ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 更新遅くなり大変申し訳ございませんでした…。失踪していたとかではありません。








 それでは、どうぞ


忘れたかった過去。願っても戻ってこなかった人

  〜トレセン学園・シービーside〜

 

「─────と言う風にこの英文はmustではなく、have toが使われる為、文の構成は───────。」

 

 「(つまんないなぁ…)」

 

  私は教室で英語の授業を受けていた。年が開けても変わらない風景。強いて言うなら少し寒くなったくらいで他は何ら変わりない。

 

 「(なんか面白いことないかなぁ〜…)」ハァ

 

  と私は退屈な日々に嫌気が差し、ため息をついた。

 

 「…」

 

  ルドルフが見ているとも知らずに。

 

 

 

  〜カフェテリア〜

 

 

 「シービー。ここ最近の君は授業に集中してなさすぎる。もっと上級生としての姿勢をだな…」

 

 「はいはい。そんなに怒らなくてもいいじゃん、ルドルフ」

 

 「…本当にわかっているのか、君は」

 

  相変わらず頑固者だな〜、と私はパフェを口に運ぶ。その様子にルドルフは大きなため息をついた。そんな時だった。

 

 「ねぇ聞いた?あの話」

 

 「聞いた聞いた。風間先輩が退学させられる話でしょ?」

 

 「なんでも大阪杯結果出さないといけないみたい…」

 

 「でも相手はナリタブライアン先輩とマルゼンスキー先輩だよね」

 

 「あとエイシンフラッシュさんも出るみたいだって」

 

 「相手が悪いよね。風間先輩」

 

 「だよね〜」

 

 「「……」」

 

  後輩達が私達の隣を通り過ぎて行く。内容は余り聞きたくないものだった。

 

 「…シービー」

 

 「なに?」

 

  ルドルフが間を置いて話し出す。

 

 「燈馬の退学の件は本当なのか…?」

 

 「…事実だよ」

 

  私は年が開ける前、有馬記念が終わった次の日にトレーナーから聞かされた話だった。

 

 

 

  〜有馬記念後の次の日〜

 

 

 「な、なんで燈馬が退学に!?」

 

 「信じ難いことだけど、さっき理事長から言われたんだ。大阪杯で燈馬君が結果を出さなければ退学にするって…」

 

 「そ、そんな…」

 

  有馬記念が終わって次の日に私達はトレーナーの指示の元、トレーニングを行っていたのだけれど燈馬の姿がなかった。疑問に思った私はトレーナーに話を聞くとトレーナーからは信じられない話を聞かされた。チームのみんなも驚きのあまり言葉が出なかった。

 

 「────ッ!!」ガチャ!

 

 「ど、どこ行くのタイシンさん!」

 

 「決まってるでしょ!理事長に会いに行ってアイツの退学の理由を聞きに行くのよ!!」

 

  とタイシンは立ち上がって部室を出ようとする。するとトレーナーはタイシンを呼び止めた。

 

 「行っても無駄だよ、タイシンさん…」

 

 「なんで決めつけ「僕も理由を聞いたけど、教えてはくれなかったんだ」えっ…」

 

 「それどころか、チームのみんなが理事長に理由を聞いても理事長は教えてくれないと思う。例えそれが生徒会長であっても…」

 

 「そんなの…、行ってみないとわからないじゃない!!理事長がダメならたづなさんにでも「たづなさんも無理だよ」…!」

 

 「たづなさんも理由を答えることは出来ないって言ってたから」

 

  頼みの綱であったたづなさんでも理由を聞くことは出来なかった。何とか聞き出そうと試みたけど頑なに話すことはなかった。

 

 「それと燈馬君のことだけど、大阪杯までの間トレセン学園に来ることはないって。燈馬君は当時通っていた学校の方で通学するとのことだそうだよ」

 

 「…どういうことよ」

 

 「“接近禁止令”だよ。理事長が燈馬君にトレセン学園への通学、及びトレセン学園に所属しているウマ娘との接触を禁止するっていうものさ」

 

 「連絡も取れないの?」

 

 「…多分ね」

 

  タイシンは握っていたドアノブから手を離す。理由も聞かせてくれず、ただただ燈馬の退学まで待つことしか出来ないのかと悔しい表情を見せていた。

 

 「あの〜、少しいいですか?」

 

 「どうしたの、クリーク」

 

  重い空気の中、クリークが手を挙げる。

 

 「その、トレーナーさんは先程大阪杯までの間と仰られていましたけど、何故大阪杯なのですか?」

 

 「そ、それ…ライスも気になってた」

 

  確かにトレーナーは燈馬が来られないのは“大阪杯までの間”と言っていた。

 

 「もしかしてなんですけど、大阪杯が燈馬さんの退学を逃れるカギなんじゃないのでしょうか〜」

 

 「…どうなの」

 

  とタイシンがクリークの言葉に反応してトレーナーを見る。

 

 「…クリークさんの言うとおりだよ。大阪杯が燈馬君の退学を逃れる唯一のカギだ」

 

 「「「!!!」」」

 

  トレーナーの言葉にタイシン達は驚きの表情を見せた。

 

 「詳しく教えて」

 

 「大阪杯で燈馬君が結果を残せば退学を無くす、とのことだよ」

 

 「なによ、随分簡単じゃない。そんなの1着を取れば早い話じゃないの」

 

  とタイシンはトレーナーの言葉にあっけらかんとしていた。

 

 「それが簡単な話じゃないんだよ」

 

 「は?どういうこと?」

 

  タイシンを含めクリークとライスも疑問の顔をしていた。

 

 「ただ結果を出すだけじゃない。燈馬君は理事長の出す合格ラインに到達すれば退学は免れるんだよ」

 

 「合格ライン、ですか?」

 

  クリークの言葉にトレーナーは頷いた。

 

 「で、その合格ラインっていうのはなんなの?」

 

 「わからない。こればっかりは何を基準にされているかわからないんだ」

 

  確かに合格ラインがわかっていればその合格ラインを超えれるようにして大阪杯に挑めばいいだけ。合格ラインが分からない以上、私達は手を出せない。

 

 「(技術面かそれとも力の部分か…。何を見られているのか検討がつかないな)」

 

  理事長は何を見て燈馬を退学にすると決断したのか、その意図はなんなのか。何も分からない。

 

 「ねぇ、それって本当に理事長が言ったの?」

 

 「本当だよタイシンさん。これは理事長が「私は理事長が言ったとは思えないんだけど」ど、どういうこと?」

 

 「確かに理事長が本当に自分の口から言ったのだとすれば疑問に思う点があるね」

 

  と私はタイシンの言葉に賛同する。

 

 「疑問に思う点…?」

 

 「話が大雑把過ぎるっていうこと。燈馬を退学にするっていう一点張りは余りにもおかしい」

 

  普通なら退学にする理由くらい私達に教えてくれたっていいはず。燈馬との接近禁止令が出ているのであれば私達が燈馬に退学になる理由を言わなければいいだけの話。なのに燈馬だけではなく、私達にも教えないのは不自然過ぎる。

 

 「確かに理事長は燈馬君を退学にするっていうことをずっと言っていたね」

 

 「恐らくだけど、理事長は誰かから指示されてるんだと思う」

 

 「それって理事長が誰かから脅迫行為を受けてるってこと!?」

 

  とザワザワしだすチームメイト達。

 

 「それはないんじゃないかな。脅迫行為をされてるってことならそれこそ大事になるよ。警察やURAも動くことになるからね」

 

  脅迫紛いのことなら尚更大変なことになる。理事長が脅されてるとなるとトレセン学園の運営や存続の危機に関わってくる。それにレースの支障にもつながる。となると…。

 

 「理事長は恐らく合意の上で燈馬を退学にするって言ったんだと思う」

 

 「合意の上、ですか?」

 

  とクリークが私の話に疑問を持つ。

 

 「誰かが燈馬の退学を持ちかけて理事長が合意したんだと思う。何かしらの理由をつけてね」

 

 「では、その理由って言うのが…」

 

 「燈馬の退学取り消しにつながるんだと思う」

 

  クリークの言葉に私は大きく頷く。

 

 「さっきタイシンが言ってたように、恐らく燈馬の退学は理事長じゃなくて理事長に持ちかけた人が言ったんだと思う」

 

  恐らく理事長と面識がある人物。理事長はウマ娘を第一に考える人だから簡単に退学の話を承諾したとは思えない。何らかの理由で燈馬の退学を承諾したんだろうね。

 

 「となれば、その相手が誰なのか…」

 

  と考えていた時だった。

 

 

  ピリリリ、ピリリリ、ピリリリ…。

 

 

 「誰?こんな時に…」

 

  と私は携帯を見るに、私は大きく目を見開いた。着信元は“あの人”からだった。

 

 「どうしたの、シービーさん」

 

 「ううん、なんでもない。ちょっと外すね」

 

 「わかった」

 

  とトレーナーの許可を得て、外に出て私は電話に出る。

 

 「もしもし」

 

 『もしもし〜?オッハー!久しぶり〜!』

 

 「お久しぶりです。シンザン先輩」

 

  そう。電話の相手はトレセン学園卒業生のシンザン先輩からだった。

 

 『なんか大変なことになってるんだって〜?大丈夫?』

 

 「…そうですね、今のところは」

 

 『その様子だと大丈夫じゃなさそうだね』

 

  シンザン先輩は何かとトレセンの情報などを知っている。元生徒会長でもあったり、大学生でありながらURAの仕事をしていたりと凄い人物だ。

 

 『なんか燈馬ちゃんが退学させられそうになってるんだってね』

 

 「どうして知ってるんですか、って言ってもシンザン先輩ですからURAの人から聞いてますよね」

 

 『ううん。それ私が理事長に言ったの』

 

 「…え?」

 

 『だから、燈馬ちゃんの退学の話は私が理事長に言ったの』

 

  シンザン先輩の行っていることが理解が追いつかなかった。

 

 『まあ、今の燈馬ちゃんはトゥインクルシリーズに出る必要ないし出てるだけで見る気失せるし、イライラするのよね〜。だから、いっそのこと退学させようかなって』

 

 「…待ってください。そんな自分の私情みたいなことで燈馬を退学させないでください!!燈馬は今、大事な時期なんです!チームにも必要なんです!燈馬はこのチームのリーダーなんです!!」

 

 『じゃあなんでそのリーダー的存在の人が退学させられそうになってるのかな?』

 

 「それは…」

 

  言い返す言葉が出てこない。シンザン先輩の言うとおりだ。

 

 『何があったんだろうね〜?貴方なら知ってると思うよ。実際に見てたんだし』

 

 「実際に…」

 

  私は何を見てたんだ。一体何を…。

 

 『因みにだけど、彼女は気づいたみたいだよ』

 

 「彼女…?」

 

 『カネケヤキちゃん』

 

 「カ、カネケヤキ先輩…」

 

  カネケヤキ先輩は私達の元チームメイト。あの人は何に気づいたの。

 

 『まさか、忘れたなんて言わせないからね。貴方は一番近くであの子を見ていたのよ?あの子が変わってしまった瞬間も貴方は見ていたはず』

 

 「燈馬が変わってしまった瞬間…」

 

 『…これ以上言うとヒントになりそうだからここで区切らせてもらうわ。時間を取らせてごめんね、それじゃ』

 

  ツーツーツーツー…

 

 「…」

 

  通話の切れた携帯の電源を落としポケットに入れる。“燈馬が変わってしまった瞬間”というシンザン先輩の言葉が頭から離れない。

 

 「(燈馬は燈馬だ。どこも変わってなんていない)」

 

  私はそう否定しながら部室へと戻った。トレーナーからは今日は休みにすると言っていたのでそのまま寮へと戻った。

 

 

  〜回想終了〜

 

 

 「君から聞いた時は信じられないと思っていたが、まさか本当だったとはな…」

 

 「…」

 

  ルドルフがなぜ知っているのか、それはたまたまマルゼンスキーが理事長室に足を運んだ時に聞こえてしまったそうだ。マルゼンスキーは一目散に私のところに来て「理由を教えて!」とせがんできた。

 

 「(慌てるマルゼンスキーを見ていたルドルフ達が私達のところにやってきてマルゼンスキーが理事長の話をみんなに話しちゃって、広まったんだよね…)」

 

  本来ならチーム内で留めておくつもりだったんだけど、まさかまさかのマルゼンスキーが聞いていたのは予想外だった。まぁ彼女は後輩想いな優しいウマ娘だからね。退学とかの話を聞いちゃうとほっとけない性格なんだよね。

 

 「シービーは心当たりあるのか?その…、燈馬が退学になる理由というのは」

 

 「知らない(・・・・)。シンザン先輩は何の意図で燈馬を退学にするのか、検討もつかないよ」

 

 「そうか…」

 

  と私とルドルフは残りの昼食を食べて午後の授業に出た。けど私は燈馬の退学のことを考えていたので、あまり授業の内容は入ってこなかった。

 

 

  〜寮の部屋にて〜

 

 

 「では、私は先に寝るとするよ。君も余り夜ふかしするんじゃないぞ」

 

 「わかった。お休みルドルフ」

 

 「あぁ、お休み」

 

  と部屋の明かりを暗くする。私は机についている灯りをつけて最小限にまで暗くする。いつもならすんなり寝るんだけど、今日に限っては寝付けず眠気がくるまで本でも読もうかと小説を読んでいた。因みに今読んでるのは“歌舞伎”についての本。私は歌舞伎が好きでよく観に行く。そしていつか燈馬と歌舞伎デートに行きたいし、燈馬に歌舞伎の良さを伝えたいから。

 

 「(う〜ん、この本だと歌舞伎の良さはわかるけど魅力についてはちょっとイマイチかな。やっぱり劇場に連れてって、そこで解説しながらの方がいいかな〜)」

 

  と私は本を読み進めながらどうやって燈馬に歌舞伎の良さを伝えるか考えていた。

 

 「(…やっぱり実際に見せた方がいいよね。だったら最初は〜…)」

 

  と本を閉じて私がこれまで観てきた歌舞伎の演目を見る。やっぱり最初は世話物が一番いいかもね、わかりやすいし。

 

 

   パタン!

 

 

 「ん?」

 

  下から音がしたので見てみると本棚に置いていた本が倒れていた。

 

 「よいしょっと…!」

 

  私は椅子から下りて倒れた本をもとに戻していく。

 

 「あれ?これって…」スッ

 

  ふと一つのファイルに目がいく。そのファイルを抜き取りページを開くとそこにはトレーニングメニュー表があった。

 

 「(懐かし〜!これってまだチームが駆け出しの頃のやつじゃ〜ん!)」ペラ

 

  と私はファイリングされているトレーニングメニュー表を読み進めていく。懐かしいな〜、この頃は“燈馬が作ったトレーニングメニュー表”をもとに3人で頑張ってたんだっけ。時々、燈馬がメニュー表を作れずにいたときに同じメニューが出来るようにってカネケヤキ先輩と私がファイリングしたんだっけ。

 

 「(あの頃は楽しかったな〜。燈馬が中央のトレーナー達が考えつかないようなトレーニングを作ってきて、次はどんなトレーニングをするのかワクワクしてたんだよね〜!)」ペラ、ペラ…

 

  と懐かしさに浸りながら読み進めていく。

 

 「あれ?」

 

  と読み進めていくとあるトレーニングメニュー表を見たときに手が止まる。

 

 「このトレーニングメニュー表…、なんか普通(・・)だ」

 

  と次の日のメニュー表もそのまた次の日のメニュー表もまたまた次の日のメニュー表も…。めくっていくにつれてトレーニングメニューが普通になっている。

 

 「なんでなんだろ…。このメニュー表の日付は〜?」

 

  とメニュー表の日付を見る。日付は12月21日。次の日のメニュー表には12月23日と書いてあった。

 

 「(12月22日だけがない…。この日って何かあったかな…)」

 

  休みではなかったはず。それにこの時にはカネケヤキ先輩と私は既にシニア級に入っていた。となると…。

 

 「燈馬、だよね…」

 

  燈馬は今、シニア級に入ってるけど去年まではクラシック級だった。それを踏まえて考えると一つの答えが出た。

 

 「(“レース”だ…!)」

 

  読み返していくと所々日付が抜けているところがあった。ファイリングされていないメニュー表はなかったはず、無くさないようにその日に綴じていたから抜けはない。休みの時にはちゃんと休みの日付が記載されている。となれば、導き出されるのはレース。この頃は確か、燈馬がまだジュニアクラスの時だ。

 

 「(ジュニアクラスでこの時期のレースってなると…)」ペラペラ

 

  と再び読み進めていくと予定表が綴られていた。

 

 「(12月22日は…、“ホープフルステークス”か)」

 

  ホープフルステークス。ジュニアクラスのウマ娘が初めて出るG1の一つ。他にも“朝日杯フューチュリティステークス”や“阪神ジュベナイルフィリーズ”といったジュニアクラスだけのG1レースがある。ホープフルステークスは中距離レースの一つでクラシック級を想定されたレースでもある。

 

 「(ホープフルステークスは“希望”や“夢”に満ちたウマ娘達がそれを掴み取る為のレースだって…)」

 

 

  バタンッ!!!

 

 

 「あ…、あぁ…!…ぁああ!」プルプル

 

  持っていたファイルが手からスルリと落ちる。そうだ、そうだった。なぜ忘れていたんだ、なぜ覚えていなかったんだ。…違う、忘れたかったんだ(・・・・・・・・)。あんなにも頑張ったあの子が、“否定され続ける姿を”。あの子が変わってしまったことを私は否定したかったんだ。夢だと願ったんだ。現実だと思いたくなかったんだ。必死に願った、“もう一度戻ってきてほしいと”──────。

 

 「嫌だ…、嫌だぁ…!怖い…、怖いよぉ…」ガクガク

 

  流れ出るあの時の記憶。そして恐怖した────。

 

 

 

 

 

 

 

人があんなにも変わってしまうところを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜生徒会室・ルドルフside〜

 

 「シービー先輩は今日は休みですか?」

 

 「あぁ。何でも体調が優れないと言って学校を休んでる」

 

  次の日、起きるとシービーが布団に包まっていた。登校時間になっても起きなかったので起こそうとするも「今日は行きたくない。一人にさせて」と行って布団から出てくることはなかった。

 

 「それで、会長が言っていた見せたいものとは?」

 

 「あぁ、これなんだ」スッ

 

 「これは?」

 

 「トレーニングメニューが綴れたファイルだ。シービーの机近くに落ちていてな。シービーには申し訳ないが拝借してきたんだ」

 

  と私は机の上に一つのファイルを広げる。生徒会室にいるエアグルーヴ達がファイルを注視する。中にはトレーニングメニュー表が綴られていた。

 

 「凄いトレーニングメニューね…」

 

 「あぁ。このメニュー表を考えたトレーナーはとても凄腕のトレーナーなんだろうな」

 

  隣にいたマルゼンスキーがトレーニングメニューを見て驚きの声を出す。そのトレーニングメニューには走る為に必要なトレーニングや脚だけではなく、総合的に身体を全体的に鍛える為のトレーニングや自分達が見たことないようなものや聞いたことのないトレーニングメニューが書かれていた。

 

 「このメニュー表って燈馬の担当トレーナー君が作ったのかしら」

 

 「私もそう思ったのだが、このメニュー表を見てほしい」ペラ

 

  とページをめくり、ある日のメニュー表を見せる。

 

 「これは…?」

 

 「これって…」

 

 「みんなはこれを見てどう思う」

 

  とエアグルーヴ達は眉を潜めたり、顎に手を添えたりとみんな反応は様々だ。

 

 「なんというか〜…」

 

 「普通(・・)だな」

 

  と向かいに座っていたブライアンが腕を組む。

 

 「さっきまでのトレーニングとは違い、あまりにも普通過ぎる。やる気でもなくなったのか?」

 

  とキッパリ言ったブライアン。

 

 「やる気はあると思うよ。だけど、確かにブライアンの言うとおりこのメニューはあまりにも普通だね」

 

 「フジの言うとおりだ。…ただ、この変わりようはなんだ?」

 

 「私もエアグルーヴと同じ意見だ。このメニュー表の日付“12月23日”からの変わりように疑問が浮かぶんだ」

 

  必ず何かあったに違いない。でなければこんなにもトレーニングメニューに差が生まれないはずだ。

 

 「これ、誰か知ってる人いるのかな?」

 

  とフジキセキが呟いた。

 

 「燈馬のオグリキャップ達にも聞いたが知らないそうだ。トレーニングの変わりようも」

 

 「じゃあ、シービーちゃんは知ってるのかしら」

 

 「シービーか…」

 

  シービーなら何か知っているのかもしれないな。帰ったら彼女に聞いてみるか。

 

 

 

  ガチャ!!

 

 

 

 「やっほー、みんな〜!ひっさしっぶり〜〜〜!!」

 

 「「「「「し、シンザン先輩!?」」」」」

 

  生徒会室のドアが急に開き、見てみるとそこには元生徒会長のシンザン先輩がいた。

 

 「もうシンちゃんたら、ちゃんとノックしないとだめでしょう?…久しぶりね、ハヤヒデちゃん」

 

 「か、カネケヤキ先輩…。お久しぶりです…」

 

  シンザン先輩の後から入ってきたのは燈馬の元チームメイト、カネケヤキ先輩だ。

 

 「みんなして何してるの〜?」

 

 「そ、それは〜…」

 

  とシンザン先輩が近づいてくる。

 

 「見せて見せて!」

 

  とシンザン先輩が机の上にあるメニュー表を見る。

 

 「ッ!」

 

 「ほ〜〜?な〜〜〜るほっどね〜〜〜」ニヤ

 

  とシンザン先輩はニヤニヤしながら私の方を見る。

 

 「これ、誰の?」

 

 「…シービーのものです。シービーの机の近くに落ちていたので彼女のものかと」

 

 「シービーは?今どこ?」

 

 「今は寮にいます。今日、学校自体を休んでまして」

 

 「ふ〜〜〜ん、そっか〜〜」

 

  とシンザン先輩は私が普段座る生徒会長の椅子に座り、足を組む。

 

 「シービーは思い出したんだねぇ(・・・・・・・・・)

 

 「思いだした…?」

 

  シンザン先輩はうんうんと頷きながら髪をイジる。

 

 「シンザン先輩、何か知ってるんですか?このメニュー表について…!」

 

 「───────知ってる」

 

 「「「「「!!!」」」」」

 

 「まあ、私より彼女が一番知ってるんじゃないかな?ねぇ、カネちゃん?」

 

  カネケヤキ先輩を見ると先輩はとても暗い表情をしていた。

 

 「話したほうがいいんじゃない?この子達にも知っておかないといけないと思うよ」

 

 「─────そうね、わかったわ」

 

 「じゃ、じゃあ!!」

 

  カネケヤキ先輩はドアを閉めて空いた席に座る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全ては2年前、“ホープフルステークス”でのことです」




 読んで頂きありがとうございます。

  次の話も書いていますので、すぐに更新出来るよう頑張ります。それでは次回でお会いしましょう。




  それでは、また〜
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