モンスターハンター 〜全身鎧の女狩人〜 作:平均以下のクソザコ野郎
※シリーズに出てこない異名持ちモンスターが出てきます。
豊かな自然を眼下に、二人のハンターと2匹のアイルーが自身の獲物を背負って坂を降りていく。
クエストは、バスターソードの材料の納品。普段なら一瞬で終わるハズのクエストだが、二人の間には妙な空気が流れていた。
「...あー、あのさイスミ」
その空気に耐えられなくなったのか、ディードが口を開く。
「...なんだい、ディード」
「クエストにはバスターソードの素材だけって書いてあったけど」
「まぁ、あったねぇ」
「この際だし、色々鉱石取ってさ。バスターソード強化してみないか?」
「お、いいじゃないか。なら、あたしは精算アイテムとってくるよ。あんたの武器の素材は取れないけど、強化代は必要だろう?」
「いいってそこまでしなくても!俺ハンターだぞ!?」
あまりにも手厚いイスミのお節介に驚き、つい叫ぶディード。
「...あー。そうだねぇ、確かにお節介過ぎた。でも正直、あんたこれとおんなじような事してるよ?」
「...悪かったって。気をつけるよ」
「ははは、まぁ今のはあたしも舐めたマネしちまったからね。おあいこさ」
そう談笑しながら移動し、それぞれ二方向に分かれる事に。
「じゃあ、あたしはこっち。」
「じゃあ俺はこっち行ってみる」
「何かあったら信号弾上げるんだよ」
「そっちこそ」
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「...さて、と。虫あみもピッケルも全部持ってきてるし。集めますかねぇ」
イスミはそう意気込み、近くの採掘ポイントに、ピッケルを打ちこみ始める。
カーン、カーンと小気味いい音が鳴り響き、すぐに玉石混交の様々な鉱石が手に入る。イスミの目的である精算アイテムもいくつか手に入ったが、まだまだ足りないと考え、他の採集スポットへ足を運んでいく。
掘り、捕まえ、集め、抜く。移動。また掘り、捕まえ、集め、抜く。バッグがそれなりに重くなって来た際、イスミは少しだけ腰を休める事にした。
豊かな緑に、木漏れ日が当たる。どこにでもありそうだが、イスミはそれを、綺麗だと感じていた。
「...よし、続けますか...」
そう立ち上がったその時。
イスミの目に入った青空に、信号弾が上がっていく。
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「よし、集めるぞー!」
ディードは気合いを入れて採集を始める。
しばらく採集を続けている時、ディードの耳に、ある音が飛び込んできた。
よたよたと走りながら、何かから逃げている。その音を聞いたディードは、自分の武器『デスピアダド』に手をかけ、辺りの様子をうかがう。
「は、ハンターさぁ〜ん!助けてくれーっ!」
走って来たのは、一組の夫婦。
夫が妻を抱え、ディードの元へ走ってくる。
「大丈夫ですか!?...なんでこんな所に...」
「ニケの里に行く途中だったんだ!そしたら、凶暴化したアルセルタスが...!アプトノス達に食らいついてる間に、命からがら逃げてきて...!」
「...わかりました。まっすぐ行って、平原を曲がったら俺たちのキャンプがあります!そこまで頑張れますか?」
「は、はい!」
未だモンスターが来る気配は見えないものの、ディードはアイルーに夫婦の道案内を頼み、辺りを警戒する。
どんな物音も聞き逃さないように、どんなものも見落とさないように五感を集中させ、辺りの様子を伺う。
「...!上からッ!?」
急速に近づいてくる音に気付き、鋭く退避行動を行うディード。
瞬間、先程までディードがいた地に、深々と剣のようなものが突き刺さる。
否、それは剣ではない。
緑色の甲殻が、剣のように鋭く変化したもの。
それは、あらゆる命を刺し貫くもの。
傷がついた剣を宿し、黒の煙を口から放つ、そのモンスターは...
「...随分デカい、アルセルタスだな...!」
"女王喰"徹甲虫アルセルタス。
自身の番であり、捕食者であるゲネルセルタスをも喰らった事で名付けられた。その体長は、通常のアルセルタスの一回り以上、上。
「キシシシシ」
口から、黒い煙を吐き出して、徹甲虫はハンターに狙いを定める。
ディードは防御の構えを取りながら、信号弾を撃ちあげた。
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2本目の強走薬の蓋を開けて、一気に飲み干す。
走る。走る。走る。
大剣を背負い、女ハンターはフィールドを駆けていく。
「...ッ、ディード...!」
イスミの頭の中に、夢の中の...いや、実際に目にした光景がチラつく。
イスミの弟。10数年前にモンスターの襲撃によって殺された、その姿。
『おねえちゃん!』
『おねえちゃんをいじめんなーっ!』
自分とは違って、弟はよくできた存在だった。正直者で、真っ直ぐで、いつでも元気なやつだった。まだ臆病だったあたしの手を引っ張るくらいには、活発な子だった。
『おねえちゃんは、とってもきれいだから!』
モンスターに食われて、この世を去っていくまでは。
あたしは、ディードと弟を、重ねていた。
あたしに向かって綺麗だとか、見てて飽きないだとか言って、なによりあたしと違ってよく笑う。お人好しな所だってそっくりだ。
あたしが今、こうして走ってるのは、弟に似ているから?違う。
あたしはディードに助けを求められた。二人で助け合うと約束したのだ。けれど、その約束以上に、突き動かされる。
その感情は、まだわからない。
「っ...!」
高い岩場。
ディードが、必死に戦っているのがわかる。
「...急がないと」
バッグから赤い瓶を数本取り出し、中身の液体を全部纏めて喉に流し込む。
それと同時に、強い力が流れ込むような感覚を覚える。
「だ、ダンナさん!?それは...」
「サモ。あんたは黙ってな。それかキャンプに戻ってさっきの夫婦を」
「ッッッッッッ...わ、わかりましたニャァ...」
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「グッおぉぉ!?!?」
予想を越えたパワーに、ディードはあっさりとすくいあげられる。
「...な、なんだ、こいつ...他のアルセルタスとは、違いすぎる...」
そう言いながらも、再び立ち上がる。
アルセルタス。
新人ハンターが新人である内に遭遇する、登竜門の一体。常に飛び続けているのが厄介ではあるものの、特性を見極めて挑めば確実に狩猟できるモンスターだった。
事実、ディードも初めの頃に狩猟した事があるが、その時はこのアルセルタスのようなパワーもなかった。
自分の獲物を構え直す。
「キシシシシ」
「...来い...!」
「キシャァァァァァ!!!!!!!!!!!」
「っ!」
アルセルタスの角が、ディードのデスピアダドとぶつかり合い、火花を散らす。
「....っ、はぁあぁ!!」
ぐりん、と自分の体全体を回し、アルセルタスの勢いを利用して、壁に叩きつける。
「よし...!」
「キィィィ...!!」
アルセルタスがよろけているところに、一撃、二撃、三撃。
大鎌の刃が、女王喰の腹を切り裂く。
しかし、女王喰は未だ沈まず、ディードへ再び突進を仕掛けてくる。
迫り来る刃を、再びいなそうと構え直すディード。しかし女王喰は、それを読んでいたかのように空中で旋回し、ディードの背中へその刃を突き立てようとする。
「ヤバッ...!」
「キシャァァァァァ!!!!!!!!!!!」
勝利を確信したかのようなその叫びを聞き、ディードは素早くデスピアダドを盾替わりにした、その瞬間。
「悪いね、ディード」
上から降ってきたアルトの声と共に、赤い一閃が、女王喰を切り裂いた。
「ギィィィィ!?!?....」
「...あんたの獲物取っちまった。まさか、真っ二つにできるたぁ思わなかったけど」
「イスミィィィ!?!?!?」
真っ二つになった女王喰を横目で見ながら、今にも折れそうなバスターソードを地面に下ろすイスミ。柄は砕け、刃はもう折れそうなくらいに疲労していた。
「ど、どっから降りてきたんだよ...って武器ボロボロだな!?どうした!?」
「そこの岩場の上から飛んで、その勢いでアルセルタスをぶった切った。...五本は飲みすぎたねぇ」
「五本?」
「これさ」
そう言って、イスミはバッグから赤い空瓶を取り出し、ディードに見せる。
「.................鬼人薬!?」
「あと強走薬も2本」
「バーーーーカ!!!!!」
薬品の過剰摂取。
鬼人薬五本を飲んだ事による急激な筋力増加。それにより行われた、アルセルタスの一刀両断。その2つが相まって、彼女のバスターソードは今にも折れそうなほどになっていたのだ。
「おま、お前、俺より無茶してんじゃねぇか!?」
「あんたに言われたくないよ。まぁ、今までやった事もなかったからねぇ。いざって時にやろうと思ったんだが、それが今日とは」
「...お前、お前さぁ...」
あっけらかんと言うイスミに、強く言えないディード。そんな二人だったが...
「...あ、ディードちょっとタンマ」
「え、どうしt「吐きそう」
・・・・・
「は?」
その場から勢いよく走り出し、離れた草陰に飛び込むイスミ。ディードは耳を塞ぎ、アルセルタスの処理方法を考えていた。
「....こんなオチ、ありか....?」
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ーーー
「鬼人薬5本と?強走薬2本?...なに考えてんのイスミちゃん!?!?!?!?!?私それやって死にかけたから絶対やんなって言ったじゃん!!!!!!!!」
「アンネさんもっと言ってやってください!」
「一番手っ取り早い方法だったんだよあれが...全部吐いたんだしいいじゃないのさ...」
食堂で話す3人のハンター。
レウスEX、デスギア、スカルダの装備を纏った男女が、何やら大声で言い争っている。
イスミ、ディード、そしてニケの里から飛んできたアンネの3人である。
「びっくりしたよ...まっさか私の討伐対象が先に討伐されてるんだもん。まぁ、実質タダでお金貰えてラッキーだけど」
「そこは仕方ないだろう?なんせ、ほとんど入れ違いだったみたいじゃないか」
結局、二人が女王喰を討伐した事はギルドには報告せずに、偶然にもニケの里で女王喰を討伐するクエストを受注していたアンネが討伐した...ということに3人の中で一致した。
「まぁイスミちゃんが先生に怒られてる所はほんとに爆笑したんだけどね。めちゃくちゃ珍しかったから」
やはり強走薬2本に鬼人薬5本は飲みすぎらしく、医者の先生に立て続けに怒られていた。
強走薬は別にいいのだが、鬼人薬五本をいっぺんに飲み、すぐに立って歩けている事がすごいらしい。
「...それにしても、あの夫婦の祖父が依頼者だったとは」
「追加報酬も貰っちゃったけど、よかったのかな?」
「ちゃんとギルドには許可してもらったんだりう?それならいいじゃないか」
ディードが助けた夫婦は、女王喰の討伐をした老人の息子夫婦だった。息子夫婦を助けて貰ったと解釈した老人は、元の報酬から更に上乗せしてアンネに渡していたのだ。
「ま、なんにせよ。なんもなくてよかった〜!」
そう締めくくり、アンネはジョッキに入ったハチミツジュースをあおる。
「はっは、そうだねぇ」
「...あ、イスミちゃん」
アンネはイスミと肩を組み、ディードに聞こえないよう声を潜める。
(なんだい、アンネ)
(...あのディードって人、めちゃくちゃいい男じゃない?)
(...は?なんだい唐突に)
(気遣いもできるし、なんかイケメンそうだし?ねね、紹介してよ)
そんなアンネの提案を、イスミはぶっきらぼうに突っぱねる。
(...冗談じゃないよ)
(どうして?)
(どうして?って...)
(だって、ディードはイスミちゃんのなんにでもないでしょ?同期で友達かもしれないけど、それ以上じゃないわけじゃん)
(じゃあいいじゃん)
(...嫌だよ)
(それは絶対嫌だ。なぜかはわからないけど、これだけはあんたにも譲れない。諦めておくれよ。アンネ)
(...へぇ...。...イスミちゃん、随分珍しいじゃん?そんなに執着するの)
そう言いつつ、イスミを勢いよく抱きしめる。
「アンネ?」
「...はぁ〜...これでまた私に遠慮したらほんとに取っちゃってた」
「はぁ...!?」
「...ディードって人、多分イスミちゃんの事は憎からず思ってるから、落とすのは多分難しくないハズだよ」
「頑張ってね、イスミちゃん!」
「...余計なお世話だよ、全く...」
そんな会話が行われているとは露知らずにいる、唯一の男、ディード。
「.......え、なんだったの?」
彼の疑問は、数年後に明らかになる。
鬼人薬の大量摂取
最初にやったのはアンネ。
集会クエストにて、突如出現したリオレウス、リオレイア、ゲネルセルタスに対抗する為に鬼人薬五本を摂取。獅子奮迅、疾風迅雷の双剣さばきでレウス、レイアを討伐し、ゲネルセルタスを撃退。
その話を思い出したイスミが真似て、全力でアルセルタスをたたっ斬る荒業を披露した。嘔吐は身体の自己防衛的なやつ。アンネの嘔吐はそこまで酷くなかった(一回吐いて復活)が、イスミの場合は1回どころか胃にものがなくなってもえづいていたので、アンネの化け物加減がよくわかる。
...神様転生したのか、アンネ?
サモ
イスミのアイルー。
装備はアロイネコシリーズ。
主人であるイスミに忠実であり、鬼人薬を飲み込んだ際も止めていたが、偶然遭遇していた夫婦を護衛する為に戻って行った。
名前はニケの里の由来となったニケの石像が発見された島、サモトラケから。
ディードのアイルー
ハンターなんだから多分おるやろと思って安易に出したアイルー。設定とかなんも決めてないし踊り虫様の小説でも描写ないので控えめ。...いますよね、多分。戦闘に参加しないだけで(震え声)
女王喰
モンスターどうしよ〜!!!と思ってお出しした捏造モンスター。他の個体より知能が高いのかもしれない。アルセルタスが好きなのでゲネルセルタスを食うやつもいていいだろ...っていうことで考えたモンスター。