〜自宅・シービーside〜
「私、燈馬にどういう顔すればいいのかな…。どう接すればいいのかな…。わかんないよ……」ギュッ
ベッドの上で体育座りをしながら毛布に包まっている。昔の日の夢を見ていた。
「あの頃は楽しかったな…。ハプニングの連続で破茶滅茶な日々、燈馬に苛め抜かれたトレーニング、ちょっとしたサバイバル…。もうあの頃に戻れないのかな…」
そんなことを思っていた時だった。
「お待ち下さい!まずは何ゆえここに…!」
「今は誰も会いたくないと言われているのです!なのでここを通すわけには…、あ、あの〜〜〜〜!!」
「(何だろう、外が騒がしいような…)」
「おい、そこにいるのか。シービー」
この声って────────。
「燈馬…?」
〜燈馬side〜
「ど、どうしてここに…!」
最近、シービーが来てないって言ってたから家に来たら案の定ってところか。
「どうしてって言われても最近お前が学校来てねぇから説得してくれませんか?ってたづなさんに言われたんだよ。そこに居るんだろ?さっさと出てこい。それとも俺がこの扉蹴破って引きずり出してやろうか?」
「お、おおお待ち下さい!お嬢様は今、精神的に不安定でして…「そりゃそうだろ」え?」
「こんな部屋ん中閉じ籠もってりゃあ不安定にもなるだろ。外にほっぽりだして外の空気吸わせりゃあ溜まったものも吐き出るだろうよ」
「し、しかし…」
「…もういい、出てこねぇんなら蹴破ってでも引きずり出すぞ、いい「来ないでっ!!」あ?」
「来ないで…!私は燈馬に会う資格なんてない…」
「…何いってんだ?コイツ」
「「「……」」」フルフル
俺は執事達を見ると全員が首を横に振った。何が会う資格なんてないだ。
「いいからさっさと出てこい。顔見せるだけでいいから」
「ダメ…。お願い…帰って……」
「……」ハァ ガシガシ
と俺は頭を掻いた。何があってこうなったんだよ、ったく。
「…しょうがねぇな、よっこいしょ」ドカ
と俺はシービーの部屋の扉を背中に預けて座り込む。
「なんかあったのか?話があるんなら聞いてやるぞ?」
「……」
話しかけても返答が来ない。本当にどうしたんだ。
「お前、さっき俺に会う資格ないなんて言ってたがお前、俺に何かしてたか?俺は何も知らないんだが」
「……れなかった…」
「なんだって?」
「燈馬を、助けられなかった……。ホープフルステークスで私は燈馬を助けられなかった」
「あー、そのことか。もう2年前の話だぞ、まだ引きずっていたのか」
「まだって…、アレのせいで燈馬は変わっちゃったんだよ!軽く捉えないで!」
「軽くたってな、オイ…」
俺が言うのもなんだがもう既に過去の話でもあるし、そう深刻に考えられるとなんて声をかければいいかわからん。
「とりあえず出てこいよ。外に出りゃあ気持ちも吹っ飛ぶと思うぞ」
と声をかけるも反応がない。
「……」ハァ
このままズルズル引きずっていても停滞するだけか…。ちょっとばかし、荒く行くか。
「もう一度言うぞシービー。俺はあの時のことは一切気にしてなんかない。お前が背負う必要もないし、お前が気にすることなんてない。だからさ、出てこいよシービー」
今の言葉がシービーに対して正解かは分からない。けど、これだけは分かる。“シービーは悪くない”。いや、シービー以外の連中達もだ。あの時は俺の精神面が弱かったせいだ。あれぐらいのことで心が揺らぐなんて情けない話だ。あれ以上にキツイことがあったのにも関わらず─────。
「違うの…、私のせいなの。私が燈馬の
「人生、ねぇ…」
俺はその言葉を聞いてある事を決意した。そして、俺は…。
〜トウショウボーイside〜
「……ふぅ」カタ
仕事が一段落つきペンを置く。まだまだやる事はたくさんあるがノルマは達成している為、少しの小休憩することにした。
「今日は天気が余り良くないね…」シャ
とカーテンを開ける。空は曇り空で今でも雨が降りそうな感じだった。
「さて、今日は良いお茶が入っているし、あの子も誘えばきっと…「大奥様!!」?」
と部屋に秘書の女性が慌てて入ってくる。
「どうしたのです?そんなに慌てて」
「お嬢様が…、シービーお嬢様が…!!」
私は秘書からの話を聞いた瞬間、急いで部屋を飛び出した。向かう途中、ゴロゴロという音に続きザァアアアア…という雨の音が聞こえた。
〜⏰〜
「離して!ねぇ燈馬、離して!!」
「シービー!!!」タタタ
雨の中、娘の声が聞こえ向かうとそこには両手を片手で縛られ、ズルズルと引きずられている娘とその娘を引きずっている燈馬さんの姿があった。
「燈馬!お願い、離してよ!!!」
「燈馬さん!何があったのですか!?娘が何かしたのですか!?」
「……」ズルズル
燈馬さんに話しかけても彼は何も返してくれなかった。雨が激しく降る中、行き着いた先は家の小さなプールだった。
「燈馬さん、今日は本当にどうしたのですか?何をするおつもりで…」
「……こうする」
と燈馬さんは娘をそのままプールへと投げた。
バッシャアアアアン!!!
「シービーッッッッ!!!!」ダッ!
と娘を助けに行こうとすると燈馬さんが制止し、彼がプールの方へと近づき、プールの中にいた娘を襟を持って引き上げた。
「よぉ、頭冷えたか?バカ野郎」ザバァ…
「なんっ…、ゲホゲホ…」
娘を宙ぶらりのまま彼が話し始める。
「お前、さっきなんて言った?『人生無茶苦茶にした』って?ふざけた事言ってんじゃねぇよ。俺がお前のせいで人生無茶苦茶になる程、俺の人生は軟じゃない」
「燈馬さん…?」
「この際だ、ハッキリ言ってやる。いつ“助けて”って言った。俺がいつお前達に助けてと言った。答えろ」
「そ、れは…」
「俺が助けてくれって言って動くのなら分かる。けど俺がお前達に助けを求めたことはなかったよな?なのに、お前が勝手にしておいて助けられずに俺の人生を無茶苦茶にした?ふざけんじゃねぇぞ!」ブルブル
と彼の手が震えている。寒さなのか、自分の感情が表れているのか、或いは──────。
「そもそもだ。お前がそうなるまで疲労させたのも、そういう風に気を使わせたりさせた俺が悪いんだよ」
「ち、ちが…、燈馬のせいじゃ「全部俺のせいなんだ!!」…」
「お前達には今までたくさんの迷惑をかけた。これからもかけ続けるかもしれない…。だから、昔のことは忘れろ。悪いのは全部俺なんだ。お前達は何も悪くない…。俺がお前達を巻き込んだんだ」
「…でも、燈馬は苦しんでた…。助けを求めてた…!」ポロポロ
と彼は娘を降ろし、娘は座り込む。彼は娘と同じ目線に合わせ娘を抱き寄せた。
「あんなことで苦しむわけないだろう。それにあの時も言ってただろ、あんなのは言わせておけばいいんだ。助けてほしいときは助けてくれって言うしお前が抱え込む必要はないんだ。それにお前をそうやって抱え込ませるようにさせた俺が悪いんだ。だからお前のせいじゃない」
と彼は娘を傘を持つ執事へと連れて行き、私の元へ戻ってきて膝をついた。
「この度は娘さんを追い込むようなことをしてしまい申し訳ございませんでした。全ては自分の責任です。自分がちゃんと問題を解決していたらこんなことにならなかったと思います。全て自分のせいであり、全て自分の責任です。本当に申し訳ございませんでした」スッ
と燈馬さんは膝をついたまま手を置き、頭を下げた。
「と、燈馬…」
「……」
雨に打たれながら頭を下げ続ける彼。私は口を開いてメイド達を指示を出す。
「メイド達、娘を家の中に入れて至急お風呂の準備を。シービー、今すぐお風呂に入りなさい。風邪を引いてはいけませんからね」
と娘を家の中に入れ、私の傘を差していた秘書から傘を受け取り秘書も家の中に入れた。そして今、外にいるのは私と彼の2人だけ。彼は姿勢を崩していなかった。
「燈馬さん、顔を上げてくださりませんか?少しお話ししましょう」
と彼の頭を上げさせる。彼は頭を上げ私と目を合わせた。
「娘が悩んでいたことは私も知っていました。どうにかして娘の悩みを解決してあげたい、そう考えて日々娘に話しかけていました。そして今日、娘が部屋から出てきたと聞いてホッとした瞬間、まさか娘がずぶ濡れにされるなんて思いもしませんでした。燈馬さん、もっと他にやり方があったはずです。なぜ、このようなやり方をしたのか理由を教えていただけませんか?」
と聞いた。そして燈馬さんが口を開いた。
「自分にはこの方法しかないと思ってこのようなやり方をさせていただきました。間違いであるということは理解しています。ですが、俺はシービーに対してやったことに後悔はしてません」
「!!!」
彼の発言に思わず手に力が入る。
「嘘、ですよね。貴方ならもっと他の手段があったはずです!なのに何故!」
「さっきも言ったように、俺にはああいった方法しか出来ません。他の手段も思いつきませんでした」
「…」
「付き合い方を変えるというのならそれでも構いません。俺はそれぐらいのことをアイツにしたのですから」
普段はこんなことを言わないし人を、特に女性やウマ娘に対して手荒いことはしないはず…。それなのにどうして。
「…いえ、付き合い方を変えるつもりはありません。これからも娘のことをよろしくお願いします。ただ、一つお聞かせしたいことがあります。よろしいでしょうか」
「…なんでしょうか」
「“これからも”迷惑をかけ続ける、と仰っていましたがあれはどういう意味でしょうか」
「俺は世間体から色々な人に嫌われている人間です。そういったことを考えると前みたくチームに迷惑をかけることになります。今のトゥインクルシリーズファンは何をするか分かったものではありませんから」
「そういった意味で捉えてよろしいのですね」
「────
「わかりました。ではこの話はおしまいにしましょう」
と話を切り上げる。正直な所、まだ納得のいっていない部分もある。追求したいところですが、彼は必ずはぐらかす。理由は定かではありませんが絶対に何かあるはずです。それが分かればいいのですが、彼はそういった隙は見せないでしょう。となれば分かる時に話をしてもらう、これしかありません。
「貴方も雨に打たれて身体が冷えているでしょう。どうぞ屋敷に入って身体を温めて下さい。服は屋敷の中にある乾燥機で乾かしますので」
「ありがたいことではありますが、お気持ちだけ受け取っておきます。俺は今から行かなければならないところがありますのでここで失礼させていただきます。本日は本当にすみませんでした」スッ
と彼はずぶ濡れのまま立ち上がり、頭を下げて帰っていった。
「私もシービーのところへ行かなければ行きませんね」
と彼の背中を見送ったあと、急いで屋敷に入り娘のところへと向かった。
〜⏰〜
「シービー?」ガチャ
「あ、お母様…」ブオ~
と部屋に入ると娘はメイドに髪を乾かしてもらっていた最中だった。
「身体の方はどう?体調とかは?」
「お風呂に入ったから身体は寒くないよ。体調も今は大丈夫」
「なら良かったわ」
とりあえず娘に何もなかったことに一安心。見たところ痣もなさそうなので良かった。
「燈馬は?」
「彼ならさっき帰ったわ。行くところがあるって言って」
「そっか…」
と少し悲しげな表情をする。
「シービー、教えてくれませんか?さっきまで燈馬さんと何があったのか」
私は娘からさっきまでの話を聞いた。彼の人生を無茶苦茶にしたと言ったら急に彼が入ってきて腕を捕まれ引っ張り出されたと。そこから今に至るそう。
「…ねぇ、お母様ならどうしてた?私と同じ状況ならどうしてた?」
と一通り話し終えた娘から私ならどうするのかと聞いてきた。私は娘の近くに行き、櫛を取って髪をとかす。
「そうね…、私も貴方と同じことをしていたかもしれないわ。チームメイトがそんな風になっているのをただただ見ていることは同罪に値する。けどねシービー、燈馬さんを助けられなかったからって燈馬さんの人生が無茶苦茶になんてならないわ。助けられなかったのなら、次そういったことになったときに次こそ助けてあげられるようにするべきだと私は思うわ」
もう二度と、大事な人を失わないように─────。
「これはあくまで私の考えだから、貴方は貴方の思うようなやり方をすればいいと思うわ」コト
と櫛を机に置き、娘の肩に手を添える。
「過ぎたことは仕方ありません、ですがそれを引きずっていてはいけません。次また失敗しない為にどうするべきかを考える必要があります」
「でも、それでも助けられなかったら…?」
「みんなの手を借りるのです。知恵を振り絞り、力を合わせて助けるのです。…と言っても貴方はこのやり方は似合ってはないけどね」
「ど、どういうこと!?」
クスリと笑う私に娘は驚く。
「誰が貴方を育てたと思ってるの?貴方の好き嫌い、性格なんてぜ〜んぶ知ってるし、それに貴方は私の娘なのよ?私の血を受け継いでて、“縛られることを嫌う”のだから。貴方は貴方の思うようにやればいいと思うわ。ね?」
私と娘は少し似ている。自由な部分や縛りを嫌う部分などなど。だからこそ、娘にはノビノビとしていてほしい。自由な生き方をしてほしい。そう願っている。
「…ねえ、お母様。私決めたよ」
「そう、なら頑張りなさい」トン
考え込んでいた娘が顔を上げて晴れ晴れとした表情を見せる。その顔を見て私は娘の肩を優しく叩く。これでまた一つ、娘が成長したことを祈って─────。
「(さて、問題はあの子ですか…)」
彼が言っていた“これからも”という言葉、前みたくチームのみんなに迷惑をかけると言ってはいたが果たして本当にそうだろうか。何かある、これは間違いない。だが、何が起こるかまでは分からない。
「(燈馬さん、貴方は一体何が起こるのかしっているのですか?)」
私の心にはそのことしかなかった。
〜数日後、トレセン学園にて。トレーナーside〜
「おっはよー!!!」ガラガラ
「ん?あれ!?シービーさん!やっと来てくれたんだ!」
「シービーさん!」
「「シービー先輩!」」
部室の扉が勢い良く開けられ誰だろうと思っていたらなんと数日間トレセン学園に出てきてなかったシービーさんだ。
「やあやあ、みんなごめんね。何日も顔を出さずに」
「いやいやそんなことないよ!体調の方は大丈夫なの?」
「あー、うん。大丈夫大丈夫!」
「良かった〜…」
シービーさんが元気そうで良かった。これからのトレーニングに支障がないようにしないとね。
ガラガラ
「…ん?どうしたそんなに騒いで」
とシービーさんの次に入ってきたのは燈馬君だった。
「どうしたも何もシービーさんが帰ってきたんだよ!喜ばしいことだよ!」
「……」
燈馬君は一度シービーさんを見て僕を見た。
「トレーナー、先にトレーニングに行っててくれないか?こいつと少し2人で話がしたい」
「え、い、いいけど…。どうしたの?」
「少しな」
と燈馬君はシービーさんを見つめたままだった。
「…わかった、それじゃあ後で来てね。みんな行こうか」
と僕はチームのみんなを連れてレース場へと足を運んだ。
〜燈馬side〜
「…行ったな。それで、言いたいことがあるって言ってたが…、何だ?」
昨日、家に帰ったときにシービーから連絡があった。2人きりで話がしたいと。
「燈馬ってさ、私や他の人達が困ってたら手を差し伸べてくれるよね?」
「さぁな、そんなことしてたか?」
「してるくせに。まぁいっか」
とシービーは俺のもとへ近づいてくる。
「なんだ?」
「だからさ、私決めたの。燈馬が勝手に助けてくれるから私も勝手に燈馬を助けることにしたの」
「は?何いってんだ?」
「燈馬はなにふり構わず勝手に助けてくれる。なら勝手に燈馬を助けても問題ないよね?」
ホントに何言ってたんだコイツ。勝手に助けるだの何だの、全く…。
「何言ってるのかわからんが、まぁ戻ってきたんならちゃんとトレーニングしろよ?何日もトレーニングしてねぇんだからな」
「私も何言ってるかわかんないけどね〜!」
コイツ、ホントに何が言いたいんだ…。
「それじゃあ行くぞ、トレーニング」
「は〜い!」ダキ!
とシービーは元気よく俺に抱きつく。
「抱きつくな」
「や〜だ♡」ギュ~
とトレーニング場まで離れなかった。
「そういえば、次はどのレースに出るの?天皇賞春?」
「いや、俺が出るのは──────。」
読んで頂きありがとうございます。
投稿頻度が遅いのは申し訳ございません。不定期ではありますが暖かく見守ってくれると嬉しいです。
それでは、また〜