申し訳ございませんでした!
それだけはどうぞーーー!!!!
〜阪神レース場観客席・シンボリルドルフside〜
「ねぇルドルフ、レース中燈馬が消えるってホントなの?」
「間違いないよ、マルゼンスキー。私はこの目でしっかり見たからね」
と隣にいる茶色の尻尾と耳、そして腰まであるウェーブのかかった髪を持つウマ娘マルゼンスキーと話しをしている。彼女は世間から“スーパーカー”という異名や怪物と呼ばれていてその異名の如く力強い走りをする。私も彼女に何度苦戦を
『そして今年の桜花賞で最も注目のウマ娘!1番人気“メジロドーベル”!!!』
ワァアアアアア!!!
「ドーベル〜!今日も気品ある走りを見せてくれ〜!!」
「ドーベルさ〜〜〜ん!!!」
と実況の紹介と共に出てきたのはメジロ家の一人、メジロドーベルだ。彼女はエアグルーヴのことを尊敬しており、走る姿においては正に新たな女帝と言っていいだろう。
「気合いが入ってるな、ドーベル」
とエアグルーヴが笑顔で呟いた。白色の服に緑のスカートの勝負服を着たメジロドーベルの顔は真剣そのものどんなレース展開をしてくれるのだろうか。
『そして、18番人気シノン』
「来たか」
「うん、やっとお出ましだね」
と燈馬がパドックに出てきた。
「燈馬〜!!!頑張って〜〜!!!」
と隣でマルゼンスキーが手を振りながら応援している。
「全く、マルゼンスキーは燈馬のこととなるといつもそんな感じになるな」ハァ…
「いいじゃないか、エアグルーヴ。マルゼンスキーは燈馬のことを放っておけないのさ」ハハッ
マルゼンスキーは燈馬のことを弟のように可愛がっている。何かと燈馬のことを心配しており燈馬の出走するレースも全部見ている。
「もう、ルドルフもエアグルーヴも見てるだけじゃなくてちゃんと応援して!!」
「わかったよ、マルゼンスキー」
燈馬、頑張れよ。
〜ゲート前・燈馬side〜
ジィイイイイイ…
「………」
他のウマ娘達がめちゃくちゃ俺を見ている。それもそうか、皐月賞に出走して、且つトリプルティアラの一つである桜花賞も出ているから見られて当然か。
「………」キッ!
うわぁ、メジロドーベルって奴がめっちゃ睨んでるんだけど…俺なんかしたかな。
「ウマ娘の皆さん、ゲートに入ってください」
と係員がウマ娘を次々とゲートへと案内していく。
「さあ、あなたも」
と俺もゲートに案内させられた。入ったゲートは17番、大外だ。
『さあ、各ウマ娘ゲートに入りました。桜の舞う季節の中、一体誰が女王に君臨するのか!』
女王って俺、男なんだけど。
♪〜〜〜〜
とスタート前のファンファーレがレース場に鳴り響き、気持ちを切り替える。
「(さて、今日も“アレ”を使っていくか)」
とスタートの火蓋が切られるのを待った。
〜同所観客席・シンボリルドルフside〜
パァン!ガコン!
『スタート!各ウマ娘、横一線の綺麗なスタートを切りました』
「いいスタートね!」
「あぁ、スタートはいい。だがここからだ」
マルゼンスキーとエアグルーヴの言う通り、彼女達はいいスタートを切った。
『外から上がってきたのはロンドンブリッジ、その内エイダイクイン、外にダンツシリウス、後ろマックスキャンドゥと続き後ろは縦一列に並んでいます。注目のメジロドーベルは後方から6番手の位置にいます。』
桜花賞、距離は1800m。バ場状態は良。中距離と違って距離は短く一瞬の駆け引きが勝運を分ける。
「ん〜と、燈馬は何処にいるかな〜」
とマルゼンスキーが探し始める。私もマルゼンスキー同様、燈馬を探し始める………が。
「いない…!」
とフジキセキが呟く。皐月賞同様、燈馬がまたいなくなった。先頭から後方にかけてゆっくりとウマ娘達を見ていく、だが燈馬の姿はない。
「(燈馬、君は何かを隠しているな)」
と心の中で呟く。自分で姿を消していると私は思った。だが、そのタネが分からない。
『第3コーナーから最終コーナーへ入りました。以前と先頭を行きます!ロンドンブリッジ、その後ろにマックスキャンドゥ、メジロドーベルも上がってくる!』
外から他のウマ娘も上がってくる。けど、まだ燈馬の姿はない。
『さあ、残り500m!ここでメジロドーベルが上がってくる!』
メジロドーベルが先頭に立ち、後続達との差が開いて行く。差は2馬身程、ほぼメジロドーベルの勝利が確定した…と誰もが思った。
しかし、現実はそう甘くはない──────
『シノンだ!シノンが外から上がってくる!』
「何!?」
「外!?」
集団の外から上がってきたのは燈馬だ。しかも外の外、大外から先頭との差を詰めていき、メジロドーベルとほぼ並走する形になった。
「まただ。またあの時と同じ」
皐月賞同様、燈馬は外にいたウマ娘の後ろから姿を現し先頭のメジロドーベルと並走している。場内は驚きと困惑の声が広がる。
『残り200m!シノン、ここでペースを更に上げる!』
燈馬が更にスピードを上げる。メジロドーベルも追い付こうとペースを上げる、だが追い付けない。
『ゴール!一着はシノン!!メジロドーベル、惜しくも2着で敗れました』
アァァァァァ…
と落胆する声がレース場内に響き渡る。自分達の応援をしていたウマ娘が負けるのは仕方がないことだ、勝負の世界とは常に勝者と敗者がいる。勝利し栄光を手に入れる者も居れば負けて涙を流す者もいる。勝負の世界とは残酷なものだ。
「クソ…なんであいつなんだよ」
「ホント、俺メジロドーベルの勝つところが見たかったのに」
「俺もだよ…。マジ最悪なんですけど」
と私達の目の前に座っていた男性3人が愚痴を溢す。今回の桜花賞はダントツでメジロドーベルが人気を誇っていた、そして誰もがメジロドーベルの勝利を願っていただろう。だが、祈ったところで結果は変わらない。
「(この人達には気の毒だろうが割り切ってもらう他ないな)」
と思っていたその時、
「あいつ、どうにかして出場出来なくしてやれるかな」
「どうやってするんだよ」
「それは…ネットの晒し者にする…とか?」
「止めとけ止めとけ。聞いた話によるとあいつの後ろ盾はURAも絡んでるって噂だぜ?逆に俺たちが晒し者になるだけだよ」
「だぁあああああ!クソッッッ!!どうにかしてあいつが出場出来ないのかよ!!!」
「「「「「………」」」」」
コイツラハ、イッタイナニヲイッテイルンダロウカ。
「ねぇルドルフ。この人達、潰しちゃっていいかしら」
とマルゼンスキーが耳を後ろに倒し、低い声で言った。
「よせマルゼンスキー。それに燈馬から釘を刺されだろう、“俺の事を悪く言われていても気にするな”と」
「ぶ〜〜〜〜…」プク−ッ
と頬を膨らませて堪えてくれた。私もマルゼンスキーのようになりかけたが何とか持ち堪えれた。
「さあ、学園へ戻ろう。今日は練習がハードみたいだからな」
「え〜!?燈馬のウイニングライブ見たい〜!」
「エアグルーヴ、すまないがマルゼンスキーを頼む」ハァ…
「…わかりました。会長」
とエアグルーヴがマルゼンスキーの襟元を掴みズルズルと引きずって行った。
「やだやだ!燈馬のウイニングライブ〜!見たい見たい見たい〜!!!」ジタバタ
と手と足をバタつかせて会場を去って行った。
「…君達もだよ。ブライアン、フジキセキ」
「チッ」
「しょうがないね」フルフル
とブライアンとフジキセキもエアグルーヴ達に続いて会場の外へと歩み始めた。そして私はレース場の上で表彰されている燈馬を見つめる。
「燈馬、次のレースもどんな走りをするか楽しみにしてるよ。そして、私と…いや私達と共に…
と言い残し私も会場を後にした。
〜同所・燈馬side〜
「それじゃあ燈馬君、また明日ね」コツコツ…
「あぁ、また」
レースとライブが終わり、俺はトレーナーがトレセンへと歩いて行く背中を目にこの後何をしようか考えていた。
「(今からミチルさんのジムに行ってもいいし、
と考え事をしていると携帯が鳴る。画面を見ると1件のメッセージが来ていた。
『今から会える?場所はここなんだけど…』
とあった。今から特になかったので断る理由がない。
『わかった。すぐ向かう』ピッ
と返信すると『了解』と返ってきたので俺は目的のところへ向かった。
カランカラン〜
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか」
「いえ、待ち合わせを」
と入口近くにいた定員に声をかけられた時、
「お〜い!こっちこっち〜!」
と大きく手を振りながら自分の居場所を教える女性がいた。俺はその席に向かい、女性の反対側に腰を降ろした。
「ご注文は何になされますか?」
「えっと、俺は…「こっちはミルクティーのアイス、チョコレートケーキ。あと私はコーヒーのおかわりを下さい」。」
「かしこまりました」
と定員が去って行った。
「…それで?何のご要件ですか、“シービー”さん」
「やだな〜、私と燈馬の仲じゃないか。そう固くならないでよ。いつもみたいにシービーって呼んで欲しいな」
と笑顔で言ったのはシービー事、“ミスターシービー”。クラシック三冠を獲ったウマ娘である。右耳に小さな白いハット帽子に“CB”の文字の付いていて黒っぽい髪と尻尾を持つ。時折、レース場に赴いていたり、レースに出ていると聞いている。
「わかり…わかったよ、シービー。それで?何で呼んだんだ。しかもここ最近、人気のケーキ屋じゃないか」
「いいでしょ?私、ここのケーキ結構気に入ってるんだ」
と返す。まあ、確かに良いところではあるな。
「まあ、そんな話しは置いといて。燈馬には色々聞きたい事があるからね」
と身体を前のめりにしてこう言った。
「なんで本気で走らないの?」
「…。何のことだ?」
「とぼけてもダメ。私の目は誤魔化せない。燈馬は昔、あんな走りはしなかった」
と口角を上げて俺の目を見ながら言う。目を逸らそうにもシービーの目が離してくれない、吸い込まれそうになる。
「おまたせしました。アイスミルクティーとチョコレートケーキ、アイスコーヒーです」
と視界の横で定員が注文した物をテーブルに並べる。だが目が逸らせない、逸らされない。ずっとシービーが見続けられる為、注文の品に目が行かない。
「逸らそうとしても無駄だよ。燈馬は隠し事があると目を逸らす癖があるからね」
とジッと見つめられる。
「俺は常に本気だ。本気でレースに挑んでる」
「それは知ってる。燈馬は常に本気で、全力で、手を抜かない。けど私の言いたいのはそれじゃない。何故“自分の走り”をしないのかを聞いているんだ」
「…」
「昔の燈馬はノビノビと走っていた。けど今は何かを押し殺して走ってる、そんな感じかな」
シービーの観察眼はトレセンにいるトレーナー達よりも優れている。何が良くて何が悪いのか、何が足りないのか見ただけでわかるくらいだ。
「…走り方を変えたっていうのは?」
「ない。断言できる。それにレース中に消えるのって…………でしょ?私の手にかかれば余裕さ」
気づいていたか。やはりシービーの目は誤魔化せないか。
「燈馬がそんな走りをするという事は…何か言い出せない理由があるのかい?」
「!」
「図星のようだね。…何かあったのかい?」
と姿勢を正して聞いてくる。
「……別に」
「ウソ。何かあるよね。前にも言ったでしょ、“何かあったら必ず私に相談して”って」
と強い口調で言ってくる。入りたての頃からシービーには色々世話になっている。けど…。
「…これは、俺の問題なんだ」
「…」
「信じてほしい」
と頭を下げる。これは本当に俺の、俺自身の問題だ。“どうしてこういう走りになったのか”の問題を。
「そう、わかった。これ以上は追求しない。けど、これだけは覚えといて」
とシービーが両手を俺の頬に添える。
「燈馬は一人じゃない。辛くなったり苦しくなったりしたら頼って欲しい。これだけは忘れないで」
「わかった」
と言うとシービーが両手を離し、ニッコリと笑う。
「さ、遅くなったけどケーキ食べよっか!すみませ〜ん!にんじんケーキ1つくださ〜い!」
と言うとにんじんケーキが運ばれてくる。
「ここのにんじんケーキ、絶品なんだよね〜!はむっ。ん〜!おいし〜い!!」
と美味しそうに食べるシービー。俺も目の前にあるチョコレートケーキを口に運ぶ。
「(美味いな」
「心の声、漏れちゃってるよ」フフッ
シービーの言う通りここのケーキは絶品だ。甘過ぎずかと言って苦過ぎない、道理で人気なわけだ。食べ進めているとシービーが突然、
「ねぇ、一口頂戴?」
と言い出した。
「…なぜ?」
「いいじゃない、私もそのケーキ気になっていたんだからさ。一口欲しいなって」
「…」
とチョコレートケーキを一口サイズに切ってフォークに刺し、シービーの口に持っていく。
「ほら、食えよ」
「あ〜〜〜んっ!ん〜!こっちもおいし〜い!」
と美味しそうに食べる。そんなにも食べたかったのなら注文すればよかったのでは。
「はい、あ〜ん」
「…は?」
何やってんだ?この人。
「ほら、早く食べてよ。じゃないと落ちちゃう」
「いや、俺は…」
「ほーら、あ〜ん」クイクイ
しょうがない。早くしないとずっとこのままだ、と思った俺は少し身を乗り出し…。
「」パクッ
とシービーの差し出されたケーキを食べる。口に入れた瞬間にんじんのほのかな甘さが口の中に広がっていき、とても美味しい。
「これはウマ娘に人気が出るだろうな」
「でしょ!それでね、あとは…」
このあと、シービーと俺はケーキ屋で色々なケーキを食べながら門限の30分前まで過ごした。
〜美浦寮前・シービーside〜
「今日はありがとうね。たくさん食べれて良かったよ」
「それは何よりで」
私達はケーキ屋を出た後、そのまま寮へと帰ってきた。寮の門限がある為、燈馬と離れるのは名残惜しいけど守らないと寮長のヒシアマゾンから門限破りの罰が下るのでそれだけは避けたい。今回は送ってくれるだけで我慢するとしよう。
「じゃあな、また学校で会おう」スタスタ…
「うん、またね」フリフリ
と燈馬の背中を見送り、私は自室へと戻った。
「お帰りシービー。今日は随分と遅い帰宅なんだな」
「えぇルドルフ、今日はオフを貰っててね」ポスン
と私を迎え入れたのはルドルフこと皇帝シンボリルドルフ、私と彼女は同室で長い付き合いになる。彼女は部屋着でベッドの上で本を読んでいた。私は机の上にカバンを置き、自分のベッドに腰を降ろした。
「燈馬のレース、君はどう見えた?」パタン
とルドルフが本を閉じ、私に身体を向けてそう聞いてきた。
「どうって?」
「君の観察能力は優れているからね。君の意見を聞いてみたいと思ってね」
「ん〜私の見た感じだと、今の燈馬を止めるウマ娘は誰もいない思うよ」
「君もそう思うか」
まあね、と返す。今注目のセイウンスカイ、スペシャルウィーク、キングヘイロー、エルコンドルパサー、そして療養中のグラスワンダーこの5人は必ず燈馬と走ることになるとは予測していた。実際、5人の内3人は走っているし6月に行われる“日本ダービー”でエルコンドルパサーは燈馬と対決することになっている。グラスワンダーに関しては療養期間が終わると必ず燈馬と対決する時がくるだろう、その時彼女がどう燈馬を対処するか見物だ。
「それにしても燈馬が消える現象、一体どうなっているんだ?」ブツブツ
「あれ、知ってるよ。どうやってるのか」
とルドルフの独り言に私は答える。
「まあでも、答えは教えられないな」
「…なるほど、答えは自分で見つけろと言うわけだな」
「そういうこと。じゃあ私、晩ご飯食べてくる」ヨイショ
と部屋の扉の前で行き、ルドルフの方を向く。
「ヒントを教えてあげる。“見破ろうとはしないこと。視野を広げてみる”かな」ガチャ、バタン
と言って部屋を出た。これでルドルフは次のレースで意識して見れば燈馬を見つけることは可能だ。
「さ〜て、ご飯でも食べに行こうかな〜」
ヒシアマに言えば何か作ってくれるだろう。
「あ、そろそろ“あっち”の方に顔ださなきゃね」
フフッ、あの子どんな顔するかな。次会うときが楽しみだ。
読んで頂きありがとうございます。
やっとこさ書き上げることが出来た桜花賞。書いては消し書いては消しの繰り返しで中々前には進みませんでした。。。トホホ…
さて、気を取り直して桜花賞を制した燈馬。次に控える日本ダービーに向けて燈馬達はトレーニングに取り組んでいく。そして燈馬達のチームに新たな仲間が加わる!?
次回、ダービーに向けて
それではまた〜
後書きってこんな感じで良かったっけ