俺の好きな人は破滅フラグがあるらしい…   作:とうふ

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遅れたけど許して!


17話 夏休み‼︎後編

 カタリナが肉の大半を焦がしたことにより、夜中には小腹が空くかもなと考えていた現在。

 

「————だから、肝試しをやりたいんです!」

 

「なんでだから?全然意味が理解できないけど」

 

 部屋で新しくソフィアにおすすめされたロマンス小説を読んでいた現在。

 そして同時刻に、カタリナと一緒に入浴できるかもと興奮したメアリが倒れてしまった現在。……結局、一緒に入らなかったらしい。

 

「だからね、夏の夜といえば肝試しなの!だから、ルビアと私でお化け役をやってみんなを驚かさない?絶対に楽しいわよ!」

 

 肝試し……って肝を試すってこと?驚かす役をやりたいのか。確かに、みんなの驚い顔を見るのは楽しそうだけど。

 

「もうすぐ9時になるけど、この時間でいいの?まだ明日でもいいしさ。ほら、準備とかあったほうがいいんじゃない?」

 

 俺は笑顔でそう提案する。

 はぁ、カタリナはまだまだだなっ。みんなを驚かす?それなら全力でやらねばならない。

 驚かすと言うことは、相手が驚くなら相手の驚いた顔が見れると言うわけだ。

 それはつまり、相手の見られたくないであろう顔をこの目で見ることができる。なんと楽しそうなことか。ジオルドの驚いた顔が見たい!そしていつものやり返しとしてバカにしてやりたい!

 カタリナは少し考えた素振りをした後、納得したような顔をして頷いた。

 

「じゃあ作戦会議をしよう。俺の部屋でする?邪魔が入ったら困るしさ」

 

 邪魔が入ったら困るのはその通りだが、他の人の目がないのでとことんカタリナといちゃいちゃしてやろう。

 この旅行自体予期せぬいい事であるけど、二人っきりではない。二人の時間は大切にしなきゃね。

 カタリナは鈍感だからそんな俺の目論みに気づかない。

 

「そうですわね!じゃあ一度部屋に戻ってから、タイミングを見てルビア様の部屋に行きます!」

 

「わかった。部屋で待ってるね」

 

 これがみんなにバレたら殺させるかもしれないな。……絶対に言わないようにしよう。

 

「あ、そうだカタリナ」

「はい?」

 

 行こうとするカタリナの手を引いて一言いうことにした。これはさっきから、入浴上がりの独特のいい匂いがするカタリナにずっと思ってた事だ。

 

「俺以外の男の部屋に、夜入っちゃダメだよ。特にジオルドね。絶対、約束」

 

 俺の鬼気迫る言い方に驚いたような表情を見せたカタリナだが、数秒して納得したように頷いた。

 

「確かに……破滅フラグがあるかもしれないですものね。ルビア様、忠告ありがとうございます!」

 

 笑顔でお礼を言うカタリナだが、違うんだよなぁ。

 まあ、いいだろう。どんな理由であれカタリナが俺以外の男の部屋に夜行くことがなければ大丈夫。

 

「じゃあ、後でね」

「はいっ!」

 

 笑顔のカタリナを見送った後、俺はその場で座り込む。

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、パジャマのカタリナかわいいいいいいい。

 

 ふぅ、夜は精神を落ち着かせて楽しもう。俺は危険だ。欲望に負けないようにしないと。カタリナが悲しむのは良くないから絶対に我慢を頑張れ俺。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

「ルビア様ー!」

 

 ノックがして小声でカタリナがルビアに声をかけた。その声にルビアの心拍数が若干上がる。

 

「入っていいよー」

 

 ルビアがそういうとカタリナは忍者の真似か、忍足で部屋に入る。この部屋にはルビアとカタリナしかいない。

 それが何を示すかというと、何をしてもバレない。という事だ。

 しかしルビアはカタリナが悲しむことはしないというモットーがある。鋼の精神を作り上げたルビアとカタリナが()()()()ことはないだろう。……もちろんそれはカタリナが何もしなければ、という前提付きで。

 

「よーし。まずは明日にその、肝試し?をやるって事でいいんだよね?」

 

「はいっ!ジオルド様やアラン様は三泊予定なのでその間にはやりたいです」

 

 話し合いは順調に進む。

 カタリナのことが好きなルビアだが、楽しいことも好きである。

 その為、どこか子供っぽさの抜けたカタリナを前にしてドキドキしていた心臓も、その肝試しへの楽しさに対するドキドキに変換されていった。

 

「じゃあ必要なのはこんにゃく?とかいうぬるっとしたようなもの。と、白い服ね。赤の絵の具はもうあるだろうから大丈夫」

 

「3人組にしますか?それともみんなで移動してもらいますか?ルートになってる森はそこそこ長いですから、時間はかけすぎない方がいいと思いますけど」

 

「うーん、じゃあ全員で移動してもらおうか。その方が驚かす一つ一つに手間をかけられそうだしね」

 

 カタリナとルビアはハイタッチをして笑い合う。完璧な計画を立てれてお互い大満足していた。

 が、カタリナはそのままハイタッチした手を握った。

 そして、ルビアはこの状況を思い出した。

 

「(密室にカタリナと二人っきり。そして夜。カタリナは俺の手を握ってる。この状況……。許可をもらえばいいのでは?)」

 

 ルビアはカタリナの手を握り返した。

 

「キスしていい?」

 

 カタリナが手を握ったのに他意はない。ただ昔のように手を握ってブンブンと振り回したかっただけだ。

 しかし、キスしていいかと真正面に言われたカタリナは赤面を回避できない。ルビアの顔はカタリナの前世からタイプと言っていいほど好みでもあったからだ。

 

「え……?」

 

 少しずつルビアの顔が近づいてきたその時。

 

「義姉さん!!!!」

 

 大きな音を立てながらルビアの部屋の扉が開いた。そして入ってくるのはキース。

 

「いないと思ったら何してるの!?なんで手を握り合ってるの!?それになんで義姉さんは赤面してるの!?ルビア様何したんですか!?」

 

 キースの声に冷静になったルビアはカタリナの手を話して弁解を始めた。

 

「いやぁ、明日やりたいことの企画をカタリナと考えてただけだよ。カタリナ、もう部屋に戻った方がいいよ。明日楽しみだね」

 

 カタリナと同じでルビアの顔も少し赤くなっている為、キースの疑義の念は晴れないがカタリナの身に何もなかったことに安心して場は落ち着いた。

 

「じゃあ義姉さんは部屋に連れてくので、ルビア様も早く寝てください。……あぁやっぱり、義姉さんから目を離しちゃダメだった」

 

 カタリナの背中を押しながらキースは退出していった。

 そして、二人が退出した後一人顔を隠しながらルビアはしゃがみ込む。

 

「(うわぁぁぁぁぁ、やってしまったぁぁぁぁ。手がすべすべだったぁぁぁぁぁぁ)」

 

 後日行った肝試しは大成功だったが、ルビアは水鉄砲を持ったジオルドとメアリに大量の水を浴びせられた。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

 旅行最終日の夜。明日の朝に帰る為最後の宿泊だった。

 そしてカタリナは忍び足でルビアの部屋に行きノックした。

 

「はーい。いいよー」

 

 メイドだと思ったルビアは軽く返事をするが、入ってきたのがカタリナだった為、一瞬で姿勢を正した。

 

「え、えっとカタリナ?その、嬉しいんだけど……心の準備がまだ……」

「海に入りたいんです!」

「え?」

 

 たじろぐルビアをそばに、小声な大声でカタリナは言った。

 『海に入りたい』カタリナは未だ海に入れてないことが心残りだった。貴族は海に入るという風習はなくこの旅行でも海水浴はなかった。

 前世の記憶があるカタリナはどうしても海に入りたかったのだ。

 

「ずっと心残りだったんです。こんなに綺麗な海なのに入らないなんて。メアリ達に言ったけど止められちゃって。……でもルビア様ならいいよって言ってくださる気がしたんです!」

 

「えぇ……?初日に入ってたじゃん。落ちて、だけど」

 

「あれは入ったには入りません!」

 

 初日にボートから落ちたことを指摘するがカタリナ基準では海水浴にはならないらしい。

 ルビアの本音は海で遊びたい!だが、恥ずかしいという気持ちがあるのも事実。

 だが、カタリナのお願いには逆らえない。上目遣いでお願いをされたら断れる男などいないのだ。

 

「じゃあ、少しだけだよ」

 

 少し赤くなった顔でため息をつきながら許可を出す。こっそり家から出て海へ向かった。

 

「楽しい?」

 

「はいっ!ルビア様は入らないんですか?」

 

 綺麗にクロールを泳ぐカタリナを横目に砂浜に座り込んだルビアが聞いた。

 流石のルビアもカタリナの水着を見る勇気はなかったようで、ラフな服を着たまま海へきた。

 カタリナはというと、セパレートタイプの水着にラッシュガードを着た格好で露出は少なめだったが、それでも足は晒されている。

 

「どこで泳ぎを覚えたのさ。俺より上手だよ」

 

 今度はバタフライと華麗な泳ぎを見せるカタリナ。

 正面から見る勇気はないが、横目で綺麗な泳ぎを見ていた。

 

「カタリナはさ—————って!えぇ!?カタリナ!?」

 

 海を見るとカタリナがいない。思わず立って海へ走り出したルビア。そのまま海に入り、カタリナがいた場所まで泳ぐ。

 すると、カタリナが水面に浮かび上がった。

 

「……あれ?ルビア様も入りたかったんですか?」

 

「はぁ、よかったよ。潜ってたの?怖かったじゃんか」

 

 ルビアは髪をかき上げながらほっと一息ついた。

 少し疑問を浮かべた顔を見せたカタリナは「あっそうだ!」と言ってその手に持ったたものを差し出す。それは綺麗な貝殻だった。

 

「この海本当に綺麗で、下に綺麗な貝殻があったんです!今日は月も明るくてよく見えて本当に綺麗だったんですよ!今日付き合ってくれたお礼に、どうぞ!」

 

 差し出した貝殻はそこそこ大きく綺麗な形で、月明かりの明るい今日なら海の下に落ちてようと目立つような雰囲気だった。

 差し出されたそれを大事そうに受け取ってルビアは微笑んだ。

 

「あぁ、ありがとう。大事にするよ」

 

 ルビアの笑った顔を見て先日の話を思い出しカタリナも赤面する。

 こうして旅行は幕を閉じた。

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

「カタリナー!最終日だけど遊びに行かない?」

 

「義姉さんは宿題で忙しいので、遊べません。申し訳ないですけどお帰りください」

 

 最終日にクラエス邸に遊びにきたがキースに門前払いをされた。

 宿題ねー。は、ははっ。

 

「やっべ、俺もやらねーと」

 

「え、やってないんですか?」

 

 キースの引いた顔を見て急いで家に帰り、宿題を始めた。




来週は普通に勉強がヤバくて休みます!

すみません!!!

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