ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 1月ももう終わり。時間の流れというのは早いものですね。そろそろ花粉の季節か…。花粉症いやだな〜、辛いし。





  それでは、どうぞ


不器用

  〜トレセン学園・立花side〜

 

 「ねぇ燈馬君、ちょっとトレーニングのし過ぎじゃないかな」

 

 「…別に、いつも通りの量をこなしてるだろ?」

 

 「違うでしょ。アンタ、別のところでトレーニングしてるんじゃないの?」

 

  とタイシンさんが燈馬君の現状を見てそう言った。今の燈馬君の現状は簡単にいうとに酷く疲れ切っている、いわゆる“オーバーワーク”だ。この前の“秋の天皇賞”を獲ってからというもの全く休まずトレーニングをしている。このまま行くと燈馬君の身体は間違いなく壊れてしまう。折角、クラシック三冠とトリプルティアラを獲ったというのにここで終わってしまうのはあんまりだ。何とかして、燈馬君を休ませてあげたい。

 

 「…じゃあ、俺はトレーニングの続きをする」タタタッ

 

 「あ、燈馬く…」

 

 「アイツ、何ヤッケになってんのよ」

 

 「何があったんでしょうね〜…」

 

  とタイシンさんやクリークさん、他のメンバーも燈馬君のことを心配している。何か燈馬君の気分転換になれるようなことはないだろうか。

 

 「トレーニング中、失礼するよ」

 

 「…シンボリルドルフ会長」

 

  とシンボリルドルフ会長が後ろからやって来た。

 

 「ルドルフじゃん、どうかしたの?」

 

 「ふむ、実は燈馬に用事があってきたのだが…。見るからに話しかけづらい雰囲気だな」

 

 「すみません、燈馬君連れて来ましょうか?」

 

 「いや、構わない。日を改めてまた来るよ」

 

  とシンボリルドルフ会長は帰ろうとする。

 

 「待ってください、シンボリルドルフ会長!」

 

 「ん?なんだい、クレアのトレーナー」

 

  と僕は帰ろうとするシンボリルドルフ会長を呼び止める。

 

 「差し支えなければでいいんですが、燈馬君に用事とは一体なんなのか聞いてもいいですか?」

 

 「…隠すことでもないしな。構わないよ」

 

  とシンボリルドルフ会長は僕の方に向き直る。

 

 「実はね、燈馬にスズカのお見舞いに行くよう言いに来たんだ。まだ彼はスズカのところに行っていないからね」

 

 「えっ、燈馬君まだサイレンススズカさんのところに行ってないんですか!?」

 

  うむ、と頷くシンボリルドルフ会長。あんなにも行くんだよって言ったのにまだ行っていなかったのか…。あ、そうだ!

 

 「シンボリルドルフ会長、実はお願いしたいことがありまして…」

 

 「お願い?してそれは」

 

 「実は──────。」

 

  と僕はシンボリルドルフ会長にとあることをお願いした。

 

 

 

  〜次の日〜

 

 「さて、今日のトレーニングメニューなんだけど…」

 

  と僕はチームのみんなにメニューを発表しようとした時だった。

 

 「クレアのみんな、トレーニング中に失礼するよ」

 

  とシンボリルドルフ会長が昨日と同じように僕達のところにやってくる。

 

 「実はチームメンバーの一人に用があってね。燈馬、君だ」

 

 「俺?何の用だ」

 

 「燈馬、君はまだスズカのお見舞いに行ってないだろう。だから、私と一緒にお見舞いに行くぞ」

 

 「見舞いなら空いてる日に行くよ。今日はトレーニングがあるんだ。パスする」

 

 「ダメだ。この前もそう言って結局行かなかったじゃないか。スズカも言っていたぞ、“早く会いたい”と」

 

  とシンボリルドルフ会長が言うも燈馬君は動こうとしない。

 

 「…」チラ

 

  とシンボリルドルフ会長が僕の方を見てアイコンタクトを取ってくる。もちろん、わかってますよシンボリルドルフ会長。

 

 「じゃあ、今日のメニューを言うね。まず、アップをしたらタイシンさんとクリークさん、ライスさんはラダートレーニング。シービーさんとオグリさんは坂路ダッシュ。そして…」

 

  と僕は燈馬君の方を見る。

 

 「そして、燈馬君は今からシンボリルドルフ会長と一緒にサイレンススズカさんのお見舞いに行ってもらいます」

 

 「…は?」

 

  と燈馬君は拍子抜けた顔をする。

 

 「それじゃあ、後はよろしくお願いします。シンボリルドルフ会長」

 

 「承知した。行くぞ、燈馬」

 

  とシンボリルドルフ会長は燈馬の腕を掴み、ターフを出て行った。後は頼みました、シンボリルドルフ会長。

 

 「いいな〜、ねぇトレーナー!私もスズカのお見舞いに行ってもいい?」

 

 「ダメです。それにシービーさんはW・D・Tが控えているじゃないですか。今日はトレーニングです」

 

 「え〜」

 

 

 

  〜燈馬side〜

 

 「ま、待て!スズカの見舞いは今度行くから「そう言って行かなかったのはどこの誰だい?」…っ」

 

 「君はもう少し他人の気持ちを考えてやれ」

 

 「後で行くって言って「それから、君のトレーナー君から聞いたが天皇賞が明けてから随分と無理するようになったと聞いた。身体を休めるという意味も含めて今からスズカのところに行くぞ」…」

 

  と俺はルドルフに引っ張られながらスズカのいる病院へと向かっている。正直な話、スズカのところには行きたくはない。別にスズカに会いたくないとかそういう意味ではない。ないんだが…。

 

 「とにかく、今からスズカのところに行って顔を見せに行くぞ」

 

  とルドルフは病院への歩みを早めたのであった。

 

 

  〜病院〜

 

 「ここだ。ここにスズカがいる」

 

  とルドルフがある一室の前に立ち止まる。この病院は都内で最も大きいとされる“北原総合病院”だ。この病院は眼科や皮膚科だけでなく、ウマ娘の診断も受け持っており、名の知れた病院なのだ。

 

 「なぁルドルフ、やっぱり見舞いは「ここまで来てまさか帰るなんてことは、言わないだろうな?」…いえ行きます、行きましょう」

 

  とルドルフが病室のドアを開ける。部屋には大きなベッドが一つ置かれており、その上には病衣を着たウマ娘が窓の外を眺めていた。

 

 「お見舞いに来たよ、スズカ」

 

 「…会長さん」

 

  とルドルフはスズカの病室へと入って行く。

 

 「これはお見舞い品とエアグルーヴから花を受け取ったんだ。今、取り替えるよ」

 

  とルドルフは花瓶に入っていた花を抜き、新しく花を生ける。

 

 「ありがとうございます、会長さん」

 

 「気にしなくていいんだ。それより…」

 

  とルドルフが俺の方を見る。

 

 「そんなところに突っ立ってないで君も早く入りたまえ」

 

 「(入りたくねぇ…)」

 

 「それとも、私が無理矢理にでも部屋に入れたほうがいいかな?」

 

  とルドルフが目を細めて圧をかける。はぁ…、覚悟を決めて入るしかないか。

  俺は一度深呼吸をして病室に入る。

 

 「!燈馬君!」ピコピコ

 

  と俺の顔を見るにスズカの表情が一気に明るくなる。それと同時に耳も激しく動いてる。

 

 「燈馬君、やっと来てくれたんだ…!」

 

 「あぁ。やっと連れて来ることが出来たよ。何回も何回もスズカのところに行くのを渋っていたからな」

 

 「別に渋ってなんか「ならなぜスズカのお見舞いに来なかったんだい?」…」

 

  ホント痛いとこつくんだよなぁコイツ。…はぁ。

 

 「…自分の力不足に嫌気が差したのさ」

 

 「燈馬が力不足…?」

 

 「そうだよ。俺はあの場にいた奴ら全員を助けることは出来なかった。だから力不足なんだよ」

 

 「そんなことはない、君が力不足な訳ないじゃないか。君で力不足というなら私はなんだと言うんだ燈馬。私はあの場に佇むことしか出来なかった。けど、君はあの場にいて10人ものウマ娘を救ってくれた。それだけでも凄いことなんだぞ」

 

  俺の言葉にルドルフが反論する。ルドルフの手は力一杯握り締めていた。

 

 「じゃあ聞くけどよルドルフ」

 

 「なんだ?」

 

 「もし、あの時…あのレースでスズカが亡くなったらって考えたことはあるか?」

 

 「…え?」

 

  俺の問いかけにルドルフとスズカが固まる。

 

 「ウマ娘は時速60kmで走る。最高で7,80近くは出る。そんな中で転倒もしくはそれな近いことが起きたらどうなると思う」

 

 「そ、それは…」

 

 「言わなくていい」

 

  とルドルフの言葉を遮る。言わなくたって分かる、それはまさに“死”に直面することだ。

 

 「時々思うんだ、“スズカと他の奴らを同時に救うことが出来たんじゃないか”ってな。そう思ってると自分の情けなさに嫌気が差してな…」

 

  と自分の中にあった想いを言う。ババアに言われた、“お前はよくやった”、“私情を捨てて周りを助けた”と。けど、ちゃんと助けれたかは実感がなかった。もしかしたら、他にも手段があったんじゃないかって。

 

 「ねぇ燈馬君」

 

 「…なんだ?」

 

 「こっちに来て」

 

  とスズカに呼ばれ、スズカのところに行く。

 

 「もっと近く」

 

 「…だから、なんなんだ『ムニッ!』ふぇ?」

 

  とスズカが急に俺の頬を引っ張ったりグリグリしたりと遊び始めた。

 

 「ど、どうしたんだスズカ!?燈馬の顔を急に…」

 

 「ふぁんぬぁんだ、くぅうひぃ(なんなんだ、急に)…」

 

 「…ぷ、ふふふ…!燈馬君って面白いね」クスクス

 

  とスズカは笑いながら俺の顔をいじる。…はぁ。

 

 「…もぉ、ひぃだ「ねぇ燈馬君」ん?」

 

 「私、燈馬君のこと責めたりしないから」

 

  とスズカが俺の顔から手を離し、俺の手をとる。

 

 「燈馬君は自分のことを責め過ぎだよ。お祭りの時にも言ったじゃない、“自分を責めないで”って」

 

 「…」

 

 「だから自分を責めちゃダメだよ?」

 

 「…スズカの言うとおりだ燈馬。君は自分を責め過ぎている。今回の天皇賞は燈馬のせいなんかじゃない」

 

  とルドルフもスズカの言葉に賛同する。

 

 「それにね燈馬君、私は燈馬君のことを軽蔑したりしないから」

 

 「!」

 

 「本当は助けて欲しかったよ。あのまま転んじゃったりしたらもう燈馬君と…みんなと走ることが出来ないんじゃないかって。とっても怖かった…。けどね、もっと怖かったことがあるの…」

 

 「…」

 

 「燈馬君と会えないんじゃないかって。もう二度と会えないんじゃないかって…。怖かった…」

 

  とスズカの目には沢山の涙が溜まっていた。

 

 「だからお願い燈馬君…、今日だけでもいいから側にいて…」ポロポロ

 

  とスズカが俺の腕にしがみついて涙を流す。

 

 「…わかった。今日はお前の隣にいるよ」

 

  と俺はスズカのベッドの端に座り、スズカが泣き止むまで背中を擦ったり、頭を撫でてやったりした。

 

 

  〜⏰〜

 

 

 「なあ、スズカ?…もういいんじゃないのか?」

 

 「ダメ、まだ燈馬君の温もりを感じたいの」ギューッ

 

  とスズカが泣き止んでから数十分が経った。スズカは俺の腰に腕を回して抱きしめている。オマケに尻尾も腰辺りに巻き付かせて。

 

 「私、まだ許してないからね。お見舞いに来なかったこと」

 

 「でも今日ちゃんと来「会長さんと一緒にだよね?私は一人で来てほしかったんだけど」えぇ…」

 

  とこの有り様だ。試しにルドルフの方をチラリと見る。

 

 「(うわぁ〜…、笑ってるけど目が笑ってねぇ…。耳も後ろに倒れてるし、なんか変なオーラも出てるし)」

 

  スズカがしがみついてからはずっとこの調子だしな〜。

 

 「(変に出てこれないんだろうな、ルドルフ。無理矢理引き剥がせばスズカの機嫌が損なわれるのを知ってるから)」

 

  とルドルフから目を離し、このあとどうするかを考える。もういい時間だし、トレセン学園生はもう下校時間を過ぎている。

 

 「(取り敢えずルドルフを寮まで送ってそれからアマさんに…)「ねぇ燈馬君」ん?」

 

 「今、他の娘のこと考えてたでしょ」

 

 「え…」

 

 「燈馬君、今日は私の隣にいるんだよね?だったらなんで他の娘のこと考えてるの?私のことよりも他の娘が優先ナノ?」

 

 「い、いや…そんなこと…」

 

 「そんなことないよね?燈馬君に限ってそんなことないよね?ず〜っと側にいてくれる燈馬君が他の娘なんて考エナイヨネ?」

 

  なにこれ、どういう状況?俺が悪いの?いや確かにルドルフをどうするか考えてたけど…。

 

 「それはないんじゃないのかい?スズカ」ギシ

 

  とルドルフが隣に座ってくる。

 

 「ル、ルドルフ…?」

 

 「今はトレセン学園の下校時間を過ぎていて今から帰れば寮の門限には間に合わないし、寮長のアマゾンに苦言の一つや二つがある。それに私としたことが外出届をアマゾンに出してはいない。それに日が落ちるのも早くなって外は真っ暗だ。この状況で、か弱い女の子を一人で外に出して歩かせてはいけないからね」

 

  とルドルフが流暢に話し始める。

 

 「ル、ルドルフ…お前何言って…」

 

 「ん〜?何とは?」

 

  とルドルフが笑って距離を近づけてくる。

 

 「君の考えていたことを言っただけなのだが、それがどうかしたのかな?」ボソ

 

  と小声で話す。コイツ…。

 

 「…やっぱり考えてたんだ」ギューッ

 

 「ス、スズカ…?」

 

 「ダメじゃないか燈馬、ちゃんとスズカの隣にいると言った君が他の娘のことを考えるなんて」

 

 「それはお前が!」

 

 

   ガラガラッ!

 

 

 「盛り上がってるところ申し訳ないんだけれど面会時間は終了したからお見舞いに来た君達は早く帰るんだよ」

 

 「先生…」

 

  と一人の男性医とナースが入ってくる。

 

 「やあ燈馬君、久しぶりだね」

 

 「お久しぶりです、北原(きたはら)さん」

 

  と男性医、北原 亮(きたはら りょう)さんが近づいてくる。北原さんはこの病院の院長だ。

 

 「今日はサイレンススズカさんのお見舞いかい?」

 

 「そうです。ルドルフに連れられて」

 

 「そっかそっか。サイレンススズカさん、燈馬君が来ないからってずっと心配していたんだよ?余り、女の子を不安にさせちゃダメだからね」

 

 「…はい」

 

  と北原さんは椅子を持って来てスズカの近くに座る。

 

 「サイレンススズカさん、体調の方はどうですか?」

 

 「はい、大丈夫です…」

 

 「そっかそっか。足のほうはどうかな?」

 

 「特に痛みはありません…」

 

 「オッケー、じゃあ明日の朝にも来るから何かあったらナースコールしてね?」

 

 「はい、ありがとうございます」ギューッ

 

  と軽い問診のようなものを行うと北原さんは立ち上がって扉のところに向かう。

 

 「さ、君達も帰った帰った」ガラガラ

 

  と扉を開けて俺達が退室するよう言う。

 

 「私達も帰ろうか燈馬。先生達を困らせてしまう」

 

 「そうだな、スズカそろそろ離し「いや」…」

 

  と立ち上がろうとする俺を離さんばかりに抱き締める。

 

 「もう終わりだスズカ、また来るよ」パッ

 

  とルドルフがスズカの腕を掴み、拘束を解く。

 

 「〜〜〜〜ッ」プク〜

 

  とスズカは俺が離れたことでタコのように頬を膨らませる。

 

 「じゃあ俺は「待って」今度はなんだ?」

 

 「これ」

 

  とスズカはマジックペンを俺はに渡す。

 

 「ここに書いてほしいの」

 

  とギブスを指差す。ギブスにはたくさんのメッセージが書かれていた。もちろん、ルドルフのもあった。

 

 「お願い…」

 

 「…わかったよ」

 

  と俺はマジックペンの蓋を外し、ギブスにメッセージを書く。

 

 「…これでよし。じゃあ俺らは帰るから」

 

 「またな、スズカ」

 

 「また来てね。燈馬君、会長さん」

 

 「「あぁ」」

 

  と俺とルドルフは病室を出る。それに続いて北原さんも退室した。

 

 「ねぇねぇ燈馬君♪」

 

 「なんですか、北原さん」

 

 「サイレンススズカさんと燈馬君はどういった関係なの?」

 

 「友達でライバルです」

 

 「え〜、ライバルはともかくあんな雰囲気で友達は違うんじゃな〜い?もっとこうさ“彼女”的な「先生」ん?…!?」

 

 「すみません先生、私達は今すぐに帰らないといけない用事が出来たようなのでこれで失礼しますね」ニコニコ

 

 「え、あ…うん。気をつけてね」

 

 「はい、それではスズカのことお願いします。行こうか燈馬」ガシッ

 

 「え、あ、あぁ…」

 

  と俺はルドルフに腕を掴まれ病院を後にする。

 

 「お、おいルドルフさっきから何怒ってんだ?」

 

 「私は怒ってなどいないさ。病室で楽しくイチャイチャしていた君とスズカに嫉妬なんてするはずないじゃないか」

 

  うわ〜、めっちゃ怒ってるし嫉妬してんじゃん。

 

 「私だって燈馬とイチャイチャしたいし…、彼女って言われたいんだぞ…

 

 「何かいったか?」

 

 「何も言ってない!」グルッ

 

  とルドルフは自分の尻尾を俺の腰に巻きつけ、腕にしがみつく。

 

 「あの〜、これは?」

 

 「スズカは良くて私はだめなのか?」

 

 「何でもありません」

 

  と俺はルドルフを送るべく寮へと向かう。

 

 「そういえば、君はギブスに何て書いたんだ?」

 

 「あぁ、あれか。“秋の天皇賞で会おう”って書いた」

 

 「君らしいな」

 

 「まあな」

 

  俺はあの天皇賞を勝ったなんて思っちゃいない。スズカに勝ってこそ本当の勝利と言える。だから秋の天皇賞の盾はスズカに勝つまではお預けだ。

 

 「今からお前を寮に送るよ。外出届はちゃんと出してるんだろうな?」

 

 「それが…、その…」

 

 「?なんだ」

 

 「すまない、本当に外出届を出していなくてだな…。さっきアマゾンから『どこにいんだ!』って連絡が…」

 

 「マジ?」

 

 「あぁ…、すまない…」

 

  俺は寮に着くなりアマさんにルドルフのことを説明。アマさん曰く、今回は俺の顔を立ててくれるそうでルドルフの件なかったことにしてくれるそうだ。因みに…。

 

 「アンタ、後ろには気をつけなよ」

 

  とアマさんが俺にそう言って寮へと戻って行った。

 

 「(どういう意味なんだ?)」

 

  と俺はアマさんの言葉の意味を考えながら家に帰った。

 

 

 

  〜メジロ家・メジロドーベルside〜

 

 「相変わらずバカみたいに広い家だね〜。もう少し小さくはならんのかい?」

 

 「そう言われましても、建ってしまった以上小さくなんて出来ませんよ」

 

 「そうかい」ゴク

 

  とお婆様に来たお客様、風間史子さんはソファに座り机に置かれたティーカップの紅茶を一息で飲む。

 

 「ふぅ〜。…アサマ、この前言った通りさ。そこにいるメジロドーベルを有馬記念に出走させてあのクソガキを負かして欲しいのさね」

 

 「え…」

 

  私が有馬記念を…?

 

 「えぇですが、なぜドーベルなんです?他にもライアンや他のウマ娘もいます。なのに…」

 

 「メジロドーベル」

 

 「は、はい!」

 

  と私は名前を呼ばれて姿勢を正す。

 

 「アンタ、なんの為に走ってるんだい?」

 

 「なんの為、ですか?」

 

 「そうさね」

 

 「…私は、クラシックで夢を叶える為に走っていました。けど、その夢も叶わなくなりました。燈馬さんがトリプルティアラを獲ったので…」

 

 「…そうか「でも」?」

 

 「また新しく夢、というより目標が出来たんです。というより強くなったんです(・・・・・・・・)

 

 「ほう?それは聞いてもいいのかい?」

 

 「はい。私の目標は“燈馬さんに勝つこと”です…!」

 

 「ドーベル…」

 

 「私は燈馬さんに憧れていました。中等部からの目標だったんです。燈馬さんに勝ちたい、その一心もあって辛いことも乗り越えることが出来たんです。だから…」

 

  と私は膝に置いていた手を握りしめる。

 

 「私は燈馬さんに勝ちたい!もう走る機会はないと思っていましたけど、チャンスがあるなら、そこで燈馬さんに勝ちたいです!」

 

 「クククッ、ハハハハッ!!!」

 

  と風間さんは急に笑い始める。

 

 「あの、私…変なこと「いやいや、どこもおかしくはないさねメジロドーベル」は、はい…」

 

 「さて、アサマ。アンタの娘がこう言ってるんだ、どうすんだい?」

 

  と風間さんはお婆様に問いかける。

 

 「…ッ」

 

  お婆様は難しそうな顔をしていた。

 

 「お婆様。私、有馬記念に出たい。辛いことはわかってる。けど、もし走れるなら…あの人と走れるなら走りたい!だから、お願いします!」

 

  と私は頭を下げる。あの人と走れるなら私は…。

 

 「顔を上げなさい、ドーベル」

 

 「…お婆様?」

 

 「……わかりました、ドーベルを有馬記念に出走させます。私からアナタのトレーナーに言って出してもらえるよう頼んでみるわ」

 

 「お婆様、…ありがとう!」

 

 「いいのよ、可愛い孫が頼んで来るのです。反対しないわけありません。ただ、出るからには必ず勝ちなさい。いいね?」

 

 「はい!!」

 

 「…それで、燈馬さんにはどうやって勝つのですか?」

 

 「な〜に、あのクソガキには弱点(・・)があるさね」

 

 「「弱点?」」

 

 「そうさね。聞くかい?」

 

  と風間さんは私とお婆様を交互に見る。

 

 「…大丈夫です。私は私の実力で燈馬さんに勝ちます」

 

 「なら有馬記念、頑張るんだよ」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 「ドーベル、今日は遅いから泊まって行きなさい。朝に学校へ送ってあげるわ」

 

 「ありがとうお婆様。私、部屋に戻るね」

 

 「えぇ、ゆっくりお休み」

 

  と私はお婆様の部屋を出て、自室に戻る。

 

 「(燈馬さん、私はアナタに勝つ!!)」

 

  と私は有馬記念への闘争心を燃やす。必ず勝つためにも明日からのトレーニングも厳しく行かなくちゃ!

 

 

 

 

  〜史子side〜

 

 「あの、史子さん」

 

 「なんだい、アサマ」

 

 「先程、仰られてた燈馬さんの弱点とは一体…」

 

 「おや、気になんのかい?」

 

 「いえ、むしろ燈馬さんには“弱点なんてない”のでは…」

 

  弱点がない?あのクソガキがかい?

 

 「ハハハッ!アサマ、お前さんは勘違いをしてるさね」ハハハ!

 

 「勘違い?」

 

 「あのクソガキにはちゃんと弱点があるさね。ただ、そういう風に見えてるんだよ」

 

  目を凝らせば赤ん坊でもわかるようなことさね。

 

 「???」

 

 「ま、クソガキのレースをよく見れば自ずとわかるよ」

 

  と私はソファから立ち上がる。

 

 「アタシは帰るよ。あのクソガキがそろそろ帰ってると思うからね」

 

  とアタシは部屋の扉に手をかける。すると…。

 

 「お優しいんですね」

 

 「…なにがだい?」

 

  と振り返るとアサマが立ち上がる。

 

 「自分が悪く思われようとも自分の息子を強くするために身体を張っていらっしゃる。私には到底出来ないことです」

 

 「適当なこと言うんじゃないよ。アタシはね、優しくなんてないさね」

 

 「そうですか」フフ

 

 「…なんだい、何か言いたげな顔だね」

 

 「いえいえ、よく似ていらっしゃると思って」

 

 「…そうかい、アタシゃあ失礼するよ」ガチャ

 

 「はい、お気をつけて。そうそう、時間がある時で構いませんので燈馬さんを連れてどうぞ家に遊びにいらしてください。歓迎いたします」

 

 「あのクソガキに聞いておくよ」

 

 「はい、お待ちしております。それでは、お気をつけて」ペコ

 

 「はいよ、また来るさね」バタン

 

  と扉を閉めて、玄関へと向かう。

 

 「たく、何が優しいだ。アタシはあのクソガキを甘やかしたくないだけさね」

 

  とアサマの言葉に愚痴を零す。全く…。

 

 「(あのクソガキは、まだまだ強くなれる。アタシの力じゃあどうにも出来ないさね)」

 

  アタシではなく、あの小娘達があのクソガキを支えてやらんといけないんだ。アタシではない。

 

 「さ〜てと、さっさと帰ってクソガキが作る飯でも食べるかの〜」

 

  とアタシはクソガキの待つ家に帰った。

 

 

 

 

 

 

  そして、月日は流れ─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『トゥインクルシリーズファンの皆様、これより有馬記念の開催です!!!』

 

 

  12月、有馬記念のときがやって来たのだった。




 読んで頂きありがとうございます。

 秋の天皇賞から有馬記念へとポ〜〜ン!!と時間が飛んでいますが気にしないで下さい。


 なぜ、史子はドーベルに有馬記念の出走を頼んだのでしょうか…。気になりますね〜。



  また次回でお会いしましょう!


  それでは、また〜
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