ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 遅くなってごめんなさい。それはそうと皆さんゴールデンウィークですね、自分もですがコロナウイルスには気をつけて外出しましょう。




 それでは、どうぞ


貸し

  〜阪神レース場・シンザンside〜

 

 「おかえり燈馬ちゃん。そして、ごめんなさい…」

 

  ターフを去っていく燈馬ちゃんの姿を見て、アタシは安堵と申し訳無さでいっぱいになっている。燈馬ちゃんが昔みたいに夢を持って走ってくれることを思い出してくれたこと。そして、燈馬ちゃんを守ってあげられなかったという後悔。アタシはずっと燈馬ちゃんを守っていたつもりでいた、けど実際は燈馬ちゃんを苦しめていて、逃げて、逃げて、逃げ続けてたんだってことに。アタシは…。

 

 「はぁ…。アタシって本当にだめね。言うだけ言って何も出来ない。元生徒会長と聞いて呆れるわ」

 

 「私もよシンちゃん。私は元チームメイトなのに、シノンちゃんに何もしてあげられなかった…」

 

  これからアタシ達はどうすればいいのだろうか…。

 

  ピリリリ、ピリリリ…。

 

 「理事長?…『ピッ』もしもし」

 

 『シンザンか!今、何処にいる』

 

 「今は阪神レース場にいます。カネケヤキと一緒に」

 

 『なら話が速い。燈馬のところに行ってトレセンへ戻るよう伝えてくれんか』

 

 「え、アタシ達が…ですか?」

 

  カネちゃんと顔を見合わせる。でも、アタシ達は…。

 

 「…アタシ達は、燈馬ちゃんと会う資格なんてありません。アタシ達にはもう『まだそんなことを言っているのか!!』!」ビクッ

 

 『君は、君達は彼を支えると宣言したはずではないのか!それもたった一度助けられなかっただけで会う資格がない?笑止千万!寝言は寝てから言え!!』

 

  携帯から理事長の怒号が聞こえる。カネちゃんも聞こえたのかビクリと身体を震わせた。

 

 『確かに君達のやっていたことは彼を追い詰める行為そのものだ。だが、彼に何もしないで彼の前から立ち去ろうなど彼が何を言おうとこの私が許さん!必ず彼に会え!』

 

 「「は、はい…」」

 

 『…さっきの言葉は聞かなかったことにする。私の伝言、忘れるんじゃないぞ』ブツ

 

 「……」ツーツー…

 

  理事長との通話が切れる。そっか、アタシ達はまた…。

 

 「…行こ、シンちゃん」

 

 「え…」

 

 「理事長の言うとおりだと思うの。私達もちゃんとシノンちゃんと向き合わなくちゃいけない。あの子がああなったのは私達のせいでもあるんだから」

 

 「そう、だね…。よし、行こう。燈馬ちゃんのところへ」

 

 「えぇ」

 

  理事長、何から何までありがとうございます。

 

 

  〜控え室〜

 

 

 「ここが、燈馬ちゃんの控え室だね」

 

 「そうね」

 

  …よし、覚悟は決まった。アタシはもう、逃げない。

 

 

  コンコン

 

 

 「…あの、今回ライブには出な…ッ」ピタ

 

 「燈馬ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 「…それで、何の用だ?」

 

 「燈馬ちゃん…、その…」

 

 「「ごめんなさい!!!」」バッ

 

 「──────は?」

 

 「アタシ達、ずっと燈馬ちゃんのこと守ってたと思ってた。けど、実際は燈馬ちゃんのことから逃げて保身に走ってた。本当にごめんなさい」

 

 「私もシンちゃんと同じ。シノンちゃんを支えるって言ったのに全然支えになってなかった。本当にごめんなさい」

 

 「あー…」

 

  ギシッという音が聞こえる。恐らく椅子に座ったのだろうか。

 

 「とりあえず顔上げて、どういうことか説明してくれるか?」

 

 

 

  〜燈馬side〜

 

 「…つまり、俺を守れなかったことに謝りに来たと」

 

 「「はい…」」

 

 「自分達がやってきたことは“逃げ”で“寄り添い”ではないと。それをたまたま聞いていた理事長に指摘されてここに来たと」

 

 「「はい…」」

 

 「はぁ〜〜…」

 

  成程。大体理解した。要はシンザン達がやっていたことは俺を守ることではなく俺を切り捨てようとしていたということ。そもそも俺は守られていたのか…、全然気づかなかった。シンザンはよく喧嘩してた俺を止めには来ていたが。

 

 「というより今更どうこう言おうがもう遅いしな。俺はもう気にしてないし、それにあの頃は俺もまだまだ精神的に弱かったと思う」

 

 「だけど、シノンちゃんを変えてしまったのは私達が原因なんだよ?私達は許される立場じゃないの…」

 

 「…」ウ~ン

 

  結構深刻な話になってきたな。シンザンが思い詰めるっていうことはよっぽどになるな。

 

 「(過ぎた話をぶり返すのはあまり好きではないんだかな…)」

 

  過去の話をしたところで所詮過去は過去。過去は何も変わることはない。変えることは出来ないのだから。

 

 「…もう、いいんじゃないのか?その…、俺が言うのも何だが“時効”だろ?時効」

 

 「シノンちゃん、私達にとっては時効では済まされないの…」

 

  そ、そうなんだな…。

 

 「私達は燈馬ちゃんを変えてしまった原因なんだし、そんな燈馬ちゃんを切り捨てようとしてたんだから…」

 

 「…」

 

  反省してるなら反省してるでいいんだが…。まぁでも、こんな機会は滅多にないか。俺は顔を伏せて目を閉じる。

 

 「…正直な話、助けてほしかったよ」

 

 「「!!」」

 

 「あの時、自分がどういった存在なのか見失っていた時に教えて欲しかった。“俺はウマ娘と同じ希望を与える存在”なんだと教えて欲しかった」

 

  俺はこの人達と出会えたからこの業界に足を踏み入れた。こんなにも“輝かしい場所”を教えてくれた人達から────。

 

 「…これが俺の話、俺の気持ち」

 

 「「……」」

 

 「この話はもうおしまいだ。だが、どうしても許しをこいたい、罰が与えられないと気が済まないっていうのなら…」

 

 「「…」」ゴクリ

 

 「俺のファンとして応援してくれないか?数少ないファンとして寄り添ってくれないか?」

 

  俺は“優しい”と、“優し過ぎる”と言われるかも知れない。それでも構わない。というより俺はこういうやり方しか知らない。それに、俺をこの舞台に招いてくれた人達を無下にすることは出来ない。

 

 「…燈馬ちゃんそんなことで「そんなことで、なんて言うなよ?俺のファンで居続けるのは結構至難なことだからな。罵詈雑言はあるし他のファンから標的にされることだってある。それでも俺のファンとして居続けられるかどうか…。実際にいるぞ?俺のファンとして居続けるバカなガキ共が。果たしてアンタ達はそんなバカなガキ共のようになれるかな?」ッ!」

 

  さて、どう出る?

 

 「…そんなの決まってるじゃない。折角貰ったこのチャンスを無駄にはしないわ!」

 

 「えぇ。今度はもう二度と同じ誤ちは侵さないってことをここに誓うわ」

 

  シンザン達の表情は明るくなっていた。正直これでいいのか俺にはわからんが暗い空気を脱したのだから、まぁ良しとするか。

 

 「そんじゃ帰るか」

 

  俺は荷物を纏めて部屋を出る。

 

 「そういえば燈馬ちゃん、ライブ出ないの?」

 

 「行くところがある。だから出ない」

 

 「見たかったな〜、シノンちゃんのライブ」

 

 「まあ、そんなところじゃないだろうけどな」

 

 「それって、どういうこと?」

 

  俺はシンザン達の方へ向き直る。

 

 「アナタ達に頼みがある」

 

 

 

 

  〜武天學園、理事長室・史子side〜

 

 

 「「本当に申し訳ございませんでした」」

 

 「何度も言ってるだろ、もういいってね。そろそろその下げる頭をどうにかしな。逆にイライラするさね」

 

 「す、すみません…」

 

  大阪杯の前日、一本の電話があった。相手はトレセン学園の理事長秋川やよいからだった。内容は去年あった燈馬の件についてだった。

 

 「それで、用件はそれだけかい?ならとっとと帰んな、コッチも色々と忙しいのさね」

 

 「…あの、ご無礼を重々承知の上でお聞きしたいのですが、“怒らない”のですか?」

 

 「どういう意味だい?」

 

  秋川の隣にいる緑の帽子を被った駿川たづなが頭を上げて話を続ける。

 

 「許されざることをしたのは事実です。罰則があって当然です。なのに何もないというのは…」

 

 「癪に障る、てかい?」

 

 「そ、そういう訳ではないのです!ただ…」

 

 「ハァ…。ならこれならどうだい?」

 

  とアタシはこの2人にある提案をする。

 

 「貸しを二つ作る。そんじゃそこらの貸しじゃないどデカイ貸しさね。それで手を打ってやる、いいね?」

 

 「「は、はい…!」」

 

  これでアタシのやりたいこと(・・・・・・)が一つリスクなく出来る。後はもう一つをどうするか…。

 

 「今日はもう帰んな。アンタ達にも仕事があるんだろ?」

 

 「失礼します」ペコ

 

  と秋川と駿川は一礼して部屋を出る。

 

  ピリリリ、ピリリリ…。

 

  アタシはパソコンに目を向けた時、私用の携帯から電話が鳴った。着信者は…、これまた懐かしい奴からかい。

 

 「なんだい?お前さんがアタシの携帯にかけるタァ随分と珍しいじゃないかい」

 

 『久しぶり史ちゃん。元気そうで良かった』

 

 「それで用件はなんだい、URAの取締役社長さん?」

 

 『もう、おちょくるのは辞めて欲しいわ。……“大阪杯”について話があるの』

 

 「大阪杯?今日のレースのことでかい?」

 

  今日の大阪杯、クソガキ(燈馬)が前代未聞のタイムを叩き出してレースを終わらせた。

 

 「何かあったのかい?」

 

 『史ちゃんはもう気づいてると思うけど、大阪杯の後ファン達がURAに大阪杯の再レース(・・・・・・・・)するよう抗議してきたの』

 

 「再レースだって?何でさね、アイツが勝ったんだからそれでいいだろうに」

 

 『ナリタブライアンさんの4連覇阻止した燈馬さんへの当てつけよ。ファンは不満で一杯、納得出来ないって』

 

 「納得出来ないって…、随っ分と我儘な連中だね〜…」

 

 『私達もファンの我儘には付き合える程、優しくはないわ。自分達の不満の為だけに再レースは認められないって。だけど…』

 

 「だけど?」

 

 『これを見てほしいの』

 

  とメールで何かが送られてくる。これは…。

 

 「なんだいこれ。アンタが撮ったのかい?」

 

 『違うわよ…。“シノンがレース前にドーピングをした”っていう訳の分からない写真がURAに送られて来たのよ』

 

  鞄から薬の粒のようなものを手にとって写真を撮っているものだった。

 

 「…アンタこれ、どう見てもお菓子のやつじゃないのかい?ほら口の中でスーッてする…『ミン[ピー]ア?』そうそう。どっからどう見てもそれじゃないのかい?」

 

 『うん、私もどっからどう見てもそれに見えるわ…。けど、この写真がネットに流出してるのよ』

 

 「ふ〜ん」カタカタ

 

  アタシはパソコンでその写真を生徒会長(石井)に送るとするとすぐに返事が返ってくる。どうやらその写真はアイツのことをよく思ってない連中が撮ったものらしく写真に映っているものはそのミン[ピー]アというのが判明した。それからネット上でもその写真が出回っててURAに再レースよう騒いでいるようだ。

 

 「やっぱり、そのミン[ピー]アってやつのようだね。ネットに詳しい生徒にやらせたら“そうだ”って帰ってきたよ」

 

 『史ちゃんの生徒達って本当に凄いね…』

 

 「そんなことはどうでもいいさ、アンタはどうすんのさ」

 

 『記者のインタビューに出るつもり。それでも抗議の声が止まない時は…、燈馬さんと史ちゃんには迷惑をかけるけど…』

 

 「その答えはアイツに聞きな。アイツが出るってんなら再レースすればいいさね。ただし…」

 

 『わかってるわ。無条件で、なんてことは言わない。燈馬さんの出す条件は必ず飲むわ』

 

  もし仮に再レースになったときのアイツの条件は分かりきっているがね…。

 

 『また何かあったら連絡するわ、忙しい時にごめんなさいね。今度奢らせてね』

 

 「楽しみしてるよ」ピッ

 

  全く訳の分からない連中ばかりだ。チッたぁ大人しくならんのかね。

 

 「世の中の連中はどうしてこうも思い通りにならないと騒ぎ立てる連中が多いんだろうね…」

 

  お前さんもそう思わんかね…、ねぇ…。

 

 「…ハッ。アイツ(・・・)に聞いたところで何も返ってることないのにね」

 

  アタシは今後のことを考えながら残りの仕事を片付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜数日後〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『続いてのニュースです。先日行われた大阪杯が3週間後にもう一度行われることとなりました。“何故すぐに行わないのか”というファンの声に対しURA取締役社長は「全員が万全な体制で行うためだ。公平を期す為のものでもある。貴方達ファンがウマ娘達の体調も考えているのですか?」と回答。ネット上では不満の声も募っており、URAはシノンの味方をしているのではないかという声も多数集まっています。今年の大阪杯はどういった結果になるのでしょうか』




 読んで頂きありがとうございます。

 今回は短めにしました。変に長く書こうとすると変な感じに終わると思ったのでここで区切らせて頂きました。次回もよろしくお願いします。


 それでは、また〜
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