ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 自分でもわかってます…、投稿頻度が余りにも低すぎると……。少しずつペースアップしないといけないな〜……。

  出だしから暗いの良くないな。よし!





  気を取り直して。それでは、どうぞ!


始めの一歩

 

  ──────私は昔から縛られることが嫌だった。自分がやりたいように気の赴くまま、自由な生活を送ってきた。周りからは“自由奔放”なんて言われてたこともあったけど特に気にしなかった。気分が乗らないことは誰だってある。そんな時にトレーニングとかしても意味はないって思ってた。やるからには楽しくしなきゃしんどいトレーニングだって乗り越えられない。身勝手や我儘と言われようと私はこうだっていう信念を持ってた。まぁそれがあって色々と“衝突”しちゃったんだけどね。でも彼は…、彼だけは違った。彼と私は似ているのかもしれない。縛られない生き方や強い信念。ブレない意志。そして───────“出会い”。そう、これは…。

 

 

(ミスターシービー)(燈馬)の出会いの物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  〜トレーナー室〜

 

 

 「ミスターシービー。今まで何処で何をしていた」

 

 「え〜っと〜…」

 

 「なんとかいったらどうなんだ?」

 

  私はトレーナー室でチームトレーナーに呼び出された。その人物は私の所属するチームトレーナー。G1ウマ娘を何人も出してきたベテラントレーナーだ。

 

 「もう一度言う…、何処で、何をしていた」

 

 「屋上で昼寝してた〜…なんて…」アハハ

 

  ダンッ!!

 

  と話すとチームトレーナーは机を思いっ切り叩いた。

 

 「ッ!」ビクッ

 

 「いい加減そのヘラヘラ顔をどうにかしろ、気に入らん」

 

 「ご、ごめ「あと、何で俺に対してタメ口を利いている」…すみません、でした」

 

 「ミスターシービー、今日の朝俺が言ったことを復唱しろ」

 

 「…授業が終わったらすぐトレーナー室でミーティング、その後はアップをしてトレーニングをする、です…」

 

 「そうだな、だがお前は何をしていたって?」

 

 「昼寝…です」

 

 「ハァ…」

 

  チームトレーナーは大きく溜息をつき、椅子から立ち上がる。

 

 「もういい、帰れクズ。そんなやつが居てはチームを引っ張るだけだ。それとその机、お前が直しておけ。いいな?」バタン

 

 「…」

 

  シン、と部屋が静まり返る。私はトレーナーに言われた通り机を畳む。机の板はさっきので凹んでしまっているため使い物にはならなかった。直そうにも直せなかったので空き教室の物を持ってくることにした。

 

  当時の私は自由奔放な性格が裏目に出てしまい、契約してきたトレーナー達とは折り合いが合わず、契約しては切られ、契約しては切られを繰り返していた。今いるチームは私が“三冠バ”であるから契約したもので決して“ミスターシービー”として契約したものじゃなかった。

 

 「(契約、また切られるのかな…。もしそうなら、お母様になんて言われるかな…。はぁ…)」

 

  私の母はトレセン学園出身でその上、URAに携わる仕事の為、嫌でも情報が入ってくるそう。私の学校生活やレース結果、そしてトレーナーとの契約状況なんかも耳に入っている。なので、最近お母様から「トレーナーさんと上手くやれてる?」と電話が来るようになった。上手くやれてる、と応えてはいるけどそろそろボロが出ると思っている。

  持っていた机を空き教室に置き、新しい机を持っていこうとした時、反対側から一人の人物が歩いて来るのが見えた。

 

 「(あれって確か、風間燈馬…だっけ?)」

 

  トレセン学園で初の男子生徒と噂されてる生徒だ。ルドルフやマルゼンとも仲が良かったんだっけ、それと生徒会長の人とも。本人はと言うと私に目もくれず、私の横を通り過ぎていく。

 

 「ね、ねぇキミ!」

 

  私は思わず呼び止めた。彼は立ち止まって振り返る。

 

 「キミってさ、もしかして風間燈馬だよね。1年の」

 

 「…アンタは?」

 

 「私はミスターシービー。中等部3年だよ、よろしくね」

 

  と自己紹介する。すると彼は何も言わずに立ち去ろうとする。

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ!!」タタ!

 

 「…」スタスタ

 

 「ねぇ、キミはどうしてトレセン学園に来たの?誰かから誘われて来たの?」

 

 「…」スタスタ

 

 「レースはしたの?まだなら私とレースしない?もちろん負けるつもりはないけどね」

 

 「…」スタスタ

 

 「え、え〜っと…おーい、聞こえてる〜?」フリフリ

 

  何を聞いても返してくれない。試しに目の前で手を振っても何も反応を見せない。

 

 「…」ピタ

 

 「うわ!」ピタ!

 

 「…何?」ハァ…

 

  と彼は立ち止まって面倒くさそうな顔をして私の方を見た。

 

 「やっとこっち見てくれた。もう、女の子を無視するのはダメだよ!」プンプン

 

 「…」スタス…

 

 「ストップスト〜〜〜ップ!!私の話を聞いてよ!!!」

 

  また何処かへ行こうとする彼を止める。当時の私は今の男の子ってこんなにも無愛想なのかなと思っていた。

 

 「騒がしいヤツだな。少しは静かに出来ないのか?」

 

 「キミが無視するからでしょ!もうッ!」プク~

 

 「……うざ

 

 「今“うざ”って言ったよね?絶対言ったよね!!?」

 

  一応私、キミの先輩にあたるんだけど。

 

 「それより、それ」

 

  と彼は私の右手を指す。

 

 「それ持ってずっと付いてこられるの、凄い嫌なんだが」

 

 「え、あ…」

 

  自分の右手を見てみるとチームの部屋に持って行くはずの机を持ったままだった。

 

 「それを持って付いてこられる身にもなれ」

 

 「アハハ〜、ごめんね?じゃあすぐ戻してくるー!!そこで待っててー!!」

 

  と私は駆け出して机を戻しに行った。

 

 

 「も〜〜〜〜うッ!!待ってて言ったのに〜〜〜〜〜!!!」

 

  帰って来ると彼の姿はなかった。

 

 

  〜数日後〜

 

 

 「フンフフ〜〜ン♪」タンタタン♪

 

  私はスキップをしながら屋上へと向かう。今日はデリバリーして頼んだピザが届いたから屋上で食べることにした(たづなさんの目を盗んでこっそりと)。

 

 「今日は“4種のチーズをふんだんに使ったモッツァレラピザ”に“炭火焼きビーフとニンジンのピザ”、“海鮮たっぷり!シーフードピザ”。そして新発売の“炭火テリヤキモッツァレラシーフードマヨマシマシハイパーミックスピザ”!これ食べたかったんだよね〜!」

 

  とルンルン気分で屋上の扉を開ける。晴天の空と気持ちいい風が私を出迎えてくれる。やっぱり屋上は私のお気に入り場所だ。

 

 「さ〜てと、まずはレジャーシートを敷いて…」バサ!

 

  と制服のポケットからレジャーシートを取り出し屋上の真ん中に敷いていく。

 

 「よし!それじゃあ早速〜『ガチャ!』ん?」

 

  と屋上の扉の開いた音がする。普段、屋上は私ぐらいしか利用者はいないはずなんだけど…。

 

 「(一体誰なんだろ…、って)あ〜〜!!!」

 

 「あ?」バタン

 

  と屋上の来訪者はまさかまさかの彼だった。

 

 「キミ!何であの時帰ったのさ!!私ちゃんと待っててって言ったじゃん!!」

 

 「…誰、お前」

 

 「キミさ、もしかして寝たら記憶無くなる人?冗談でやってても笑えないよ?自己紹介もしたよね?」

 

 「……あぁ、あの時机を持ってた意味わからんウマ娘か」

 

 「あれは事情があって持ってた訳で普段から持ってる訳じゃないからね。変な感じで覚えないでね」

 

  としっかり反論する。

 

 「…それでキミは何しにここに来たの?」

 

 「飯」スッ

 

  と右手に風呂敷を包んだ弁当箱を自分の顔の隣まで持ってくる。

 

 「へ〜…。あ、そうだ!なら、一緒に食べない?私もこれからお昼なんだ〜!!」

 

 「」クル

 

  と彼は私に背中を見せ、屋上の上を見る。そして、少し屈んで──────。

 

 「ストップ!どこに行くのかな〜」ガシ!

 

 「離せ」ググ

 

 「せっかく女の子が、しかも現役ウマ娘が食事に誘ってるんだよ?こんな機会滅多に無いんだよ?カワイイ女の子が誘ってるんだよ!?それなのに離せって断る人いる!?」ググ

 

 「喧しい。さっさと離せ、俺は一人で食べる。あと自分でカワイイとか言ってなんとも思わんのか?」ググ

 

 「思ってるよ///!!自分で言っとって今、もの凄い恥ずかしいんだから///!!!」ググ

 

  と5分くらい押し問答が繰り広げられ、最終的に彼が折れた。

 

 「…はぁ、わかった。一緒に食ってやる、だから離せ」

 

 「ホント!!?やったー!それじゃあコッチコッチ!」グイッグイッ

 

 「…おい、引っ張るな」

 

 「や〜だ!離すと絶対に逃げるの目に見えてるもん。それに前も言ったでしょ?私はキミと話がしたいって!」

 

 「…」ハァ…

 

  と私は彼をレジャーシートへと招き入れ、昼食を取ることにした。

 

 「それじゃあ、いただきます!」

 

 「…いただきます」パカ

 

  と彼が弁当箱の蓋を開けて中身が見える。

 

 「わぁ〜!すご〜〜い!!」キラキラ

 

  彼の弁当箱は色とりどりの野菜と肉、そして定番の玉子焼きなんかも入っていて栄養満点の弁当だった。

 

 「これ誰が作ったの?」

 

 「俺」

 

 「そっか〜、キミが作ったんだ。キミって結構料理上手…え?今なんて?」

 

 「あ?俺が作った」モグモグ

 

 「嘘!だってキミ、弁当なんて作ること出来ないって思ってた…」

 

 「シバくぞ」モグモグ

 

  私はデリバリーしたピザの箱を開き、その一切れを口に運ぶ。最初に食べたのはモッツァレラピザ、癖のあるチーズの味が口一杯に広がってとても美味しい…んだけど。

 

 「……」チラ

 

 「ん…」モグモグ

 

  気になる。やはり弁当と言ってもどんな味なのか気になってしょうがなかった。特に玉子焼き。

 

 「ねぇ」

 

 「ん?」モグモグ

 

 「一口頂戴?」

 

 「ゴク…。は?」

 

 「私のピザあげるからさ、ね?お・ね・が・い♡」

 

  と可愛くねだる。彼は若干引き気味ではあった。引かないでよ、私だって恥ずかしいんだから!

 

 「…無理。自分のを食え」

 

 「…ケチ!」

 

 

 

 

 

  〜また数日後〜

 

 

 「今日は〜、バーガー♪炭火焼きテリヤキバーガー♪」フンフン

 

  と今日もまた屋上へと向かう。今回はバーガー、それもテリヤキ。一番美味しいんだよね〜♪

 

 「さ〜て、今日は…お?」ガチャ

 

  と扉を開けると昨日もいた彼が壁にもたれながら弁当を食べていた。

 

 「ヤッホー、今日もここでお昼?」

 

 「…まぁな」モグモグ

 

 「今日はね、見て見て!期間限定の“炭火焼きテリヤキ10段バーガー”!!これ手に入れるのに苦労したんだ〜!」

 

 「…そうか」モグモグ

 

  と興味無さそうに弁当を食べ進める。

 

 「今日も凝ってるね〜、今日も手作り?」

 

 「まぁな」モグモグ

 

 「いいな〜、私は料理とかあんまりしたことないし、それにお弁当なんて食べたことないんだよね」

 

 「…」モグモグ

 

 「(ちょっと冷た過ぎない?)」

 

  何日か彼と一緒に昼食を取っているけど、彼は凄く冷たかった。ルドルフは「そうなのか?私はそうは思わないが」って言ってたのに、全然違うじゃん。

 

 「(もうこれ以上話しかけても意味なさそうかな。軽くあしらわれたりするだけだし、もっと色んなこと聞きたかったな~…)」

 

  と私はレジャーシートを敷いてハンバーガーを黙々と食べ始める。

 

 

 

 

 「おい!ミスターシービーはここか!!」バン!

 

 「あ、先輩…」

 

  昼食を食べ、レジャーシートの上で寝転がっていたら私が所属しているチームの先輩がやって来る。

 

 「お前、今何時だと思ってる!ミーティングはもう始まってるんだぞ!」

 

 「え…」

 

  時間を見てみると12時40分。でもミーティングって昼休みじゃなかったような…。

 

 「でも先輩、今日のミーティングは練習前だって「バカ野郎!トレーナーから連絡があっただろう!“今日の午後から出張でトレーニング前ミーティングが行えなくなった。なので今日の昼、12時30分にトレーナー室に集合”と言われただろう!」

 

 「いや、そんな話聞いてな「因みにお前と同じクラスの奴はお前にそのことを伝えようとしたら突き飛ばされて追い返されたと言っていたぞ」ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?そんなことしてないですよ!」

 

 「お前の御託はトレーナー室で聞いてやる。いいから来い!」グイッ

 

 「痛ッ!ちょっと髪を引っ張らないでください!痛いですって!」

 

  髪を無理矢理引っ張られながらトレーナー室へ連れて行かれる。

 

 「た、助け…!」

 

 「…」

 

  入口近くで腰を下ろしていた彼に助けを求めようとするも、彼は耳にイヤホンを付けていた。

 

 

 

 

  〜トレーナー室〜

 

 

 「トレーナーさん、連れて来ました」

 

 「御苦労」

 

 「いっ!たたた…」

 

  トレーナー室に投げ込まれた私は引っ張られていた髪が傷んでいないか確認する。

 

 「今からシメられるってのに随分と余裕な態度してるじゃないか、あ?ミスターシービー」パキパキ

 

 「あ…と、トレーナー…」

 

  座っていたトレーナーが指を鳴らしながら近づいてくる。

 

 「待って…、待ってよ!そもそも私ミーティングの変更なんて聞いてないし、それに「うるさいな〜、それってアンタがこの子を突き飛ばして話を聞こうとしなかったからでしょ?」そんなことしてないっ!!」

 

 「わた、しは…ただ、シービーさんに…」シクシク

 

  と先輩に泣きつく私の同級生がいた。その言葉にチームメイト全員が私を睨む。

 

 「俺の大事な担当を泣かすたァ良い度胸してんじゃねぇか、ミスターシービー」

 

  じわりじわりと近づいてくるトレーナー。

 

 「(なんで…、なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないの?私、何もしてないのに…。なんで)」

 

  トレーナーが右手を握り締め、大きく振りかぶり私の顔へと向かってくる。もうダメだと思い目を瞑る。その時だった。

 

 

  ガラガラッ!

 

 

 「ミスターシービーって奴はここにいるのか?」

 

 「ぇ…」

 

  教室の出入り口のところで男の子()が立っていた。

 

 「なんだお前。引っ込んでろ、邪魔だ」

 

 「急用があって来た、それだけだ。それで?ミスターシービーはどこだ?」

 

 「聞こえなかったのか?邪魔だ、引っ込んでろと言ってるんだ。出ていけ」

 

 「お前こそ聞こえなかったのか?“急用だ”って言ってるんだ。耳ついてないのか?」

 

  彼とトレーナーが睨み合う。

 

 「ちょっとアンタ、さっきから何よその態度。この人のこと知らないの?学園屈指のベテラントレーナーよ。顔も広いし、この人を敵に回すとアンタ、ここには居られないかもよ?」

 

  という先輩。このトレーナーの腕は学園トップクラス、それに他のトレーナーからも信頼があり、発言力もある。過去にこのトレーナーに逆らったトレーナーもいたが、1週間もしない内にトレセン学園から去っていった。そして、このトレーナーに逆らったら何をされるかわからないとトレーナーは勿論、私達ウマ娘の間でも噂になっていた。けど、彼の態度は変わることはなかった。

 

 「そうか、なら勝手にすればいい。お前達が何をしてこようとも俺は俺のやることをするだけだからな。それと、…コイツは借りてくぞ」グイッ

 

 「おい、ま────」バタン!

 

  と彼は私の手を引き、部屋を出る。

 

 

 

 

 「ね、ねぇキミ!私に用って『バサ!』え?」

 

 「忘れ物だ」

 

  と彼が私の目の前に差し出してきたのは私のレジャーシートだった。

 

 「これだけの為に…。なんで「それと」?」

 

 「あのチームは抜けろ。お前には合ってない」

 

 「え…、それってどういう…」

 

  と彼が見せてきたのは一本の動画だった。

 

 「これって、“菊花賞”…?」

 

 「そうだ。それとコイツ、知ってるか?」

 

  と動画のある部分を拡大する。

 

 「この娘って、先輩に泣きついてた娘!?」

 

 「それとコイツもだ」

 

  と別の娘を見せられる。次、また次と他のウマ娘を見せられる。そのウマ娘達はどれも私のチームにいた娘達ばかりだ。

 

 「ね、ねぇこの娘達を見せてどうしたの?私と何の関係が「コイツらはお前に恨みを持っている連中達だ」え?」

 

 「そして、あのトレーナーは特にお前に恨みを持っている」

 

 「そんな…、私、恨みを持たれるようなことなんてしてないのに…」

 

 「恨みなんてものは少しのことで持たれやすい」

 

 「どういうこと?」

 

 「まずはあの担当達についてだ。アイツの担当達はお前との走るレースで全敗している、お前のデビュー当時からな。それからクラシック、特に一番有望株だったお前の同級生の奴は三冠を獲れる程の逸材とも言われていて期待値も高かった…が、お前が三冠を獲ったことで一気に下落した。それはあのトレーナーも同じだ。お前に負けたことで地位が落ちていき、自分の立場が危ういと感じたんだろうな」

 

 「で、でも、それと私に恨みの何の関係が…」

 

 「さっきも言っただろう、“少しのこと”で恨みを持たれやすいって。用は三冠を獲ったお前を恨んでるんだよ。本来は『俺達が獲る物を横取りした』とかそんなところだろう。力を持つ者が恨まれるのはこの世界じゃあ当たり前のことだ」

 

  なら私が三冠を獲らなかったら、こんなことには…。

 

 「ただ、勘違いするなよ?」

 

 「え?」

 

 「お前が三冠を獲ったことで恨む奴はたくさんいる。だがそれと同時にお前を祝福する奴もいる、それを忘れるな」

 

 「祝福…」

 

  私が初めてレースに勝った時、G1を獲った時、三冠を獲った時たくさんのファンや仲間が祝福の声をくれた。私はとても嬉しかったのを今でも覚えている。

 

 「決めるのはお前だ。今のまま恨みを晴らすための道具に成り果てるもよし、あそこを抜け出し新しいところで自分を研いていくもよし。全てはお前が決めることだ。自由に走りたい(・・・・・・・)のならな」

 

 「!」

 

  私は…、私は───────!

 

 「抜ける…。私、抜けるよあのチーム」

 

 「そうか、なら他のところにで「そして、キミに着いていく」は?」

 

 「聞こえなかった?私はあのチームを辞めてキミに着いていくって言ったの。キミといると面白そうだから」

 

 「…俺は面白くもなんともないぞ?」

 

 「それは私が決めることだから。私はキミなら私を自由に走らせてくれそうだからね。だから着いていくことにしたの!」

 

 「…なら勝手にしろ」ハァ

 

  と彼が歩き出したので私も着いていく。

 

 「ねぇ、キミはトレーナーいるの?いるならトレーナーはどんな感じの人なの?チームとかは?」

 

 「騒がしいヤツだなお前は…。トレーナーはいる、まだ2年目って言ってたな。チームは今作ってる」

 

 「そうなんだ〜、今作ってるんだ〜。─────え?」

 

  え?え?ちょっと待って…?

 

 「なんだ?」

 

 「聞き間違いだったかな…、今“作ってる”って言った?チームを」

 

 「言ったが、何か問題でもあるのか?」

 

 「い、いや、そのトレーナーって2年目って言ったよね…、だったらチームトレーナーにはなれないはずなんだけど…」

 

  トレーナーがチームを作るにはある程度の実績を出さないといけない。そうでないと理事長からの許可が降りないのだ。

 

 「そのトレーナー、なんていう人?」

 

 「──────。」

 

 「…ごめん、知らないなー」

 

  名前を聞いてみたけど聞いたことない人だった。名簿には載ってるだろうけど実績はそんなになかったような…。

 

 「でもやっぱりチームなんて「誰がトレーナーのチーム作ってるなんて言った」え?」

 

 「俺が言ったのは俺の(・・)チームを作るって言ったんだ」

 

 「キミの、チームぅう!?せ、生徒がチーム作るってこと!?」

 

 「なんだ、何か都合が悪いのか?」

 

 「い、いや…生徒がチーム作るなんて聞いたことないからさ…」

 

  トレーナーがチームを作る…じゃなく、彼が彼のチームを作るということらしい…。……ん?ちょっと待てよ?

 

 「ねぇ、一つ聞きたいんだけどさ、チームメンバーって誰?」

 

 「俺と、お前」

 

 「2人だけ!?ていうか私達だけなの!?もっといないの?5,6人くらいとか!」

 

 「いない。いたら苦労しねぇよ」

 

 「だよね!?」

 

  もしかして呼び込みからスタートするの?まぁでもチーム人数の最低条件は3人以上だから実質あと一人か…。あれ?でも、彼ってチームメンバーの一人に入るの?入らないんだったら実質私だけ??ならあと2人???え??えぇええええ????ヤバいどうしよ、頭痛くなってきた………。

 

 「深く考えるな、成るように成る」

 

 「キミはもうちょっと深刻に考えてね!?チーム作るって言ったって私初めてなんだよ!?」

 

 「安心しろ、俺も初めてだ」

 

 「知ってるよ!!ていうか安心すら出来ないよ!!!」

 

  大丈夫がなぁ〜…、不安でしかないよ…。

 

 「ここにいても時間が過ぎるだけだ、行くぞ」

 

  と彼が歩き出し、私も後ろを着けていく。

 

 「どうするの?片っ端から声かける?」

 

 「それは無理だ、軽くあしらわれてそれで終わり。誰も相手にしない」

 

 「ならどうするのさ!アテのある娘とかでもいるの?」

 

 「─────いる」

 

 「ほらやっぱりいないじゃ……って待って?いるの!?アテのある娘!」

 

 「だから今、向かってるんだろうが。少しは考えろ」

 

  普通気づかないよ、アテがある娘なんて。

 

 「じゃあ誰なの、そのアテの娘」

 

 「“カネケヤキ”」

 

 「カネケヤキって…、カネケヤキ先輩!?無理無理無理!!だってあの人────。」

 

 「騒がしい奴だな…。行くぞ」

 

 「ちょ、ちょっと!待ってよ〜〜!!」タタタ

 

  と新しいメンバーを増やしにカネケヤキ先輩のところへ向かった。

 

  カネケヤキ先輩のチーム加入は彼の説得により入ることとった。不安ばかりなことだったけど、それからチームの実績も上がっていき、そこからメンバーは増えていってようやくチームとして登録されることになった。時間はかかったし、それまでに色んなことがあって大変だったけど、ようやくスタートラインに立てたような気がした。

 

 

 「ねぇ“燈馬”」

 

 「なんだ、“シービー”」

 

  あれから私は彼のことを燈馬と呼ぶようになった。そして彼も私のことをシービーって呼んでくれるようになった。最初はずっとミスターシービーってフルネームで言わてたんだけど、今はお互い名前で呼んでる。

 

 「私ね、燈馬に着いてって良かったって思ってる」

 

 「急にどうした、気持ち悪いぞ」

 

 「酷いよ燈馬。そこはどう致しましてって言うべきじゃないの?」

 

 「よくわからん奴だな、お前は」

 

  と燈馬は少し呆れた表情をしながらストレッチを続ける。私は燈馬に着いて行って大きく変わった。まずは戦績、ざっくり言うとルドルフとのレースで勝てるようになった。今までは背中にすら追いつけなかったのが、燈馬とのトレーニングを重ねて行くに連れ、次第に追いついて行き、勝てるようになってきていた。次に周りの連中達。私の契約を切ったトレーナー達がもう一度再契約しよう、引き抜きをしようとしてくるようになった。勿論、全部お断りなんだけれどね。だって燈馬といたほうがとっても楽しいから。そういえば、私を虐めていたチームは世間から冷たい視線が送られるようになって今は解散したんだとか。まぁ自業自得だよね、私には関係ないけど。

 

 「ねぇ燈馬」

 

 「今度はなんだ?」

 

 「学園で一番強いチームになろうね!」

 

 「……そうだな」

 

  と私達は学園最強のチームになれるよう奮闘した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  だけど、私達は学園で最も最悪のチームと呼ばれるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  悪質なクレーム、度重なる嫌がらせ、部室荒らし…、そして燈馬の不祥事。根もない噂を流され世間からは最悪のチームと呼ばれるようになった。いや、正確には“燈馬がいるから私達のチームは最悪のチームなんだ”と燈馬への批難が殺到した。

 

  私は何も出来なかった。燈馬に手を差し伸べてあげることも出来なかった。あの時、燈馬は私に手を差し伸べてくれたのに私はそれが出来なかった。

 

  燈馬は変わってしまった。あの日から…、あのホープフルステークスで変わってしまった。トレーニングもレースでの価値感も勝利に対する気持ちも…、全部………。私にとってあの時の燈馬は思い出したくもないくらいの出来事だった。

 

 

 

 

  カネケヤキ先輩が卒業と同時に燈馬はこの学園を出た。理由は後になってお母様から聞いた。“停学”だった。燈馬は度重なる厳重注意を無視し続けた結果、1年間の停学とレース出走禁止令が出されていた。だけど燈馬は私達に強くなって帰ってくると言っていたはずなのになんで停学のことを言わなかったのか分からなかった。燈馬がいなくなった後、私はチームのリーダー代理としてチームのみんなを引っ張っていった。オグリや私が基本レースに出ていたから割合としてはトレーニングが多かった。トレーナーも燈馬がいなくなってからか頻繁に顔を出してはメニューを考えたりと前とは大違いだった。

 

  あの時の私は一番必死だったと思う。レースや勉強もそうだけど、何より…。

 

 

 

 

あの頃の燈馬を忘れることになりより必死だった

 

 

  そして今、その忘れていた記憶が甦ってきた。私は燈馬にどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。




 読んで頂きありがとうございます。投稿速度が遅すぎる事に関しては本当にすみません。不定期更新ですが、これからもよろしくお願いします。



  次回もお楽しみに!


  それでは、また〜
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