俺の好きな人は破滅フラグがあるらしい…   作:とうふ

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不定期更新よくないな、と思いまして。

決めました。

私が一番嫌いな曜日は水曜日なんです。なんか、すごい嫌いなんですけどだからこそ、毎週水曜日の5時に投稿します。
読んでくれる人が少しでも水曜日の楽しみにしてくれたらと思います。


15話 お友達

 今日こそはマリアちゃんをお昼に誘うぞ!と意気込んだ私、カタリナ・クラエスは中庭までマリアちゃんを探しにきていた。

 キースのアドバイスの元、いじめ回避の為には私達がそばに居れば大丈夫なのではないかと言うことで探しているのだけれど……あっ!いたいた。

 今日もマリアちゃんは令嬢達に囲まれて何か言われているようだった。かなり距離があったけどその声は風に乗せられて聞こえてきた。

 

「平民のくせに、少し光の魔力を持っているからって、生徒会に選ばれて、調子に乗ってるんじゃないわよ!」

 

「光の魔力を持っているからって特別扱いされて、それで仕方なく相手をさせられている生徒会の方々も本当にお気の毒だわ!」

 

「ルビア様だってあなたに声をかけたりお昼に誘ったりしているのはあなたが光の魔力を持っているからよ!勘違いしませんように!」

 

 うわぁ、ルビアってすごい人気ね。罵りの言葉の中にルビアが入ってるって相当なことだと思うのよね。

 というか、聞き捨てならないことを聞いた!ルビアは既にマリアちゃんをお昼に誘ってるの?

 確かにルビアとマリアちゃんの関わりはゲームで一番多かった。それはルビアがお助けキャラっていうこともあるけど、やはり二人はもう付き合ってるのかしら?

 なら応援しなくちゃ!二人がハッピーエンドを迎えるなら私に破滅はないわ!

 

 と、私が別のことを考えていると1人の令嬢が手を掲げた。そしてその手には赤く燃える炎が揺れている。

 

——————あれは、火の魔法‼︎

 

 あろうことかその令嬢はマリアちゃんに火の魔法で害をなそうとしていた。

 まずい、ここからは距離があって間に合わない。こうなったら……。

 

「いでよ!土ボコ!」

 

 私の高らかな叫びとともに、マリアちゃんの元へと歩み寄ろうとしていた令嬢の足元の土が十センチほどボコッとあがった。

 すると、炎を掲げていた令嬢がしりもちをついて転ぶ。よっしゃ!!これが長年に渡る訓練の成果、土ボコの威力よ!

 

 そうして、私はマリアちゃんの元に駆けつけ、令嬢達の前に立ちはだかった。そして、持ち前の悪役面で令嬢達を睨みつけた。

 

「一体、何をしているの!!そもそも光の魔力を持っているから贔屓されてるなんて、言いがかりもいいところだわ!この学園は完璧な実力主義であって贔屓なんて存在しないわ!」

 

 もし、本当に贔屓があるのだとしたら、クラエス公爵家の令嬢も平均スレスレよりは上位にあげてもらえるはずだ。

 

「それに、マリアちゃんは、それは努力してるのよ!テストはその努力の成果なのよ!」

 

 マリアちゃんは本当に努力家だった。

 課題を忘れて見せてもらったノートにも、勉強を教えてくれるためにひらいた教科書にもそれは沢山の書き込みがあり、マリアちゃんが普段とても努力している様子が見てとれた。

 そんな様子に、勉強ができるバカであるルビアですら目を見開いて尊敬していた。

 

「それに、生徒会の皆も私もルビアもマリアちゃんが光の魔力を持っているから一緒にいるんじゃないわ!努力家で、何にでも一生懸命なマリアちゃんが好きだから一緒にいるのよ!」

 

 私は令嬢達を悪役面で睨みつけ、悪役らしく口の端だけで笑みをつくった。

 

「あなたたち、こんなことを続けていると———破滅するわよ」

 

 そして、私の悪役顔に恐れをなした彼女らは、淑女らしからぬ猛ダッシュで一目散に逃げていった。

 

 そして悪役顔を大活躍させ、令嬢達を追い払って、マリアちゃんを振り返ると……。

 え?泣いてる?ど、どうしよう。令嬢達ならまだしも私の悪役顔にマリアちゃんまで怯えさせちゃったかしら……確かにすごい怖い顔だったかもしれない。

 

「マ、マリアちゃん!?」

 

 私は慌てて、マリアちゃんに近寄り、その震えている背に手を置いた。

 そして、少し落ち着いたマリアちゃんがポツリと喋り出した。

 

「……あの、クラエス様……私の名前……」

 

 ん、名前?なんのことだ?しばらく考えて思い当たった。

 私ったらいつもは『キャンベルさん』と呼んでいたのに、つい『マリアちゃん』って言っちゃったわ。そういえば、ルビアの事も呼び捨てにしたかも。

 

「あ、あの、ごめんね。いきなり慣れ慣れしく呼んでしまって……」

 

 慌てる私にマリアちゃんが首を横に振った。

 

「いえ、全然構いません。むしろ『ちゃん』付けも不要です。私のことはマリアと呼んでください」

 

 そう言ったマリアちゃんの一生懸命な様子が可愛すぎて、思わず、にんまりしつつ、さっそく呼んでみた。

 

「ありがとう。マリア」

 

 なんだか、今までよりぎゅっと距離が縮められた気がした。

 すると、マリアは頬を赤くして嬉しそうに微笑む。

 

「あの、その……もし、許していただけるなら……」

 

 なんだか、少し挙動不審な調子を見せた。

 そして、なんだろうと見つめていると。

 

「あの、私も生徒会の皆さんのように『カタリナ様』と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか」

 

 なぜだか、重大な告白であるかのように言った。私は思わずきょとんとなる。

 

「もちろん、好きなように呼んで貰っていいわよ。だって私達、もう()()なのだから」

 

 そう言って笑うと、なぜだか、先ほどまで止まりそうだったマリアの涙がまた溢れてきて、私はそれを必死になだめることとなった。

 なんだか、バカな幼馴染よりマリアとの距離を縮められた気がするわ。

 泣いているマリアには申し訳ないけど、そんなことを思ってしまった。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

「バルスリア様、ここに卵を入れます」

 

「はーい、入れました!」

 

 ここは学園にある食堂の調理場。今日はマリアさんと約束のお菓子作りの日だ。

 あの約束の日からお互いに生徒会の仕事などで日が合わず、かなり経ってしまった。その間に何度かマリアさんのお菓子を頂いたけど本当に美味しい。お店で売ってるのと比べても劣らない。ガチ美味い。

 そして、既にカタリナや俺の胃袋を掴んだマリアさんのお菓子を今日作れるのだ。嬉しいねえ。

 

「俺は普段、お菓子は作らないから新鮮な気持ちだな」

 

「貴族の方は自分で作りませんよね。本当に、私なんかの教えるお菓子でいいのですか?」

 

 それは、『もっとプロの菓子職人に教えてもらわなくていいのか』と言うことだろうか。

 もし、その質問なら答えは当然『マリアさんに教えてもらいたい』だ。確かにプロの作るお菓子も美味しいし好き。だけど俺はマリアさんの作るお菓子の方が心があったかくなるような気がする。

 なんと言うのか、家庭の味?うん、そんな感じ。とりあえず、すごく好きなんだよ、マリアさんの作るお菓子。

 

「当たり前だよ。むしろ、こんな手間をかけさせちゃってごめんね」

 

「い、いえ!とんでもないです」

 

 マリアさんは優しい女の子だ。俺はかなりマリアさんと交流の深い方だったけど嫌がらせを受けているところを何度か見たことがある。もちろん止めたが俺が見ていないところでも行われているだろう。

 嫌がらせを受けているにも関わらず、マリアさんは真っ直ぐだった。嫌がらせをする人の悪口も言わないし、むしろより努力をしていた。

 最近ではカタリナ達と過ごすようになって嫌がらせの回数はかなり減っているようで、安心している。

 

「ねえ、キャンベルさん。俺たちもう()()だと思うんだよね。俺のことはルビアって呼んでよ」

 

「————⁉︎カタリナ様も……友達だと言ってくれました。ありがとうございます、()()()様」

 

 ルビア様と呼んでくれて、俺は思わず笑う。マリアさん生徒会やそれ以外でも交流はあったけど、貴族だからと距離を置かれていたような気がしていた。今日、その距離が縮まったような気がして嬉しかった。

 

「名前で呼ばれるのは嬉しいね。改めてよろしく、()()()

 

「はいっ」

 

 お菓子作りは順調に進んで、今はオーブンで焼いている。そのうちいい匂いが香るだろう。今から楽しみだ。

 

「ルビア様がお菓子作りを教えてほしいと言ったのは、カタリナ様にお菓子をあげるためですか?」

 

「んんー。まぁ、自分で食べたいのもあるけど、そうだね」

 

 そういえば、『カタリナのことが好きなのか』と言う質問をされたことがあったのだと思い出した。その時は有耶無耶にしたけど、バレてるかなぁ。

 

「ルビア様は少し変わってますね」

 

「え?変わってる?」

 

 マリアの意外な言葉に俺は驚いて聞き返した。カタリナは変わっているとよく言われているけど、俺はあまり言われないのに。

 

「なんと言ったらいいのか、わからないんですけど。例えば、カタリナ様にお菓子を贈るとしても、どこからか購入した物を送ることが多いと思うんです」

 

「うーん。それはマリアのお菓子が美味しいってのもあるけどね。多分、俺は贈るものに気持ちを込めたいんだと思う」

 

 手作りなら作っている工程一つ一つに気持ちを込められるからね。それに、お店で買ったお菓子でカタリナの好きじゃないお菓子だったら最悪だ。でも、マリアのお菓子ならカタリナが嫌いなわけがない。

 

「ルビア様は素敵な考えを持っているんですね。すごく良い考え方だと思いました」

 

「うん、ありがとう。完成したらみんなまだ生徒会室にいるだろうから、届けよう。カタリナも喜んでくれるだろうね」

 

「そうですね」

 

 二人で笑いながらクッキーが焼けるのを待った。

 既に調理場にはクッキーのいい匂いが広がっていて、カタリナならお腹を鳴らすだろう。そんな様子を俺たちは想像してしまって、また笑った。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

「ソラ、カタリナをチェスでいじめるなよ」

 

「カタリナ様は反応が面白いからつい。でもその後、ルビア様が俺をボコボコにするじゃないか。同じだろう」

 

 仕事に手をつけながら俺とソラは話す。ソラはスラム育ちだと言うことを感じさせないほど完璧な貴族になった。もちろん、生徒会のみんなは平民だと知っているが外面は完璧。

 ソラは俺の予想を遥か上回るくらい優秀で、魔力の素質はあまり良くないが、生徒会入りを果たして俺への定期報告の内容も抜けがない。

 ただ一つ言うことがあるのだとすれば、仕事終わりにカタリナと仲良くチェスをして遊んでいることだ。

 特に勉学が得意なソラは、生徒会の仕事を早く終わらせてカタリナと遊ぶ。それも仲良さげに。もちろんいいけどね?カタリナも楽しそうだし。

 

「あ、会長。今日もお茶おいしかったです」

 

「いえいえ、ルビアさんは仕事が早いし本当に助かってるよ」

 

 お茶のお礼を言いに会長の元へ行くといつも通り優しい返事をくれた。生徒会長シリウス・ディーク。すごく優しい性格で、実力もある。

 そして、俺は一度会長と幼少期に会ったことがある。

 

「会長、昔と雰囲気変わりましたね。なんとなく、ですけど」

 

「……そうかな?ほら、人は成長するから」

 

 会長はそう言って笑う。

 俺が5歳の頃、初めてのお茶会に参加した。全体で見ても、かなり早い初めての社交界デビューで、すごく緊張したのを覚えている。

 その時に会ったのがシリウスだ。関わりは挨拶をしただけだったけど、すごく辛そうな雰囲気がしたのを覚えている。後から聞けば、病気を患っていたそうだ。

 でもまぁ、やっぱり人は成長するからね。

 

「仕事終わったんで、カタリナのところ行ってきます」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

 会長に見送られ、俺はカタリナところへ向かった。多分、かなり大きくなってきた畑にいるだろう。メアリ達もいないから全員そこにいるかもしれない。

 抜け駆けとはよろしくない。これはまた、俺とカタリナの仲の良さを見せつけなければな!




4話で『かなり前に出たお茶会で会った赤髪の令息』という言葉が出てきます。それがシリウス・ディークです。
ルビアは昔のメアリとシリウスが似ていると思っていたんですね。

次回『夏休み‼︎』

お楽しみに!
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