心まで脱がして~学園一の美少女は絵のためなら何でも言うことを聞いてくれるそうです~   作:青ヤギ

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#16 羨望。破局。

 乃恵を保健室に連れていき、腫れた頬を冷やしてもらった。

 

「あなたたち、よく一緒に来るわね」

 

 保険医の女性はこちらの事情を追求することなく、黙々と治療をしてくれた。

 以前、乃恵が情緒不安定になったときも、彼女は感情的にならず落ち着いて対応してくれた。

 いい先生だ。

 

「……まあ、若い子たちの間にはよくあることだけど……ほどほどにね?」

 

 女の直感というやつか、乃恵の頬の腫れを見て、保険医はおおよその事情を察したようだった。

 長年高校に勤務していると、こういうことはそう珍しいことではないのかもしれない。

 

「冷やしすぎるのも良くないから、痛みが引かないようなら痛み止めを飲んでおきなさい。……せっかく綺麗な顔なんだから、大事にしなさいね?」

「はい……ありがとうございます」

 

 ある程度痛みが引いたところで、僕は乃恵をマンションまで送った。

 

 部屋に入り、乃恵をソファーに座らせる。

 

「あ……何か、お茶……」

「いいよ。俺が淹れるから、大人しくしてて」

 

 すっかり我が家同然に使い慣れたキッチンで紅茶を用意する。

 

「はい」

「ありがとう……」

 

 頬のことを考えて、ぬるめに淹れた紅茶を乃恵はゆっくりと飲んだ。

 沈黙が部屋を包む。

 

 ……紗世に何を言った?

 とは聞けなかった。

 

 ……紗世に何をされた?

 とも聞けなかった。

 

 恋人の乃恵が、紗世に傷つけられた。

 幼馴染の紗世もまた、恐らく乃恵に傷つけられた。

 どちら側に付くべきなのか、僕は悩みあぐねている。

 

 本来ならば迷わず恋人を優先すべきだろうし、現に僕は紗世を追いかけず乃恵と居る。

 ……でも、紗世は僕にとってただの他人ではない。

 もしも乃恵が悪意と害意を持って、暴行に至らせるほどに紗世を追い詰めたというのなら……この先も彼女と笑顔で一緒に過ごすことはできそうにない。

 

 時計の秒針の音が、いやにやかましく聞こえる。

 紅茶はすっかり冷め切っていた。

 

「……片桐さんのことが、ずっと……羨ましかったんだ」

 

 しばらくして、乃恵は訥々と口を開いた。

 

「いつも自分の気持ちに素直で、言いたいことも、やりたいことも、はっきりと表に出せて、気楽に話せる友達もたくさん居て、熱中できるほどに好きなことがあって……朝人みたいな素敵な幼馴染が居る。そんな片桐さんが、羨ましかった。彼女は私の理想そのままだった」

 

 クラスメートが聞いたら、みんな耳を疑うだろう。

 誰が想像できるだろうか。

 乃恵のように容姿にも能力にも恵まれた才女が、どこにでも居るような普通の少女である紗世に憧れをいだくなど。

 ……だが乃恵の悩みを知っている僕には、紗世を昔から知る僕には、わかってしまう。

 

 二人は良くも悪くも対照的だった。

 乃恵が求めているものを紗世は当たり前のように持っていて、紗世もまた自分がコンプレックスに感じていることを乃恵は当たり前のようにこなせてしまう。

 ……ふとしたきっかけで、二人が衝突するのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

 

「人の顔色ばっかり窺って、自分を押し殺してる私とは真反対。眩しくてしょうがなかった。教室で朝人と楽しそうに話してるたび……すごい嫉妬した。だから……今日、酷いこと言っちゃったんだ」

 

 乃恵は静かに、懺悔するように語る。

 

「『どうして、一番大事な気持ちだけは隠すの?』って……」

 

 再び沈黙が僕らを包む。

 乃恵は窓の外に目を向け、遠くを見つめる。

 

「……知らなかったな。自分に、こんな一面があるだなんて」

 

 乃恵はずっと、両親が望む良い子であり続けた。

 周囲が求める美しい才女を演じ続けた。

 ……そんな彼女にも、明確に誰かを傷つけようとする、負の一面があった。

 誰しもが持っていて、いやでも直面する醜い自分と、乃恵はこの日、初めて出会ったのだ。

 

「……朝人は、私を許せない?」

 

 まるで罰されることを望むように、乃恵は言った。

 

「わかってるんだ。朝人にとって片桐さんは、特別だって。わかってたのに……わかってたからこそ我慢できなかった」

 

 僕が問い詰めさえすれば、乃恵は紗世との間に起きたすべてのことを明かすだろう。

 ……だがこれ以上、糾弾する気は起きなかった。慰める気も起きなかった。

 

 いまの乃恵には、どんな言葉も毒にしかならないとわかるから。

 彼女を包む「闇色」が、それを物語っていた。

 

 

 

 その日は、乃恵の絵を描かなかった。

 いまの乃恵を描くべきではない。そう判断した。

 ……どの道、僕もこんな心理状態では、良い絵など描けるはずがなかった。

 

 

 

    * * *

 

 

 

 その後、紗世は夏期講習にすっかり来なくなった。

 メッセージには既読すら付かなくなった。

 

 夏祭りを目前に控えた、蒸し暑い日だった。

 

「お見舞い、行ったほうがいいかな……?」

 

 乃恵が不安げにそう言ってきたが、僕は「やめておこう」と首を横に振った。

 紗世に謝りたい気持ちはわかるが、乃恵が行ったところで余計に事態が拗れることは明白だ。

 それは、きっと僕が顔を出したところで同じだろう。

 

「紗世には、時間が必要なんだと思う」

「……時間で、解決できるのかな?」

 

 乃恵の疑問に、僕は「きっとそうだ」とは断言できなかった。

 

 一応、おばさんに「紗世の様子はどうか?」とは尋ねた。

 食事はちゃんと取っているし、柔道の練習も欠かしていないという。

 ……ただ、学園だけには行きたがらないそうだ。おばさんはいつものサボり癖だと思っているようだった。

 

 ……両親に心配をかけさせないためなのか。表面上は、いつも通りの態度を装っているらしい。

 

 どちらにせよ、紗世を追い詰めた当人である僕らに、できることは無さそうだった。

 

 

 

    * * *

 

 

 

 小さなコンクールで初めて入賞したときのことを思い出す。

 僕よりもずっと年上のお兄さんに「まぐれで入賞したからって調子にのるなよ!」と絡まれたことがあった。彼の絵は、展示すらされなかった。

 

 その頃の僕は、絵は人を幸せにするものだと信じていた。

 だからショックだった。暴言を吐かれる以上に、自分の絵によって誰かが傷ついてしまったという事実が。

 けれど、落ち込む僕に絵画教室の先生は言った。

 

『よく覚えておきなさい朝人くん。敗者にかける情けは、一切無いの』

 

 泣きながら去っていく少年の後ろ姿を冷めた目で見ながら、先生は断言した。

 

『この世界にまぐれは無い。あなたの絵は評価された。彼の絵は見向きもされなかった。それが事実よ? 胸を張りなさい。そしてよく見ておきなさい。ああなってはダメ。他人をけなしたところで自分の価値は上がらない。敗北は揺るがない。悔しければもっと腕を磨くしかないの。できない人間から潰れていく。それが、才能の世界で戦うってことなの。彼は……その覚悟が弱かった』

 

 事実、彼はそれ以降、絵画教室には来なくなった。

 

『足下を見てはダメ。もっと前へ。もっと上へ。それが勝者が目指すべき場所よ』

 

 普段優しい先生は、こと勝負事に関しては常に厳格だった。

 作品が落選しても慰めることは決してせず、言い訳も許さなかった。「コンクールに通じなかったのは、あなたの実力不足だ」とハッキリと口にした。

 そこで折れるか、奮起するかで、才能の有無は明らかになることを彼女はよく知っていた。

 

 だから、僕にも才能は無いのだとわかった。

 僕は誰かを傷つけてまで絵を描こうとは思わなかった。

 絵で結果を出すたび、自分の足下にどれほどの怒りや悲しみや嫉妬が降り積もっていくのか。考えるだけで発狂しそうだった。

 敗者になることは、もちろん辛い。

 だが同時に、勝者には勝者の、苦しみと葛藤がつきまとう。

 

 乃恵も、いま同じ気持ちなのだと思う。

 僕には、先生が口にしたようなことを、乃恵に伝える覚悟がない。

 

 でも心のどこかではわかっている。

 僕らは前に進むべきなのだ。

 自分たちで決めて、この道を選んだのだから、たとえそれで傷つく者が現れようと、歩みを止めてはいけないはずだ。

 

 だから今日は、乃恵の絵を描こうと決めた。

 たとえ乃恵からどんな感情の色が溢れていようと、ソレを描きだすつもりでいた。

 

 ……しかし、部屋に上がっても、乃恵はモデルになろうとはしなかった。

 

「ねえ、やっぱりコンクールに絵は出さないの?」

 

 手作りのアップルパイを切り分けながら、乃恵は尋ねてきた。

 

「だから出さないって」

「朝人の絵なら、いいところまでいけると思うんだけどな」

「いいってば。画家を目指すワケじゃないんだから」

「……絵を、仕事にしないの?」

「最近は、玉井先生みたいに美術教師になったり、絵画教室開いて絵を教えるのもアリかなって思ってる」

 

 甘いアップルパイを口にしつつ、僕はそう答える。

 公務員になることばかり考えていたが、やはり絵に関わる仕事も悪くないのではないかと思うようになった。

 父は難色を示すかもしれないが、画家という修羅の道に進むよりはずっと堅実的なはずだ。

 

「……それって、すごく勿体ないと思うな」

 

 乃恵は僕の答えに不満げだった。

 

「私、やっぱり朝人には、もっと広い世界で活躍してほしいって思うの」

「……どうして、そこに拘るんだ?」

 

 僕が乃恵のために絵を描き、乃恵がそれによって喜ぶ。

 それだけではダメなのか?

 

「だって、きっと私みたいな人が世の中にはたくさん居るはずだもの。朝人の絵には、そんな人たちを救う力があるんだよ。だから……」

「……無理だよ」

「どうして決めつけるの?」

「俺には才能が無い」

「そんなことない! 朝人なら絶対に素晴らしい画家になれるよ! だって……朝人の描く絵に、私は何度も励まされた!」

「乃恵にとってはそうでも、世間にも通じるとは限らないだろ?」

「そんな……挑戦もしてないのに、言い切っちゃダメだよ!」

「どうしたんだ乃恵? 何で今日に限ってそんな……」

 

 なぜ僕の夢のことについて、そんなに踏み込んでくるのか。

 まるで、僕が画家の道を選ばなければ、自分の立つ瀬がないとばかりに。

 

「ねえ、お願い朝人。私の言葉を信じて、コンクールに出してみて? 私、いくらでもモデルになるから。必要な道具があるなら買ってあげる。ここで泊まり込みで描くなら、身の回りのお世話も全部私がするから。だから朝人は製作に集中して……」

「待てよ……何だよ、ソレ?」

 

 どうして。

 どうして、そこまでする理由がある?

 

 乃恵がやろうとしていることはもはや、恋人として支えるといった、そういう次元のものではない。

 

「乃恵? 自分が何を言ってるか、わかって……」

「言ったでしょ? 朝人の絵のためなら、私は何だってするって。本気だよ? だから……」

 

 ひと呼吸を置いて、乃恵は誓いを立てるように口を開いた。

 

「私が稼ぐよ」

 

 笑顔で乃恵はそう言った。

 

「私、いっぱい勉強して医者か弁護士になるから。朝人を養えるぐらいに稼ぐよ。それで朝人は絵に集中して画家を目指すの。何年かかったっていいよ? 家事もしなくていい。朝人が成功するまで、私が何もかも面倒見るから。ねえ? そうしよ? だから安心して? 朝人は何も心配しないで、絵を描き続けて……」

「帰る」

「朝人?」

 

 荷物を抱えて、早足に玄関に向かう。

 

「待って朝人! 何で怒るの!?」

「……紗世にも、同じことを言ったんだろ?」

「……え?」

「『自分なら、それだけの覚悟がある』とでも言ったんじゃないのか?」

「どうして、それを……」

 

 当てずっぽうのつもりだったが、どうやら真実らしい。

 乾いた笑いが出そうになる。

 

「だって……だって……私、朝人の才能は、本物だと思うから。私の人生、すべてを捧げてもいいって思えるから! ……だから!」

「そんな惨めな生き方ができるか!」

 

 声を荒げて言い切った。

 

「そんな関係、絶対に間違ってる……」

「わ、私は、ただ、朝人のためを思って……」

 

 乃恵の声は震えていた。

 

「朝人の絵のおかげで、私は変われた。だから恩返しがしたいの。それじゃダメなの? 私、やっと見つけたんだよ? 自分が人生を賭けてまでやりたいこと。それが朝人を支えることなの! 朝人の絵は、きっとたくさんの人を救うわ! だから!」

「……変わった、だって?」

「そうだよ? 朝人が『空っぽ』の私に色を付け加えてくれたんだよ?」

 

 記憶が呼び起こされる。

 

 『私のキリスト』と題された乃恵の絵。

 玉井先生の『いまのままだと、彼女、危ういかもしれないよ?』という忠告。

 

 ……ああ、やっとその意味がわかった。

 何で、すぐに気づけなかったのだろう。

 

 彼女を救うために、絵を描いてきた。

 心の隙間を埋めるために、良かれと思って何枚も描いた。

 

 でも、結局僕がやってきたことは……。

 

「……変わってないよ。乃恵、君は何も変わってない」

「え?」

 

 他人に求められるがままに仮面を付け替える自分を、乃恵は「人形みたい」と称した。

 そうだ。彼女は、いまこのときも……。

 

「君は俺にとっての、都合のいい『人形』になろうとしてるんだぞ!? それがわからないのか!?」

「あ……」

 

 僕がやってきたこと。

 僕は乃恵を救ってなんかいなかった。

 ただ、乃恵を自分色に染めただけだ。

 

 そして、わかってしまった。

 乃恵が求めているのは、……僕本人ではないということを。

 

『誰だって……誰だって良かったじゃない! なんで、朝人なのよ!?』

 

 紗世の悲痛な叫びが思い出される。

 

 乃恵の心の隙間を埋める存在。

 それは、はたして、僕である必要性はあったのか?

 あるいは、乃恵がそう思い込んでいるだけだとしたら……。

 

「……もしも俺が絵を描かなくなったら、君はどうする気なんだ? それでも俺のことを『支える』だなんて言うのか?」

「え?」

「乃恵。君が求めているのは、『絵描きとしての小野朝人』でしかないんだろ?」

 

 気づいてしまった。

 絵という要素が失われたら、僕らを結ぶものは、何も無いということを。

 

 絵を描かない、画家を目指さない、ただの小野朝人では……有坂乃恵の隣には立てない。

 そのことに、気づいてしまった。

 

 なんと脆い関係か。

 ちょっとした拍子で、こんなにも呆気なく崩れてしまうほど、僕らの絆は弱かったというのか。

 

「……ごめん。もう、ここには来ない」

「……いや。いやっ! 行かないで朝人!」

 

 服を掴む彼女を振り払う。

 これ以上、乃恵と一緒に居てはいけない。

 彼女の絵を、描いてはいけない。

 

「いやっ、いやぁ! ごめんなさい! もう、言わないから! お願い! 私をひとりにしないで!」

 

 必死な懇願に、つい足が戻り、彼女を強く抱きしめたくなる。

 でも堪える。

 甘い優しさに浸ってしまったら、今度こそ僕らは戻れなくなる。

 

 扉を開ける。

 外ではいつのまにか夕立が降っていた。

 だが構わなかった。

 

 逃げたかった。

 この現実から。

 僕の手では、何も変えることができなかったという事実から。

 

 僕では、有坂乃恵を……救えなかった。

 

「違う……違うの、朝人……私は……私は、あなただから……」

 

 扉が閉められる。

 乃恵の声が届くことは、もうなかった。

 

 

 

    * * *

 

 

 

 滝のように強い雨が降っている。

 ズブ濡れになっても、途中で傘を買うこともなく、僕は家路を目指す。

 

 家に帰ったら、画材を捨てよう。

 そう決めた。もう何もかもがどうでもよかった。

 

 怖かった。

 自分の絵が。

 あの桜並木で、僕が絵を描いてしまったがために、一人の少女の人生を狂わせてしまった。

 僕と出会ってしまったがために、彼女は……。

 

 

 

 自宅の門の前に着く。

 雨はまだ止まない。

 さあ、早く入って、部屋にある画材をまとめるんだ。

 そう思っているのに……足が動かなかった。

 

 この期に及んで、まだ躊躇するのか。

 信じてやってきたことが、すべて無意味だったというのに。

 僕の絵では、誰も救えない。誰も幸せにできない。

 だから、いっそのことすべて捨てて……。

 

「傘も差さずに、何ボーッと突っ立ってんのよ?」

 

 身体を打つ雨が止む。

 差し出された傘の下で、僕は顔を上げる。

 

「ほんと、アンタって昔からそう。考え事したり、観察に夢中になってると、雨だろうが雪だろうがずっと立ちっぱなしなんだもの。まったく、バカなんだから」

 

 聞き慣れた声が、随分と懐かしく感じられた。

 彼女の軽口が聞けて、こんなにも安心できる日が来るとは思わなかった。

 

「紗世」

「風邪ひくよ、朝人」

 

 窓から、びしょ濡れになって立ちすくむ僕が見えたのだろう。

 あんなことがあった手前、きっと何度も葛藤したに違いない。

 でも彼女は来てくれた。

 不器用に笑って、僕に傘を差しだしてくれた。

 

 傘を受け取る。

 触れる紗世の手がとても温かく感じた。

 

「何かあったの?」

「……」

「うん。いいよ、言わなくて」

 

 ポケットからハンカチを取り出して、紗世は濡れた僕の顔を拭いてくれた。

 

 小さい頃のことを思い出す。

 クラスの男子たちに苛められているところを助けてくれたときも、紗世は僕の泥だけになった顔を、こんな風に拭いてくれたのだった。

 

 いつだって、僕の味方でいてくれた幼馴染。

 周りから浮いて、辛く、寂しく思ったときも、彼女だけは離れず、傍にいてくれた。

 そんな彼女に、僕は……。

 

「紗世……俺……」

「いいって。無理に話さなくて」

 

 目元を拭って、紗世はハンカチを閉まった。

 

「……大丈夫だから。もう、大丈夫だから」

 

 僕を落ち着かせるように……または、自分に言い聞かせるように、紗世は静かに言った。

 

「ほら、家に入ろ?」

「……うん」

 

 昔よくそうしてくれたように、紗世は僕の手を取って、玄関まで一緒に付いてきてくれた。

 鍵を開けて、紗世と入る。

 

「ただいま」

 

 明かりの消えた廊下に僕の声が虚しく反響する。

 みんな留守なのか、返事はなかった。

 

「……お帰り、朝人」

 

 隣の紗世が代わりに、そう言ってくれた。

 

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