〜中山レース場・立花side〜
「いよいよ、来たね。皐月賞」
「あぁ、そうだな」
「もしかして緊張してる?」
「ぼちぼちかな」
と僕と燈馬君は控え室の椅子に座って話をしている。今日はクラシック初戦でG1レースの皐月賞の日でもあり、燈馬君
「(ヤバイ、僕が出る訳じゃないんだけどすごく緊張する…。もの凄く吐きそうなんだけど…っていうか燈馬君凄い平然としてるね!本当に緊張してるの!?)」ウゥ…
と僕の頭の中で葛藤を繰り広げていると、
『皐月賞に出場されるウマ娘の皆さん、これからパドックを行いますので入場入り口に集まってください』
とアナウンスが流れる。とうとう来てしまった。
「それじゃあ、行ってくる」ガチャ
「うん、悔いのないようにね」バタン
と燈馬君の背中を見送り、僕はチームの皆のところに向かった。
「トレーナー、遅かったな」
「ごめんごめん、人混みが凄くてね」
と無事チームの皆のところに辿り着けた。流石G1レース、観客の人集りが伊達じゃない。普段のレースでは体操服とゼッケンでレースを走るのだがG1は別だ。G1では“勝負服”と呼ばれる服を身に纏いターフを駆け抜けるのだ。それぞれのウマ娘によって服のデザインが違うのもまた一興だ。僕のチームでも勝負服を持っているウマ娘は2人いる、オグリさんとタイシンさんだ。オグリさんはセーラー服に近いような服に胸の部分に星なようなものが付いていて、タイシンさんは毛の付いたピンクのパーカー付ジャケットでジーンズの右足部分の生地がなく左足はダメージジーンズ風というデザインになっている。勝負服を着てレースに出るというのはウマ娘にとって栄誉なことだって聞いた。中には勝負服を着れずにターフを去っていく…なんてことがあったらしい。
「あら、あなたがここに居るなんて珍しいわね」コツコツ…
と後ろから声をかけられたので振り返るとそこには、
「お久しぶりです、“東条さん”」クルッ
東条さんと呼ばれる女性はトレセン学園の中でトップクラスのチーム【リギル】を率いているトレーナー、東条ハナさんだ。
「“オハナさん”って呼んでくれてもいいのよっていつも言ってるじゃない」
「すみません、いつもの癖でして…それじゃあお言葉に甘えて。お久しぶりですオハナさん」
というと久しぶり、と返してくれた。東条さんことオハナさんは僕が新人トレーナーの時にお世話になった人だ。トレーニングメニューは勿論、ウマ娘達のコンディションや体調、レース分析や他のウマ娘の情報収集などといったトレーナーとしての仕事を教えてくれた僕の先生にあたる人だ。
「でも、オハナさんはどうしてここに?リギルのウマ娘は出場していないはずですが…」
「決まってるでしょ?スペシャルウィークとセイウンスカイのデータ収集よ」クイッ
と顎の指す方向を見ると白のヒラヒラの服に緑の短パンを履いたウマ娘、セイウンスカイとピンクを基調とした服を着たスペシャルウィークがいた。セイウンスカイは逃げを基本としたウマ娘で坂に強く、スペシャルウィークは後半からのノビが凄く、弥生賞ではセイウンスカイを破り一着に輝いたのだ。
「でもキングヘイローも外せませんよ」
と隣にいる緑色を基調とした勝負服のウマ娘、キングヘイローを指す。キングヘイローはレースを冷静に運ぶことができ、さらに後半のノビが凄い厄介なウマ娘だ。この皐月賞ではスペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイローの3人の対決が見所だ、と新聞やニュースで言っていた。
『続いて4枠8番、18番人気、………シノン』
あれだけ騒がしかった場内が一気に静まり返る。実況の人もあれだけ元気があったのに一気にやる気が下がっている。ははっそれもそうか…。
「「「「頑張れ〜!燈馬(君)ー!!!」」」」
と後ろで高校生くらいの男女4人が燈馬君にエールを送っている。ありがとう…応援してくれて。
「…」ジィ…
横を見てみるとオハナさんはジィ…と燈馬君を見ている。ちなみに燈馬君の勝負服は黒色のタンクトップとズボン、その上から赤色の服を羽織り、腰の部分にも赤色の布が付いている。シンプルといえばシンプルだが、でもそっちの方が燈馬君の雰囲気に合っていていいと思う。
『それでは出場するウマ娘はレース場ゲート入口に集まってください』
とアナウンスが流れ、観客の人達もレース場へと移動していく。
「まさかあの子が出るなんて…、今回のトゥインクルシリーズは荒れるわね」
「そうですね…」
燈馬君の評判は世間には余りいいイメージがない。理由としてはスタートやレース終盤での転倒もそうだけど、性別というところだ。他のウマ娘は文字通り娘、“女”に対し燈馬君は“男”だからそういったところを偏見の目で見られていると思う。
「けど、彼のトレーナーである僕が応援をしないだなんてことはトレーナーとして失格です。例え偏見の目で見られようとも僕は燈馬君を応援します」
「…。そうね、容姿がどうであれトレーナーである私達があの子達のことを応援してあげないとトレーナーとして失格よね」
と笑っているオハナさんがこちらを向いて、
「もし、あなたのチームが私のチームとあたるようなことがあれば遠慮は要らないわ。全力で掛かって来なさい」
「はい、僕も…僕のチームも全力であなたに勝負を挑みます」
「楽しみにしているわ」コツコツ…
と手を振りながらオハナさんはレース場へと移動して行った。
「さぁ!そういうことだから僕達もいつも異常に頑張らないといけなくなった!これからはもっと厳しくなるよ!」
「「「はい!」」」
「よし!その為にもまずは燈馬君の応援だ!チーム皆で燈馬君が勝てるよう応援しよう!」
「うん」
「そうね」
「ライス、頑張る!」
とチーム皆で鼓舞をし、レース場へと移動しt「グルルゥ〜」…。
「その前に売店に寄っても構わないだろうか」
「…早く帰ってきてね」
オグリさんは相変わらずだった。
〜ゲート前・燈馬side〜
「……」グッグッ
俺はゲート前に移動してストレッチをしながらゲートインの合図が出るのを待っている。
「あ、あの!風間先輩!」
と声をかけられたので声のした方をみるとスペシャルウィークが立っていた。
「どうした?」
「あの時、本当にすみませんでした」ペコッ
と謝って来た。
「(あの時?)…あぁ掲示板前の時のことか。気にしてないぞ」
生真面目なやつだ。その時にも気にしてないって言っただろうに。
「…………」
と暗い顔をしながら何か言いたげそうな雰囲気をしている。
「なんだ?緊張しているのか?」
「!い、いえ!そういう訳では…」
「ならそんな暗い顔をするな。胸を張って前を見ろ。そうしないと勝利の女神様とやらが微笑んではくれないぞ?」
というとスペシャルウィークがポカンとした表情になっていた。
「…なんだ?」
「いえ、なにも…風間先輩って聞いてたイメージと違うような…」
とゴニョゴニョ言っているが、まぁいいだろう。
「それではスペシャルウィークさん、ゲートの中に入ってください」
「は、はーい!」タタタッ…
と小走りで走っていく彼女を見てみるとあるところに目がいった。
「おい、スカートのホックが……まあいいか」
身だしなみくらい自分で直すだろうと思いながら指定されたゲートに俺も入り、スタートの合図を待った。
〜レース場観客席・立花side〜
♪〜〜
レース前のファンファーレが鳴り響く。ドクンと心臓の音が聞こえ、前にある手すりを強く握る。いよいよだ、いよいよ始まるんだ!と思いながらスタートの合図を待つ。
『さあ、各ウマ娘ゲートに入りました』
と実況の人が響く。
パァン!ガコン!
『スタート!各ウマ娘、まずまずなスタートです!』
「よし!スタートはOKだね」
「えぇ、そうね」
『意気揚々と先頭を走るのはコクエンナンバワン、その後ろキングヘイロー、その内から接近するセイウンスカイ、4番手に位置しますハルシオン、フジラッキーボーイと続いており後方から3番目の位置にスペシャルウィークがいます』
と実況の人がキメ細かくレース状況を説明してくれる。6番手からスペシャルウィークさんまでが少し集団になっていて抜け出すのは容易ではなさそうだ。
「スタートは良くても肝心なのはこの“坂”を登り切れるかどうかだけどね」
とタイシンさんは目の前の坂を指差す。このレースの肝は最終コーナーを曲がった直後に来る別名“心臓破りの坂”だ。この坂で失速するウマ娘は数知れずこの坂の途中で体力を使い切ってしまうウマ娘もいるため、心臓破りの坂と言われるようになった。
「(燈馬君、坂の練習をしていないけど大丈夫なのかな)」
坂の得意なセイウンスカイさんにこの坂を経験しているスペシャルウィークさんにキングヘイローさん、どちらとも強敵だよ。
「………あれ?」
「?どうしたの」
僕は目を擦り、走っているウマ娘達を見る。
「燈馬君がいない!どこにいった!?」
「「「えぇぇぇぇ!?」」」
あれ?さっきまでいたよね!?本当に何処にいった!?
「あいつ、また転んだんじゃ…!」
「いや、転んだなら実況の人が気づいている筈だ。それに観客も。気づいていないとなるとちゃんと走っているんじゃないか?」ゴチソウサマ
確かにオグリさんの言う通りだ。転んだなら実況の人が気づいている筈だし何より僕達も気付く筈だ。それが無いってことはちゃんと走ってるんだろうけど…。何処かに“隠れた”って言う訳でもなさそうだし。
『さあ、オオケヤキを超え最後の直線の前にこのレース最大の難所、心臓破りの坂が待ち受けています!先頭は以前とコクエンナンバワン、その後ろハルシオン、キングヘイローは3番手といい位置にいます』
まずいまずい!先頭集団はもう坂を登り始めてるしこのままだとかなりまず「いっくよーー!!」!!
『おおっとセイウンスカイだ!今日は控えていたセイウンスカイが一気に上がってきた!!!』
ヤバイ!セイウンスカイが先頭に立ったしスペシャルウィークさんも上がってきた!このままだったら確実にヤバイ!
『ん?…え?いや…え?うそ、うそでしょ!?』
実況の声がオロオロし始める。今度は何なんだよ…と思っているとタイシンさんが目を見開き、口を開けたまま固まっていた。
「え?どうしたの?」
と周りを見てみるとオグリさんライスさんも目を見開いていた。観客の人も皆、動揺していて静かになっていた。僕は何がなんだか分からずレースの方に目線を向けた。
「…うそ、でしょ」
そこにいたのは─────。
〜同所・セイウンスカイside〜
「(いける!いける!!!)」タタタッ!
私は坂を登り終え、最後の直線に差し掛かっていた。このまま行けば確実に勝てる!スペちゃんの借りも返せる!
「(これで、私の勝t「フワッ」…え?)」
と私の視界に入ったのは“赤いマント”のようなもの。
「(ウソ、どうして…。どうしてあなたが…ここに!だってあなたは)「悪いな」!」
「皐月は貰うぞ」
その後、私の視界は突風によって塞がれた。
〜同所・立花side〜
『シノンだ!シノンが先頭に躍り出た!しかしこれは一体どういうことだ!?』
場内は騒然とし、何が起きたのか全く分からない者がいれば状況が上手く把握仕切れていない者もいる。僕だってその一人だ。何が起きたのか全く分からない…けど、分かることは一つだけ。
誰もいないセイウンスカイの後ろからシノンが、燈馬君が出てきたのだ。
普通なら誰でも気付く、いや気付かない方がおかしい。特に燈馬君のような目立つ存在がレース終盤まで誰一人として気付かれずに先頭まで行くのはハッキリ言って不可能だ。必ず実況や観客、走っているウマ娘達が絶対に気付く。なのに気付かない、気づかれなかった…。そんなことがあるのか。
『シノンがセイウンスカイをぐんぐん引き離している!その差は約2馬身!』
燈馬君、君は────
『ゴール!!シノンが2番手のセイウンスカイを2馬身引き離してゴールしました!』
一体、何者なんだ。
〜前話プロフィール〜
大森 英道
身長 180cm
体重 78kg
学校名 不明
所属 バスケ部
容姿 アーラシュ(F○O)
・天真爛漫な性格をしていて燈馬達のグループ内ではムードメーカー的存在
・ 小さい頃からバスケをしていてプロからも一目置かれている
江藤 淳
身長 170cm
体重 66kg
学校名 不明
所属 水泳部
容姿 ランスロット【セ○バー】(○GO)
・日本水泳業界では結構有名でオリンピック強化選手に何度か選ばれたことがある
・常に冷静な振る舞いをしており英道のストッパー役でもある
皆守 透子
身長 152cm
体重 ?kg
学校名 不明
所属 演劇部
B:84 W:50 H:72
容姿 三笠(アズール○ーン)
・父親が演劇、母親がオペラ歌手ということで親の影響で演劇やオペラ、歌劇に興味が湧き、演劇部に入る
・演劇などの話しかしない為、周りからは演劇ヲタクと言われている
・夢は父や母のような演劇、オペラ歌手になること
間宮 菜々子
身長 155cm
体重 ?kg
学校名 不明
所属 弓道部
B:90 W:53 H:80
容姿 龍鳳(アズー○レーン)
・弓道部に入った理由は学校の理事長から武道の才があると言われ、その中から弓道が自分に適していると判断し、入部を決意
・間宮は自分達の通う学校の理事長を尊敬している。
主人公の容姿 オジ○ンディ○ス(F○O)
勝負服 Fa○eのエ○ヤの服みたいなイメージ
読んで頂きありがとうございます。
誰にも気付かれずに先頭に行くなんてそんなことが出来るのだろうか…。主人公は一体どんな事をしてきたのか、まだまだ謎ばかり。
そういえば、○a○eネタが多いような…と思っていても温かい目で読んでくれると有り難いです。
次回でお会いしましょう。それでは、また〜