なんで長くなったんだろうと思ったんですけど、考えてみりゃそこそこ長くなる状況でしたわ。
帝国との決戦が終わり、今は響木さんの言った勝利記念で雷々軒にいる。
「響木さん!チャーシュー麺おかわりっす!!」
「オレも!」
「オレはチャーハンでやんす!」
「………ねぎラーメン…お願いします……」
「影野渋いの頼むな…」
今は円堂と一緒に響木さんを手伝っている。
最初は染岡も手伝っていたんだが、オレが交代して、今は味玉ラーメンを啜っている。
アイツ、意外と料理が上手いのか知らないけど、豪快に炒飯作ってたな。響木さんも筋がいいって言ってたし。
「半田くん、私も手伝おうか?」
「いやいや、女の子だけにやらせるのは違うだろ。大谷はチャーハン食べてなって」
「……………こういうのって、女子の仕事だと思うんだけどなぁ」
「でも、ラーメン屋さんだからね。確かにこういうのは、男の人の方がいいかも」
「そうね。中華鍋振るうのも、少しは力がいるもの」
「ですから大谷さんは、普通の料理を磨きましょう!今度マネージャーだけで料理教室開きますから!」
「えっ、あっ、う、うん……た、楽しみにしてるね……?」
なんか少し目を離した隙に、大谷が他のマネージャー3人に囲まれてた。
なんかマネージャーだけで料理〜とか聞こえたけど…まあ、前回はいなかった大谷が、サッカー部に溶け込めてるようでなによりだ。
「半田、オレ餃子」
「じゃあ、私にも」
「あいよー。あれから何ともなくて何よりだけど、土門もよく食うな。えーと……あれ、響木さん。これ…」
「ん…そうか。悪いな2人とも。餃子はあと一人前しかないな」
「あら…」
「じゃあ夏未ちゃんに譲るよ。代わりにオレ、唐揚げね」
「夏未……ちゃん……?」
「………あっ」
「…………ふふっ。悪くないわね」
「そ、そうかい…」
なんか、夏未お嬢様が夏未ちゃん呼びを気に入ったらしい。
機嫌を損ねなくてよかったけど、なんだかんだそういうの求めてたってことか。
「………………」
……なんか、大谷がこっち見てくるけど、どうしたんだろう。別に何も頼まれてはないし…あっ、もしかして。
「お水無くなってたか?ゴメンな大谷、気が利かなくて」
「……………………ありがとう」
『はぁ……』
「えっ?なんでそこの3人はため息ついてるの?」
「悪いな。最後まで手伝ってもらって」
「ご馳走してもらったんだから、当然ですよ」
「円堂の言う通り、オレ達が好きでやってることですから、気にしないでください」
祝勝会が終わり、みんなが帰って、オレと円堂は響木さんの手伝いを続けている。
大谷たちも手伝おうとしてたけど、ほぼ無理矢理帰らせた。
わりと遅い時間だし、早く帰らせないとな。
そんなことを思っていると、扉が開く音が聞こえた。
「すみませんね。生憎今日は……」
「………響木」
「浮島…!?浮島じゃないか!」
オレ達が今日の分は全部食べ尽くしてしまい、新規のお客を断ろうとした響木さんが目にしたのは、過去のイナズマイレブンの一員である浮島さんだった。
片手には、オレ達のことが載っている新聞を持っている。響木さんも映ってるから、それを見てここに来たんだろう。
「久しぶりだな、浮島。元気だったか」
「……響木も、元気そうだな。雷門中が帝国学園に勝ったなんて見たら、お前の顔が見たくなってな」
「そうか。コイツらが、その雷門中サッカー部のキャプテンとメンバーだ」
「ど、どうも…半田真一です」
「オレ、円堂守って言います!」
「え、円堂……!?まさか……」
あの人たちにとって、円堂という名前は忘れられないもののようだ。
まあ、オレもその立場だとしたら、絶対に忘れないだろうけど。
「そのまさかだ。大介さんの孫だよ」
「そう…か………」
「響木さん。この反応だと、浮島さんって…」
「ああ。コイツも、イナズマイレブンの1人だ」
「やっぱり!爺ちゃんの名前を知ってるってことは、そうですもんね!オレ、爺ちゃんとイナズマイレブンの話を聞いてから、憧れてたんです!伝説のイナズマイレブンに!!」
「伝説……」
………?おかしいな。オレの知ってる浮島さんって、ここまで燃え尽きたかのような人じゃなかったと思うんだけど……。
「はい!連戦無敗で物凄く強かったって!カッコいいって!!」
「…………イナズマイレブンの悲劇のことは、知ってるのか?」
「えっ……はい。でも、あの事故さえ無かったら…」
…………もしかして、だけど…。
「…円堂。その辺にしとけ」
「は、半田?どうしたんだよ急に」
「たしかに過去のイナズマイレブンの一員だとしても、オレ達は今日初めて会ったんだぜ。お前の良いところではあるんだけど、そんなにグイグイ行ったら、浮島さんだって困るだろ」
「あっ……そ、そうだな。すみませんでした……」
「………いや、キミ達は悪くない。ここに来た、俺が悪いんだ。来るんじゃなかったな……」
「えっ…おじさん?」
浮島さんはそう言い残して、店から出て行った。
「……円堂、半田。後は俺1人でいける。もう大丈夫だ」
「……分かりました。今日はご馳走さまでした。行くぞ、円堂」
「あっ…はい。ご馳走さまでした!響木さん!」
オレ達は店から出ると、浮島さんが出て行った方へと向かった。
普段オレが帰る道とは逆方向で、円堂の家の方だな。
「あれ、半田。道こっちじゃなかっただろ?」
「………円堂。浮島さんを追うぞ」
「えっ?お前さっき、グイグイ行くなって…」
「にしても、さっきの歯切れの悪さは気になるだろ。それに、響木さんも追いかけろって言ってたもんだしな」
「……たしかに、オレも気になってた。聞きたいこともあるし」
「じゃあ、行くぞ」
浮島さんが出て行った方を歩いていく。
ちょっとすると、その浮島さんを見つけた。
街角に貼ってある稲妻KFCのポスターを見て、立ち尽くしていた。
「いた!おじさん!」
「………追ってくるとはな」
「監督に追いかけろなんて言われたら、向かいますよ」
「………響木が、監督…か」
「なんでさっき、あんなこと言ったんですか?」
「あまり、俺たちを英雄視するな。そんな目で見られても、眩しくて敵わない」
「えっ…?」
「イナズマイレブンは英雄なんかじゃない。お前の言うほど、大きな存在じゃないんだよ」
「何でそんなこと言うんですか…!?おじさんだって、その一員だったんでしょ!?」
「一員だからこそ、だ。俺たちは諦めた。今でも忘れられず、引き摺ってるんだよ。サッカーを諦めた時の、無力感を」
「……………」
「みんなサッカーを捨てちまった。プロがダメでも、草サッカーなり続ける道はあったのに、それを選ばなかった。ただの負け犬が、イナズマイレブンの正体だよ」
「………おじさん……」
……そこまで関わったことはなかったけど、オレの知ってる浮島さんとは、だいぶ違った。
目の前にいる浮島さんは、過去の悲劇を引き摺ったままの、燃え尽きた灰のようにも見えた。
「だったら、なんで雷々軒に来たの!?」
「……ッ」
「サッカーが好きだから、響木さんに会いに来たんじゃないの!?だったらおじさんも、サッカーやろうよ!」
「なに…?」
「響木さんは…監督は、サッカーに帰って来たんだ!おじさんだって、帰ってこれるよ!」
「……響木は、別だ。俺達の中でも、昔から…」
「………会田さんも、指導者としてですけど、サッカーに関わってますよ。あの河川敷で、稲妻KFCの練習を見てますからね」
「………会田も?」
「それに、たった一度諦めたからって、自分の気持ちに蓋をし続けないでください。本当にサッカーを諦めて、二度と関わらないつもりなら、雷々軒にも来ないはずですし、このポスターに目を止めるはずもないです」
「………」
「やるぞ、浮島。日曜の朝、イナズマイレブンは河川敷に集合だ」
「響木……!?」
響木さん、いつの間にいたんだ……?
その言葉を皮切りに、とんとんと話が進んで行った。
浮島さんは、状況に追い付けていないようだけど……。
「本当に、あのイナズマイレブンとサッカーが出来るんだ!やった!やったぜ!!」
「………………」
一応の決着が付き、円堂と響木さんはその場を後にした。
オレも、家と真逆の方向だし、早く帰るか……。
「………待ってくれ」
「……浮島さん?どうしました?」
「…………キミのさっきの言葉。普通、ああいうことを言われたら、お前に何が分かると言いたくなるはずなんだ」
「……たしかに、知ったようなことを言ってしまいました。すみません」
「いや……知ったようなことじゃない。知っているんだ。サッカーに対して、光だけじゃない。暗いところも」
「……………」
「…………変なことを言ったな。引き止めて、悪かったよ」
「………いえ」
暗いところ…は、知っている。
サッカーの暗いところじゃない。
あれは、オレの弱さだっただけの話なんだから……。
そりゃ、ちょっとシンパシー感じますよねって。