月賞に出場出来ない」
「「「えぇぇぇぇーーー!!!」」」
こうして、チーム『クレア』は最悪のスタートを切った。
〜現地点でのチームのプロフィール〜
風間 燈馬
身長 172センチ
体重 60キロ
靴のサイズ 25.0
学年 高等部
所属チーム クレア
・1年間、学園を離れていた。理由は不明。
・余り笑わない
・色々な人から心配ばかりかけられる
立花 隆二
身長 185センチ
体重 80キロ
役職 チームクレアのトレーナー
・燈馬をスカウトした人
・トレーナー歴は5年
・優しく、穏やか
オグリキャップ
・元々チームに入っていたが、燈馬にスカウトされ、チームクレアに入る
・好きな事は食事と燈馬との併走トレーニング
ライスシャワー
・燈馬の走りを見て、自分も燈馬みたいに速くなりたいと思い、自らから入部を志願する
・レースに出るのが怖く、まだデビューしていない
・好きなことは燈馬とのトレーニング
・燈馬のことをお兄様と呼びたいと思っている(中々、勇気が出ない)
ナリタタイシン
・選抜時に燈馬からスカウトを受ける
・最初は断ったが、燈馬に説得されチームに入る
・人一倍の負けん気があり、いつか燈馬に勝ちたいと思っている
・好きな事はゲームと昼寝
読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字等、アドバイスがあればよろしくお願いします。
次回は燈馬のレース戦ですので、頑張って書いていきます。
〜オリジナル設定①〜
皐月賞の前は桜花賞がありますが、この物語では皐月賞の後に桜花賞、日本ダービーの後にオークス、菊花賞の後に秋華賞という時系列でいきます。何卒、ご理解の方お願いします。
それでは、また