OBの皆さんとの試合、その後の特訓を終えて、この日がやって来た…んだけど、その前にあれからどうなったのか、思い返したいと思う。
『クロスドライブ!!』
『爆裂パンチ!!』
『炎の風見鶏!!』
『ゴッドハンド!!』
『竜巻旋風!!』
『サイクロン!!』
『コイルターン!!』
『ドラゴンクラッシュ!!』
『ゴッドハンド!!』
『マジック!!』
『コイルターン!!!』
『ブレードアタック!!』
『コイルターン!!!!』
『イナズマ1号!!』
『落としぃ!!』
『ゴッドハンド!!』
それはもう、最初の帝国学園戦かよと思うぐらいの、必殺技の応酬だった。
なんなら、影野がコイルターン一本でめちゃくちゃ頑張ってた。
試合が終わった時なんて、めちゃくちゃスッキリしたような顔してたもんな。顔見えないのにハッキリ伝わったぞアレ。
それから、OBがそれぞれ練習を見てくれて、必殺技の伝授をさせてもらえることになった。
『炎の風見鶏!!』
「よし!もう、完全にモノにしたな!風丸!豪炎寺!!」
「まさか、影野が穴開けるぐらい見てたおかげで、こんな早くにコツを掴めるとは思わなかったよ」
「………我慢出来なかったから、必死に見てたんだ」
炎の風見鶏を覚えたいとなった時、炎以外にもスピードとジャンプ力が必要と浮島さん達が教えてくれた。
「陸上部の出番だな!」って、風丸が立候補してくれて豪炎寺と特訓を始めた。その時はとくに疑問に思ってなかったんだけど、スピードはともかく、必殺技に必要なジャンプ力が付く陸上部流石だな。
ただ、練習を始めた時は、2人の息をすぐに合わせられなかったこともあり、失敗が続いた。どうしたものかと思っていたところ…。
「……浮島さんたちの動きを見た限り、2人の距離が重要だって、ふと気付いたんだ」
「だとしても、ベンチだったとはいえ試合中の動きで気付くなんて、大した執念だよ」
「……早く、あの人たちと試合がしたかったからね」
影野のそのアドバイスのおかげで、見事2人は炎の風見鶏を習得した。
他にも必殺技を伝授させてもらえたんだが、それは後だな。
「さて、オレも練習……ん?」
「あの車…夏未ちゃんの?」
「私はここにいるから、違うわね。となると…」
雷門がここにいるとなると、もう1人の雷門だろう。
まあ、そのもう1人の雷門ってのが…。
「すげぇな。一応学校の敷地内をあんなクルマで移動かよ、理事長」
「へー。あの人、雷門の理事長だったのね」
「……いや、土門。転校生ってのを抜きにしても、この前のOBとの試合も見に来てたし、気付かなかったか?」
「悪い。気付かなかった」
「おいおい…」
「やあ!突然やって来てすまないね、諸君」
「理事長。どうしたんですか?」
「我が校のサッカー部が、帝国学園を打ち破り、全国大会へ出場したとなっては、私も居ても立っても居られなくてね。本当は、地区予選出場が決まった時にこうしたかったんだが…私も忙しくてね」
「そんなに忙しかったんですか?」
「そりゃあ、円堂。理事長って雷門中でも偉ければ、中学サッカー協会の会長だし、フットボールフロンティアの大会実行委員長もやってるんだぜ?この時期なんてとくに忙しいだろ」
「えっ、そうなのか!?よく知ってるな…」
「いやいや、お前は知らなすぎ…」
「そうかしら。中学サッカー協会会長はまだしも、フットボールフロンティアの大会実行委員長なんて、あまり知られてなかったと思うのだけど」
「…………えっ、そうなの?」
「私に聞かれても…」
「勤勉なのは、いいことじゃないか。ともかく、君たちの活躍によって、フットボールフロンティアは大きく盛り上がっている。全国大会の活躍も、期待している!」
理事長から激励の言葉を頂いた。
さっきオレ達が話してる間に、響木さんと話をしていたことから、この人もけっこうなサッカー好きなんだよな。
「そういえば、部室の件なんだが……いや、君たちの答えは決まっているだろうな」
「えっ、部室がどうしたんですか?」
「いや。部員も増えたことだし、あの部室を新しく建て替えようという話も出ていたんだがね。ただ、君たちを見ていると、その必要が無い…というよりは、あの部室が気に入ってるように見えてね。違うかな?」
「……はい!!オレ達は、あの部室から始まりましたから!!」
「まあ、なんだかんだ、あそこは落ち着くからなぁ。それに、あそこに刻まれた意志も、オレ達は引き継ぐべきだからな」
「ん、意志?意志ってなんだよ半田」
「えっ、マジかよ円堂。お前気付いてなかったの?」
「?」
そんなことを言いながら、オレ達は部室まで移動した。
サッカーボールの籠をどかすと、そこには…。
「"俺たちは逃げたんじゃない!"って…これ、響木さんたちが書いたんですよね?」
「気付いてたのか…たしかに、ここは俺達の時代から使ってるからな」
「こっちにも、"必殺技完成"って書いてるぜ」
「"強くなりたい"……影の存在、だね……」
「……たしかに。これは壊すわけにはいかないな。その代わりと言ってはなんだが、別の施設を作ることを検討してもいいかな」
「それは、是非。もしかしたら、部員も増えるかもしれませんから」
……あれ、これってもしかして、世界大会の時の合宿所とか、10年後とかのサッカー棟になるのかな。
流石にあのサッカー棟は違うだろうから、合宿所とか、その辺りになるのかな。
「……では、私はこれまでだ。時間を取らせてもらって、悪かったね」
「いえ。理事長も、けっこう熱い人なんですね」
「ははは。キミ達ほどじゃないとも。では、練習頑張ってくれたまえ」
「はい!みんな!練習に戻るぞ!」
『おお!!』
オレ達がグラウンドに戻るまで、校舎にいた生徒達からも応援の声が聞こえて来た。
やっぱり、応援ってのはいいな。届いてくる。
「あっ、風丸さん!!」
「ん…宮坂?」
あれ、風丸が誰かに呼ばれて……陸上部だな。
…………ああ。なるほど。
「風丸、どうしたんだ?」
「……先に練習に戻ってようぜ」
「あ、ああ……」
……今は、オレ達が口を挟むとこじゃないだろう。
しばらくしてから風丸が戻ってきて、練習に参加した。
だが、それから打った炎の風見鶏が、ゴールの枠を捉えることは無かった。
中断するまでは、全て枠を捉えていたんだが……。
「……意外と分かりやすいやつなんだな」
「はあ…はあ……なにが…?」
「陸上部に戻って来てくれとでも言われたんじゃないのか?」
「…………」
豪炎寺のその問いに、風丸は答えなかった。
それから、炎の風見鶏の練習は中断された。
「ふぁあ……早く目が覚めちゃったな」
日が昇ってそこまで経ってないこの時間、オレは河川敷を歩いている。
こんなに早く学校に行ってもどうせ寝るだけだし、少し遠回りして向かってる。始業まで時間はあるしな。
……時間はあるで思い出したけど、そのうち冬海の見舞いに行かなきゃな。
まだ意識は戻らないって、病院から聞いたけど…ったく、早く目覚ませよ。
「………ん。陸上部の」
「……………」
向こうから風丸の後輩の陸上部。たしか宮坂だったけかな…。そいつが走って来たんだけど、オレのことを少し睨むような目で見てきた。
……となると、河川敷には……。
「………やっぱり、いるか」
そこには風丸と、円堂がいた。
状況を見るに、風丸と宮坂が話をして、宮坂が去った後、円堂がやって来たって感じかな…。
オレが行っても仕方ないな。オレも学校に…。
「ああ!?」
「ああ?」
そんな円堂の叫びに振り返ると、サッカーボールが川に落ちていた。
………って、何やってんだよアイツ。
「……流石に、放ってはおけない、か」
オレは2人のところに行って、3人で協力してボールを拾った。
オレがいなくても拾えたと思うけど、そこはいいか。
「ずいぶん早いなと思ったら、何やってんだよ円堂…」
「いやあ…はっはっは…」
「誤魔化せてないから…。で、風丸は……」
「……………」
「………いや、オレが言うことはないか。ほら、行こうぜ3人とも。円堂は今日日直だろ?」
「あっ!いっけね!忘れるところだった!ありがとな半田!!」
オレがそう言うと、オレと風丸を置いて、全力ダッシュで学校へと向かった。はっや。
「飛んでったよ、アイツ…べつに、冬海じゃないんだから日誌喰らうことは無いだろうに」
「ははは…まあ、円堂らしいよな。冬海先生のお見舞いも、その内行きたいな」
「開会式の日ってそれだけだろうし、その帰りにでも行くか」
「そうだな。………なあ、半田」
「ん?どうしたよ」
「…………どっちを選んでも、どっちも裏切るような気がする時、お前ならどうする?」
「…………」
……どっちを選んでも、どっちも裏切る……か。
「………さあな。オレはその状況になったことはないから分からないよ」
「………そう、だよな」
「………でも、案外さ。その選ばれなかった方が裏切られたって思うことって、そんな無いんじゃないか?そりゃあ、どっちか選んで、そのどっちかを踏み躙るようなことをすれば、裏切ることになるんだろうけどさ。お前がそんなことするとは思えないし」
「えっ……?」
「どっちも大切なんだろ?それがどれぐらい大切かなんて、お前にしか分からないんだ。その中でお前が選んだことなら、それがベストだと思うぜ」
「…………やっぱり、な。円堂にも言われたよ」
「………そうか。なら、それまでに悩め。辛い時間だろうけどな」
「……………」
「………?どうしたよ、風丸」
「いや。今の言葉、さ。妙に実感が篭ってたような気がして」
「……気のせいだろ」
「そ、そうか……?」
そんなことを言いながら、オレ達は学校へ向かう。
今の言葉が実感が篭ってたってのは、絶対に気のせいだよ、風丸。
オレは、選ぶまでに辛い時間を感じたんじゃない。
オレはあの時、選ぶまでもなく、手を伸ばしてしまったんだ。
………なのに、アイツが許してくれた、あの時からしばらくが、とても辛かったんだよ。
本当は開会式までやりたかったんですけど、次回になりますね。