俺の好きな人は破滅フラグがあるらしい… 作:とうふ
いやぁ、夏休みはいいですよね!
友達ないなくても一人で楽しめるし、ボッチだと変な目を向けられる(きっと気のせい)こともないし。
あ、私は友達いますよ?冬休みも忙しい忙しい。
夏休みに入った。夏休みといえば宿題さえ終われば楽な休暇だが俺は意外と忙しかった。
作り上げたバルスリア騎士団の寮の一室、それは俺のための部屋で言うなれば団長室だろうか。
そこで、これまでの報告をまとめて聞いていた。緊急性があれば手紙を出すようにと言っていたが、手紙が来なかった為、特に大きな問題はなさそうだ。
「————と、以上が報告ですね」
「うん、ありがとう」
下町で情報収集をしていたフォイが報告を終える。特に問題はなかった。
だけど、フォイは部屋から出なくて何かを言おうか言わないかと迷っているように見えた。
「えっと、ルビア。一応言っておきたいことがあるんだけど」
「ん?聞くよ」
なんだか言いづらそうにしながらフォイは言った。
「
「———闇の魔力?」
名前からして怖い感じがする。だけど、そんな魔力あるのだろうか。聞いた事もないしみた事もない。魔力とは火、水、風、土、光の五つしか無いはずだ。
「だよね。俺もデマだと思うんだけどさ」
「その話、一応教えて」
もし、そんな恐ろしそうな魔法があるなら危険だ。聞くだけ聞いといた方がいい。
「酒場って人が酔った勢いでたくさんのことを喋るから、俺はそこで情報を集めることが多かったんだ」
フォイはポケットから手帳を出して思い出すかのようにめくった。
「ある時、結構後ろ暗い事で雇われてた奴がいて、そいつが言ったんだ。『闇の魔力ってのは恐ろしい』聞くと、
聞くと、その貴族は闇の魔力を使われた現場で雇われていたらしい。その男は詳しく話さなかったが、ただ『恐ろしい』とだけ言い続けたそうだ。
フォイはその様子がなんだが只事じゃないように感じて一応俺に報告したらしい。
それよりも、ある貴族。貴族がその闇の魔力とやらを使ったということか?
「……その貴族は分かる?」
貴族が分かればその話に信憑性が増す。フォイは頷いて話し始めた。
「一応、その貴族はね—————」
フォイが退出した後、少し考えた。そもそも闇の魔力というのが存在するのか。恐ろしい魔力。公爵家に話が回っていないくらいだから、存在してたとしても隠されているのだろう。
半分信じて頭の片隅に入れておく。願わくば、カタリナが卒業まで無事でありますように。
⬜︎⬜︎⬜︎
夏休みに入って一週間。ここは俺の家の別荘。と、いうよりバルスリア公爵の領地であるライラーの海辺に建てられた家。
バルスリア邸ほど広くはないが、そこらの伯爵家と比べればいい勝負ができるくらい大きい屋敷。そこで
「いいな、色でペアを決める。赤、青、黄、緑、紫。文句なしだ」
「もちろんですわ!」
俺の声にメアリが答えてみんな一斉にクジを取った。クジを取るその顔はまさに命懸けで笑えてくるが、俺も人のことを言えないので笑うのは堪える。
まず、なんでこうなったかの説明をしようと思う。
「旅行に行きたいわ!」
「唐突ですね。どうしてそう思ったんですか?」
俺の家に集まった幼馴染組+ソラとマリアは外に設置されたテーブルを囲んで収穫パーティーをしていた。
クラエス邸の庭……というより畑、で作られた夏野菜の第一収穫をバルスリア邸まで持ち込んで調理して食べる。毎年恒例の行事を今年はマリアも一緒に楽しむことになった。
そこでみんなで楽しく話をしていたら、急に真顔になったカタリナが「旅行に行きたい」と言い出す。
「ジオルドに同じく。カタリナはいつも話が急に変わるから」
俺がそういうと心外と言わんばかりに、目を見開いてこっちを向く。俺はそれを笑って返す。
「いや、夏といえばキャンプじゃない?でもキャンプはここにはないだろうし、だから旅行したいなぁーって思ったのよ」
キャンプ……聞き馴染みのない言葉だが知識としては知っている。確か他国の文化で、簡易ハウスで寝泊まりするやつだ。カタリナは変なところで知識が豊富だな。
「旅行って言っても義姉さん、毎年家族で行ってるじゃないか。ここにいるメンバーで行くのなんて……それは……」
「あらキース様、私はカタリナ様と、旅行に行きたいですわ!ねぇ、アラン様?」
「ん?まぁ、そうだな」
「私も賛成ですわ!カタリナ様とお泊まり……素敵です。ねっ!お兄様!」
「あぁ」
「マリアさんは?カタリナ様と旅行、どう?」
「楽しそうです!お泊まりに憧れてたんです」
目をキラキラ光らせてウキウキしたような表情を見せるマリア。そんなマリアの様子もあって結果的に、反対意見は出なかった。
「んー、じゃあ俺の家の領地で三泊くらいで泊まる?」
俺がそう提案すればみんな視線が集まる。
バルスリア家は伯爵家の頃から領地が広いことで有名だ。特に、海に面したライラーは観光地として栄えている。もちろんソルシエ国内なので治安もいい。
「げ……それってオセアン?」
「いや、オセアンは領地じゃないから。ライラーだよ。ソルシエでも珍しい海に面してる。三泊と言わずに一週間くらい泊まってもいいけど……」
「ライラーって言ったら有名な観光地ね!私、海に行ったことがないから行ってみたいわ!」
「じゃあ決定」
カタリナのその一言で俺の家の別荘で約一週間の旅行が決まった。
もちろん全員が一週間ではない。ジオルドやアランは王子という事もあって忙しく三泊だけだし、一週間は予定だ。
と、いう事で。旅行初日の今日。海へ来て用意した五つのボートのペアを決めている。
カタリナは泳ぎたいと渋っていたが、さすがに止めた。止めるとマリアも驚いていたが……確か貴族だけなんだっけ?海で泳ぐ文化がないのは。そもそも女性は足を晒せ出すことすら、基本はしないのに泳ぐなんてもっての外。
まぁ、正直にいえば一緒に海で遊びたいが……。
「はいっ!俺は紫!」
「僕は青ですね」
「え゛……」
「私は赤ですわ!」
「私は緑です!」
「俺も緑だな……」
「あ、俺は黄です」
「じゃあ俺と同じだな」
「私は紫でした」
「私は赤よ!」
カタリナがそういうと、メアリがいつも通り完璧な笑顔を見せる。——が手をよく見てみると血が出ないか心配になるくらい強く握られているので、心の中で飛んで喜んでいるだろう。
メアリが羨ましいが、クジは運。俺は俺でペアになったマリアと楽しもう。
ペアはこうだ。ジオルド&キース。ソフィア&ニコル。アラン&ソラ。俺&マリア。そして、カタリナ&メアリ。
「マリアはボート乗ったことある?」
「無いです。海に来たことが初めてで……波とか大丈夫なんですか?」
「うん。ここの海は比較的緩やかだよ。危険そうなら中断すればいいさ」
俺が先にボートに乗る。そしてマリアが乗りやすいように手を出して、簡単に手を引く。ボートはそこそこ揺れるが、まだ桟橋にボートがつながったままだから転覆することなく2人とも乗れた。
「おっ、魚いるね」
「本当ですね!たくさんの種類」
ゆっくりと漕ぎ出して進むと透き通った水面からは魚が見える。
うーん。触るのは嫌いだけど、見るのも食べるのも魚は好きだな。
遠くでアランと速さ対決をしていたカタリナを見てみると、水面に顔を覗かせている。
「『あの魚美味しそうね!後で捕まえてみようかしら?』」
「ふふっ、カタリナ様の真似ですか?」
「カタリナなら言いそうでしょ?」
「確かに……ふっ…言っているかも、しれないですね」
マリアはツボに入ったのかお腹を抑えて笑っている。声を堪えているが、たまに漏れてしまっているので相当面白かったんだろう。
なるほど、俺のカタリナの真似は似ているのか。ジオルドにいたずらできそうだな。
カタリナはまだ海を見ていて、体は半分ボートから乗り出している。うわ、落ちそう……大丈夫か?
俺の心配をよそに(カタリナは聞こえてないけど)、カタリナはさらに身を乗り出して、ザブンっと。
「うわっ⁉︎」
「カタリナ様⁉︎」
ほぼボートから体が出ている状況で、波に揺られバランスを崩してカタリナは海に落ちた。
しかし、転落はここで終わらない。
「カタリナ!大丈夫ですか!」
「義姉さん!」
「「うわっ!!」」
カタリナを心配したジオルドとキースが勢いよく動いたことによりボートごと転覆。そして2人も海の中。何やってんだよ、2人とも。
俺は笑いを頑張って堪えながら声をかけた。
「ジオルド、キース!カタリナを引き上げて。一旦戻ろう!」
俺は指示を出しながらジオルドたちのボートを回収する。
いや、本当何やってんだよ。多分カタリナは「あの魚捕まえれそう」とか考えてたんだろうな。カタリナらしいけどね。
ジオルド達はバカとしか言いようがないな。だってボートは不安定なのに、あんな勢いよく動くんだから。
時間は午後3時ごろ。今日、海で遊ぶのはもういいだろう。いやー楽しかった。ジオルドが海に落ちた話は使える。有効活用していこう。
「魚、すごく綺麗だったわ」
陸に上がった直後カタリナはこう言った。
いや、海の中で魚見てたの?自分の身の心配しなよ。
カタリナは、海の中に入れたことで少し満足しているようだった。そして、カタリナは相変わらず変だと再認識した。
⬜︎⬜︎⬜︎
「夜ご飯は料理人が作ってくれるから一番奥の部屋に集合ね。それぞれ入浴終わってから集合しよう」
転落祭りという一悶着があったものの、それ以外は何事もなく初日が終わる。
が、まだ初日は終わらない。
「え?部屋でご飯を食べるんですか?」
「え?そうでしょ普通」
カタリナは突然そんな事をいう。心底不思議そうな顔して。
いや、不思議そうな顔するけどこっちがしたいよ。でも、好きな人の要望には応えたい。考えるだけ考えてみよう。
「外で食べる……とか?」
俺がそういうと、首をぶんぶんと振って頷いた。
なるほど、外か……。机を出せば食事はできるだろうだろうけど、室内でよく無いか?まぁカタリナの要望だから用意させよう。
「じゃあ外に机を用意するから外に集合しよう。料理を運ぶのに時間がかかってしまうかもしれないけど」
「え?料理人が料理するんですか?」
「そりゃ、料理人だもんね……」
料理人は料理を作るから料理人だ。カタリナはどんな食事を期待してるんだ?うーむ、分からん。
だが、ここまできたら全ての要望に応えよう!
「お肉なら出るけど……?」
そういうと少し表情が明るくなるが、まだ違うようだ。
さっきは料理人が料理することに疑問を持っていたから……。
「外で、みんなで調理する……?」
「はいっ!そうです。夏といえばキャンプ。キャンプといえば
「う、うん。バーベキューが分からないけどそれっぽいのを用意しておくよ」
カタリナの要望はよく分からないが、満足していただけたようでそれぞれ自室に戻った。
……とりあえず俺は料理人に指示を出すとしよう。
それから、入浴の話の時から様子が変だったメアリが倒れたり。
カタリナの言ったバーベキューが予想と違ったのか、カタリナが調理して肉を焦がしたり。
ジオルドが突然出てきた蛇に叫び声をあげたり。
こうしてみんなと旅行の1日目が終わる。
—————ことはなく、夜が始まる。
まだまだカタリナのやりたいことは終わらない。
※バルスリア家の領地であるライラーは創作です。