オリジナル故に、アイデアの被りにびくついていますが、暖かい目で見守ってください。
貴方は異能というものを信じるであろうか。
例えば手の平から炎を出すとか物体を浮かす等、そんな事を思い浮かべた人は少なくないはずだ。
誰もが一度は夢見る
四月六日。
桜舞い散る通学路。
もうすぐここが通い慣れる道になるのかと物思いにふける少女・
新入生ですよと言わんばかりの埃ひとつないのブレザーとスカートに身を包んでいる。
彼女はこの春中学校を卒業し、高校生として新たな生活のスタートをきっていた。
「(はぁ…緊張してきちゃったなぁ…)」
我ながら緊張に弱いなと思いつつ椿は校門を潜る。
椿の他にも制服に身を包んだ学生がチラホラと歩いている。
『覇道学園』。
父島と母島近くに造られた人工島『神里島』に唯一存在する高等学校。
全校生徒数千人を超えるマンモス校。今日本において最も有名な高校と言っても過言では無い場所だ。
何よりこの学校は日本で数少ない能力者を育成をする教育機関でもある。
能力者と言っても、普通ならば何言ってんだこいつと思う方も少なくはないだろう。
この世界において、異能力というモノは人間の生活において非常に密接している。
椿も能力者ではあるが、如何せん人に自慢できるほどの素晴らしい力でもない。寧ろポピュラーな能力であろう『浮遊』。
しかし、浮遊と言っても湯のみような軽い物等を浮かすと言った程度の出力しか出せず、使い手の椿も日常において便利な
寧ろ、こんな程度の低い能力でこの学校に入れたのが不思議でしょうがないくらいに。
「(でも入ったからには絶対頑張るんだから!!)」
能力値というものは訓練次第では飛躍的に上る例も存在する。今現在、能力値が低い者でも強くなれるという希望も少なからず存在するため、能力者育成機関でもある覇道学園に通う者も少なくない。
椿は不安な気持ちを追い出すために自分の頬を両手で叩き、喝を入れる。
気合い十分な気持ちを作り、校舎へと入っていく。
「(どうしてこうなった!!)」
入学式が終わり、生徒達が帰路につこうと校門を潜ろうとしていた時の事。
リーダー格であろう長身の金髪な男を筆頭に5人の生徒が校門の前で構えていた。覇道学園は制服での登校は義務ずけられていないため、服装は自由。しかし彼らは身なりからして所謂不良と言う印象を感じる。その証拠になにかの文字が刻まれた指輪や骸骨の刺繍がされたガラの悪いネックレスなどを身につけている。恐らく上級生であろうが、一体こんなところで何をするつもりだ?
「ようよう新入生ちゃん達よ~
俺達遊ぶのに金が足りないんだよ、全額出せとは言わないがちょっとばかし分けてくれよ?」
金さえ払えば通してやる。我が物顔で校門を占拠したかと思えば、金を巻き上げる行為に新入生たちは思わず固まってしまった。
「あっ、ちなみに金を出せねぇやつはちょっとお仕置をするからそのつもりで~」
金髪は左手から炎を出す。これみよがしに見せつけ、逆らったら容赦しないという意思表示をする。
恐怖の震えている新入生達に悪どい笑みを浮かべる姿は、まさに悪党だ。
気の弱そうな人達は少ない所持金を不良達に渡して校門を潜り、足早に立ち去っていく。
教師達は対応するつもりがないのか、一向に来る気配もない。能力者の自主性を重視する学園とはいえ、これはいささか目に余る。
椿が一言物申してやろうと思ったが、相手は5人。流石に多勢に無勢だ。
「(悔しい·····)」
自身の力の無さを悔やむ。
そんな事を思っていると先程の不良が騒ぎ始める。
「んだァてめぇ、金が出せないって言うのか?」
「こ、これは母が僕のために稼いでくれたお金です!
申し訳ないですが渡せません!」
椿と同じ新入生であろうか、細身で弱々しい体躯が印象の少年が不良達に抵抗していた。
「んなもん関係ねぇよ!ここでは力のねぇ奴は強い奴の言うことを聞くしかねぇんだよ!!」
不良の一人が少年の腹へと、強く拳をめり込ませる。
うぐっと苦痛に歪んだ声を出して、少年はその場でうずくまる。
「あ~あ~大人しく言うこと聞いてればいいのによぉ~
んじゃお仕置きタイムと行きますか~」
不良がうずくまっている少年の胸ぐらを掴み、無理矢理立ち上がらせる。そして拳を構えて、殴る体制に入る。
不味いと思った椿が止めに入ろうとしたその時だった。突如として不良の一人が倒れる。
「んだァ?てめぇ?」
「·························」
倒れた不良の近くに、学生服の上に灰色のパーカーを着込み、艶のある黒髪が目立つウルフヘアの少年がいた
一体いつからそこに居たのか·····一部始終を見ていたのに、全くと言っていいほど存在に気がつかなかった。
「俺たちに逆らったらどうなるか·····わかってんのか!」
不良の一人が怒声を上げて殴りかかろうとするが、
「待て」
リーダー格の金髪がそれを静止する。
「こんな生意気な奴は、俺がお仕置してやるからよ!!」
金髪は手の平からバスケットボール位の火球を出し、パーカーの少年へと投げつける。
危ない。椿がそう叫ぼうとしても時すでに遅し。あれほどの大きな火球を喰らえば、火傷だけでは済まない。
火球は勢いのまま少年まで迫る。あぁ·····もうダメだ。
周りの生徒がそう思った次の瞬間。
パーカーの少年は右腕を火球へとかざし、そのまま火球は消滅する。
「······························は?」
余りの異常な光景に金髪は口をポカーンとさせて動きを停止した。
自身の最大火力をぶつけたはずなのに、何も起きなかった。
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
金髪の頭の中は混乱していた。目の前で自身の一撃がかき消された現実を受け入れないのか、はたまた目の前にいる少年の不気味さに畏怖してしまったか。
「ふ、ふざけた真似しやがって!!コノヤロォォォ!!」
自身に発破をかけるために大きな怒声をあげる。
金髪は火球を己の拳に纏わせ、少年に一撃を食らわせるべく大きく振りかぶるが、直後に意識が暗転する。
「···············」
糸が切れた人形が如く、音もなく静かに倒れこむ金髪。
その様子を見た周りにいた不良は、静かに佇む少年に恐怖を抱く。
リーダー格を倒され、自分達の振りを悟ったのか足早に校門から姿を消した。
「凄い·····」
いつ間にかあの少年に魅入られてた椿。瞬く間に不良達を圧倒する姿は·····まるでヒーローであった。
しかしハッと我に返った椿は殴れた少年の介抱へ向かう。
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫です·····ちょっと痛いだけですから··········」
椿の肩を借りて、ゆっくりと立ち上がる少年。
心配させまいと苦痛に耐えながらも、笑顔でサムズアップをする。
「····················」
事件の功労者であるパーカーの少年は、何事も無かった様にそのまま校門を抜けようと歩き始める。
「まっ、待ってください!何かお礼を·····」
「要らん」
殴られた少年がお礼をしようとするが、それを即座に断るパーカーの少年。
そして再び歩き始める。
「せ、せめてお名前だけでも··········」
また断れるかもしれないが、一応に聞く少年。
するとパーカーの少年は足を止め、
「·························
そうポツリと呟き、足早に校門から姿を消した。
「カミノ·····ゲイム···············」
こうして波乱の入学式は終わりを告げる。
今回の事件はこれから起きる嵐の前触れにすぎない。異能に満ちたこの学園生活は·····天国か··········はたまた地獄か··········未来は己の目で確かめるしかない。
いよいよ始まる学園生活。
不思議な力を持つ神野芸夢。彼を中心に巻き起こる非日常な学園ストーリーに乞うご期待。