ウマ男 新たな歴史を創る者   作:アフターヌーンティー

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 それでは、どうぞ


悪魔

  〜トレセン学園・燈馬side〜

 

 「最後になりますが、ここ最近トレセン学園付近で暴力団らしき人物が彷徨いています。夜までトレーニングや野外トレーニングをするのは構いませんが、そういったときは必ず一人にならず複数人もしくはトレーナーさんと一緒にいること。自分の身が危ないと感じた時はすぐに寮に戻りトレーナーさんか寮長、教員もしくは警察に必ず報告してください。それではホームルームを終わります。皆さん、お気をつけて」

 

  ザワザワ…ザワザワ……

 

 「どうしよう〜、今日野外トレーニングなのに〜…」

 

 「私、今日のトレーニング辞めとこうかな…」

 

 「ねぇ〜今日、一緒に帰らない?なんか怖くってさ…」

 

 「うん、すぐ寮に帰ろっか」

 

  とクラスメイト達がザワザワしながら教室を出て行く。

 

 「ねぇ燈馬君、ちょっといいかな?」

 

 「ん?スズカか。どうかしたのか?」

 

  帰る用意をしている最中に隣の席のスズカから声をかけられる。スズカは少しソワソワしていた。

 

 「なんだ、そんなにもソワソワして。さっきの話を聞いて怖くなったのか?」

 

 「…燈馬君は怖くないの?」

 

 「全く。時間が経てば警察とかが解決してくれるだろ。それまでトレーニングは自粛だな」

 

  というとスズカは少し悲しそうな表情をする。

 

 「まさかとは思うが今日トレーニングしようだなんて言わねぇよな?」

 

 「!?」ビク!

 

  とわかりやすいくらいの反応を見せるスズカ。よくあの話をされた後でトレーニングをしようと思ったな。

 

 「止めとけとまでは言わないが今日は素直に寮へ戻った方がいいかもしれないな。下手に外出してカッ攫われでもしてみろ。連絡はつかないし、自分がどこに居るかの情報も教えることが出来なくなるからな」

 

 「…」シュン

 

 「落ち込むな。トレーニングなんて室内でも出来る。ただ外に出る時は団体で行動しろってだけでトレーニングはするなって言ってるんだ。けど、お前はどこ行くか全くわからんからな。お前は下手に外出するな」

 

 「そ、そんなことないよ!時間になったらちゃんと寮にもどってるもん!」

 

 「寮に戻るまでの過程を言ってるんだ。聞いたぞ?お前、この前軽く神社まで走ってきますって言って普段生徒達が使ってる神社じゃなくて5kmくらい離れたところまで走ってったらしいじゃねぇか。んで門限ギリギリになってフジに軽く怒られたんだろ」

 

 「だ、誰からそれを…」

 

 「フジとアマさんとエアグルーヴ」

 

 「エアグルーヴまで…」

 

 「それに骨折治った後のウマ娘がそんなところまで走るな。途中で折れたりしても誰も気づかないぞ」

 

  スズカの骨折は正月辺りで治ったというのは聞いていた。ただ医者もいつまた折れるか分からないから走るときは慎重に、とも言っていたそうだ。

 

 「す、スズカ…、いる?」

 

 「?ドーベル、どうかしたの?」

 

  教室の入口付近でドアに隠れてメジロドーベルが顔を覗かせていた。スズカはメジロドーベルのもとへと歩いていく。

 

 「約束の買い物。ほら、この前言ってた尻尾のトリートメント」

 

 「えぇ、覚えているわ。新しく販売されてるトリートメントだよね」

 

 「うん、そのことなんだけど…、どうする?今日やめとく?」

 

 「う〜ん…」

 

  とスズカが顎に手を当てて考え込んだ。

 

 「(これは下手に首を突っ込まない方がいいな)」ガタ

 

  と息を殺してその場を立ち去ろうとする、が。

 

 「ねぇ燈馬君、お願いがあるんだけど買い物についてきてもらってもいい?」

 

 「……」

 

  スズカがくるりと振り返り俺と目が合う。

 

 「タイキ達と行ってこい」

 

 「タイキは今日、補習に行ってる。フクキタルも一緒に」

 

 「エアグルーヴは空いて「エアグルーヴは今日、生徒会で会議があるからって今日はいない」…」

 

 「スピカのメン「みんなはそれぞれ用事があるって」…」

 

  よりにもよって全員いねぇのかよ。

 

 「なぁ、それって日にち変えたり出来ねぇの?」

 

 「出来るのは出来るけど…」

 

 「新発売のは今日までだし…」

 

  と2人が顔を見合わせる。しょうがねぇ。

 

 「分かった分かった。ついて行くよ」

 

 「…!ありがとう!!」パァア

 

 「…!私今から準備してくる!」タタタ

 

  と2人の表情が明るくなる。俺はトリートメントだけだろうし、そんなにも長くはないだろうとそう思っていた。

 

 

 

  〜ショッピングモール〜

 

 

 「ねぇこれなんていいんじゃない?」

 

 「う〜ん、それだとコッチがいいんじゃない?」

 

  案の定だった。目的であったトリートメントを買い、そろそろ帰ろうかと思っていた矢先、2人が「他のお店も回りたい」とショッピングモール内にある店に入っていった。

 

 「(この石ころみたいなのの何がいいんだ?)」

 

  とピンク色の石を手に取る。何処からどう見ても普通の石にしか見えない。

 

 「スズカ、それいいと思う!」

 

 「ホント?ドーベルも似合ってるよ!」

 

  と2人は俺の隣で会話を弾ませていた。

  俺達のいるところはコスメショップというところに来ている。装飾品やらなんやらがわんさか置いていて俺からすればさっぱりだ。

 

 「(校長が言ってたな、女性の買い物は長いって。全くそのとおりだよ)」

 

 「ねぇ燈馬君。もしかして…楽しくない?」

 

  とスズカがこちらに顔を覗かせる。メジロドーベルも若干ではあるが少し悲しそうな表情をしていた。

 

 「何が?」

 

 「だって燈馬君を色んなところに連れ回してるような気がして…。もしかして、楽しくないのかなって」

 

 「…そんなわけないだろ。実際こういった店に入ったことがないだけだ。それに今日はお前達の気が済むまで付き合うつもりだ。何処へ行こうとついて行くよ」

 

 「それだと、私達が申し訳無い感じがするよ…」

 

 「いいんだ。今日はめいいっぱいハメを外せばいい。買いたい物があるなら好きなだけ買うといいし、行きたいところがあるなら好きなだけ行くといい。今日は楽しめ」

 

 「燈馬君がそういうなら…」

 

  と2人は商品棚に目を向けて選び始める。俺は2人から離れ店の外にあるベンチに腰掛け、2人の様子を見ていた。

 

 「(さて…)」

 

  と俺は携帯を取り出し触るフリをしながら周りを見る。

 

 「(完全につけてきてるな。数的にも20人辺りか)」

 

  自動販売機のところや他の出店、物陰といったところに怪しい人物達が俺を見ていた。それに加え買い物客に紛れ、俺達をつけている連中がチラホラ見えた。恐らく委員長の言っていた連中達か、或いはそれ以外か。どちらにせよ、必ず接触する時が来るはず。相手をしてもいいが問題はスズカ達がいること。スズカ達を巻き込むようなことはしたくない。

 

 「ね、ねぇ…」

 

  と声のする方を見ると目の前にメジロドーベルが立っていた。

 

 「ん?どうした?買いたいものは買えたか?」

 

 「うん。お陰様でいいのが買えた。それよりもさ…、その…覚えてる?私のこと」

 

 「メジロドーベルだろ?あのメジロ家の令嬢の」

 

 「そういう意味でじゃなくて…、ほら昔、助けてくれたでしょ?私のこと」

 

 「…覚えてるよ。あの時は大変だったな」

 

  ガキの頃だったか、昔メジロドーベルが誘拐される事件があった。当時の俺はそれ程まで関心はなかったのだが、たまたまメジロドーベルが誘拐される現場に居合わせていた為、その場で誘拐犯をノシてメジロドーベルを助けたことがあった。その時でも余り目立ちたくなかったから俺は助けるだけ助けてその場から姿を消した。まぁその後はメジロ家にバレたんだけどな。そんなこんなでメジロドーベルを含めメジロ家の連中…というよりメジロマックイーン以外とは面識がある。と言ってもそれっきりメジロ家には行ってないんだけどな。

 

 「あれからは大丈夫なのか?」

 

 「大丈夫…、といってもあれから男性や人付き合いが怖くなっちゃって…」ストン

 

  とメジロドーベルが俺の隣に座る。

 

 「無理もねぇよ。あんなことあったら誰だって怖くなるさ。お前だけじゃねぇよ」

 

 「どうにかしないと、て思ってるんだけど上手く行かなくて…。私、ずっとこのままなのかなって…」

 

  とメジロドーベルが俯く。

 

 「地道にやればいいんだよ」

 

 「え?」

 

 「地道にやれば自ずと結果が出てくる。最初は挨拶とかでいいんだ。下手に話そうとすれば焦るのはお前だ。だから最初は挨拶とかでいい。そこから一言二言会話をしていけばいいんだ。無理強いしたって何も変わることなんてないからな」

 

 「それで、私は変われるのかな…」

 

 「変われるさ。変わりたいっていう気持ちがある限りはな。今だって俺と話せてるんだぞ?大丈夫さ。それに怖くなったらお前には手を差し伸べてくれる奴がたくさんいる。スズカにエアグルーヴ、タイキにフクキタル。それからメジロ家の奴ら。焦んなくていいんだよ」

 

 「うん…!」

 

  とメジロドーベルは大きく頷いた。するとメジロドーベルは急にモジモジし始める。

 

 「あ、あのさ…今更なんだけど、…燈馬って呼んでいい?私のことはドーベルって呼んてほしい…」

 

 「いいぞ。“ドーベル”」

 

 「燈馬…///」

 

  とメジロドーベル改め、ドーベルが赤面していた。

 

 「何イチャイチャしてるの?燈馬君、ドーベル?」ゴゴゴ

 

 「す、スズカ!?いや、これはイチャイチャじゃなくて!」アセアセ

 

  と買い物から帰ってきたスズカが禍々しいオーラを放っていた。

 

 「ふ〜ん、へぇ〜。あれがイチャイチャじゃないんだ。だったら何?」

 

 「名前で呼んでくれって言ったから呼んだだけだ。それ以外なにかあるか?」

 

 「それがイチャイチャしてるって言いたいの!」プク~!!

 

  とスズカが膨れ始めた。

 

 「私だって燈馬君とイチャイチャしたいのに…

 

 「なにか言ったか?」

 

 「言ってない!!」プイ

 

 「す、スズカ〜…」

 

  とドーベルはスズカの機嫌を取ろうとスズカを宥めていた。

 

 「(アイツらは今、どうしてる)」

 

  と周りを見渡す。すると隠れていた何人かの連中が俺達の方へと近づいてくる。

 

 「(場所を移した方が良さそうだな)そう怒るなスズカ。可愛い顔が台無しだぞ」

 

 「そんなこと言っても私は許さないんだからね!」ピコピコ シッポブンブン

 

 「なら怒っているスズカを放っておいて別のところへ行くかドーベル」

 

  と俺はドーベルの肩を掴んで歩いていく。

 

 「う、うん…///」

 

 「ちょ、ちょっと!もう怒ってないから!2人共待ってよ〜!!」

 

  とスズカも早足で追いかけてくる。

 

 「(さてと、ここからどう切り抜けるか)」

 

  場所を変えようにも時既に遅し。今の俺達は“囲まれている”。連中は俺達をここから逃がすつもりがないのだろう。なにか仕掛けて来るはずだ。

 

 「「「「……」」」」

 

  すると前から何とも悪者らしい格好をした男4人が目の前から歩いてくる。それも大きく横に伸びて。

 

 「(前は4,後ろは5…いや6か。やり過ごしてみるか)すまん、靴紐が解けたみたいだ。直してもいいか?」

 

 「うん。いいよ」

 

 「ここじゃあ邪魔になるから壁の方へ行くか」

 

  と俺は2人を壁へと連れて行き、靴紐を直すフリをして男達の様子を伺う。男達は俺達に釣られて壁の方へと来た。間違いないコイツらはクロだ。

 

 「よし、結べた。すまんな2人共」

 

 「ううん。寧ろ解けたままだと危ないからね」

 

 「それじゃあ行こっか」

 

  と俺は立ち上がり2人が歩き出そうとした瞬間、男達が目の前に現れる。

 

 「(そういう手口か)」グイ

 

 「え!?」

 

 「きゃ!」

 

  俺は2人の肩を掴んで引き寄せ、男達との接触を回避させる。だが──────。

 

 「痛ってぇえええええええええ!!!!」

 

  と一人の男が大声を上げてその場に座り込む。

 

 「え?え、え?」

 

  とスズカは目の前に起きていることにパニックになっていた。

 

 「おい、大丈夫か!?」

 

 「どこを痛めた!」

 

 「か、肩が…」

 

  と他の連中達が蹲っている男を心配をするかのように座り込む。

 

 「行くぞスズカ、ドーベル」

 

 「え、で、でも…」

 

 「大丈夫だ、当たってない。あの人の肩になにかあったんだろ。俺達はほっといてこの場から離れようか」

 

  とスズカの肩を抱いてその場から歩き出す。ドーベルも俺にしがみついていた。

 

 「おい、待てガキ!」

 

 「と、燈馬君…」

 

 「大丈夫。俺達のことじゃないよ」

 

  とスズカを更に抱き寄せる。

 

 「待てって言ってるだろ!聞こえねぇのかガキ!!」

 

 「ドーベル大丈夫か?」サスサス

 

 「……」ブルブル

 

  俺は震えているドーベルの背中を擦る。

 

 「テメェに言ってんだよ!!聞こえねぇのかこのガキ!!」ガシ!

 

  と俺の肩を男の一人が掴む。

 

 「テメェ、俺達のことを無視するタァいい度胸じゃねぇか」

 

  と言ってくる。俺はそのまま振り向いて──────。

 

 「なに?」

 

  と聞き返す。

 

 「シカトとはいい度胸じゃねぇか、あ?ガキ」

 

 「要件を言え。こっちだって忙しいんだ」

 

 「んだと!?テメェ!!」

 

 「用がないなら帰るぞ。なんなら救急車の手配でもしてやろうか?ソイツ、随分と痛がってるが医者に診てもらった方がいいんじゃないか?オススメの病院でも教えてやるよ」

 

 「テメェ、俺達に喧嘩売ってんのか?」ピキピキ

 

  肩を掴んでいる男の額に青筋が立つ。

 

 「なぁ、そろそろ肩の手を放してくれないか?というか放せ」

 

 「このガキィ…!!!」

 

  と俺の肩を掴んでいる手に力が入る。

 

 「あ、あの!私達に、何か…ようですか…?」

 

  とスズカが向き直る。

 

 「用も何もテメェ等がぶつかったせいでコイツが怪我したんだ。だからどう落とし前つけてくれんだって言ってんだよ!!」

 

 「で、でも、私達…ぶつかって「あぁん!?」ヒッ!」ビク

 

  とスズカの言葉を遮って圧をかけてくる男。

 

 「なんだなんだ?」

 

 「どうしたの?喧嘩?」

 

  ザワザワ、ザワザワ…

 

  とモール内の客達がゾロゾロと集まってくる。

 

 「…で、その怪我したって言うやつはどこ?」

 

 「目の前にいんだろ!見えてねぇのか!」

 

 「スズカ、ドーベルと俺の荷物を頼む」

 

 「と、燈馬君…!」

 

 「燈馬…」

 

  俺は蹲っている男に近づき、声をかける。

 

 「アンタ、どこ怪我したって?」

 

 「肩だよ、右肩!見てわからねぇのか!そこの女とぶつかって肩をやったんだよ!!」

 

 「肩、ねぇ…。普通、大柄なアンタと小柄なアイツなら肩になんて当たらないんだけど」

 

  スズカの身長は161cmに対し、蹲っている男は185cm近くある。どう考えたって肩同士が当たることはない。

 

 「骨を折ったのか?それとも外れたのか?教えてくれよ」

 

 「そ、それは…」

 

 「言えねぇよな、だって怪我してないんだから」

 

  バツが悪そうな顔をする男。そりゃそうだ、肩は現に動いているし、脱臼したなら右腕には力は入らない。だが、この男は普通に動いているのが見えたし、今だって力が腕に入ってる。

 

 「言いがかりも程々にしろよ。それにこっちはお前等のしょうもないことのせいで貴重な時間取られてんだ。どう落とし前つけるんだ?言ってみろ」

 

 「テメェ…!」

 

 「どう落とし前つけるんだって聞いてるんだ。答えろ」

 

  というと蹲っていた男が上体を上げて顔めがけて殴りかかってくる。

 

 「結局は手を上げないとわからないってか?」

 

  と俺は男の腕を引っ張り、足払いで男の体制を崩させる。そのまま男の腕を掴んだまま崩すした男の肩甲骨辺りに座る。

 

 「…なッ!」ガクン

 

 「答えないのならこのままコイツの肩をイカしてやってもいいんだぞ」グググ…

 

 「う、あぁあ!!」ミシミシ!

 

  もう少し力を入れれば外せるというところで止める。

 

 「「「…ッ」」」

 

  最初は威勢があったものの、今はだんまりで他の連中は一歩も動こうとはしなかった。

 

 「3つ数える。それまでに答えろ」

 

 「は!?何言って「3」…!」

 

 「ど、どうせそんなのハッタリに…」

 

 「2」グイ

 

 「あぁああああああっ!!!!」ミシミシミシ!!!

 

 「「「!!!」」」 

 

 「1…ぜr「なんだ!何の騒ぎだ!!」…」

 

  と集まっている客達を掻き分けて警察がやってくる。

 

 「クソッ!サツだ、逃げろお前ら!!」

 

 「どけ!邪魔だ!!」

 

  と連中達は警察とは反対方向へと走っていく。

 

 「…」パッ

 

 「っ!ハァハァハァ!!」タタタ

 

 「コラ!!待ちなさい!!」タタタ!

 

  と拘束していた男も仲間のもとへと走っていき、警察も追いかけていく。

 

 「さてと。…大丈夫か?」

 

  と俺は服を払って2人のもとへと戻る。

 

 「「……」」

 

 「ここじゃあ目立つし、場所を変えようか」

 

  と俺は2人を連れてショッピングモールを後にした。

 

 

  〜場所が変わって広場〜

 

 

 「奢りだ。飲んでくれ」

 

 「うん、ありがとう…」

 

 「…」

 

  ショッピングモールを出て近くの広場へとやってくる。周りには子連れの家族や犬の散歩などをしている人などがたくさんいた。俺は2人をベンチに座らせ、飲み物を買って戻ってきたところだ。

 

 「すまないな。怖い思いをさせてしまった」

 

 「ううん、大丈夫だよ。守ってくれてありがとう」

 

 「ドーベルは大丈夫か?」

 

 「うん…、なんとか…」

 

  と買ってきた飲み物を飲む。

 

 「…燈馬やスズカはさ、すごいね。ああいった人達に負けずに言えるなんて…。私、何も出来なかった…」

 

 「そ、そんなことないよ!私も燈馬君がいなかったら何言われてたか分からなかったもん…」

 

 「まぁ変な形ではあるが、今日は楽しめたか?2人とも」

 

 「うん。ありがとう燈馬君」

 

 「ありがとう、燈馬」

 

 「ならいい。楽しめたのなら万々歳だ。それから…」ゴソゴソ

 

  と俺はカバンから小さな袋を2つ取り出し2人に渡す。

 

 「これは細やかなものだ」

 

 「開けてもいい?」

 

  とスズカが聞いてきたので俺は頷く。2人は袋を開けて中身を取り出す。

 

 「これ、ネックレス?」

 

 「お前達が見てたアクセサリーショップというところに売ってあったものだ。俺はそういうのに疎いから適当に選ばせてもらった」

 

 「それでも嬉しいよ。…凄い、可愛い…!」

 

  とスズカがネックレスを広げる。スズカに渡したのはクローバー型のネックレス。ドーベルはダイヤモンド型のネックレスだ。

 

 「これ、付けてみてもいい?」

 

 「今?」

 

 「うん。今付けたいな」

 

 「なら付ければいい」

 

 「はい」

 

  とスズカがネックレスを渡してくる。

 

 「燈馬君に付けてほしいな…///」スッ…

 

  と髪をたくし上げる。

 

 「はいはい」

 

  と俺はスズカの首にネックレスを付ける。

 

 「出来たぞ」

 

 「ありがとう。どう?」

 

 「似合ってる」

 

 「えへへ///」

 

  とスズカが照れくさそうに笑う。

 

 「わ、私も付けて!!」

 

  とドーベルも渡してきて髪をたくし上げる。

 

 「分かった分かった」

 

  と俺はスズカ同様ドーベルにもネックレスを付ける。

 

 「どう?似合う…?///」

 

 「似合ってるよ、可愛い!」

 

 「似合ってるな」

 

 「そうかな、ありがとう///」

 

  とドーベルも嬉しそうに笑う。

 

 「トレーニングとかには付けるなよ?それ千切れやすいからな」

 

 「分かった。気をつけるね」

 

 「大事にするね」

 

 「なら寮に帰るか。もういい時間だしな」

 

  と2人を寮へと返す為、トレセン学園へと向かった。

 

 

 

  〜栗東寮〜

 

 

 「お帰り。今日は随分とお楽しみのようだったね〜」ゴゴゴ…

 

 「「た、ただいま戻りました…。フジ先輩…」」

 

  案の定、フジが凄いオーラを出しながら出迎えてくれた。

 

 「フジ、門限ギリギリなくらい許してやれよ。現にこうやってちゃんと帰ってきてるんだから」

 

 「燈馬君、フジ先輩はそのことではないと思うの…」

 

 「?」

 

  するとフジが大きく溜息をついた。

 

 「まあともあれ無事でなによりだよ。ここ最近、変な人達がウロウロしてるって聞いてたからさ。何かあったんじゃないかって思っちゃってさ」

 

 「ごめんなさい…」

 

 「いいよ。たまには息抜きも必要だからね」

 

  とフジは優しく笑う。

 

 「さ、折角楽しんできたんだ。楽しいままで1日を終えたいだろ?君達はこのまま部屋に戻っていいよ」

 

 「はい。それではフジ先輩、また明日」

 

 「はい。また明日」フリフリ

 

  とスズカとドーベルが自分の部屋へと戻っていく。

 

 「じゃ、俺は2人を届けたからこの辺で「帰らせると思う?」ですよね」

 

 「さて、私とのデートはいつしてくれるのかな〜??」ニコニコ

 

 「また今度で」

 

 「今度っていうのは〜いつ?具体的に教えて欲しいな〜?」ニコニコ

 

  やっぱ怒ってんじゃねぇかコイツ。

 

 「そういや、フジに言っておくことがある。今日のことで」

 

 「?今日、何かあったの?」

 

  と俺はフジに今日あったことを話す。怪しい男達が接触してきたことについて。スズカ達ではなく、俺を狙っていたことを伏せて。

 

 「そんなことが…!」

 

 「その時は警察が来て助かったが、次はそう行くかは分からない。一応、お前に話しておこうと思ってな」

 

 「分かった。私から先生とヒシアマには言っておくよ」

 

 「助かるよ。俺は帰る。戸締まりも早くしておいた方がいい。何か会った時に対応するためにな」

 

 「うん。燈馬も気をつけてね」

 

 「あぁ。またな」

 

  と俺は栗東寮のドアを開けて外へ出る。

 

 「それと、近い内に遊びに行くか。行きたい場所は任せる」

 

 「なら私の両親にあってほしいな」

 

 「それは無理だ」

 

 「冗談だよ。プランは私が立てておくよ。でもいずれは…

 

 「じゃあな」

 

 「うん。また明日」

 

  とフジは寮とドアを閉めて鍵を閉める。俺はそれを見て寮を後にした。

 

 

 

  〜帰り道〜

 

 

 「今日は災難な一日だったな。変な奴に絡まれるわでホントどうなってんだか」

 

  と俺は今日のことを思い出しながら家へと帰っていた。そして、電柱の灯りの下を曲がり、路地裏に入って歩みを止める。

 

 「居るんだろ?さっさと出てこい。こっちは既に気づいてんだよ」

 

  と誰もいないところで言い放つ。すると────。

 

 

 

  ゾロゾロ、ゾロゾロ…。

 

 

 「よォ、また会ったなガキィ」

 

 「あの時は随分と世話になったなァ」

 

  と何処からともなく大人達が近寄ってくる。それも全員ショッピングモールに居た連中達だ。

 

 「なんだ、警察のお縄についたわけじゃないのか?」

 

 「生意気なガキが、調子乗りやがって。その減らず口がいつまで続くかな?」

 

 「…」ドサ

 

  俺はカバンを置き、大人達を見る。

 

 「あっれれ〜?もしかしてビビっちゃったかな〜〜???」

 

 「ちびっちまったんじゃねぇの〜???」

 

 「それともママに助けてもらうか〜〜??」

 

 「ママー!ママー!!って…」プッ!

 

  ギャハハハハハハハハ!!!!!

 

 

 「…お前らみたいなのがいるからいけないんだろうな」ボソ

 

 「あ?なんか言ったか?」

 

 「別に?ただすぐにへばんなよって言っただけだよ」

 

 「テメェえええ!!やっちまえ!!!」

 

  怒号を響かせ数十人の大人達が迫ってくる。

 

 「お前達のような奴らがいるから人は死ぬんだよ」

 

 

 

 

 

  〜栗東寮・メジロドーベルside〜

 

 

 「……」ジー

 

  キラキラ…。

 

 『似合ってるよ』

 

 「!!!///」バフン!

 

 「ドーベル、さっきからドウしたんデスカ?」

 

 「えぇ!?べ、別に!!?何ともないよ!!」アセアセ

 

 「??」

 

 「(はぁ、どうしよう、夢みたい…)」

 

  私、メジロドーベルは栗東寮の自分の部屋で今日のことを思い出していた。あの時もらったネックレスを見ながら…。

 

 「(嬉しいな…。今日は本当に素敵な一日だったな〜。お目当てのトリートメントも買えたし、それに、と…燈馬からプレゼントも貰っちゃうなんて…。本当に夢みたい///)」

 

  と私は燈馬から貰ったネックレスを大事にそっと握る。

 

 「(次もまた遊びに行けたらな〜///)」

 

  と次に会う日を楽しみにしながら私は布団に包まった。

 

 「ドーベル、おフロまだデスヨ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な、なんで…」プルプル

 

 「こんな、がひに…」プルプル

 

 「…」

 

  何十人という男達が倒れ伏せてるところに一人、少年が座っていた。

 

 「おい」グイ

 

 「ひぃ…!」

 

  と少年はまだ意識のある男を頭を掴み、睨み付ける。

 

 「何故俺を狙った。誰の指示だ?お前達を束ねる組織のトップの名前を吐け」

 

 「そんなこと、言えるわけ…」

 

  ドスンッ!!!

 

  少年は男に思いっ切り溝内を殴る。男は耐えきれず嘔吐してしまった。

 

 「おぇええええええ!!!!」ビチャビチャ!!

 

 「おい、俺は嘔吐しろとは言ってない。名前を吐けって言ってるんだ」

 

 「そんなこと…、い、われても…」

 

  ドスンッ!!!

 

 「おぅえああああああ!!!」ビチャビチャ

 

 「口答えするな。俺は名前を吐けって言ってるんだ。早く言え」

 

 「……」

 

 「チッ」ブン!

 

  と少年は気絶した男を投げ捨て、自らのカバンを持ち路地裏を出る。

 

 「洗えば何とかなるか。糸の解れもなし。シミも付いてないし、匂いも…」

 

 「坊や。ちょっと聞きたいことがあるんだけどね」

 

 「ん?なんですか?」

 

  路地裏を出て少し歩いた時、少年に声をかける人がいた。少年が振り返ると玄関近くにお婆さんが立っていた。

 

 「さっきね、あそこの路地裏に何人もの大人が入っていくのを見たんだけど、坊や知らない?」

 

 「…さぁ、知りませんね。神隠しとかにでもあったんじゃないんですか?」

 

 「あらあら、随分と面白いことを言うのね。今どきの若い子は神隠しなんて知ってるのね」ホホホ

 

  と笑うお婆さん。すると少年が口を開く。

 

 「そういえばここ最近、ここら辺で暴力団が彷徨いてるって噂がありましたよ。お婆さんも早く家に入ったほうがいいんじゃないですか?」

 

 「おや、それは本当かい!それは危ないねぇ。気をつけるよ、ありがとうね坊や」

 

 「いえ、お婆さんもお気をつけて」

 

 「坊やもね!」

 

  とお婆さんが家の中へと戻っていく。

 

 「…さて」

 

  ガシッ

 

 「?」

 

  と少年の足を誰かが掴む。見るとボロボロて血塗れの男が這いつくばって来たみたいだ。

 

 「ハァハァ…、ま、まだ勝負は────」

 

  バコンッ!!!

 

 「ガッ!………」ドサ

 

  少年は掴まれていない方の足で男の顔を蹴り飛ばし気絶させる。

 

 「クソ野郎が。制服汚れたらどうすんだ」

 

  と少年の男をそのままにしてその場を去った。

 

 

 

 

 

  後日、大人数十人が血を流して倒れているというニュースが流れる。その倒れていたのは全員暴力団で逮捕されたのだが、警察が何故あそこで倒れていたのかと聞くと男達全員は口を揃えてこういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔がいたと




 読んで頂きありがとうございます。

 今回は最後の方はちょっと重めにしました。苦手な人はごめんなさい。これからも頑張って描いていきます。



  それでは、また〜
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