後半からゴーストロックを発動され、対策が出来ないまま2点奪われてしまった。
現在のスコアは1:2。ここからあと2点奪い返さなくてはならない。
それと、後半は残り10分。公式大会でもないから、延長戦はない。
だから何としてでも2点取らないと、フットボールフロンティアには出れず、サッカー部も廃部となってしまう。
「くそっ!あのゴーストロックってやつ、どうすれば動けんだよ!」
「これが尾刈斗の呪いってやつか…困ったな」
「前半から使ってきてくれれば、ある程度考える時間があったってのに…まさか、それが狙いか?」
対策を考えないといけないけど、それを考える時間もない。
どうすればいいのか分からなくても、オレ達に立ち止まることなんて出来ない。
「……どうにか、しないとな」
「冬海先生…どうすればいいんでしょうか?」
「……分かりませんよ。フィールドに立ってるのは彼らなんですから。彼らの身に何かが起こってるのは分かっても、解決策も分からなくては、何を言えばいいのか」
「そんな…じゃあ、みんなはこのままってことですか?何も出来ずに、フットボールフロンティアにも出れずに?」
「………このままだと、そうでしょうね」
相手の呪文みたいので、半田くんたちの動きが止まってしまう。
それの立ち向かうことは出来ても、乗り越えることが出来ない。
冬海先生の言う通り、このままだと負けちゃうかもしれない。
「…………そんなの、ダメですよ」
「大谷さん?」
「あんなに、そのフットボールフロンティアに出たがって頑張ってたのに。しかも負けたら、サッカー部も無くなっちゃうなんて。未来も居場所も無くなるなんて、そんなのダメです」
「大谷さん……」
「私も、1年の頃からずっと見てたんです。グラウンドが使えなくても、どこかへ練習へ行くところも。テニスコートや野球場の端っこで練習してたのも。雪が積もってても部室前で練習してたのも。毎日、泥んこまみれになってたのも、ずっと」
そう、木野さん程じゃないけど、ずっと見てたんだから。
早めに学校に着いた時は、1人でドリブルしてたり、円堂くんたちと少しでも練習してたり。
教室でも、ノートに何かを書いてたり。最初は落書きしてるんだと思ってたけど、よく見たらシュートを打ってる絵だったから、あれも練習の1つなんだって、後になってから分かってさ。
お昼休みの時、東くんたちとご飯を食べてる時も、ほとんどサッカーの話ばかりしてて。
円堂くん程じゃないけど、半田くんも結構なサッカー馬鹿だってクラスでは評判なんだよ。
「……そうなんですか」
「……うん。そうだよ。フットボールフロンティアへ出るのが夢で、ずっと練習してて、ようやくその夢が叶うところまで来たのに、こんなところで終わっていいはずがない」
「それに、その夢が叶わないだけじゃなくて、その夢を叶える権利すらなくなっちゃいますからね。ひどい話ですよ!夏未さん!」
「……いや、まぁ。元を辿ればそうなんですけど、今夏未お嬢様のことを言うのはちがくありませんか?」
「……冬海先生。たしかに的確なアドバイスとかは送れないけど、私たちにだって、出来ることはありますよね?」
「………まぁ、そうですね。私が言うより、貴女たちが言う方が、彼らに届くと思います」
「さぁ貴方達!これでトドメをさしなさい!!」
「喰らえ!ゴーストロック!!」
『マーレ・マーレ・マレトマレ!!』
「……では、頼みましたよ」
『マーレ・マーレ・マレトマレ!!』
「くっそ…!動かねぇ…!」
「縛り付けられてるような……この感じ……!」
尾刈斗のゴーストロックが再び発動。オレ達の動きは封じられてしまった。
一番後ろにいるオレからは、みんなが動かなくなってしまったことが嫌でも分かってしまう。これで3度目だ。
どうすれば、どうすればいいんだ…動いてくれ……オレの身体……!
「これで最後だ!ファントムシュート!」
後半3発目のシュートが放たれ、こちらに向かってくる。
これが決まってしまえば、逆転は不可能になってしまう。
そんなの……そんなの……!
『頑張って!!みんなあああああ!!!』
秋たちマネージャーの声が聞こえる。
そうだ。オレたちは、こんなところで…
『終わってたまるかあああああああ!!!!!』
オレ。そして、半田から渾身の叫びが挙がる。
すると、さっきまで動かなかった身体が嘘かのように動くようになった。これなら…!
「ゴッドハンドは時間が足りない。なら…熱血パンチ!!!」
右手で向かってくるボールに対して思いっきりパンチする。
ただのパンチじゃない。少しでもパワーを込めた、新しい必殺技だ!
「ずああああああああああ!!!!」
オレの渾身の熱血パンチは、ファントムシュートを弾き返して、走る半田の元へと届く。
「いっけえええええ!!半田あああああ!!!」
円堂から託されたこのボール、絶対に決める…!
でも、あのゆがむ空間の対策も出来ていないし、ローリングキックじゃ、そもそもの力が足りないかもしれない。
「なにをしているのです!そのミッドフィルダーを止めなさい!!」
ゴーストロックが破られたことによる動揺からか、尾刈斗の動きが止まっていた。
万全の状態だったら、必殺技で止められていただろう。でも今なら、この隙を突ける!!
「止まってたまるか!ジグザグスパーク!!」
ジグザグスパークで、ディフェンス陣を突破する。
ゴール前、完全にフリーとなった。
ボールを先に打ち上げて、オレも続いて飛び上がる。
「ゴーストロックが破られても、これは破ることなんて出来ないさ!ゆがむ空間!!」
キーパーがまた、ゆがむ空間を発動してくる。
あの手の動き、まるであそこに吸い込まれる……
「半田!!あの手を見るな!!」
……ッ!そうか!
「ゴールだけを見れば!ローリングキック!!」
キーパーを見ずに、その奥のゴールだけを見据えてシュートする。
そうすれば、キーパーの手元に吸い込まれることなく、そのままゴールに…!
「アンビリー……バボー…!?」
「き、決まったあああああ!!半田渾身のシュートが、尾刈斗キーパーを越えてゴールへと突き刺さったああああ!!!!」
「ありがとな豪炎寺!お前のおかげで、キーパーの方を見ないで済んだぜ!」
「フッ…本当はあの時、お前にも言えたらよかったんだが、時間がなかったからな。間に合ってよかった」
「ゴーストロックのタネも分かったし、ゆがむ空間の攻略も分かった。あとは任せるぞ。染岡、豪炎寺!」
「ああ。後半が始まる前に豪炎寺から聞いて、1つ試したいことがある。合わせろよ、豪炎寺!」
「任せろ。染岡」
「こ、こんなことが起こるはずがない!あんなのはまぐれです!マーレ・マーレ・マレトマレ!」
「ゴーストロックは催眠術だ!止まれって言葉で金縛りが起きるんだ!ゴロゴロドッカーン!!!」
「う、動けるでやんす!!」
「そうか…さっきの円堂や半田は、そういうことだったのか!」
「冬海先生!これなら!!」
「ええ。あとはもう、あの2人が決めてくれるでしょう」
「豪炎寺くんと染岡くんですか。ということは、あの2人の必殺技なら…ドラゴ」
「行くぞ豪炎寺!ドラゴン…!!」
「フッ…!トルネード!!」
「あー!!僕が命名したかったのにいいいい!!!」
「ゆ、ゆがむくう…WHYYYYYY!?」
「決まったああああ!!豪炎寺と染岡のコンビシュートが、ゆがむ空間を発動させる間もなくゴール!!」
『ピイイイイイイイ!!!!』
「ここで試合終了!3対2で、雷門中の勝利です!!」
「へぇ……あそこから勝つなんて、やるじゃんか」
「約束だ、これでフットボールフロンティアに出場出来るんだよな!」
「ええ。約束は約束です。追って連絡しますので、それをお待ちなさいな」
「なぁ、それサッカー協会に連絡するんだよな?なんか別のとこに連絡しないよな?野球協会とかに連絡したりしないよな?」
「半田くん、疑いすぎだって」
「だってな大谷、雷門って基本しっかりしてるけどちょっと抜けてるとこがあるって話だから、念には念を入れとかないとさ」
「………ま、間違ったりしないわよ。そもそも、間違えようがないと言った方が正しいけど」
「まぁ、ならいいんだけど。じゃあ頼んだぜ、雷門」
「ええ。ではサッカー部のみなさん、今度私が来る時は、その時ですからね。色々と準備を済ませておくように」
試合が終わってすぐ、雷門がやって来てサッカー協会に連絡してくれることになった。
まぁ、雷門の親父さん…理事長がサッカー協会の理事も務めてるみたいだから、確かに間違えようは無いだろうけどさ。
「……でも、よかったね半田くん。フットボールフロンティアに出るの、夢だったんでしょ?」
「……いや、ちげぇよ大谷」
「えっ?」
「出るのが夢なんじゃなくて、優勝するのがオレたちの夢、だろ?半田」
「……ああ。染岡の言う通りだ。ここから、オレ達雷門中サッカー部の快進撃が始まるんだ」
「………そっか。頑張って!半田くん!みんな!」
いよいよだ。いよいよフットボールフロンティアに出場するんだ。
どんな相手が来ようと、負けたりしない。まず目指すのは、日本一だ!
半田たちが端っこの方で練習してたのをずっと見てた大谷さん。