だってぜったいおかしいもの。 トラお
結果を言うと、前半はほぼ御影専農のペースだった。
「ディフェンスフォーメーション、ガンマ3発動!」
染岡がドラゴンクラッシュを打っても、シュートコースにディフェンダーが立ちはだかることで、威力を打ち消されてしまう。
他にもファイアトルネード、ドラゴントルネード、イナズマ落としを打っても、杉森のキーパー技のシュートポケット、ロケットこぶしに塞がれてしまう。
「あんな守備をしてくるなんて、サッカーサイボーグの名は伊達じゃないですね…」
「指示もそうだけど、それを少しの狂いもなく実行できるだけの実力もすごいぞ。やり口は気に食わないけど、あの監督も優秀なんだろうな。ひどいやり口だけど」
「やたら相手の監督を貶しますね。半田くん」
「冬海だって、気に食わないんじゃないのかよ」
「………まぁ、そうですね」
そういや、前回は雷門中にも洗脳の被害者がいたはずなんだけど、とくにそんな話は聞かなかったな。ちょっと体育館裏を覗いてみたけど、普段と変わらずに屯してただけだった。
やっぱ10年も経ってるし、オレの記憶もアテにならないな。
「スーパースキャン」
「くそっ…!」
風丸と壁山の守備を抜かされ、ゴール前まで攻められる。
「オレ達を分析して来た相手だ…どんなシュートを打ってくるんだ…?」
円堂が身構えてる内に、御影専農の選手がシュートを打ってくる。
「サイコショット!」
超能力?か何かで制御されたシュートがゴールに向かって打たれ…
「熱血パン…えっ?」
ゴールに向かっていたはずのシュートは、急にコースを変え、上へと向かう。その先には…!?
「円堂!ゴッドハンドを…!」
オレがベンチから声を上げるが、遅かった。
「野生中との試合のデータを分析し、最初のシュートをそれに真似れば、キミの反応が遅れる確率は97.5%。ファイアトルネード!」
野生中と同じく、二段構えのシュートを打たれてしまう。
しかも2発目のシュートはファイアトルネード。本家の豪炎寺程の威力では無いとはいえ、野生中のターザンキックよりも上回るのは変わらなく…
「くそっ…!熱血パンチ!!ぐぅっ……うわぁ!?」
弾き返すことが出来ず、ゴールを許してしまった。
「初見でしか通じないだろうが、その初見だけで充分だ。この1点、致命的であることを証明する」
「油断したワケじゃないけど、やられた…!」
「気にするな円堂。オレ達が取り返す」
点を取られた雷門から試合が再開されるが、すぐにボールを奪われてしまう。そのボールは大きく打ち上げ、キーパーの杉森に…
「……まさか、御影の奴ら…!!」
オレの予感は当たってしまい、御影専農は自陣でのパス回しや、コーナーでのボールキープなど、時間稼ぎに徹した行動を取り、前半が終了した。
「点差を守るのも戦術の一つだけど、流石にこれは…」
「勝てれば何でもいいんでしょうね。いい気はしないわ」
「こんなの、サッカーじゃないですよ!」
「私も…あんなサッカー、見たくないよ」
マネージャー達も、いい感情は抱いていない。
観客達の方を見てみると、同じ御影専農の生徒の顔もよくな……
「あっ」
御影専農の生徒が多くいる方の後ろに、見覚えのある姿を見かけた。
あのドレッドにおしゃれゴーグル、間違いない。
オレを中バカと呼んだらしい男。
「………どういう意図かは知らないけど、そこで見てろよ」
「半田!お前も杉森たちのとこに行こうぜ」
「ああ。オレも言いたいことがあるからな」
あんなプレイをさせられて、黙ってられる円堂やオレ達じゃない。
他のみんなも引き連れて、杉森達のところへと向かった。
「杉森!!さっきのプレイはなんなんだよ!!」
「…キミたちか」
「攻めてこないのはともかく、あそこまで徹底的な時間稼ぎはどうなんだ?」
「その方が効率的だからだ。1点差だろうが10点差だろうが、勝利は勝利だ」
「だからって!あんなプレイをしてて楽しいのかよ!」
「楽しい…?円堂。キミは一体何を言っている?楽しいというのは、感情の話だろう。我々がやっているのは、データに基づいた管理サッカー。そこに感情などという、不明瞭なものが入り込む余地はない」
「そりゃそのデータってやつからしたら、感情ってのは不明瞭だろうな」
「半田!?」
オレが杉森の言ったことに対してそう返すと、円堂やみんなが驚く。
……まあ、今のはオレの入り方が悪かったな。
「でもな。お前が言ってるその不明瞭なものって、必要ないって意味で言ってるんだとしたら、足元を掬われるぞ」
「…………キミはいったい、何がしたいんだ?」
「どういうことだ?」
「我々に宣戦布告したと思えば、数日間練習している様子を見せず。姿を表したと思えば、やっているのは新体操だった。そして今日の試合ではベンチスタート。我々でなくても、率直に疑問を抱くだろう」
「……いや、まあ。お前ら視点だと本当にオレなにしてんだって話だけど」
「ホント。新体操部は女子限定だからね。転部なんてできないよ?」
「いやマックス。その話はもういいから。とにかく、杉森」
「…なんだ」
「後半こそ、サッカーをしてもらうぞ。お前達だって、本当は分かってるはずなんだ。サッカーは楽しいものだって」
後半が始まる。
オレは土門のいたポジションに入り、その土門は栗松のポジションに入る。
「半田さんが打ち抜くとこ、ベンチで見てるでやんす!」
「ああ。見てろよ、栗松!」
栗松からのエールを受け取り、やる気も上がる。
前半がこちらからのキックオフだったため、後半は御影専農からのキックオフとなる。となると…
「やっぱり、こうなるか…」
後半も前半と同じく、時間稼ぎに徹するやり方をしてくる。
こちらのディフェンス技はクイックドロウ、コイルターン、キラースライド、スピニングカットの4つ。
どれも選手が固まってる場合は有効な手とは言えないものばかり。
帝国のサイクロンが使えたら、そこまで苦労しないで済むんだが…無い物ねだりだな。
ただ、杉森の方を見てみると不自然な動きをしている。
誰かと話しているようにも見えるけど、この状況だと監督とか…?
杉森が何をしているのか気になるけど、それよりも目の前のことをどうにかしないとな…
「どうしたものかな…」
「攻めて来ないんじゃ、こんなとこにいても仕方ない!」
「まあそうだな。あっちが攻めて来ないんじゃ、円堂がゴールにいても仕方な…はい?」
「うおおおおおお!!」
「円堂!?」
円堂の声が近づいて聞こえたと思って振り返ると、円堂がゴール前から走り出して来ていた。
そのガラ空きになったゴール前には、突然のことに半分対応できてない土門が両手をバタつかせながら立っている。
まさかのゴールキーパーが攻め上がってくることなんて、さすがの御影専農のデータにも無かったんだろう。ていうかあってたまるか。突然の円堂来襲に対応できず、ボールを奪われている。
「な、何故だ!?」
「杉森!いくぞおおお!!!」
円堂が渾身のシュートを叩き込む。
一応、1年の頃はオレ達とシュート練習もしてただけあって、ポストの端の方へとシュートを打てている。
円堂も円堂で、いいシュート打てるんだよな。
「キミのシュートは、データにない…!」
だから、あってたまるか。
円堂渾身のシュートは、杉森にキャッチされてしまう。
「くそおおおおお!」
「何故キミが攻撃に参加する?」
「何故って、点を取るために決まってるだろ!それがサッカーだ!」
「点を防ぐのもサッカーだ!早く戻れ!!」
「へへっ、久々のシュート、楽しかったぜ!」
今の円堂の行動が引き金となったのか、杉森の動きが変わった。
「オフェンスフォーメーション、シルバー1だ!」
「なっ、杉森!命令違反だぞ!!」
杉森が打ち上げたボールをミッドフィルダーが受け取るも、それを壁山が体を張って防ぐ。
そのボールをマックスが拾い、鋭いターンで守備を突破する。
「やっぱり、イナビカリ修練場の成果が出てるな」
「能力のデータを上回ろうが…!」
「ぐっ!」
マックスがボールを奪われ、そのボールは下鶴に渡る。
「いくぞ!パトリオットシュート!!」
下鶴がボールを打ち上げ、少しするとミサイルのようになったボールがゴールへと襲いかかる。
下がって来ていた豪炎寺がシュートコースに入ると、そこに円堂も割って入る。
「豪炎寺!」
「円堂!何をするつもりだ!?」
「このままシュートだ!」
「このまま…そうか!円堂!」
「ああ!いくぞ!!」
2人がシュートを蹴り返す。そのシュートはイナズマを纏って突き進む。
「なんだと!?」
円堂と豪炎寺のツープラトンシュート、イナズマ1号。
データを大きく上回ったのだろう。反応出来ず、杉森ごとボールがゴールへと突き刺さる。
「攻撃と守備が同時なら、あっちは対応できないんだ!」
「円堂くんと豪炎寺くん、あんなシュートを打てるようになるなんて!」
「前半の頃から思ってましたけど、みなさんの動きも格段に良くなってますよ!」
「イナビカリ修練場のおかげかしらね」
「うん。あとは、半田くんの練習の成果が上手く出せれば…」
まずは1点、取り返した。まだ試合は分からない…?
「なんでやんしょ?御影専農の様子がおかしいでやんす」
「監督…途絶って聞こえますけど…あっ、あの監督、逃げましたよ!」
「ウソ!?まだ試合は分からないのに…!」
「………」
「ふ、冬海先生?急に立ってどうしたんですか?」
「野暮用です。すぐ戻りますから、大丈夫ですよ」
司令塔を失い、呆然とする杉森達。
負けが決まったわけじゃなければ、まだ同点となっただけなのに逃げ出したあの監督に怒りが湧いてくるけど、それだけじゃない!
「杉森!!まだ試合は終わってないだろ!!」
「………指示がなければ、我々は何も出来ない。我々の敗北だ」
「何言ってるんだ!まだ同点だろ!!それにオレ、言ったよな!後半はサッカーをしてもらうって!」
「サッカーなら、今までもしていただろう。我々にはもう…」
「杉森、オレは見逃さなかったぞ。さっきお前は監督の命令に逆らって、攻めの指示を出したんだ。それは監督の管理サッカーじゃなくて、お前達、御影専農のサッカーだったんじゃないのか!」
「…っ!」
「………だったら、待ってろ杉森。オレが見せてやる。オレのサッカーを!!」
魂が抜けていたような御影専農の選手だったが、ほんの少し、勢いを取り戻したのか、試合が再開される。
「クイックドロウ!」
マックスがクイックドロウでボールを奪い、オレにボールが渡される。
「さっき啖呵切ってたけど、僕たちにも見せてよね。練習の成果。半田のサッカーってやつ」
「……ああ。見ててくれ!」
オレはボールと共に攻め上がる。
目の前には堅牢な守備が展開されている。
「ジグザグスパークを警戒しろ!足元に気をつけるんだ!」
杉森がジグザグスパークに備えているが、今回のオレは、ジグザグスパークじゃない。
オレが木戸川清修の試合映像で見たドリブル技。
それは、これだ!
「ムーンサルト!!」
「なにっ!?」
体操競技の技であるムーンサルト。
ボールと共に宙返りすることで、上空から守備を抜き去る。
「守備を突破しようが、キミだけでは…!」
「そのままなワケ、ないだろ!!」
ムーンサルトの捻りをそのまま利用することで、今までのそれとは勢いが全く違う。
今まで足りなかったのは、シュートの強さじゃなくて、これだったんだ!!
「ローリングキック!!」
今までのローリングキックと比べて、威力はたぶん2倍にはなっているだろうけど、ファイアトルネードを防いだシュートポケットを突破できる威力にはいってない。
でも、この状況からのシュートは予想してないだろ…!
「シュ、シュートポケ…うおおお!?」
そのままローリングキックを打つとは思わなかったんだろう。
さっき喰らった初見殺しのおかえしだ。
「見たか!オレのシュートを!!」
「見た見た!十分見た!まさか木戸川清修のドリブル技を流用するなんて!」
「これが…半田真一、いや…雷門の底力、ということか…」
「……杉森。まだ試合は終わってねぇぞ。残りの時間、お前達のサッカーを見せてくれよ!」
「………みんな!まだ諦めるな!ここで終わるワケにはいかないんだ!そうだろう!?」
杉森は頭に付いたケーブルを千切り、他の選手もそれに続いた。
完全に取り戻したようだな。管理なんかされない、自分たちのサッカーを。
「円堂!ここからが本当のサッカーだ!油断するなよ!」
「当たり前だ!勝つのはオレ達、雷門だ!!」
「よかった…半田くん。やったね」
「これはまた、新聞部に投稿しなきゃですね!イナズマ1号といい、新生ローリングキックといい、取れ高だらけです!」
「取れ高って、そういうのでいいんだっけ…?」
「……それにしても、遅いわね。冬海先生」
「いかがです?貴方が見捨てた選手たちは、実にいい選手たちだったじゃないですか」
「お、お前に何が分かる…!そ、総帥に見捨てられたら終わりなのは、お前もよく分かっているはずだ!そもそも、何故総帥の指示に逆らい続けられる!?このまま無事でいられるはずがないだろう!?」
「…………その内沈むと分かっている泥舟に、乗っていられるはずがありませんからね」
「な、なんだと…!?」
「あちらから切られたなら、このまま加担することも無いですし、今は大人しくしておいた方がいいですよ。あとまぁ、このことも内密に。貴方まで巻き込まれますからね」
「……な、何が目的なんだ、貴様は…」
「目的って、当然じゃないですか。私はただ、見たいだけですよ。彼らが優勝するところを。この目でね」
「…………」
「…こちらの勝ち、ですね。とにかく、今は大人しくしときなさい」
YouTubeで公式無料配信されてるんで、観て来てください。
ゲームのローリングキックとアニメのローリングキック、あれで絶対同じ威力なワケないし、なんならアニメの方未完成って言ってもいいと思うんすよね。
てことで逆行半田のローリングキックはゲーム準拠の挙動となって、威力上がりました。
その代わり二つの技を掛け合わせたみたいな感じなので、最初のうちは燃費悪いです。
具体的に言うとTPが3分の2まで減っちゃいます。めちゃくちゃ悪い。