タイトルのまんま、スナック感覚でどうぞ。

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リハビリしようとして何かを間違えた末路。


勇者様、風俗行くってよ

勇者一行が魔王を倒したという一報は世界中に伝播した。

 

魔王は世界を我が手中に納めようと部下達を使い、人間を襲っていた。人間側は抵抗し、国から実力者達を集わせて対抗する。

 

そして、勝利した。

未来永劫、彼の伝記が途絶えることはないーーーー

 

 

 

 

 

俺の名前はファルコ。

元傭兵の男であり、そしてこの勇者のパーティーの一人だ。

 

「ーーー女の子とハスハスしたい」

 

 

そんな勇者のパーティーの一人である俺は、正直泣きたい。

 

仲間を集め、人望を集め、魔王を倒した最強の英雄。

容姿端麗、頭脳明晰、責任感が強く少し抜けている所もあるがそれもどこか彼の長所になるような完璧超人。

 

 

「風俗に行って経験豊富なお姉さんとエッチな事したい……」

「……えぇー」

 

そんな男は今酒場の机に突っ伏し、思春期の少年みたいなこと言ってる。

才能に溢れ、更に己の限界を超え続けた男。

 

そんな男が一番にぶつかっている壁が性欲なんてそんな。

 

「あー……えっと。そこまで思い悩んでいたのか?」

「舐めるな、既に僕は『だいてー』なんて声援にすら反応している」

「末期じゃないか」

 

どうやら本気で悩んでいるようだ、性格が真っ直ぐなため自分の悩みにも真摯に向き合うらしい。

しかし、俺は何を悩んでいるんだろうと首をかしげる。

 

「お前なら選り好みし放題じゃないか。見ず知らずの人と関係を持つのが嫌ならならもうパーティーの仲間とーーーぉっ!?」

 

そこまで言って、俺は頬を殴られて吹っ飛ばされる。

 

咄嗟に対応して体を使い殴られた衝撃を流した上に受け身まで取ったのに相当痛い、割りと本気でやりやがったな?

常人なら首から上消し飛んでるかもしれないぞこれ?

 

「何を……言っているんだ!」

 

そして殴った勇者本人は殴った拳が痛いとばかりに涙を流している。

え?泣きたいの俺なんだけど。

 

「仲間に手を出すなんて許さない!!」

「敵の幹部に言ってやった台詞そのまんまじゃねぇか……俺、仲間なのに手どころか拳きたんだけど?」

「そんな事言うからだ、失望したよファルコ!仲間達は魔王を倒すために俺についてきてくれたのにっ!」

 

さらに拳を握り、しかしこれ以上俺を殴るわけにも行かず場のない怒りを抑えようとしている。

つまりは高尚な理由でついてきてくれた他の仲間達ーーーというか俺達二人以外全員女なんだけど、彼女達を性欲のはけ口の様に扱うなということだろう。

 

……なんだろうか、どこが行き違っている気がする。

 

「えっと、仲間が魔王を倒すためについてきたと?」

「あぁ!それ以外に僕についてくる理由なんてないだろう!」

 

言うまでもない、と首肯する。

ーーーあぁ、成程。と。

 

 

 

 

「いや全員お前に惚れてたからだぞ?」

 

 

その言葉に、勇者は固まる。

 

 

 

「……なん、だって……!?」

「なんだマジで知らなかったのか?傭兵だった頃に会って意気投合した俺は勿論除いて他の奴等は立候補だったろ、しかも旅の途中であった奴等ばっかりだし」

 

「そ、それは僕と魔王を倒すために……!」

「いやまぁ確かに意味分かんないくらい強かったけど……でも女だらけだし、お前をみる時の目が違うことくらい俺でもわかるぞ」

「な……なぁ……!?」

 

先程の姿勢はどこにいったのやら。タジタジになった勇者はまるで言い訳するように言葉を紡ぐ。

 

「で、でもっ。ホテルは安くするために部屋をほとんどとらなかったろ!?あれは金を武器や薬草に回して魔王を倒したいという意思があってだな!」

「にしては俺一人で一部屋広々と使ったなぁ……というかそこまで金策を考えてるなら、アイツら化粧と服買いすぎだろ。街の度に香水まで変えてんぞ」

 

「それは……!そういえば何故だ?」

「え、マジで今更?」

 

好きな人の前ではより美しくありたいものだろう。

それが女の心理という奴だ、彼女達の場合肉食感が凄いが。

 

勇者は愕然として、その膝をつく。

 

「……まさか、僕は……モテてるのか……?」

「一発殴り返しても許されるんじゃねぇかなこれ」

 

しかし勇者、振り返ってみると心当たりが全く無いわけではないのかもしれない。

少し目が泳いでいる。

 

しかし、と彼は頭を振る。

 

「いや、やはりない。幼馴染みのリーナは!?小さい頃から一緒だったんだ。勇者として連れてかれてしまったから途中で別れたけど、数年振りに再会したアイツがっ」

「ーーーそんな奴が隣歩いているだけで顔を紅潮させるか?なんなら幼馴染みをいいことにスキンシップしまくってただろ」

 

目のやり場に困ったわ。

つか、勇者が俺を道連れとして一緒にいるのを見て「男色の気はないわよね?」とか言われたんだけどね?

 

「な、ならっ。元アサシンで斥候のシアは?あの子は僕の妹みたいなものだぞ?よく僕の懐に飛び込んでくるんだ」

「いや、訳ありで年下だけど女だからな?あと、お前目線だと気付かないかもだけど顔うずめてる時だと人に見せられない表情してたから」

 

あの顔に気付いた時に俺に向けてきた顔も中々だったけど。まぁ俺も相当な顔をしていたと思うからお相子だろうか、女怖い。

少なくとも仲間に見せる顔ではなかったよあれは。

 

「異世界人のミサキは?彼女は急にこの世界の事情に巻き込まれて、しかし力を神に与えられたからと仕方なく魔王討伐の旅に参加した筈だ!」

「いや帰らなかったじゃん。魔王倒したら帰るって契約で倒したのに王様から貰った結晶をカタナで両断したじゃん」

「あれは事故だろ!」

 

目の前で手を滑らせたと言って得物を奮う剣士いる?背中預けられないよそんなの。

 

結晶差し出した王様も俺も唖然としたよ。

ちなみに他の女性陣は舌打ちしてた、ライバルが減らなかったからかな?怖いよぉ女。

 

「っ……プリーストのターニャは!?高潔で清廉な心の持ち主で幹部に襲われた教会から恩返しと言って選ばれた彼女はそもそも異性なんてーー」

「なんだったら裏で悪魔と契約してお前を惚れさせようとしているアイツが一番危険だけどな」

 

ちなみに勇者ステータスで呪いは打ち消されていたりする。

 

「そこまで知ってて何故助けてくれないんだファルコ!?」

「だって下手に一人に介入したら嫉妬で別の奴に殺されそうだしーーーあと俺もなんだかんだモテてるお前を嫉妬で殺しそうだし」

「実は殺伐としすぎじゃないかな僕のパーティー!?」

 

鈍感なのは知っていたが今さら気付いたのか勇者よ。

 

俺も中々に居づらい環境から逃れられるってもんさ。

金のためとはいえ中々キツい旅だった、いやホント。でもまぁご馳走にありつけたし勇者も良いやつだし、不自由といえば女性陣の火種というかキャンプファイアーにくべられそうになったくらいか。いや死ぬわ。

 

しかし勇者は思った通りの愚直さだな……誰かとくっつくなりいい雰囲気になることもあったろうに。

 

「そーゆーわけだ。つまり勇者、相談に乗っておいてなんだがお前は下手に風俗でアイツらの知らない女を抱こうものならーーー爆発四散するか後ろから刺されるか斬り殺されるか生きて死の奴隷になるかのどれかになる可能性がある」

「重すぎない?というか知らない内にそんな事になってたのかい!?魔王の口上よりも恐ろしいじゃないかっ」

 

 

『ーーーフハハハ!!人間共よ!よくぞここまで来た!敬意を表して苦しむ暇もなく殺してやろう!!』

 

 

「……あー、確かに。どうせ死ぬなら一思いに殺してくれるっぽかったもんな」

 

なんだよ魔王よりも恐ろしい仲間って。

 

まぁ、唯一の救いはそれなりに皆が仲いい事だろうか。

全員が勇者を好きなことをわかってて、その上で連携して魔王を倒したのだ、生半可な信頼では到底できないだろう。

 

…………表向きはね?

比較的恋愛以前に人助けと魔王討伐以外に興味を殆ど示さなかったキングオブ鈍感な勇者が気付かないのは仕方ないのかもしれない。

 

しかし勇者が関係を持つなら、やはり仲間ならばワンチャンあるのではないか。

世間体的にも考えて、風俗より悪い方向に行くのは考えにくい。

もはや神聖視されてる節あるしね勇者、低俗なイメージが持たれやすい風俗なんて行ったらどうなることやら。

 

きっと多分メイビー世間体をさておき死ぬ、というか仲間に殺される。

なんだよ魔王よりも怖いじゃないか勇者のその後。ハーレムもののアフターストーリーってこんなものなのかな。

 

 

ーーーあれ?というか俺は?

誰一人としてアプローチ受けてねぇぞ。

問題児だらけとは言っても一人くらい俺に傾いてくれてもよかったんじゃない?泣くよ?

傾いたら傾いたで怖すぎるのでやっぱ無しで。

 

「まぁどうしてもというなら風俗に行くのは止めはしないけどよ。わざわざ相談してくる程には溜まってるんだろう?」

「ま、まぁ……」

 

そりゃ、女性陣には相談しないわな。

野郎は俺と勇者であるコイツしかいないわけだし。

 

「それにファルコは詳しそうだし」

「失礼な、無駄遣いせずにキチンと毎月通ってるわ」

「流石だよファルコ」

 

よせやい、照れるだろ?

 

まぁ真面目な話、こんな下らない案件で勇者像に泥を塗られるのは恥ずかしい。俺も一行の一人なのにバリバリ行ってるけど。

そもそも勇者が行ったら顔に泥で済むどころか全身血で濡れるかも定かではないけど。

それに俺達は何度も助け助けられた仲だ、解決の手助けをするのは吝かではない。

 

「しかし金の問題じゃないんだよなぁ……そういや問題のアイツ等はどこ行ったんだ?誰か一人は近くに居ただろ」

「皆こぞって宝石店に行ったよ?」

「へぇ……ま、俺はわからんが女は宝石が好きなんかねぇ……?」

「いや、全部終わって邪魔物はあまりないから指輪を買い……に……って」

 

 

「「……」」

 

 

 

ーーーガタン。

 

全てを察した二人は席を立ち無駄のない動きで勘定を済ませて、ついでに金を握らせて黙らせた後に店の裏口の方に移動する。

 

ドアノブに手を掛けた刹那、例のヒロイン集団が酒場に滝の勢いで入ってきたのが聞こえた。

 

「ちょ、邪魔よアンタ達!こういうのは幼馴染みって決まってるの!!」

「うるさい、お兄ちゃんは私と結婚する……!」

「なによ、私なんて今まで貯金した三年分の想いがこの指輪に詰まっているのよ?」

「笑えますねぇ、指輪は値段じゃなくて呪いの質ですよぉ」

 

俺はこれでも勇者一行に選ばれるくらい優秀である。

その視力を利用すると、小さな輪を光らせながら女性陣はなだれ込んでいった。

既に常識超えてるわ、色々と想いが重い。

 

(つか、三年分って……あれ世界で殆ど採れないレアメタルじゃねぇか……!?どんだけ掛けてんだよ……!)

 

禍々しい気配を放っている指輪もあるし。あれ本当に聖女?

 

 

とりあえず勇者のことが大好きなのは伝わったけども。

 

「ど、どうだった……ファルコ?」

 

遠目から眺めていた俺は、奥に居た勇者に向き直り肩を掴む。

 

「よし、勇者。お前を見捨てていいか?」

「ファルコォ!?」

「悪い……だがあれに関わるとマジでヤバい、傭兵時代からの警鐘が全力で鳴っているんだ。魔王の時の倍くらい鳴ってる!」

「僕にそれを押し付けるつもりなのかファルコ!」

「そもそもお前の業だろ……やりたくねぇ……引き受けはしたが魔王討伐よりも気が進まねぇ……」

「そこまでなのか……僕は、そこまでの責任を彼女達に……!」

 

責任っていうのかな、これ。

 

「……わかったよ、ファルコ。僕が間違えていた……まずは彼女達に向き合わなくちゃいけなかったんだ」

「お……おぉ?」

 

「そうだ、なにを怖がっているんだ!僕は勇者だぞ!ここで彼女達をうまく対処して、堂々と」

 

 

一息置いて、勇者は言った。

 

 

「ーーー風俗に行くんだ」

 

 

 

 

「スゲェ……ここまで格好良く格好悪い事いえる奴中々いないぞ」

「褒めないでよ、照れるなぁ」

「褒めてるのかはさておき照れるのはおかしいぞ」

「まぁ、任せてよ。嘘をついてでも行ってやるさ」

 

そう言って、勇者は彼女達の元へ行く。

 

「勇者様?」

 

四人の誰かがそう言って、その刹那勇者に襲いかかろうとばかりに飛び出して迫る。

 

そして勇者は、

 

「ごめんなさいっ!!!」

 

ーーー彼女達を前に土下座した。

これでも大衆の前だ、世間体もへったくれもない。

 

しかし、彼女達の制止は出来た。

その姿を、誰が嘲られようか。

 

例え勇者であったとしても、異性の本気の想いに誠意をもって本気で応えたのだ。

 

それは生半可な事ではない。

特に彼女達のように癖の強い女性達ならば尚更だろう。

 

ーーーまぁ、目的は風俗だけどな?

 

どうやらどうやっても、仲間と関係を持つのは拒みたいらしい。

アイツらしいといえば、アイツらしいけどね。

 

しかし、その謝罪を見せて幾分か和らぎはしたもののその……勢いというかオーラというか圧は抜けきらない。

それを彼も感じ取ったのだろうか、言葉を紡ぐ。

 

 

「ーーーだからこそ皆、聞いてくれ!」

 

……出会った最初は、歳近いくせに勇者と呼ばれてただけの世間を知らない生意気な奴だと思ったんだがな。

 

気づけば相棒になって、魔王まで倒して。

大きくなりやがって、少し涙腺が緩むじゃねぇか。

 

 

「実は、今まで隠してたんだけど!」

 

……そーいや嘘をつくと言っていたが、そこまで器用な奴だったか?

頑張って嘘をつこうとして空回りしたことなら何度もあるし、大体値引きの交渉とかも俺がやってたような。

咄嗟の機転は中々のものだったが、ここでまさかな?

 

 

 

 

あれなんだろう、嫌な予感が……

 

 

「実は僕!男色かもしれないんだっ!!!」

 

「ーーーーーえっ?」

 

 

やってしまった、言葉を発してしまった。

あまりに奇天烈な事を言われたから、その存在を露見させてしまった。

 

ギロリ

 

その瞬間、獣達。いや、魔王を超えるナニか達の視線が俺に向いた。

 

 

 

 

 

 

 

男二人は、夜の街を駆ける。

 

 

背後からは、般若のような女性達が追ってくる。

 

「勇者テメェ!マジで!!どうかしてんじゃねぇの!!?」

「今の今まで黙っていた罰だよ!!これで君も当事者だ!」

「オメェ本当変わったなぁふっっざけんなぁぁ!!!!」

 

男達は走る。

汗と涙を混じらせ流しながら、あらぬ誤解とある下心を背にーーー!

 

 

 

 

 

 

 

「「……」」

 

チチチチ

鳥の声が、静かに響く。

長い夜が終わり、朝日が眩しく二人の男達を包んだ。

 

「まさか」

 

二人は全裸で地面に体育座りして、その朝日を眺めていた。

 

「……まさか、男色だからって体に叩きつけるって言って強姦されるとは」

「普通立場逆だけどな……でもよかったじゃないか、性欲は満たせただろう?」

「満たせた……というか枯れたよ……まさか、まさかあんな目に遭うなんて……」

 

しくしくと、涙を流す勇者。

あの後俺達はあっさり捕まった。

無理だよ、有名な魔法使いに聖女に時空超えて斬り付けてくる剣士にアサシンだよ?勝てるわけないじゃん。

 

受けた仕打ちは、あまりにも手痛かった。

 

ーーーでも、うん。

俺に至ってはシンプルに顔ボッコボコにされたんだけどね?

 

ゴブリンみたくなっちゃってるよ、俺。

お前が男色とか言うからなんか俺にまで被害来たじゃん。

 

女性陣はなんだかんだスッキリして宿に戻ったらしい。

それでいいのか、風俗行ってる俺が言うのもなんだけど愛とかそういうのは無いのか?とりあえず済ませるものは済ませたらいいってか?なんて強かな連中だよ。

 

「まぁ、アイツらもお前も問題あったってことでーーー変わるしかねぇんじゃねぇの?お前も、アイツらも」

「……?」

 

「そもそもの原因は気持ちを伝えなかったアイツ等もあるし、魔王討伐ばっかり考えて仲間のことをしっかり見れてなかったお前も悪いんだろ」

 

 

ーーーそして全て気付いてて、一切干渉しなかった俺も。

 

 

「だから、まぁ。少なくとも応えてやれよ?曲がりなりにもアイツ等は本気で想って行動してくれてたんだーーーそれを答えないで気のある風を装える程、お前は器用じゃないだろうしな。今度は腹割って話せよ」

 

そう言って、フラフラと俺は立ち上がる。

 

「どこにいくんだ、ファルコ……?」

「決まってるだろ」

 

 

ーーー風俗、じゃなくて病院です。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

数日の入院と解呪を経て、俺は退院した。

 

「バカにならない金が飛んでったなぁ……」

 

特に解呪で、国の権威的な人が数人出てきて始まった時には遺書でも書こうかなと思った、あの聖女のヘイト溜まりすぎじゃね?多分本気出せば即死か解呪不可能だろうから手加減はしてくれたんだろうけどさ。

 

まぁ、結果的に解呪は成功して可愛いナースさんに看病されたので良しとしよう。

 

そうそう、勇者パーティーは解散したらしい。

まぁ、魔王討伐は終わっているから当然といえば当然だ。

 

なんでも、勇者がその姿を消したのが原因だ。

最後の姿は、パーティーメンバーの一人一人に頭を下げ、どんな言葉を浴びせられようとも一切の言い訳もしなかったらしい。

 

一度も俺の元に来てないところを考えて、勇者は勇者なりに女性陣にケリを付けたという事なのだろう。

 

退院した俺は、世話になった人たちにお礼を言って病院を去る。

 

「さてどうするかね……勇者パーティーも解散したし、ツテも増えたし傭兵生活に戻ろうかねぇ……」

 

自慢じゃないが数日入院してたとはいっても、実力ならそこらに引けを取らないはずだ。

散々ではあったもののなんだかんだ前のパーティー寂しい気持ちはないわけではない。しかしずっとそうしていても蓄えはなくなるし、割り切りは大切だ。

 

「そいや傭兵時代のアイツら元気してっかな……ん?」

 

ふと、木陰にいた一人の女性が目に止まった。

容姿はかなり整っている、彼女もこちらに気付くとニコリと笑った。

 

「こんにちは、元気になったみたいだね」

「お、おぅ……?悪いけど会ったことあるか?美人の顔は覚えるようにしてるんだが正直さっぱりだ」

 

しかしなんだろうか、既視感というか……会ったことがあるような不思議な感覚がする。

何故だ?口調か雰囲気か、どことなく誰かに似ている。

 

くすりと笑って、彼女は言った。

 

「僕だよ、勇者さ」

 

 

 

 

 

…………?

 

 

「転性魔法つかったんだ……どうかな?」

 

 

 

…………?

 

 

 

「ファルコの最後まで見捨てないで親身になってくれた優しさ……気軽に話せる安心感……それにあの男気!色々言われて、僕も分かったんだよ」

 

 

なにを?

 

 

「あ、女になってファルコと共にすればいいんだって」

 

「ーーーちょっとなに言ってるかわかんない」

 

「これなら、さ?皆からの監視もないから好き勝手動ける……あ。でも勇者の力はのこってるからね?戦闘なら任せてよ、傭兵をするのもいいね、一緒なら敵無しだよ……これから、ずうっと」

 

どこか、妖艶に言う。

 

俺は、その目を知っている。

 

 

それは、かつての仲間達が勇者に向けていた目だった。

 

 

「変われ、って言ったものね。ファルコ?」

 

 

 

ーーー違う、そうじゃない。

 

気付けば俺は走っていた。

後ろから、何か聞こえるがかまわない。

この十数日になにが起きたのかもわからない、わかりたくもない。

 

とりあえず走る、退院後すぐの体に鞭をうって。

 

 

 

女体化した勇者と俺の逃走劇は、また別の話。




バタフライエフェクトってきっとこんな感じ(IQ5)

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