俺の好きな人は破滅フラグがあるらしい…   作:とうふ

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はめふらは剣と魔法の世界ですもんね!
私はこの話を作っていてそう言い訳しました。
この二次創作は剣(?)の世界で生きていく……。


11話 耳で輝くのは小さな魔法

 ガタン、ガタンといつもと比べものにならないくらいボロボロの馬車に揺られる。

 ついにやってきたね。と、待ち侘びていたこの日に胸を高鳴らせると同時に不安を感じる。

 

 そう、今日から他国で孤児スカウトを開始する。

 なんとか死にそうになりながらもじい様と同じくらい厳しい父さんの稽古を終えて、許可が出た。ほんと、大変だったぁ。

 

 

『短剣は常に忍ばせなさい。何かあれば自分の身を第一優先に。自分の身は自分で守ること』

『何かあったら必ず人目のあるところに走りなさい』

 

 

 父さんと母さんのありがたい言葉をいただきこれから一ヶ月ほどスラムで生活を始める。

 そろそろソルシエ王国から出るかな。そう思って改めて荷物を確認する。短剣、保護魔法付きネックレス、もしもの時用の薬。銅貨数枚。そして耳で輝く()()()

 

 説明しよう!このピアスはじい様が用意してくれた()()なのだ!

 

 

『ルビア、私の元で特訓する時は()()()になりきりなさい』

 

『別の人?』

 

『あぁ。その人物はいつも冷静でどんなことでもこなすことが出来る。優しさも持った完璧な人物。細かな設定は自分で作るといい。細かければ細かいほどその人物になりきれるぞ』

 

『俺の中にもう一つの人格を作るってこと?』

 

『そうだ。名付けて偽装二重人格!スイッチのオンオフはピアスを目印にするといい』

 

 

 ってな感じで俺はじい様の元で特訓する時、俺だけど俺じゃない別の人物になりきって過ごしていた。もう完璧だよね。俺は今、冷静でどんなこともこなすことが出来る人だから人見知りじゃありませーん。

 こうして俺は人見知りを一風変わった方法で克服した。

 

「じゃあ行ってくる」

 

「何かあれば、必ず……自分の命を第一に考えてください」

 

 最後にハーツがそう言ってくれる。俺を他国へと見送ってくれる人はそう言って俺の身を心配してくれる。ありがたいよね、ほんと。

 ちなみに、カタリナたちには旅行へ行くとしか伝えていない。手紙の返事もできないことも通達済みだ。うぅ、残念なことは一ヶ月カタリナ達に会えないことだよね。

 

 ソルシエ王国の隣国であるルーサブル。俺の今いるここは王都に対面している町サリヴェッタ。もともと治安が悪いと言われているこの国は王都ですら数は少ないにしても孤児がいる。その隣にこの町サリヴェッタは微妙に栄えているばかりにスラムが多く孤児も多い。

 きっとここならふさわしい10人が見つかる気がする。そう思って俺はスラムに足を踏み入れた。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

 ルビアはいつも着ている服とは比べ物にならないくらいに薄汚れた服を見に纏いスラムに座り込んだ。

 スラムで生きる子供にとって新入りは絶好の獲物だった。なぜなら、捨てられたばかりなら良いものを持っている可能性がある。それを奪いたい。

 そんな目論みでルビアに近づく大勢の子供。ルビアはその存在に気づきながらも動かない。

 ルビアはどういう風にスラムの人と関係を持つか考えていた。結論、喧嘩で倒して子供をまとめ上げよう。

 その為、その場から動かない。襲いかかってきたところを返り討ちにする目論み。

 しかし、それはある人物が邪魔をしたことにより叶わなくなった。

 

「おいお前、こっちに来い」

 

 子供の間をくぐり抜けて座り込んでいたルビアの手を取る少年。ルビアもその手に連れていかれるように孤児の間を走り抜けた。

 周りに誰もいなくなったところで()()()()()()を持つ少年はルビアの顔を見た。

 

「おいお前、なんで逃げないんだよ。お前はさっき荷物を奪われそうだったんだぞ」

 

「……」

 

 ルビアはその問いに答えられなかった。「返り討ちにする予定だったから」なんて正直に言えるわけもない。

 

「ソラ?どうした?」

 

 古びた空き家から出てきたのは、既に薄汚れているがそれなりにいい服を着た大人の男だった。きっとソラの大きな声が届いたのだろう。男の言葉にソラは返さず、ルビアにこういった。

 

「おいお前。俺がスラムでの生き方を教えてやるよ」

 

 優しさからか、同情からか。しかし、ルビアにとってその提案は好都合だった。

 そしてルビアはソラと一緒に過ごすようになった。

 

 

 

 そこから一週間ソラはルビアにさまざまなことを教えた。

 そしてルビアもソラに勉強を教えた。空き家に住み込んでいる男がソラに文字の読み書きを教えていた事もありソラはぐんぐんと学んでいった。

 ある時、読み書きを教えていた男が病に伏せた。そこでルビアは念のため持っていた薬を渡し、男は病を克服した。男は病を克服したことで「職を探す」とスラムを出ていった。懐いていた男を救ってくれたルビアにソラは慕うことが多くなった。

 

 

 ルビアは着々と適した人物に目星をつけていた。

 

 

 その日は霧の濃い日だった。ルビアがスラムに住まうようになって2週間。普段は誰も近寄らないスラムに大柄な男が数人きた。人攫いだと一目で分かった。

 基本スラムに人攫いが来ることはない。売られる子供は基本犯罪に手を染めた者ばかりだからだ。わざわざスラムを生き抜いている凶暴な孤児に手を出すこともない。

 

 しかし、このスラムに人攫いが来たということは誰かが連れ去られるということだ。一緒に生き抜いた仲間を悠々と人攫いに引き渡すわけにもいかない。

 小さな子供を奥へ、ある程度腕の立つものは前へ。そうして大柄な人攫いに対抗していく。

 

 たった1人、まだ小柄ながらも人攫いの元に走り出す少年がいた。

 

 ルビアは大層機嫌が悪かった。辛いながらも楽しくスラムでいい人材を探し、もう10人全員の目星をつけたところに人攫いがやってくる。仲間を、部下となる予定の人物まで連れられそうになるなんてルビアが不満を抱かないわけがなかった。

 

「おいっ!ルビア!?」

 

 ソラがルビアの後ろから声をかけるがルビアは気にしない。短剣を鞘から抜かず手に持つと、最初にリーダー格の男の鳩尾を突き刺す。そのまま男は倒れ込むとそれを見ていた周りの男が状況を呑み込みルビアに襲いかかる。当然ただやられるわけもなく、攻撃を躱し短剣や肘、時には足や拳を使って全員の男を気絶させた。

 

 ルビアが負けるわけなかった。剣を駆使して荒れていた裏貴族を制裁していったじいさまの元で、()()()()稽古したルビアが弱いわけない。

 また、そのじいさまが全盛期の時に鍛え上げたルビアの父に、()()()()稽古をつけられたルビアが弱いわけない。

 

 たった1人で人攫いを返り討ちにしたルビアをスラムの孤児は心から慕うようになる。

 

 ルビアはそこから残りの日まで、目星をつけた10人にそれぞれ声をかけていった。

 

 

「衣食住の保障と引き換えに、俺の元で働かないか?」

 

 

 子供ながらもルビアの強さを目の当たりにしたその10名は誰一人としてその提案を断らなかった。

 日をずらして、1人、また1人と合計10人をじいさまの元に届けていったルビアは予定より良い人物を、部下となる人物を集められたと大満足していた。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

 その少年は突然やってきた。紫の髪と瞳を持った少年で自分の荷物を取られそうになっても全く動じない、変わったやつだった。

 

「俺の名前はルビア。ソラ、よろしく」

 

 まず最初に驚かされたのは名前があることだ。ここでは名前が元々ない子供や親に捨てられたことから自ら名前を無いことにする子供がほとんどだった。

 俺の場合尊敬する男からつけてもらったが、こいつは当たり前のように自分の名前を名乗った。

 俺はこいつが貴族の生まれなのだと思っていた。初めてきた時にはゴミ箱を漁るのですら躊躇っていて、その佇まいもどこか落ち着いている。

 だからこそ、スラム(ここ)での生き方を教えてやろうと思った。

 でも実際多くのことを教わったのは俺の方だった。ルビアは頭がよかった。文字の読み書きは既にできていて歴史についてたくさんのことを教えてくれた。

 

 ある時、俺の尊敬する男が倒れた。環境が悪いこともあり、このスラムではよくあることだった。だけど俺はどうしても治したくて町に薬を奪いに行こうとした。

 それを止めたのはルビアだった。ここにきた時から持っていた薄汚れた鞄から一つの錠剤を取り出して、ルビアの魔法で出した水と共に男に飲ませた。数日はかかったが、男は元気な体に戻って、そのまま「仕事を探しながら旅をする」とスラムを抜けていった。

 

 霧が濃い日に、スラムの入り口から人攫いがやってきた。スラムに人攫いが来ることは珍しかったが、でも当然と言えた。親もいなくて、戸籍もない俺たちは絶好の獲物なはず。

 やっとルビアもスラムの生活にも慣れていた時にやってきたそいつらは俺たちの生活をぶち壊しにきたんだと、俺はどうしようもない怒りを覚えた。

 突然、俺の後ろに立っていたはずのルビアが走り出した。

 

「おい!ルビア!?」

 

 俺の声に反応することもなくルビアは瞬く間に男たちを倒していった。

 

 時に、相手のパンチを躱し、流れるように背中に短剣を刺す。

 時に、相手の振りかぶるような殴りを横に飛んで避けて(かかと)落としをキメる。

 

 体格の不利を感じさせず圧倒的に倒すルビアに、俺は心から尊敬した。どうしたらそんなに強いのか。それが聞きたくて仕方がなかった。戦いが終わった後は、ルビアに大勢の人が集まって聞けるタイミングは無くなった。

 

 それから数日経ったある日。ルビアに人のいないところに呼び出された。その日のルビアはいつになく真剣な表情をしていた。

 

「ソラ、実は俺は貴族なんだ」

 

「へぇ、そうか」

 

 分かっていたことだと、最初は驚かなかった。

 だけど、治安が良いと噂のソルシエ王国、バルスリア公爵家跡継ぎだと聞いた時はその場で尻餅をついてしまった。

 バルスリア公爵家を知っていたわけではないが、ルビアに歴史の話を聞いた時、公爵家が王家の次に地位が高いというのは聞いていた。

 まさか、その跡継ぎがスラムなんかで何やってんだよとどうしてもツッコミたかったが言わなかった。

 でもその理由をルビアは教えてくれた。騎士団を作るために人を集めている。スラムから衣食住の保障と引き換えになってくれる人を探してると。

 

「ソラ、俺の元で働かないか?ソラは魔力を持っているし、一番適していると思ってるんだ」

 

 笑いながら「それに離れたくないしな」と、付け足すようにルビアは言う。そんなの言われて断れるわけない。そもそも提案的に悪くない。衣食住の保障に仕事まで、むしろありがたいくらいだ。

 

「よければ、入れてくれ。その騎士団とやらにな」

 

「よろしく頼むよ」

 

 そうして俺はバルスリア騎士団に入隊した。もちろんこれから剣の稽古や礼儀などを習っていくんだろうけど、俺には理想的な生活にしか思えなかった。

 

 ルビアは他にもスカウトをしていって、約一ヶ月間スラムで生活をした。

 ルビアがスカウトした奴らは俺から見ても良いやつばかりでルビアは人を見る目があるようだった。

 

 この時の俺は理想的な生活に夢を見ていたが、ルビアのじいさんの元へ届けられてからは現実を見始めた。人を守る騎士になんて簡単になれるわけなかったんだ。

 

 

 

 あ、えっ、ちょ、師匠。今瞑想という名の過去回想だったんです。サボってたわけじゃ……あっ、え?ランニング倍?

 

 ————死ぬって。助けてくれ友よ。……ルビアよ。




※ルーサブルの王都の隣町サリヴェッタは創作です。
※ソラがルーサブルのスラム出身というのは勝手な想像です。

これで、一応幼少期編は終了です‼︎短編とかおまけとか何個か挟んで魔法学園編の予定です。

まだまだ長くなりますが、よろしくお願いします。
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