星暦2139年ギアーデ帝国に宣戦布告されたサンマグノリア共和国。敵は高度なAIが操るバリエーション豊かな次世代の多脚装甲兵器。共和国の主力は無人どころか有人多脚装甲兵器の開発すら遅れ旧式の装甲戦闘車両。物量技術共に差がありすぎた。
半年も経たずに共和国正規軍は壊滅。総動員を迫られた共和国大統領はその書類にサインをする。大統領令第6609号に基づいた戦時特別治安維持法。後の世に伝わる悪法が議会での審議があれば止められていたかというとそうでもない。連邦最高裁の判事も共和国上院下院議員も民主主義に従い
共和国は300年前の建国時に初めて発された大統領令身分制度廃止の解放宣言に始まり身分制の復活に終わったと言える。
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隙間から堂々と外の緑が顔を覗かせるオンボロバラック倉庫。嘗て物流の拠点だっただろう倉庫街の一角が俺達の憩いの場。
「あ”っ」
「へたくそー」
狙いすまして放ったはずのダーツは的から大きく外れる。予定調和とばかりにニヤニヤ揶揄ってくるレッカ。ハンデと少し後ろで構えるマイナ。もう1年の付き合いになるカイエも無援護。どころか笑いを嚙み殺しているのが見える。
仕方ないだろう。銃にしろダーツにしろ何か苦手意識があるのだ。滑空砲をレギオンにぶっ放すのは問題ないのだけど。
「こーんな射撃の腕で大丈夫ですかーふくちょー?」
「うるさいやい!当たらないなら照準一杯近づけばいいんだよ!でも援護はマジありがとうございます」
「くるしゅーない。あー、シートが硬いから肩がこったわー」
「…おほん、おもみしましょうか」
伸びをするレッカの強調された部分。まあまあな物をお持ちだからではと思っても口にはしない。目を逸らすのも何かもったいないしキョドらず堂々と肩を揉む仕草をしつつ脳裏に収める。マイナもカイエもこいつの前にはなーと思った瞬間。
「ど、こ、を、見て言っている」
身を屈め音もなく標的に接近したNINJYAによる肘打ちに悶える俺の耳のすぐ側を金属の矢が通過した。これでも副隊長なんだけど扱いが酷い。
「そういえばどうだった?あれ」
マイナが何もなかったかのように差し迫ったイベントを話題にした。ここ数年おなじみとなった半年ごとの異動。俺達が結託するのを防ぐためだけのろくでもない再編だが部隊壊滅によるそれよりはましだ。あれは静かな隊舎がくるものがある。
「ここまで来て仲間外れなんてないよね?」
「ああ、今日の
レッカが不安の色を隠してカイエに確認する。行き先は悪名高い例の場所と分かっているが24の枠から漏れる可能性もなくはない。最後の最後でもしハブられてひよっ子達を巻き添えにピクニックとか目も当てられない。
「ふぃー。あとは他の連中がろくでなしでないことを祈るぜ」
「ま、ハルトが盾になってくれるでしょ。なんか死神とかいるらしいしがんばって」
「お宅らもう守ってもらうなんてたまじゃ…スミマセンでした!」
マイナが明るい笑顔で鈍色に光る鉄の矢を構えたので速攻で謝った。実のところさほど合流する顔も知らぬ仲間のことは心配していない。実力はこの4年半を生きたことで証明済み。今更少数派の種族を理由に排斥するような奴もいないだろう。いたとして力を見せればそういう奴は黙る。
「異名持ちばかりの部隊でクズをできるとは思えない。後ろから撃たれて終わり」
「それよりさ。作戦中互いを呼ぶの大変じゃない?みんな号持ちって」
「まー確かに
「じゃなくてさ。
「私の異名にそんなこと思ってたのかレッカ!?」
「大丈夫。普段は隊長呼びだったからこれからの話」
救いを求め周囲を見回す
作戦行動中使うものなのだから言いやすさ憶えやすさも大事だよな。まあ白ブタの舌を噛ませることも心惹かれるけど。ここまで86区東部戦線第19戦区第1防衛戦隊ルスキニア副隊長
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戦時特別治安維持法に従い今まで受け入れてきた移民とその子孫の中から髪、肌、目の色が有色の国民を集め市民権を剥奪、抵抗を武力で排し
野蛮な
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背後から迫る銃撃は左右の建物に吸われて一切がその猛禽に届かない。曲がりくねった狭い石畳を一歩誤れば吹き飛ぶ速さで駆けぬけた鷹が尖塔に飛ばしたアンカーを巻き取り文字通り宙を飛ぶ。
「
『ばかよねー。セミよセミ』
『
追っていた標的が消え逃げ場のない路地で建物の瓦礫を利用した即席の陣地に迎えられた
「うひょー!」
死に際に
観測役を失い貧弱な
「ストライクバッターアウッ!」
風を切って振られた鈍器を後退することで躱し晒された側面に滑腔砲を突き付け撃ち込む。強固な複合装甲を持つ
『デッドボールじゃない?』
「振ったからストライクでいーんだよ。ポイント165で
『了解。おーばー』
『
「ん?今何て言った?な?もう一回。これ副長命令!今日は初ボケのお祝いだな」
『はーいそこの鳥頭。
視界の端で歪なアルミの塊を一瞥。パトロール中運悪く敵と遭遇した
だから皆が連れていかれないようにそんな空気を払う。お約束ではお調子者から逝くらしいし自分が逝かなければその分少しは皆の順番も遅れるかもしれない。
◆
自由、平等、博愛、正義、高潔を表す五色旗が抑圧、差別、偏狭、悪逆、下劣に反転した日。
開戦から2年。共和国工廠は
では最後まで残された少年少女達は、守るべき赤子や幼子を劣悪な収容所の環境で失った最後の世代は何の為に戦えばいいのか?
更新はそのうちに