前半が終わり、ハーフタイムとなる。
「ある程度予想していたとはいえ、ファイアトルネードがあんな封じられ方をするなんてな…」
「けど地上で打とうにも、あのライオンみたいな奴の縄張りみたいになってるからな…となると、やっぱ空中で攻めるしかねぇのか?」
「空中はあのキャプテンが制してると言っても、裏を返せばあいつぐらいなんだよね。地上だと他にもあのカメレオンみたいのとかいるけど、敵の数が少ないのは空中の方だよ」
「となるとやっぱ……」
染岡やマックスたちと話し合ってた内に、全員で壁山の方を見る。
「う、うううう……やっぱり、必要になるんすかぁ……」
「さっきはああ言ったけど、やっぱ、男なら覚悟決めなきゃいけないときが来るよな…」
「は、半田さぁん……」
「でもな、別にお前1人で上がって、シュートしてこいだなんて言うつもりはないぞ」
「そりゃそうだよ。中盤の仕事は、ボールを繋ぐことでもあるんだから。だから攻めてきなって」
「チャンスがありゃ、オレもシュートを打つ。お前も今からでも、ゴールを奪うことに意識向けとけ」
「……は、はいっす……」
頼むぞ…壁山。イナズマ落としが、必要なんだ。
「……では、壁山くんを前線に上げるわけですか。となると、守備はどうします?風丸くん、影野くん、栗松くんの3人でいいんですか?」
そんな流れを断ち切るように、冬海が割って入って来た。
いや待て。いま冬海、戦術について話してたよな。マジかよ。コイツ本当に冬海かよ。
「………おいみんな、明日は大雨どころか嵐が来るぞ。嵐・竜巻・ハリケーンだ。冬海がフォーメーションの話をしてきた」
「本当に失礼ですね、半田くん」
「あ、あのぉ……そのことでやんすけど…」
「栗松?どうしたよ」
「さっき相談されたんだよ。オレと代わってくれってさ」
「土門と?」
「オレだって、小さい頃からサッカーはやってたし、試合も何度も観てたでやんす。急にフォーメーションを変えるのも、見たでやんす。でも、そうなると、どうしても穴を埋めないといけないってのもほとんどで…」
「ってさ。壁山を上げるとなると、守備は3枚。正直、3枚じゃ野生の攻撃を防ぐのは、けっこうキツいってのはたしかだぜ」
「だからって、中盤は減らせないでやんすし…ケガもしてない染岡さんを下げてまで4人のディフェンスを保つってのは、考えづらいと思って…」
……たしかに、ディフェンダーが3人なら、土門を入れた方がいいというのは分かるけどな…
「………どうする。円堂」
「なんでオレに聞くんだ?」
「いや、お前キャプテンだろ」
「この状況で、キャプテンの指示が必要とは思えないけどな。栗松が考えて、考え抜いての結論なら、オレがとやかく言えないさ。土門、頼めるか?」
「まっ、ついこの前入ったばっかでも、後輩に頼まれたなら、それを果たすのが先輩っしょ。任せてくれよ」
「お願いでやんす、土門さん!風丸さんに、影野さんも!」
「分かった、栗松。オレの方がサッカー部としては後輩だけど、土門と同じ、お前の先輩だからな」
「…………こうして頼られるのって、初めてだから、もっと頑張るよ」
……ありがとな。栗松。
「栗松……」
「壁山!あれだけ練習したんだから、お前ならでやんす!だから、ばっちりゴールを決めてくるでやんす!!」
「……壁山。イナズマ落としは、お前1人でやる必殺技じゃない。オレとお前の必殺技なんだ。今ならそれが、練習の時よりも、よく分かるはずだ。行けるな?」
「…………」
豪炎寺に返事をすることはなかったけど、目の色は明らかに変わった。
ほとんど、覚悟を決めたんだろう。
オレの仕事は、ボールをゴール前まで繋ぐことだ。
「豪炎寺のファイアトルネードは封じて、他の攻撃も潰すコケ!フォワードはゴールを奪うコケー!!」
相手のキャプテンの号令により、野生中陣が攻め上がってくる。
「宍戸!止めるぞ!」
「はい!」
オレと宍戸がニワトリを止めにかかる。
「甘いコケー!ダッシュアクセル!!」
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
スロットルを上げて走り出したニワトリに吹き飛ばされるオレと宍戸。
「2人だからってそう簡単には止まらないコケ!」
「じゃあ3人だとどうよ?」
「コケ?」
オレ達を突破したニワトリに向けて、土門が強烈なスライディングを仕掛けている。
「キラースライド!!」
「コケー!?」
キラースライド。帝国学園のディフェンス技で、ボールを奪う。
「あれは…帝国学園の必殺技じゃないですか!?」
「おや、そうですよ目金くん。彼は帝国学園から転校して来ましたからね」
「な、何故そんなこと知ってるんですか!?」
「それはだって、教師ですから」
「…………あっ」
「……目金くん?まさかですけど、半田くんに続いてキミも、私が教師であるということを忘れたとか言いませんよね?」
「い、いやぁ……忘れてたとかそんなんじゃなくてですね…その……なんというか……た、助けてください大谷さん!」
「あの、この流れで助けを求めちゃったらダメだと思う」
ニワトリからボールを奪った土門は、マックスへとパスを繋ぐ。
「スーパーアルマジロ!!」
「知ってても危ないなぁ!」
「よくも真似してくれたな!クイックドロウ!!」
「この二段構え、普通に強いな…いいこと教わったよ」
染岡も引っ掛かった二段構えの守りに、マックスもボールを奪われる。
そのボールは、フォワードへと渡る。
「通しませんよ…!」
「邪魔するなウホ!!」
「うわっ!?」
少林がゴリラみたいなプレイヤーへと立ちはだかるが、流石に体格差には勝てず、突破されてしまう。
「まずは1点奪うウホ!」
「やらせないよ……」
「ウ、ウホ……?どこから声が……?」
「前からだよ……」
と思ったら、目の前に影野がいた。
えっ、ウソ。お前いたか?突然現れたように見えたんだけど。
「栗松に頼まれたからね…僕だって、練習してたから…!」
影野はゴリラを囲うように、高速で回転する。
「コイルターン…!!」
「ウホー!?」
「半田…!」
「サンキュー!影野!!」
オレは影野からボールを託され、攻め上がる。
「ライオン!さすがに、二段構えは三度も通じないはず…一気にいく!」
「おう!」
ライオンとカメレオンが、2人同時に襲い掛かる。
でも残念だったな。むしろそれは…
「お前ら、連鎖感電って知ってるか?」
好都合なんだよ!!
「ジグザグスパーク!!」
『シ、シビビビビビ!!?』
「二段構えだったら、先の1人だけで済んだかもしれなかったのにな!いけ!壁山!豪炎寺!!」
2人を突破し、オレは豪炎寺と壁山がいる方へとボールを打ち上げる。
「させないコケ!!」
豪炎寺が飛び上がったところへ、ニワトリがその上をいく。
ここまでは前半も見た光景だが、その先は違う。
「高いところが苦手でも、オレに託してくれたみんなの方を向けば、怖くなんてないっす!!」
豪炎寺の下から、壁山が仰向けに飛び上がる。
壁山を踏み台にして、豪炎寺はさらに飛び上がることで、ニワトリを越える。
「コケエエエエ!!?」
「これがオレの…イナズマ落としぃぃぃぃ!!!」
豪炎寺が上空でオーバーヘッドキック。
稲妻を纏った鋭いシュートは、相手キーパーの反応を許さず、ゴールを奪った。
「き、決まった…っすか?豪炎寺さん……」
「ああ。よく克服してくれたな、壁山」
「やったな!豪炎寺、壁山!!」
「よくやってくれたぜ!」
「や、やったっすうううう!!」
盛り上がるのは分かるし、オレも壁山のことを揉みくちゃにしてやってるけど、まだ後半は終わっていない。
「この時間なら、無理にゴールを奪う必要はない。全員で守るぞ」
「じゃあオレ、ディフェンスに戻るっす!」
「あぁ。頼んだ」
壁山がディフェンスポジションに戻り、いつもの4-4-2の布陣となる。
残り時間は少ないが、野生も猛攻を仕掛けてくるはずだ。
この1点、絶対に守り切るぞ。
「イノシシ以外、全員攻撃でいくコケ!!」
試合再開の笛が鳴った途端、その号令と共に野生布陣が攻め上がってくる。
少しは分かっていたが、全員攻撃か…!
「スーパーアルマジロ!!」
今までディフェンス技として使っていた、ライオンの必殺技。
今度は自分が丸まる時にボールを包む事で、ドリブル技として使ってきた。
これにはたまらず、染岡たちやオレたちも吹っ飛ばされる。
「ヘビ!あれをやるウホ!」
「キヒヒ……分かったよ。スネークショット!」
ライオンからボールを渡されたヘビみたいなプレイヤーは、中央からシュートを放つ。
「ロングシュートか!?にしては、クネクネして、ゴールに向かっては…」
「いや、違うよ半田。あれは…」
マックスが言おうとしていたことは、すぐに理解出来た。
ヘビが放ったロングシュートは、ただのシュートではなく、パスだったということを。
「ターザンキック!!」
前半の時にやった二段構えのシュートを、再び決めてきた。
「二度目だからって、通すわけにはいかない!熱血パンチ!!」
だが円堂は、それをある程度予想していたようだった。
ゴリラの方向をしっかり見てから、再び熱血パンチでボールを弾く。
「……!?円堂!まだ終わりじゃない!!」
「マックス…?まだってどういう…あっ!?」
気づいた時には、もう遅かった。
「行ってくるコケ!ワシ!!」
ニワトリがワシを空へと放り投げる。
その先には、円堂が弾いたボールがあった。
「ホークショット!!」
上空から強烈なシュートを放ってくる。
このタイミングでは、ゴッドハンドを溜める時間もない。
かと言って、熱血パンチではおそらく防げない。
このままゴールを奪われるか、そう感じてしまった。
「やらせるか…!!」
そうはさせないと、風丸がボールと円堂の間に割って入る。
「オレも、栗松に託されたんだ…やらせてたまるか!」
風丸はシュートの方へと飛び上がり、右足で放った蹴りは、地面を抉り、衝撃波を産み出す。
「スピニングカット!!」
その衝撃波はシュートに当たり、防げはしなかったものの、威力を格段に弱めることに成功した。
「円堂!頼んだ!!」
「ありがとな!風丸!!熱血パンチ!!」
三度目の熱血パンチは、今度こそ野生の猛攻を防ぎ切った。
「……完敗、だコケ」
その瞬間に、試合終了を告げる笛が鳴り響いた。
さっき壁山が揉みくちゃになってたところを、今度は風丸、そしてついさっき新しい必殺技を繰り出していた影野も揉みくちゃにされている。
当然オレも混じっている。もちろんな。影野なんてこんな時でもないと揉みくちゃに出来ないんだから、存分にやるぞ。
「……しかし、なぁ」
ふと、オレは思う。
ライオンの使ってた、スーパーアルマジロ…
「……あれ、ディフェンスにも使えたんだな。知らなかった」
その呟きは、誰の耳にも届くことはなく、今は円堂が揉みくちゃにされていた。
風丸に拾ったばかりのスピニングカットを覚えさせるのは、誰もが通る道だと思うんです。