アニバーサリーまであと4日!楽しみ過ぎて待ち切れない!!!
それでは、どうぞ
〜駅前・燈馬side〜
12月31日。今年最後の日にある人から呼ばれた。
「そろそろかな…」
時計を見ると今は10時20分。待ちあわせ時間は10時30分であと10分だ。
「気長に待つと「だ〜れだ♡」…」
時間を潰そうと携帯を取り出した時、視界が暗くなる。
「貴方の後ろにいるのは誰でしょう〜」
「…何のつもりですか、
と目を覆っていた手をどかして後ろを見る。
「あらあら〜、バレちゃったか〜。でも、待っているシノンちゃんの姿を見ているとどうしてもイタズラをしたくなっちゃって〜」フフ
とおっとり口調で喋るウマ娘“カネケヤキ”さん。スカイブルー色の腰まである長い髪と長い耳。紺色の瞳で左耳に赤いシュシュがついている。身長も高くスタイルもかなりいい。この人は在学中、色んな人から「モデルさんですか?」と聞き間違えられていたほどだ。
「久しぶりね、シノンちゃん。卒業式以来かしら」
「はい。カネケヤキさんもお変わりなく元気そうでよかったです」
「ありがとう、シノンちゃん。はい!」バッ
とカネケヤキさんが大きく手を広げる。
「あの、急にどうしたんですか?」
「?ハグだけど?」
「見ればわかります」
「シノンちゃんはハグは嫌い?」
「いや、好きか嫌いかの話じゃなくて…」
「あ!もしかして、シノンちゃんはお姉さんにハグするんじゃなくて私にハグされたいのね!」
「待ってください、まず俺のはな「そ・れ・じゃ・あ〜…、シノンちゃ〜〜〜ん!」グハッ!」ドン!
とカネケヤキさんが力一杯俺を抱きしめる。
「シノンちゃ〜ん。お姉さんに甘えていいからね〜」ナデナデ
頭を撫でながら……。
「あの爆発的ボディのウマ娘が平凡な男に自ら抱きついただと!?羨ましすぎるだろ!!」
「クソ!非リア充の俺達への当て付けか!」
「爆○しろ!!」
周りの男達から妬みの視線がくるが、カネケヤキさんはそんなことを知らずにずっと頭を撫でていた。
「フンフフ〜ン♪シノンちゃんは本当に可愛いね〜♪お姉さんの弟にならな〜い?」ナデナデ
「なりません。あと頭を撫でるのを止めてください」
「じゃあ、抱きしめるのはいいの〜?」
「それもです」
「じゃあ、手繋ごっか!」
とカネケヤキさんが離れてすぐ俺の手を握る。
「それじゃあ、時間も惜しいし遊びに行こっか!!」
「は、はぁ…」
俺はカネケヤキさんの手を引かれるまま電車に乗り、目的地まで向かった。
〜⏰〜
「つ〜いた〜!」
「あの、ここは…?」
「“お台場海浜公園”よ!」
「冬の時期に海ですか?」
「うん!」
カネケヤキさんと一緒に来たところは海が近くにあるお台場海浜公園というところだ。よりにもよって海ですか、カネケヤキさん…。
「どうして、また…」
「たまには、冬の海も悪くないでしょ?」
「寒いだけですよ」
と俺はその場に座り込む。カネケヤキさんも俺の隣に座り、身体を密着させてきた。
「カネケヤキさん」
「な〜に?」
「アナタ、今の俺の現状知ってますよね?」
「うん、知ってる」
「じゃあ、なんで誘ったんですか?」
というとカネケヤキさんは少し考えてから…。
「負けたから慰めてあげようかなって思ってね。シノンちゃんを誘ったの!」
「違います。そういうことを言ってるんじゃなくて、ウマ娘との接触を禁止されてるんですよ。だから「それってトレセン学園の生徒だけでしょ?卒業してるお姉さんは会っても大丈夫よ!」…」
「シノンちゃんは、お姉さんと会うの嫌なの?」
「嫌とは言ってませんよ。卒業しても会えるのは嬉しいことですから」
「じゃあ問題ないね!シノンちゃん!」ギュ〜
とカネケヤキさんが抱きしめる。
「(こういった雰囲気、在学中も変わらないな)」
カネケヤキさんは見た目はおっとりしているが、母性愛がとても強い。在学していた時は一部のウマ娘から“聖母”って呼ばれてたような気がする。
「(それとシノン呼びするの止めて下さいって言ってるけど、この人頑なに止めようとしないんだよな…)」ハァ
何故、俺のことをシノンと呼んでいる理由はシノンという名前が気に入ったらしく、シノンと呼んでいるんだそうだ。
「(そういえばこの名前、パッと頭に出てきたんだよな。なんでなんだろう…)」
「ねぇシノンちゃん、どうかしたの?」
「いえ、何もないですよ」
「有馬記念のこと引きずってるの?お姉さんが慰めてあげるからね?」ヨシヨシ
「引きずってませんし、いりません」
「も〜う!シノンちゃんはお姉さんに甘えなさい!これは命令です!」プンプン
「本当に大丈夫ですから…」
「本当に…?」
とカネケヤキさんが俺の顔を覗き込むように見てきた。
「本当に大丈夫?無理してない?」
カネケヤキさんが悲しそうな表情で俺を見る。
「シノンちゃんはいつも無理してたよね?お姉さん、今のシノンちゃんを見てると凄く辛いの…。シノンちゃんは頑張り屋さんなのも知ってるけど、頑張り過ぎて空回りしてた時もあった。強く居続けようと色んなものを切り捨ててきた。弱い自分を見せない為に」
「俺は、弱いですよ」
「そんなことないよ?シノンちゃんはとっても強い。お姉さんを助けてくれたときなんか、と〜っても格好良かったよ?」
「…カッコよくなんてないですよ」
「も〜う、そこは“ありがとう”って言うところだよ!」
「はぁ…」
「む〜。シノンちゃんは本当に素直じゃないな〜!そんなことしてたら、みんなから嫌われちゃうぞ?」
「現に、俺は嫌われ者ですよ。有馬記念の時なんか、観客の人から「ざまぁみろ」とかいわれてましたしね」
というとカネケヤキさんは俺の頬を引っ張った。
「はの、はへへはひはん?(あの、カネケヤキさん?)」
「この口か〜!この口が悪いのか〜!!」グニグニ
とカネケヤキがつねったり、引っ張ったりする。
「いはひへへふ、はなひへ「シノンちゃん」?」
とカネケヤキさんが俺の顔から手を離して正面に座る。
「トゥインクルシリーズはウマ娘をどうするか知ってる?」
「い、いえ…」
「トゥインクルシリーズはね、ウマ娘を“主役”にしてくれるの」
「“主役”…?1着のウマ娘をですか?」
というとカネケヤキさんは首を振る。
「“ウマ娘全員を主役にしてくれるの”」
「それが、どうしたんですか…?」
「シノンちゃんもね、その一人なの」
とカネケヤキさんが俺の手を取る。
「ウマ娘はね、“夢”や“目標”を持ってレースを走るの。そこから勝ちたいっていう気持ちや闘争心が生まれるの。お姉さんの言いたいこと、わかる?」
とカネケヤキさんが強く手を握る。
「…わかりますよ。カネケヤキさんが言いたいことが」
「…!なら「けど」ッ!」
「俺はもう捨てたんです。強くなるためには必要ありません」
「シノンちゃん…。やっぱり…」
「すみません」
とカネケヤキさんの手から自分の手を抜く。
「…お昼にしましょう。ここら辺に確か温かいご飯屋があるはずです、行きましょう」
「…そうね」
と俺はカネケヤキさんを連れてお店に向かった。
〜⏰〜
「はい!天ぷら蕎麦大盛り2つ!暑いから気をつけてね!」
「ありがとうございます、どうぞカネケヤキさん」
「ありがとうシノンちゃん。頂きましょうか」
「はい、では─────。」
「「いただきます」」パン
お台場海浜公園を離れた後、俺とカネケヤキさんは近くにあった蕎麦屋に入り昼食を取ることにした。
「ん〜!美味し〜い!」
「美味しいですね、特に出汁がよく効いてます」ズズッ
とお汁を一口飲む。かつお節をメインに使った温かい出汁が身体に染み渡る。
「シノンちゃんは変わらず天ぷらをよく食べるね。特にかき揚げ天ぷら」
「そうですか?」
「うん。嬉しそうに食べてて、見ているこっちまで嬉しくなっちゃう」
「…」サク
と俺はカネケヤキさんに顔を見られないようにかき揚げを食べる。
「照れちゃって、か〜わいい〜♪」
「止めて下さい。照れてません」
「じゃあなんでお姉さんから顔を逸らしたのかな〜?」ニコニコ
「…」
「本当は照れ隠しなの、お姉さん知ってるからね♪」ボソ
とカネケヤキさんが耳元で囁いてくる。
「…食べないんですか?じゃないと冷めますよ」
「うふふ♪。必死になっちゃって〜、そんなにお姉さんの食べたいの〜?食べさせてあげよっか」
「早く食べてください。電車、間に合いませんよ」
「は〜い♪」
と美味しそうに食べるカネケヤキさんを横目に俺も蕎麦を口に運んだ。
「僕。そこの僕!」ボソ
「はい」
と正面を見ると天ぷらを作っていた女性が小声で声をかけてきた。
「かき揚げ好きなんだって?」
「いや、好きというか「一個おまけつけようか?」…」チラ
チラリとカネケヤキさんの方を見る。カネケヤキさんは美味しそうに蕎麦を食べていた。
「…いただきます」
「はいよ!そら、おまけのかき揚げだよ!た〜んとおあがりな!」
「はい」サク
やっぱり、天ぷらはかき揚げに限るな。俺は女性から頂いたかき揚げを頬張った。
「うふふ♪」
カネケヤキさんが楽しそうに見ていると知らずに…。
〜風間家〜
「ただいま」
「おかえり。随分と早い帰宅だね」
昼食後、カネケヤキさんと色々なところを回って自宅に来た。
「あぁ。ちょっと訳ありでな」
「どういう「お邪魔します〜」…誰だい、あんたは」
「初めまして。私、カネケヤキと言います。シノンちゃんには在学時にトレセン学園でお世話になりまして〜」ペコ
「そうかい。まあ、ゆっくりしていきな」
「はい。あと、こちらをどうぞ。心ばかりのものですが〜」
「気持ちだけ受け取っとくさね。そいつはその隣にいるやつと一緒に食べな」
「わかりました〜」
「中に入りな。洗面台はこの奥の扉さね。手洗いうがいを忘れるんじゃないよ」
「ありがとうございます〜」スタスタ
とカネケヤキさんは奥の扉へと入っていった。
「どういうことだい?クソガキ」
「知るか。俺が聞きてぇよ」
「アンタ、ウマ娘と会っちゃあダメなんじゃなかったのかい?」
「在学のウマ娘がダメなだけであって卒業してたら大丈夫と言われて会いに行った。卒業以来だったしな」
「確かにあのチビっ子からは在学中のウマ娘に会っちゃあいかんというのは聞いてないからね。違反ではないね」
「あぁ」
「アタシには関係ないことさね。間違って変なことはするんじゃないよ」スタスタ
「しねぇよ」
というとババアはリビングへと入っていった。
「シノンちゃん、シノンちゃんのお部屋はどこ?」
「2階の奥の部屋です」
「は〜い。あ!それと…」
とカネケヤキさんが俺の耳元に口を近づける。
「お姉さん、シノンちゃんに何されてもいいよ♡」ボソ
「しません。俺は自分の首を締めるようなことはしませんので安心してください」
「ぶ〜。吊れないな〜」
「…追い出しますよ?」
「ごめ〜ん!!お姉さんが悪かったから、ずっと一緒にいさせて〜!!!」
「全く…」
と俺は力一杯抱きしめるカネケヤキさんを背負いながら自分の部屋へと連れて行った。
「あの、カネケヤキさん。そろそろ離れてもらってもいいですか?部屋ついたんで」
「ヤダ。お姉さん、シノンちゃんから離れない…」ギュ〜
カネケヤキさんはずっとくっついたままだ。そんなに追い出されるのが嫌なのか…。
「追い出しませんから、離れてください」
「………ヤダ」
「今、一瞬だけ考えましたよね?」
「ヤダヤダヤダー!お姉さんはシノンちゃんから離れないー!!」ギュー!
とカネケヤキさんの力が強まる。止めてください、痛いんです。ウマ娘は力が強いんですから人の骨なんて簡単にポキッといっちゃいますよ?
「…じゃあ、離れなくていいので力を緩めてください。こればっかりはお願いします」
「…わかった」シュルル
と力を緩めてくれたのと同時に尻尾を巻き付けてきた。痛いよりマシか…。
「そういえばシノンちゃん、あんまり部屋に物がないのね」
「物欲がないだけですよ」
俺の部屋は勉強机とベッド、あとは本棚といった至ってシンプルな部屋だ。
「トロフィーとか置かないのね」
「あんまりトロフィーとか飾りたくないんで」
「なんで?」
「邪魔になるから」
トロフィーなんて飾ろうと思えば他のところでも飾れる。自分の部屋に置けば尚更部屋を占領するので邪魔なだけだ。
「まあでも、写真なら一つ置いてますよ」
と机の上にある写真立てを指す。
「あれって…」
とカネケヤキさんが離れて写真立てを手に取る。
「チームで撮った写真です。
「そっか…、懐かしいね」
とカネケヤキさんが写真を持ってベッドに腰を下ろした。俺もカネケヤキさんの隣に腰を下ろす。
「シービーちゃん達は元気?」
「みんな元気にやってますよ。オグリは重賞レースや時折レジェンドレースに出ています。タイシンも相変わらず努力してますし、ライスはまだ準備期間でシービーは…、まあ言わなくてもわかりますよね」
「そうね。…チケットちゃんやハヤヒデちゃんは元気にしてるかしら」
「元気にしてますよ。チケットは時々遊びに来ますし、ハヤヒデともよく話をしますよ」
「そうなのね。そういえば、新しくメンバーが入ったって聞いたけど?」
「スーパークリークです。菊花賞ウマ娘の」
「そうなのね〜、また賑やかになりそうね!」
「今でも賑やかですよ」
賑やかで大変な連中だけどな。
「…駆け出しの頃とは大違いだね」
「最初は俺とシービー、カネケヤキさんの3人だけでしたしね。そこからオグリ、ライス、タイシンが入ってきて「違うわ」…」
「最初なんて、チームとして成り立っていなかったじゃない」
とカネケヤキさんは持っていた写真立てを撫でる。
「みんなから認められず、練習場も貸してくれなかった。部室も与えてくれず、空き教室でミーティングをやったっけ?そのミーティングにはシノンちゃんが主導でやってトレーナーさんは一切何も言わず、顔を出すことなんて滅多になかった。トレーニングはいつも山か河川敷。良くて、学園の何もない小さな敷地だったね。トレーニングメニューはいつもシノンちゃんが作ってくれたものをやったね」
「授業中に作ってましたしね。余りいいトレーニングにはなっていなかったと思いますが」
「そんなことはないわ。シノンちゃんのおかげでドリームトロフィーを夏と冬を連覇して、レジェンドレースでは5連勝した。それに海外遠征もさせてもらってよりレースの奥深さを知ることが出来たんですもの。これもシノンちゃんのおかげ。シービーちゃんも凱旋門賞で海外ウマ娘と“渡り合える程の実力”を引き出してくれたのもシノンちゃんあってこそなのよ?」
「誰だって出来ますよ。海外ウマ娘と渡り合える程の実力を引き出すトレーナーなんて「いいえ」え?」
と俺の言葉にカネケヤキさんが否定する。
「私から言えることだけれども、日本ウマ娘は海外ウマ娘と渡り合える程の実力なんて持っていないわ。それに今の日本のウマ娘には“海外ウマ娘には勝てない”という
凱旋門賞に出走した日本のウマ娘はことごとくして負けている。シービーは例外として19年も日本ウマ娘が挑戦し続けているが未だ勝つことは出来ていない。
「これから先、海外ウマ娘に勝つ日本ウマ娘は出てこないと思うの。力や体格の差があったり環境も違う中で戦って行かなきゃいけないから」
海外を経験したウマ娘だから言えることか。経験者は語るということはこのことだな。
─────コンコン。
「お前達、飯の時間だよ。さっさと食べな」
「わかった」
「は〜い。行こっか」
俺はカネケヤキさんの言葉に頷いて部屋を出た。
〜カネケヤキside〜
「カネケヤキさん、家には連絡してるんですか?」
「えぇ。そろそろ迎えに来ると思うわ」
私はシノンちゃんのお婆様からお食事を頂いてシノンちゃんとリビングでテレビを見ています。お婆様はお食事を作られた後仕事の方々との食事があるらしく、外出されました。現にこの家には私とシノンちゃんの2人きりです。
「こんな遅くまで居て大丈夫なんですか?親御さんも心配してるんじゃ…」
「大丈夫よ。お姉さんの親はシノンちゃんのこと信用してるし、なんなら家に来ないかって言ってるのよ?」
「遠慮しときます」
「もう!来ていいって言ってるのに!」プンプン
私は一度、在学中にシノンちゃんを家に連れて行っていることがあります。その時に私の親にシノンちゃんを紹介して食事をした仲でもあります。
「結構お邪魔させてもらってますし、いいんじゃないですか?ご飯も食べさせてもらってますし」
「え〜、久しぶりに顔を見せに行こうよ〜」
「なんですか、その結婚して何年も顔を見せてない夫婦みたいな話。俺はアナタの彼氏にも旦那にもなった覚えはありません」
「だ、だん…!」
な、なんて大胆なのシノンちゃん!!も、もしかしてお姉さんと…!
「(旦那さんてシノンちゃんが私の家に婿として来るってこと?それとも私が嫁ぐってこと!?シノンちゃんとけ、結婚…)」
シノンちゃんと結婚だなんて…。お姉さん、まだ心の準備が─────!!!
ピンポーン
「迎え、来たんじゃないんですか?」
「ふぇ!?…そ、そうみたいね!」
「?」
私はソファから立ち上がって玄関へと向かい、ドアを開ける。
「迎えに来たわよ、ケヤキ」
「お母さん」
ドアの前にはお母さんが立っていました。
「帰る準備は出来てる?」
「うん!」
と私は靴を履いて荷物を持つ。
「やっぱり迎えでしたか。車の音がしたのでそうじゃないかなって思ったんですが」
とシノンちゃんがリビングから出てくる。
「あら風間君!久しぶりね!見ない内に大きくなって!」
「…お久しぶりです、“カネリユー”さん」
とお母さんはシノンちゃんとの再開に胸を躍らせています。
「最近はテレビでしか風間君の活躍を見れてなかったけど、元気そうで良かったわ!」
「ありがとうございます」
「有馬記念、残念だったわね。次のレースはいつなの?」
「大阪杯です」
「そう。無理は禁物よ、体調管理はきちんとね?」
「わかりました」
「久しぶりに顔も見れたことだし、帰りましょうか!」
とお母さんは車に乗り込み、私も車に乗り助手席に座り窓を開ける。
「またねシノンちゃん。今度のレースは見に行くから」
「無理に来なくていいですよ」
「ダ〜メ!お姉さん絶対に見に行くから!…頑張ってね」
「はい」
と私は車の窓を閉めるとお母さんは車を走らせた。
「やっぱり、風間君は出会ってから
「うん、そうだね…」
変わらず、か…。お母さんは知らない、シノンちゃんはあれ以来変わってしまったことを──────。
「(今のシノンちゃんはあの頃と比べて
シノンちゃんは誰よりもトレーニングに励んでいた。夜遅くまでトレーニングもしていたし、私達の倍の量のトレーニングをしていたり…。とにかく、必死に頑張っていた。だけど…。
「(“あの日”を境にシノンちゃんは変わってしまった)」
それはトレーニングメニューを見て私はわかってしまった。いつしかシノンちゃんは“勝つためのトレーニング”ではなく、“勝つことが当たり前のトレーニング”となってしまった。2年ちょっとしかシノンちゃんと関わりはなかったけど、でもトレーニングの変わりようだけは気づいた。
「(あの時、私かシービーちゃんがシノンちゃんに手を差し伸べていれば変わらずにいたのかもしれない)」
もう過ぎてしまったことをどうこう言ってはいられない。もう帰ってくることはない。
「(今からでも遅くはないはず。シノンちゃんには欠けたものを拾って貰わないといけない。“大事なもの”なんだってことを気づかせないといけない…!)」
早く気づいてくれることを心の中で願い、私は家に帰った。
〜燈馬side〜
「まさか、“カネリユー”さんが来てたなんてな」
カネリユーさん。カネケヤキさんの母親でトゥインクルシリーズでも活躍した名のあるウマ娘の一人だ。
「元気そうで良かった。きっと旦那さんも元気にやってるんだろうな」
と俺はソファに座り、テレビを見る。今流れているのは年末の特番だ。
『────それでは、ここにいる人達にインタビューをしていきたいと思います!…あ、すいませ〜ん!』
とマイクを持った女性が色んな人達に声をかけていく。どうやら、次の年の抱負を聞いているそうだ。女性の質問にインタビューされた人は次々と述べていき、次は家族連れにインタビューしていた。
『君は次の年の頑張ることってあるかな?』
と女性が今度は小さな男の子にマイクを向ける。
『ぼくは、たくさんのともだちをつくりたいです!』
『来年、小学校に入るんですよ』
『そうなんですね!たくさんお友達が出来たらいいね!』
『うん!』
と和気あいあいとインタビューが続く。
『君の“夢”ってあるのかな?』
『ぼくのゆめはとれーなーになることです!』
『それはウマ娘のトレーナーになるってことかな?』
『うん!かっこいいのとれーなーになりたいです!』
『じゃあ、ウマ娘のトレーナーになれるように勉強も頑張らないとね!』
『うん!!』
と家族連れのインタビューが終わり、他の人へとインタビューがされていく。
「“夢”か…」
と独り言を呟いていると─────。
『3、2、1…。ハッピーニューイヤー!!!』
と時刻は0時を回り、1月1日になった。テレビでは新年を迎えれたことを嬉しそうにはしゃいでいる人達が映っていた。
♪〜
「…」カチ
俺は携帯を開けると何人の人達から新年の挨拶が来ていた。同級生はもちろんウマ娘からもだ。
『おめでとう。今年もよろしく』ポチポチ
「送信、と…」ピッ
俺はメッセージを返し、携帯をしまう。
「夢、ねぇ…」
さっきのインタビューで女性は子供に対して夢はなにかと聞いていた。
「…」
俺の脳裏にアレが流れた──────。
『なんでお前なんだ!ふざけんな!』
『男が女の子に勝って嬉しそうにしてるなんて気持ち悪い』
『なんで男が走ってんだよ…』
『トゥインクルシリーズはウマ娘のレースじゃねぇのかよ!』
『なんで出てるの?早く出ていけよ』
「チッ」
俺は舌打ちをする。思い出したしたくもないようなことを思い出したのだから。
「俺は強くならないといけないんだ。勝つことが当たり前にならないといけないんだ」
強くなるには不要なものを切り捨てる必要があるから。だから俺は─────────。
読んで頂きありがとうございます。
何故、主人公は夢を持つことをやめてしまったのか。何故そこまで強くいたいと思っているのか、カネケヤキ達は何を見たのか、何があって主人公を変えてしまったのか、昔の主人公はどんな人だったのか───────。色々考えることがたくさんある話でしたね。
まだまだ謎な主人公。彼にあった過去とは──────。
次回もお楽しみに〜
それでは、また〜